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公民連携プラットフォーム「すぎなみプラス」・「すぎなみボイス」
公民連携プラットフォーム「すぎなみプラス」・「すぎなみボイス」

公民連携プラットフォーム「すぎなみプラス」・「すぎなみボイス」

公民連携プラットフォーム「すぎなみプラス」・「すぎなみボイス」

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杉並区が2023年10月から運用するオンライン公民連携プラットフォーム。区民発意の活動を支援する「すぎなみプラス」と、行政テーマ型で意見を募る「すぎなみボイス」の2本立てで、参加型予算やエリアまちづくりの意見収集基盤としても機能する。

公民連携プラットフォーム「すぎなみプラス」・「すぎなみボイス」

概要

杉並区は2023年10月、公民連携プラットフォームの運用を開始した。地域で活動したい個人・団体と、ノウハウや場所を提供したい個人・団体・企業をつなぐ地域共創型ポータルサイト「すぎなみプラス」と、2024年7月に追加開設された、区が発信するテーマについて区民から意見・アイデアを募る「すぎなみボイス」の2つのオンラインツールで構成される。両ポータルとも、区内在住・在勤・在学者や区内で活動する団体(NPO、企業、大学等)を対象とし、法令違反や営利目的の宣伝活動を除く幅広い主体の参加を認めている。 (参考:公民連携プラットフォーム|杉並区公式ホームページ

技術基盤には、株式会社Groove Designsが提供する地域エンゲージメントプラットフォーム「my groove」を採用し、区独自にシステムを開発するのではなく、既存のSaaS上に自らのポータルサイトを構築する形をとっている。2026年8月時点で運用開始から約2年10か月が経過し、両ポータル合わせて27件のプロジェクトが公開され、更新情報を受け取るフォロワー数はすぎなみプラスが568人、すぎなみボイスが676人に達している。 (参考:すぎなみプラス|my grooveすぎなみボイス|my groove

背景・課題

従来の意見聴取手法の限界

杉並区はこれまでパブリックコメントやアンケートを通じて区民の意見を聴取してきたが、こうした手法だけでは、区の取り組みを分かりやすく共有し、時間や場所を選ばず幅広い層から意見を集めることに限界があった。区は新たなコミュニケーションツールを既存手法に加えることで、区政への参画機会を広げる必要性を認識していた。 (参考:すぎなみボイスとは?|my groove

事前アンケートによる需要検証

区は2022年12月15日から2023年1月15日にかけて「杉並区版公民連携プラットフォームの仕組みについて」と題したアンケートを実施し、53件の回答を得た。回答者の91%が「協働」という言葉を認知しており、49%が既に地域課題解決の活動に取り組んでいると回答した。 (参考:「杉並区版公民連携プラットフォームの仕組みについて」アンケート結果|杉並区公式ホームページ

プラットフォームの中核機能として想定された「多様な主体からの取組提示型」(後のすぎなみプラスに相当)については、96%が「利用したい」または「必要に応じて利用したい」と回答した。同様に「アイデア募集型」(後のすぎなみボイスに相当)についても91%が肯定的な回答を示し、いずれの機能も高い利用意向が確認された。一方で、「利用したくない」と回答した少数の意見の中には「公平かつ透明性のある基準で採択される事業とは思えない」という懸念も記録されている。区はこの結果を踏まえ、性格の異なる2つの機能を単一のツールに集約せず、2つの独立したポータルとして設計する方針を固めた。 (参考:「杉並区版公民連携プラットフォームの仕組みについて」アンケート結果|杉並区公式ホームページ

取り組みのプロセス

すぎなみプラスの開設(2023年10月)

2023年10月、地域共創型ポータルサイト「すぎなみプラス」が開設された。地域での活動を広げたい個人・団体と、知見や人手、活動場所を提供できる個人・団体との橋渡しを目的とし、参加方法として、既存プロジェクトをフォローして情報を受け取る、アイデア広場に投稿する、自己紹介をする、自ら活動主体としてプロジェクトを立ち上げる、という複数の入口が用意されている。 (参考:公民連携プラットフォーム|杉並区公式ホームページ【初めての方へ】すぎなみプラスとは?|my groove

プロジェクト掲載の本格化

実際のプロジェクト掲載は2024年2月から本格化し、子育て・虐待予防のための「まちの保健室」立ち上げや、高齢者向け「小さなサポートサービス」の普及といった、区民発意の取り組みが順次紹介されるようになった。 (参考:すぎなみプラス|my groove

すぎなみボイスの開設(2024年7月)

2024年7月、行政発信型の意見募集ツール「すぎなみボイス」が追加開設された。すぎなみプラスが区民発意の活動支援を主眼とするのに対し、すぎなみボイスは区がテーマを設定し、その概要や検討状況を可視化した上で区民からアイデア・意見を募る構成となっている。開設にあたり「多様な意見・考えを尊重する」「テーマに関する投稿をする」「個人情報の書き込みに注意する」という3つのグランドルールが定められた。 (参考:公民連携プラットフォーム「すぎなみボイス」の開設|広報すぎなみ 令和6年7月1日号すぎなみボイスとは?|my groove

オフラインイベントとの連動

プラットフォーム上のつながりを実際の協働に発展させるため、区は定期的な交流会を開催している。2024年3月16日に第1回「すぎなみプラス交流会」が産業商工会館で開催され、ヤマト運輸、セコム、明治大学ボランティアサークルなどが地域貢献活動を紹介したほか、高齢者向け「小さなサポートサービス」の実践事例や、保健師が中心となって進める「まちの保健室」の企画検討の様子など、区民発の企画も披露された。2025年3月には第2回交流会が、同年7月30日には事前に設定したテーマに沿って議論を深める「テーマ会」が開催され、京王線沿線の賑わい創出、「こどものまち」構想、メンタルヘルス、健康まちづくりの4テーマについて参加者が意見を交わした。運営には地域のNPO支援拠点「すぎなみ協働プラザ」が協力し、周知や当日運営を支援している。 (参考:杉並区公民連携プラットフォーム「すぎなみプラス」交流会のお知らせ|すぎなみ協働プラザすぎなみの未来を語ろう!すぎなみプラス テーマ会開催のお知らせ|my groove

参加のハードルを下げる工夫

2025年以降、初参加者向けの「自己紹介ルーム」が新設され、ニックネームや関心テーマを気軽に投稿できる仕組みが整えられた。また運営事務局は「公民連携日記」と題した定期更新記事で、区役所に相談に訪れた団体や進行中のワークショップの様子を継続的に発信し、参加のきっかけを可視化している。 (参考:【ようこそ、すぎなみプラスへ!】自己紹介ルームがオープンしました!|my groove【公民連携日記】2025年6月の活動!|my groove

この事例の特徴

需要検証を経た二層構造の設計

一般的な公民連携窓口の設計は単一の相談窓口やポータルに機能を集約することが多いが、杉並区は事前アンケートで異なるニーズが確認された「区民発意の活動支援」と「行政発意の意見募集」を、あえて2つの独立したポータルに分離した。共通の技術基盤を使いながら入口を分けることで、利用者は活動を進めたいのか意見を届けたいのかという目的に応じてアクセスできる設計になっている。

既存SaaSの活用によるスピード立ち上げ

杉並区は独自のシステムを一から開発するのではなく、外部事業者が提供する地域エンゲージメントプラットフォーム「my groove」を採用した。自前開発と比較して初期コストや構築期間を抑えられる一方、機能面ではプラットフォーム提供事業者の仕様に依存する面もある。 (参考:すぎなみプラス|my groove

個別施策への意見収集チャネルとしての機能

すぎなみボイスは独立した意見箱ではなく、区の主要施策と連動する形で運用されている。区が令和7年3月にまとめた「参加型予算モデル実施報告」によれば、区民参加型予算の提案募集期間・投票期間中はすぎなみプラスで告知記事を掲載し、投票終了後はすぎなみボイスで採択事業に対する意見を募集するという役割分担がなされている。同様に、阿佐谷北東エリアのまちづくり協議会が策定を進める「未来ビジョン」についても、対面の「あさがやまちづくりセッション」と並行してすぎなみボイスで意見を募集し、両者の意見を協議会で共有する運用がとられている。 (参考:参加型予算モデル実施報告|杉並区公式ホームページ阿佐谷北東エリアで公民連携の未来ビジョンを検討しています!|my groove

多様な参加主体の巻き込み

すぎなみプラスは、ヤマト運輸やセコムといった民間企業の地域貢献活動、明治大学ボランティアサークルの活動、包括連携協定を結ぶ大塚製薬による認知症理解のためのVR体験会の紹介など、企業・大学が区民と直接つながる場としても機能している。また国土交通省の「民間提案型官民連携モデリング事業」を活用したグリーンインフラ推進プロジェクトでは、善福寺川の保全活動を10年以上続けてきた一般社団法人風致が中間支援組織として区・企業・地域住民を橋渡しする体制がすぎなみプラス上で紹介されている。 (参考:杉並区公民連携プラットフォーム「すぎなみプラス」交流会のお知らせ|すぎなみ協働プラザ【公民連携日記】2025年6月の活動!|my groove地域のグリーンインフラの輪を広げよう!|my groove

調査時点の成果

プロジェクト数とフォロワー数の推移

2026年8月時点で、すぎなみプラスには16件、すぎなみボイスには11件、合計27件のプロジェクトが掲載されている。分野は子育て支援、高齢者の生活支援、空き家・空きスペース活用、多文化共生、防災・減災、みどりの基本計画改定、平和啓発(戦後80年事業「すぎなみ平和マップ」)、教育人材育成(Education Festa)など多岐にわたる。フォロワー数(各ポータルの更新情報を受け取る登録者数)は、すぎなみプラスが568人、すぎなみボイスが676人となっている。 (参考:すぎなみプラス|my grooveすぎなみボイス|my groove

個別プロジェクトへの関心の広がり

個別プロジェクトのフォロワー数を見ると、「地域のグリーンインフラの輪を広げよう!」に253人、「阿佐谷北東エリアで公民連携の未来ビジョンを検討しています!」に297人、「みんなのグリーンインフラ 自然を活かしたまちを考えよう!」に352人、「区民参加型予算で、『健康・ウェルネス』について考えよう!」に343人が関心を示しており、個別テーマでも200人を超える規模の登録者を集めている。 (参考:地域のグリーンインフラの輪を広げよう!|my groove阿佐谷北東エリアで公民連携の未来ビジョンを検討しています!|my groove

参加型予算への貢献と残る課題

すぎなみプラス・すぎなみボイスは区の主要施策である区民参加型予算の情報発信基盤としても機能してきた。令和6年度は前年度比1.5倍となる83件の事業提案が寄せられ、投票者数も2,586人から3,322人に増加した。一方で区自身がまとめた実施報告は「区の参加型予算の投票数は3,322人と、投票率としては1%に届いていない状況である」ことを課題として明記しており、公民連携プラットフォームを活用しながら「地域の担い手の皆さん同士をつなぎ、互いのアイデアや知識・ノウハウを共有しながら提案を練っていけるような場作り」を今後強化する方針を示している。フォロワー数が着実に積み上がっている一方、区政全体への浸透という点では発展途上であることが、区自身の評価からも読み取れる。 (参考:参加型予算モデル実施報告|杉並区公式ホームページ

企業・教育機関との具体的な連携実績

交流会を通じて、ヤマト運輸、セコム、明治大学、大塚製薬といった企業・大学との接点が生まれ、地域貢献活動やVR体験会の実施につながった。すぎなみ協働プラザとの連携により、交流会の運営面でも既存の中間支援組織の専門性を活用する体制が構築されている。 (参考:【公民連携日記】2025年6月の活動!|my groove杉並区公民連携プラットフォーム「すぎなみプラス」交流会のお知らせ|すぎなみ協働プラザ

他地域への示唆

着手前の需要検証

杉並区は本格開発に先立ち、53件という小規模ながらも定量的なアンケート調査を実施し、想定する2つの機能(活動提示型・アイデア募集型)それぞれについて9割超の利用意向を確認してから設計に着手した。仮説段階のニーズを検証してから機能を作り込むプロセスは、限られた予算で公民連携基盤を構築しようとする他自治体にとっても再現性のあるアプローチである。

「区民発意」と「行政発意」の窓口分離

活動を始めたい区民と、行政が意見を求めたい区民とでは、参加の動機も情報の受け取り方も異なる。杉並区はこの違いを踏まえ、2つの独立したポータルに窓口を分けた。単一の「なんでも意見箱」に機能を集約するのではなく、利用目的に応じて入口を分ける設計は、公民連携窓口の使い勝手を左右する要素として他地域でも参考になる。

自前開発ではなく外部SaaSの活用

杉並区は独自システムを開発するのではなく、外部事業者が提供するプラットフォームを活用することで、比較的短期間でのサービス開始を実現した。システム構築のノウハウや予算規模が限られる自治体にとって、公民連携基盤を自前開発するか既存のSaaSを活用するかは重要な意思決定であり、杉並区の事例はその選択肢の一つを具体的に示している。

オンラインとオフラインの往復設計

すぎなみプラスは投稿・フォローだけで完結する仕組みではなく、定期的な交流会・テーマ会という対面の場を組み合わせている。オンラインでの情報発信・意見収集と、対面での関係構築を往復させる設計は、デジタルツールだけでは生まれにくい協働のきっかけを育てる上で有効に機能している。

中間支援組織との役割分担

区は交流会の企画・運営において、既存のNPO支援拠点「すぎなみ協働プラザ」と連携している。行政が全てを直営で担うのではなく、地域の中間支援組織の専門性を活かして役割分担することは、限られた行政職員のリソースを補完する現実的な選択肢となる。

指標を公開し課題を認める運用姿勢

区は参加型予算の投票率が1%未満にとどまっている実態を実施報告書で明記し、次年度以降の改善方針を示している。プラットフォームの利用実績を定期的に公表し、課題を率直に認めた上で改善サイクルを回す運用姿勢は、公民連携施策の説明責任を果たす上で参考になる。

参照元


2026年8月時点の調査内容に基づいて作成

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