
NPO法人つくばいきものSDGsによる市民協働の生物多様性保全
つくば市の洞峰公園を拠点に、市民科学型の動植物調査と専門家連携で生物多様性保全に取り組むNPOの事例。散歩ついでのボランティアから有償学生インターンまで段階的な参加の入り口を設計し、市民調査の蓄積を国の自然共生サイト認定へつなげた。
NPO法人つくばいきものSDGsは、茨城県つくば市の洞峰公園とその周辺を拠点に、市民協働で生物多様性保全に取り組む団体である。2022年4月に市民ボランティア団体「洞峰いきものSDGsの会」として発足し、活動の対象地域と担い手を広げるため2024年12月にNPO法人化した。「自然とつながる、未来をつくる」をビジョンに掲げ、専門家の指導の下での市民参加型の動植物調査(市民科学)、希少植物の保全管理、自然体験イベント、公園ボランティアプログラムを展開している。 (参考:NPO法人つくばいきものSDGs 団体紹介、NPO法人つくばいきものSDGs 公式サイト)
3年余りの市民調査の蓄積は、2025年9月の洞峰公園・二の宮公園・まつぼっくり公園の3公園(計約20.7ヘクタール)の国の「自然共生サイト」認定に結実した。本稿では、認定制度の側面ではなく、その基盤となった市民協働の活動と組織づくりの仕組みに焦点を当てる。 (参考:NEWSつくば)
洞峰公園は筑波研究学園都市の中心部に位置する1980年開園の総合公園で、洞峰沼を擁し、絶滅危惧種を含む里地里山・沼・湿地の動植物が生息する。2021年度以降、当時県営だった同公園でパークPFI制度を活用した整備計画が進められたことに対して地元住民から懸念が示され、公園の価値を巡る議論が続いていた。団体発足のきっかけは、この議論のさなかに代表の木下潔氏(薬学博士・森林インストラクター)が公園の動植物を調べ、貴重な種が残っていることを知ったことにある。 (参考:つくば市「くっつくば」、NPO法人つくばいきものSDGs 団体紹介)
背景には、都市部の身近な緑地に固有の課題がある。研究学園都市として計画的に整備されたつくば市街地には公園や緩衝緑地がまとまって残るが、その生態系の価値は体系的なデータとして記録されておらず、開発を巡る議論でも客観的な判断材料が乏しかった。また、緑地の保全活動は一部の熱心な個人に依存しがちで、調査の専門性の確保と、多様な市民が関わり続けられる仕組みづくりが課題だった。 (参考:NEWSつくば、ドコモ市民活動団体助成事業)
2022年4月の発足にあたり、団体はミュージアムパーク茨城県自然博物館名誉学芸員(樹木分野)の小幡和男氏の協力を得て、地元住民とともに洞峰公園の樹木調査から活動を始めた。樹木調査では1本1本の樹種・樹高・幹の太さ・健康状態を調べてマッピングし、約4,000本とされる園内の高木のうち約3,000本の調査を積み重ねた。発足直後の2022年6月には、整備計画の工事予定地周辺でオオタカを含む野鳥13種、キンラン・ギンランなどの希少植物4種が確認され、木下氏が代表を務める「地域参加型の洞峰公園整備計画を求める会」が県に保全を要望している。 (参考:つくば市「くっつくば」、NEWSつくば(2022年6月))
その後、鳥類・昆虫・水草など分野ごとの専門家との連携を広げ、現在は植物(春・秋)、樹木(春・秋)、野鳥(春・夏・冬)、きのこ(初夏・秋)、昆虫(初夏)の5分野で、季節に応じた市民参加型のモニタリング調査と観察会を定期的に実施している。子どもを含む一般市民が研究者・専門家の指導を受けながら調査の担い手になる「市民科学」のスタイルが活動の基本形である。 (参考:NPO法人つくばいきものSDGs ネイチャーポジティブ活動、つくば市「くっつくば」)
調査で得た知見は保全活動に直結させている。希少植物の生育エリアでは外来種防除、草刈り、採種・播種による自主管理を行い、月1回の早朝清掃や落ち葉掃きなどの環境美化は茨城県の公園サポーター制度に位置づけて継続してきた。2024年には洞峰沼の底土に眠る埋土種子から植生を再生する「埋土撒きだし試験」を実施し、シャジクモ・フラスコモ類やヒルムシロなど、沼から姿を消していた希少水生植物の発芽を確認。この成果は水草研究会の全国集会でも報告された。 (参考:NPO法人つくばいきものSDGs ネイチャーポジティブ活動、つくばSDGsパートナーズ)
活動の担い手を広げるため、関わり方の段階的な設計が行われている。公園ボランティア「洞峰グリーンレンジャーズ」は、公園散歩やテニス教室の帰りに立ち寄れる敷居の低いプログラムとして設計され、落ち葉掃きや花壇整備など気軽な作業から希少種生育地の保全までを担い、40名を超えるメンバーが登録する。秋の自然体験イベント「どんぐりクエスト」は園内6種類のどんぐり探しとクラフト工作を組み合わせた親子向け企画で、毎年100名以上が参加し、4回目の開催では120名を超えた。 (参考:NPO法人つくばいきものSDGs ネイチャーポジティブ活動、つくば市「くっつくば」)
若い世代の担い手確保策としては、有償の学生インターンシップ「つくばネイチャートラスト」を設けている。説明会、洞峰公園でのサイトツアーを含む導入研修、観察会の講師アシスタント、保全活動の事務局アシスタントという4段階で構成され、時給制(1,200〜2,500円)で活動証明書の発行にも対応する。ボランティアの善意だけに頼らず、学生が継続的に関わる経済的条件を整えた点が特徴的である。 (参考:NPO法人つくばいきものSDGs つくばネイチャートラスト)
活動地域と担い手を広げるため、団体は2024年12月にNPO法人化した。役員には代表理事の木下氏のほか、樹木調査を指導してきた自然博物館名誉学芸員が理事として参画し、専門性を組織体制に組み込んでいる。法人化後は、市民調査の成果を基につくば市と共同で自然共生サイト認定を申請(2025年9月認定)し、認定後の5年間の活動計画ではNPOが希少動植物エリアの管理、調査・モニタリング、環境教育を担う役割が明文化された。資金面では会費・寄付に加え、2025年度ドコモ市民活動団体助成事業に「つくば市街地の生物多様性を育み、未来へ引き継ぐプロジェクト」が採択されている。また、自前の活動だけでなく、自然観察・保全・体験教育の支援や、自然共生サイト認定を目指す他団体への調査計画・申請支援をサービスとして提供する事業展開も始めている。 (参考:NPO法人つくばいきものSDGs 団体紹介、NEWSつくば、ドコモ市民活動団体助成事業、NPO法人つくばいきものSDGs サービス)
洞峰公園の市営化後、つくば市は市民参加で公園運営を考える「みんなの洞峰公園プロジェクト(#DohoMeet)」を展開しており、NPOの保全活動はこの公園ガバナンスの動きと並走している。2025年に発足した管理・運営協議会(後に「洞峰公園コンソーシアム」への改称が提案された)には、筑波大学や国立環境研究所、NPO等の学識経験者を含む16名の委員が参画し、第1回委員会では「自然環境と共存する利用方法」が主要議題の一つとなった。 (参考:my groove「第1回管理・運営協議会 委員会レポート」、my groove「第2回分科会レポート」)
市民が参加する月例の「パートナーシップ会議(旧・分科会)」でも、自然環境の保全と教育は市民の関心の柱となっている。第1回会議では「洞峰沼周辺の自然環境の保全」「自然観察ツアーやワークショップの開催」「生物多様性に配慮した管理」が理想の公園像として提案され、第2回会議では沼や樹木・花壇の手入れを市民主体で行うことや落ち葉の堆肥化など、公園の自然を「育てる」活動への関心の高まりが報告された。NPOが2022年から先行して実践してきた市民協働型の調査・保全活動は、こうした公園運営の議論に方向性を共有する実例を提供する位置にある。 (参考:my groove「第1回分科会レポート」、my groove「第2回分科会レポート」)
第一の特徴は、市民科学を活動の中核に据えた点である。観察会で自然に親しむだけでなく、樹木約3,000本の全個体調査のように、市民が専門家の指導の下でデータを生み出す主体となる設計がなされている。蓄積されたデータは希少種の保全管理や国の認定申請の根拠資料として実際に活用されており、市民参加が「学び」で終わらず「成果物」につながる構造を持つ。 (参考:つくば市「くっつくば」)
第二に、関わり方の階段設計である。散歩ついでに参加できるグリーンレンジャーズ、親子向けのどんぐりクエスト、季節ごとの分野別調査、有償の学生インターンと、関心や生活スタイルに応じた複数の入り口が用意され、メルマガで観察会やボランティア活動の情報を継続的に届けている。つくば市の広報記事では、専門家が解説する観察イベントが「多世代がふれあい互いの自然観を共有する『装置』のよう」だと紹介されており、保全活動そのものがコミュニティ形成の場ともなっている。 (参考:NPO法人つくばいきものSDGs 活動の輪、つくば市「くっつくば」)
第三に、任意団体からNPO法人への組織発展の道筋である。開発計画を巡る議論を契機に生まれた団体が、調査データの蓄積と参加者層の拡大を経て法人格を取得し、行政との共同申請の主体、助成事業の受け皿、他団体への支援サービスの提供者へと役割を広げた。保全を「特別な営みではなく、無理なく、楽しみながら、少しずつ」日常生活に組み込むという団体の方針が、この段階的な発展を支えている。 (参考:NPO法人つくばいきものSDGs サービス、NPO法人つくばいきものSDGs 団体紹介)
2026年6月の調査時点で確認できる成果は次の通りである。
一方で、会員数などの組織規模は公表されておらず、自然共生サイト認定後の5年間のモニタリングと報告はこれから本格化する段階にある。生物多様性の状態そのものの長期的な改善効果は、今後の継続調査で検証されることになる。 (参考:つくば市「くっつくば」)
また、市民意見の中で自然への向き合い方は一様ではない。市の意見募集(回答74件)や延べ1,400人近くが参加した洞峰感謝祭(2025年10月)では「もっと自然観察会を」という期待が寄せられる一方、「植物園と化している、人々が安らぐ人のための公園であって欲しい」という利用とのバランスを問う声や、洞峰沼の水の濁り・渇水期の水位低下を指摘する声もあった。保全活動が多様な利用者の合意の中でどう位置づけられていくかは、公園運営の議論と合わせた今後の論点である。 (参考:my groove「洞峰公園での過ごし方&改善アイデア(意見募集まとめ)」、my groove「洞峰感謝祭レポート」)
市民を「調査の担い手」に位置づける市民科学の設計。 観察会を楽しむ参加者と、データを蓄積する調査主体を分けず、専門家の指導の下で市民自身が全個体調査やモニタリングを担う形は、調査の人手と保全の当事者を同時に育てる手法である。蓄積されたデータが行政への要望や国の制度申請の根拠資料になった本事例は、身近な緑地で活動する各地の団体にとって、日常の記録を体系的に残すことの価値を示している。 (参考:つくば市「くっつくば」、NEWSつくば)
参加コストに応じた複数の入り口を用意する。 「散歩のついで」のボランティアから、親子イベント、分野別の定期調査、有償インターンまで、時間・関心・専門性の異なる層ごとに関わり方を設計したことが、特定の熱心な個人への依存を避け、担い手の裾野を広げた。特に有償インターンシップによる学生の確保は、ボランティアの高齢化に悩む環境系団体に対し、若い担い手を継続的に巻き込む一つの現実解を提示している。 (参考:NPO法人つくばいきものSDGs ネイチャーポジティブ活動、NPO法人つくばいきものSDGs つくばネイチャートラスト)
地域の研究資源を「翻訳者」として組み込む。 自然博物館の学芸員や大学研究者が調査の監修と観察会の解説を担い、その専門家が役員として組織体制にも参画する形は、市民活動の科学的信頼性を担保すると同時に、専門知と市民の自然観をつなぐ場を生んでいる。研究機関が立地する地域に限らず、博物館・高校・大学等の専門人材と市民活動を結びつける発想は広く応用可能である。 (参考:NPO法人つくばいきものSDGs 団体紹介、つくば市「くっつくば」)
対立の局面から協働の主体へ。 開発計画への懸念から始まった活動が、反対運動にとどまらず、データ蓄積・参加者拡大・法人化を経て行政との共同申請の主体に発展した経路は、公園や緑地を巡る合意形成が難航する他地域にとって示唆的である。「その場所に何がいるのか」を市民の手で可視化する活動は、立場を超えた共通基盤をつくり、後の政策展開への接続点になり得る。 (参考:NEWSつくば、NPO法人つくばいきものSDGs 団体紹介)
2026年6月時点の調査内容に基づいて作成
この記事は公開情報に基づき、AIを用いた詳細調査により作成されました。記事内容への修正依頼、お問合せ等は以下までお寄せください。
問い合わせ:support@groove-designs.com
よくあるご質問(FAQ)もあわせてご確認ください。
#
総合計画
#
まちづくり指針
#
エリアビジョン
#
景観計画
#
緑の基本計画
#
公共空間活用
#
ウォーカブル
#
公園活用
#
防災・減災
#
空き家活用
#
エリアプラットフォーム
#
公民連携プラットフォーム
#
公民連携
#
地域コミュニティ
#
地域交流拠点
#
多文化共生
#
子育て支援
#
文化芸術
#
自動運転バス
#
モビリティマネジメント
#
モビリティハブ
#
関係人口
#
移住促進
#
探究学習
#
グリーンインフラ
#
生物多様性
#
参加型予算
#
都市整備
#
まちなか
#
駅前広場
#
協働のまちづくり
#
リノベーションまちづくり
#
フューチャーセンター
#
スマートシティ
#
AI
#
リビングラボ
#
空きスペース活用
#
居場所づくり
#
子ども食堂
#
沿線まちづくり
#
健康
#
社会教育
#
持続可能な都市
#
計画策定
#
まちづくり
#
コミュニティ形成
#
ワークショップ
#
社会実験
#
市民参加
#
子ども・若者
#
子育て世代
#
シニア