
杉並区 参加型予算制度試行事業
東京都杉並区が2023年度から導入した年齢制限のない参加型予算制度。区民約57万人全員が投票に参加でき、森林環境譲与税6,200万円の使途を直接決定する。
杉並区は2023年度から「皆さんとつくる予算」と名付けた参加型予算制度を導入した。この制度は、区民が予算の使い道を提案し、投票によって次年度予算に反映する事業を決定するもので、東京都内の市区町村では初めての本格的な取り組みとなる。
投票資格に年齢制限がないことが特徴で、投票日時点で杉並区内に住所を有する個人であれば、子どもから高齢者まで誰でも投票できる。対象予算は森林環境譲与税6,200万円で、1事業あたり最大2,000万円を上限として、毎年上位3事業が翌年度予算に反映される。 (参考:杉並区公式ホームページ 皆さんとつくる予算)
参加型予算の導入は、2022年6月の区長選挙で僅差で当選した岸本聡子区長の政策に基づく。岸本区長はオランダのアムステルダムに本拠を置く国際政策シンクタンク「トランスナショナル研究所」で約19年間にわたり公共政策の研究に携わった経歴を持つ。欧州での経験から、市民が政治に直接参加する「ミュニシパリズム(地域主権主義)」を重視し、選挙以外の民主主義のあり方として地域住民による自治や合意形成のプロセスを大切にする姿勢を示している。 (参考:サストモ インタビュー記事)
岸本区長は就任直後の所信表明で参加型予算の導入を宣言した。その理念は「区民が選挙だけではなく、区政に直接参加して自分たちのまちを形づくっていく参加型民主主義の実現」にある。区民を「サービスの受け手」から「アクター」へと転換し、地域の課題を最もよく知る住民の知見を政策に活かすことを目指している。 (参考:東京新聞 2023年10月)
参加型予算は1989年にブラジル南部のポルト・アレグレ市で始まった。市民が市役所の予算編成に直接関わる手法として世界的な注目を集め、現在では世界1万都市以上に広がっている。ヨーロッパ圏だけでも多数の都市が導入しているが、予算の2%未満しか参加型予算に割り振られていない形式的な事例も少なくないと指摘されている。 (参考:ポルト・アレグレ Wikipedia、SWI swissinfo.ch)
日本では愛知県新城市が2015年4月に「若者議会」を条例で設置し、16歳から29歳の若者に年間1,000万円の予算提案権を与える取り組みを先駆的に実施してきた。ただし新城市の制度は若者に限定されており、杉並区のように全年齢を対象とした参加型予算は日本では例が少ない。 (参考:新城市公式サイト 若者議会)
杉並区の参加型予算は、年間を通じて5つの段階で実施される。
毎年度、区が社会課題や区民ニーズを踏まえてテーマを設定する。令和5年度は森林環境譲与税の趣旨に沿った「森林環境保護」、令和6年度は「防災・減災」、令和7年度は「健康・ウェルネス」がテーマに選ばれた。令和7年度のテーマは身体的健康だけでなく、精神的安定や社会的つながりを含む包括的な概念として設定されている。
提案期間は約3か月間確保され、区民だけでなく区内で働く人や学ぶ人も提案できる。1事業あたり最大2,000万円、単年度事業という条件がある。 (参考:杉並区公式ホームページ 令和7年度)
区は提案の質を高めるためのワークショップを開催している。令和6年度には2024年6月に区役所でワークショップを開催し、無作為抽出で選ばれた20代から70代の約20人が参加した。区の防災担当職員が既存の防災施策を説明した上で、参加者がグループに分かれてアイデアを出し合った。「街灯をソーラーパネル化」「災害時のデマ拡散防止」「防災グッズを使ったスポーツイベント」といった具体的な提案が生まれた。 (参考:東京新聞 2024年6月)
令和7年度には複数回のワークショップが開催され、無作為抽出者に加えて一般公募も受け付けることで、より多様な参加者の声を集める工夫がなされている。 (参考:杉並区公式ホームページ 令和7年度)
提出された提案は、区の担当部署が実現可能性を精査する。営利目的の提案や既存事業と重複する提案は除外され、類似する提案は統合される。森林環境譲与税の趣旨との整合性、法令適合性、予算上限内での実現可能性が総合的に判断され、最終的に10事業程度に絞り込まれる。 (参考:杉並区公式ホームページ 皆さんとつくる予算)
選定された10事業に対し、区民がインターネットまたは郵送で投票する。投票期間は約2か月間設けられ、1人あたり最大3事業まで選択できる複数投票制を採用している。投票日時点で杉並区内に住所を有する個人であれば年齢を問わず投票できる点が特徴である。 (参考:杉並区公式ホームページ 令和6年度投票結果)
投票結果上位3事業が翌年度当初予算案に反映され、区議会での審議・承認を経て事業化される。参加型予算は住民の直接的な意思表明であるが、最終的には代表制民主主義の仕組みである議会の承認を経ることで、制度的な正当性を担保している。 (参考:杉並区公式ホームページ 皆さんとつくる予算)
杉並区の参加型予算の最大の特徴は、投票資格に年齢制限がない点である。通常の公職選挙では18歳以上に限定される投票権を、この制度では区内に住所を有するすべての個人に開放した。実際の投票では保護者が代理で投票することも想定されるが、家庭内で予算の使い道を話し合う契機となり、シビックエンゲージメントの教育的効果も期待されている。 (参考:杉並区公式ホームページ 皆さんとつくる予算)
対象予算として森林環境譲与税を選定したことも制度設計上の工夫である。森林環境譲与税は国から各自治体に配分される特定財源で、森林整備やその促進に関する事業に使途が限定されている。杉並区は都市部で森林が少ないが、税制度の趣旨に沿いながら創意工夫の余地がある。既存の区事業予算と競合しないため、予算配分をめぐる既存の政治的対立を避けやすいという利点がある。 (参考:杉並区公式ホームページ 森林環境譲与税)
区は参加型予算の情報発信基盤として、2024年7月に公民連携プラットフォーム「すぎなみボイス」を開設した。区が発信するテーマの概要や進捗状況を共有し、インターネット上で区民の意見やアイデアを募集する機能を持つ。時間的・場所的制約なく多様な区民が意見を投稿できるオンライン空間として活用されている。 (参考:杉並区公式ホームページ 公民連携プラットフォーム)
初年度は「森林環境保護」をテーマに57件の提案を募集し、10事業に絞り込んだ上で2023年10月に投票を実施した。6,991票の投票があり、上位3事業が令和6年度当初予算に反映された。
| 順位 | 事業名 | 得票数 | 予算額 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 災害時に活用できる用具を公園に設置(かまどベンチ) | 1,488票 | 717.2万円 |
| 2位 | 歩行者が気軽に利用できる木製ベンチをまちなかに | 1,436票 | 99.7万円 |
| 3位 | 区立公園に木製の遊具やベンチを設置 | 1,299票 | 1,846.2万円 |
1位の事業では、広域避難場所である井草森公園と蚕糸の森公園に各2基、計4基のかまどベンチが設置された。平常時はベンチとして使用し、災害時には座面を外して炊き出し用のかまどとして活用できる。 (参考:杉並区公式ホームページ 令和6年度反映事業)
2年目は「防災・減災」をテーマに83件の提案を募集し、前年比1.5倍の提案数を記録した。2024年9月15日から11月11日まで投票を実施し、8,749票(投票者数3,322人)の投票があった。提案件数・投票数ともに増加しており、制度への関心の高まりがうかがえる。
| 順位 | 事業名 | 得票数 | 予算額 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 区立公園で太陽光発電と蓄電をしよう | 2,026票 | 1,050万円 |
| 2位 | LEDソーラー街路灯給電スポットを駅前広場に設置 | 1,958票 | 1,400万円 |
| 3位 | 水害対策にグリーンインフラを活用しよう | 1,207票 | 1,896.4万円 |
上位3事業すべてが太陽光発電やグリーンインフラといった環境配慮型の防災対策となっており、区民の環境意識の高さが表れた結果となった。1位の事業では井草森公園に太陽光発電で蓄電し、非常時にスマートフォンも充電できる「ソーラー園灯」3基が設置される予定である。 (参考:杉並区公式ホームページ 令和6年度投票結果)
参加者アンケートでは「納めた税金の使いみちを区民が考える良い機会になる。画期的な取り組みだと思う」「行政が民の意向を知る良い機会。区民の参加意識、当事者意識を高めるきっかけにもなる」といった意見が寄せられた。一方で「投票期限近くになって参加型予算の存在を初めて知った」「提案の締め切り直前で時間が足りなかった」という周知不足を指摘する声もあった。 (参考:杉並区公式ホームページ 令和6年度反映事業)
杉並区は「モデル実施」として制度を運用しながら課題を検証し改善を重ねている。参加型予算を導入する際には、いきなり大規模に実施するのではなく、対象予算や範囲を限定して試行し、課題を把握しながら拡大していくアプローチが有効である。
森林環境譲与税のように既存事業予算と競合しない財源を活用することで、予算配分をめぐる政治的対立を避けやすくなる。新たな財源や使途が柔軟な財源を参加型予算の対象とすることで、制度導入のハードルを下げることができる。
毎年テーマを変えることで、特定の政策分野に関心を持つ層の参加を促進できる。「防災・減災」のように社会的関心の高いテーマを設定した令和6年度は、前年度より参加が大幅に増加した。
オンラインプラットフォームによる情報発信と意見収集に加え、対面のワークショップを開催することで、デジタルに不慣れな層も含めた幅広い参加を促している。無作為抽出による招聘は、普段は行政参加に消極的な層にもアプローチする手法として参考になる。
年齢制限のない投票資格は、将来世代の声を予算に反映させる仕組みとして注目される。子ども世代が直接または保護者を通じて参加することで、家庭内での政策議論を促し、早期からのシビックエンゲージメントを育む効果が期待できる。
2026年3月時点の調査内容に基づいて作成
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