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杉並区の新しい公園利用ルール
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杉並区の新しい公園利用ルール

杉並区の新しい公園利用ルール

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杉並区が約350か所の区立公園などの利用ルールを見直した事例。ボール遊び・自転車練習・花火を条件付きで解禁する一方、23区で唯一残っていた公園内の喫煙を原則不可とした。緩和と規制強化を一つの改定に束ね、児童館経由で子ども672人の声を集めたうえで、約1年の試行を経て2025年4月に本実施した。

杉並区の新しい公園利用ルール

概要

杉並区は2025年4月1日、区立の公園・児童遊園・緑地・遊び場など約350か所を対象に、利用ルールを改めた。見直したのは、区に寄せられる要望のうち頻度が高い5項目——喫煙、犬の連れ込み、ボール等の利用、自転車の乗り入れ、花火である。ボール遊び・自転車の練習・花火という3つの禁止事項を条件付きで解禁する一方、それまで認めていた公園内での喫煙は、分煙施設のある4公園(馬橋公園、井草森公園、塚山公園、桃井原っぱ公園)を除いて不可とした。 (参考:新しい公園利用ルール|杉並区公園利用ルールの本実施について(都市環境委員会資料 令和7年2月25日)

この事例の性格を決めているのは、緩める方向の変更と締める方向の変更を、一つの改定にまとめた点である。公園の禁止事項をめぐる議論は「子育て世帯 対 高齢者」「規制緩和 対 近隣配慮」という対立の構図で語られやすいが、杉並区は5項目それぞれについて実態調査の結果に沿って方向を決め、全体を「譲り合って利用する」という一つの原則で束ねた。担当課は、今回の変更は高齢者と子どものどちらを優先するかという二者択一の話として打ち出したわけではないと説明している。 (参考:女子SPA!(後編)

進め方も二段階になっている。2024年1月に大人と子ども合わせて960人が回答した利用者アンケートを行い、同年3月に区長と区民37人が話し合う会を開いたうえで、7月からは新ルールを「本実施」ではなく「試行」として運用した。試行期間中にもう一度402人から項目ごとの評価を集め、2025年2月の都市環境委員会に報告したうえで本実施に移している。 (参考:公園利用ルールの本実施について(都市環境委員会資料 令和7年2月25日)

一方で、この見直しは杉並区立公園条例の改正を伴っていない。運用上のルール変更として実施されたため、義務を課す方向の変更である「喫煙不可」に条例上の根拠がないという指摘が区議会議員から出ている。見直しの速度と法的裏付けの間にトレードオフが残されたかたちである。 (参考:新しい公園利用ルール「喫煙不可」は、杉並区立公園条例にその根拠を設ける必要がある|堀部やすし(杉並区議会議員)

背景・課題

杉並区の公園は、住宅地の中に小さなものが数多く分布するという構成をとる。2024年3月に区が区民向けに説明した数字では、区内の公園は335か所で公園数は23区中7番目に多い一方、区民1人当たりの公園面積は約2.25平方メートルで23区中19番目にとどまる。1か所あたりの面積が小さく、公園と住宅の距離が近い。この空間条件が、利用者と近隣住民の摩擦を生みやすい構造をつくっていた。 (参考:聴っくオフ・ミーティング報告書(令和6年3月23日)

摩擦への対応として区が積み上げてきたのが、禁止事項である。みどり公園課の担当者は、騒音、安全確保が難しいボール遊び、ペットの散歩といった声が以前から寄せられ、近隣への配慮のために禁止事項が増えていったと説明する。その結果、幼児用の柔らかいボール以外は一律で使用不可、花火は青少年育成を目的とする団体が占用申請をしない限り不可、自転車の乗り入れは全面的に不可という状態になり、20年にわたって大きな変更のないまま推移していた。 (参考:女子SPA!(前編)公園利用ルールの本実施について(都市環境委員会資料 令和7年2月25日)

見直しの引き金になったのは、団体からの陳情ではなく子どもの一言だったと区は説明している。ある小学生が岸本聡子区長に、夏休みに家族で花火をしたいのにできないと伝えた。区民が自由に使えるはずの公園が自由に使えていない——担当者は、禁止事項が積み重なるほど結局は子どもが我慢させられる結果になっている点に、担当者は歯がゆさを感じていたと振り返り、生活スタイルの変化に合わせてルールを改める必要があると考えたという。 (参考:女子SPA!(前編)

同じ「禁止事項の見直し」でも、喫煙だけは逆方向の課題を抱えていた。担当者によれば、当時ほぼすべての公園で喫煙を認めていたのは23区の中で杉並区だけであり、受動喫煙防止という社会的な流れからは一律禁煙とするほうが自然な選択だった。ただし区は、一律に禁止することは容易でも、守られないルールはそもそも実態に合っていないのではないかという議論を経て、まず利用実態を調べる道を選んでいる。 (参考:女子SPA!(前編)

つまり区が直面していたのは、「禁止が多すぎる項目」と「禁止が足りない項目」が同じ公園の中に同居しているという状況だった。どちらか一方だけを動かせば、緩和にせよ規制強化にせよ、特定の利用者層への肩入れと受け取られる。5項目をまとめて扱う設計は、この構造への対応でもあった。

取り組みのプロセス

1. 対象を「要望の多い5項目」に限定する(2023年度)

区は、公園に関して寄せられる要望のうち頻度の高いものとして、喫煙・犬の連れ込み・ボール等の利用・自転車の乗り入れ・花火の5項目を抽出し、ここに絞って見直しを進めた。公園ルール全体を一から書き直すのではなく、実際に苦情や要望が集中している論点だけを俎上に載せる組み立てである。 (参考:公園利用ルールの本実施について(都市環境委員会資料 令和7年2月25日)

2. 大人と子どもで経路を分けた利用者アンケート(2024年1〜2月)

全体用のアンケートは2024年1月15日から31日まで実施し、区ホームページと区立公園(管理事務所)で周知して288人が回答した。子ども用は1月25日から2月22日まで、児童館を通じて配布し672人が回答した。合計960人のうち、子どもの回答が7割を占めている。 (参考:【試行前】公園利用者アンケート結果

子どもの回答を集めた具体的な方法が、この事例で最も再現しやすい部分である。担当者は、広報紙や区ホームページを子どもはあまり見ないが公園は子どもの居場所としてよく使われる、という前提から、児童館にQRコードを配布して掲示や配布を依頼した。小学生には学校から1人1台の端末が配られているため、その端末から自分で回答できる。既存の児童館ネットワークと学校配備端末を組み合わせただけで、特定の人物や団体に依存しない仕組みであり、区は予想以上の回答が集まったとしている。 (参考:女子SPA!(前編)

3. アンケートで見えた「意外な結果」

項目ごとの最多回答は次のとおりだった。喫煙は「全ての公園でNG」が最多で約5割。犬の連れ込みは現行ルールと最多回答が一致。ボールは現行ルール(乳幼児は可)と最多回答(周囲に配慮すれば可)がほぼ同数。自転車は「乗れる場所を決めてOK」が最多。花火は「少人数で配慮すればOK」が最多である。 (参考:【試行前】公園利用者アンケート結果

区にとって想定外だったのは喫煙の結果だった。担当者は、大多数が一律禁止を選ぶと予想していたが、4割以上が「周囲に配慮し専用のスペースが設けられていれば喫煙してもよい」と回答したことに驚いたと述べている。実際に公園には、営業の合間や交通誘導の仕事を終えて一服する人の姿もある。この結果が、全面禁煙ではなく「分煙施設のある公園は例外」という設計に直結した。 (参考:女子SPA!(前編)

自由記述には、どの項目についても対立する意見が並んだ。喫煙では「喫煙者との共生も考慮されていて居心地がよい」という声と「離れていてもにおいがする」「吸い殻を子どもが拾って口に入れた」という声が、ボールでは「広いスペースがあるのに禁止する意味がわからない」という声と「サッカーをしていた小学生が幼児にぶつかって騒ぎになった」という声が同時に記録されている。 (参考:【試行前】公園利用者アンケート結果

4. 区長と区民37人の対話(2024年3月23日)

区が定期的に開いている「聴っくオフ・ミーティング」(区政を話し合う会)で、「みんなの公園を気持ちよく使うには?」をテーマに区長と区民が直接意見を交換した。参加者は、無作為に抽出した2,000人の区民への案内と一般公募という2つの経路から集まった37名。午前と午後の2回に分け、半円状の車座で全体トークとグループトークを行っている。 (参考:聴っくオフ・ミーティング報告書(令和6年3月23日)

この場で出た意見は、個別ルールの可否にとどまらなかった。「これをしてはいけない」という禁止事項の掲示より「こうしてください」「こうならいいですよ」という伝え方のほうがよい、公園ごとの個性に合ったルールづくりが必要、ルールを話し合うこと自体がまちづくりの第一歩だと気づいた、といった発言が記録されている。喫煙について、他区では禁止されていることを知って驚いたという参加者もいた。区長は、禁止事項の掲示よりも肯定形の伝え方という論点をさらに議論したいと応じている。 (参考:聴っくオフ・ミーティング報告書(令和6年3月23日)

5. 「試行」としての運用開始(2024年7月1日)

区は新ルールを2024年7月1日から試行として運用し、2025年3月までを試行期間とした。担当者は、本採用ではなく試行としたのはその先を見据えてのことだと説明している。周知にあたっては、アンケートで約9割が現地の看板でルールを知ると答えていたことを踏まえ、まず各公園にルールを掲示した。あわせて区ホームページとSNSでも発信したところ、区内在住の著名人の投稿を起点にSNSで急速に広まり、報道につながる循環が生まれた。 (参考:女子SPA!(後編)新しい公園利用ルール|杉並区

花火が解禁されて迎えた最初の週末(2024年7月21日)には、十数か所の公園で家族連れや仲間同士が手持ち花火を楽しむ様子が見られた。ただし定められた時間を過ぎても続ける利用者がおり、区が声をかける場面もあったという。区は今後も花火をする公園の巡回体制を強めていく考えで、8か所については園内で花火をしてよい区画を新たに定めた。 (参考:杉並区の公園が「原則禁煙、花火やボール遊びは条件付きOK」に|東京すくすく

6. 試行中の評価アンケートと本実施(2024年7月〜2025年4月)

試行開始と同時に、2024年7月1日から2025年1月20日まで評価アンケートを実施し、402人が回答した。項目ごとに5段階(良い/少し良い/変わらない・利用しない/少し良くない/良くない)で評価を求め、自由記述も集めている。区はこの結果を2025年2月25日の都市環境委員会に報告し、内容を変更せずに2025年4月からの本実施に移った。周知は広報すぎなみ、区ホームページ、区SNS、現地掲示、小中学校・幼稚園・保育園へのチラシ配布などで行われた。 (参考:【試行中】公園利用者アンケート結果公園利用ルールの本実施について(都市環境委員会資料 令和7年2月25日)

この事例の特徴

緩和と規制強化を一つのパッケージに束ねた

5項目のうち、ボール・自転車・花火は禁止から条件付き可へ緩和され、喫煙は可から不可へ強化された。犬の連れ込みは基本的に不可のまま、例外となる場所が2か所増えただけである。方向が異なる変更を一度に告知することで、「子どものために規制を緩めた」とも「近隣のために規制を強めた」とも読めない構成になっている。担当課は、伝えたかったのは高齢者と子どもの優先順位をめぐる対立の構図ではないという点だとし、なぜこれまで禁止事項が多かったのかを利用者自身に考えてほしいと述べている。 (参考:女子SPA!(後編)公園利用ルールの本実施について(都市環境委員会資料 令和7年2月25日)

判断基準を「守られるかどうか」に置いた

喫煙について区が用いた基準は、望ましいかどうかではなく、実際に守られるかどうかだった。一律禁止は運用上は簡単だが、守られないルールは実態と合っていないという議論を経て、アンケートで確認された「分煙なら容認」という4割超の層を無視しない設計に落とし込んでいる。同じ基準は緩和側にも働いており、一律禁止のまま実質的に黙認されていたボール遊びや自転車の練習を、条件を明示した「条件付き可」に置き換えた。緩和と強化という逆方向の変更が、同じ物差しから導かれている点がこの事例の論理的な芯である。 (参考:女子SPA!(前編)新しい公園利用ルール|杉並区

子どもを「回答者」として制度的に組み込んだ

公園ルールの見直しで子どもの声を聞く取り組み自体は珍しくないが、多くは意見交換会やワークショップという場への参加として設計される。杉並区は調査票の配布経路そのものを大人と子どもで分け、児童館と学校配備端末という既存インフラを使って子ども専用のアンケートを走らせた。結果として子どもの回答数が大人の2倍以上になり、回答者構成が「公園を最も使う層」に近づいている。 (参考:【試行前】公園利用者アンケート結果女子SPA!(前編)

最も評価が割れた項目は、あえて動かさなかった

試行中アンケートで肯定的評価(良い+少し良い)が最も低かったのは犬の連れ込みで、402人中214人(約53%)にとどまり、否定的評価も79人(約20%)と5項目で最多だった。自由記述には「通り抜けくらいは認めてよいのではないか」という緩和要求と「リードを長くした散歩が目につくのですべての公園で禁止してほしい」という強化要求が併記されている。区はこの項目について、試行前アンケートで現行ルールと最多回答が一致していたことを踏まえ、例外となる場所を2か所加えるにとどめた。合意が形成できていない論点を動かさないという判断が、結果として記録に残っている。 (参考:【試行中】公園利用者アンケート結果【試行前】公園利用者アンケート結果

条例改正を伴わない運用ルールとして実施した

一連の変更は、区立公園条例の改正ではなく運用ルールの見直しとして行われた。この選択は、アンケートから約1年3か月で本実施に至るスピードを可能にした一方、規制強化側については法的な裏付けの弱さを残した。区議会議員の堀部やすし氏は、公園利用者に義務や制限を新たに課すのであれば本来は条例上の裏付けが必要だと主張し、豊島区の公園条例が喫煙を禁止行為として明記し違反者への過料規定まで備えているのに対し、杉並区の条例にはそうした定めがないと問題視している。電子たばこの扱いなど、条例上の根拠がないことで生じる線引きの不明確さにも触れている。緩和側は禁止を外すだけなので条例の裏付けを必要としないが、強化側は事情が異なるという非対称性が、この事例では実際の論点として表れている。 (参考:新しい公園利用ルール「喫煙不可」は、杉並区立公園条例にその根拠を設ける必要がある|堀部やすし(杉並区議会議員)

調査時点の成果

試行中の評価は5項目すべてで肯定が否定を上回った

2024年7月から2025年1月までの試行中アンケート(402人回答)で、「良い」「少し良い」を合わせた肯定的評価は、喫煙不可が307人(約76%)、花火が301人(約75%)、自転車が278人(約69%)、ボールが269人(約67%)、犬が214人(約53%)だった。否定的評価(少し良くない+良くない)は自転車が39人(約10%)で最も少なく、犬が79人(約20%)で最も多い。区はこの結果をもって、試行内容を変更せずに本実施へ移行している。 (参考:【試行中】公園利用者アンケート結果

周知の経路が現地掲示中心から多チャネルへ変化した

試行前のアンケートでは、大人の約9割が公園の看板でルールを確認していると答え、子どもは公園の看板と家族・友人からの伝聞が同程度だった。試行中のアンケートでは、保育園や学校からの配布物、公園の看板、広報すぎなみ、区ホームページ、SNSなどに回答が分散し、区は試行後にSNS等の割合が増えたとまとめている。担当者は、区内在住の著名人の投稿を起点にSNSで広まり報道につながったと述べており、ルール変更そのものが認知獲得の機会として機能した。 (参考:【試行中】公園利用者アンケート結果女子SPA!(後編)

手続きの簡略化が具体的に進んだ

花火は、従来は青少年育成を目的とする団体が占用申請をしなければできなかったが、1家族おおむね5人までの少人数利用は届出不要となった。団体利用(1団体30人まで、1公園1日1団体)はオンラインフォームからの届出に切り替えられ、公園占用許可申請そのものが不要になっている。試行中アンケートの自由記述には、団体利用をウェブで申し出でき空き状況がわかりやすかったという評価が記録されている。受付は毎年7月1日午前9時に開始される。 (参考:公園で花火をする場合|杉並区【試行中】公園利用者アンケート結果

新設公園にルールが引き継がれている

花火ができる公園は本実施時点で区内39か所だったが、2026年6月時点で40か所となっている。同時期の2025年8月30日には高円寺南2丁目の旧杉並第八小学校跡地に複合施設「ふらっとすぎはち」内のすぎはち公園が開園しており、一度決めたリストが固定されるのではなく、公園の新設にあわせて見直される運用であることがうかがえる。 (参考:公園で花火をする場合|杉並区施設案内 すぎはち公園|杉並区

運用面の課題も同時に記録されている

試行初週末には時間外に花火をするグループがあり区が注意している。試行中アンケートの自由記述にも、自転車の乗り入れ不可を無視する人が多いという指摘、大人がボールを勢いよく蹴り合う危険な場面への懸念、夜間の花火が住宅街の負担になるという声、公園内の喫煙所も廃止して全面禁煙にしてほしいという要望が並ぶ。条件付き解禁は条件が守られてはじめて成立する仕組みであり、ルールの改定だけでは完結しない性質が結果に表れている。 (参考:【試行中】公園利用者アンケート結果杉並区の公園が「原則禁煙、花火やボール遊びは条件付きOK」に|東京すくすく

なお、公園での手持ち花火の解禁は杉並区固有の動きではない。東京23区では2023年に港区が試行的に解禁して2024年に本格実施し、同年に千代田区・荒川区・杉並区が期間を限って解禁、2025年には大田区・品川区・台東区が加わった。2025年8月時点で、年間を通じて原則認めるのが12区、夏休みに場所と時間を限るのが7区(杉並区を含む)、禁止が4区という分布になっている。杉並区の位置づけは、花火解禁の先駆けというより、花火を含む5項目をまとめて扱った点にある。 (参考:【2025年最新】公園での手持ち花火 東京23区で「解禁」広がるが4区は禁止、7区は夏休み期間だけOK|東京すくすく

他地域への示唆

禁止事項の棚卸しは、緩和と強化を同時に扱うほうが説明しやすい

公園の禁止ルールは、緩和すれば近隣住民から、強化すれば利用者から反発を受ける。杉並区の設計が示すのは、複数項目をまとめて扱えば、個々の変更が対立の勝ち負けではなく「実態に合わせた調整」として提示できるということである。実際、この事例では最も緩和幅が大きい花火と、最も規制が強まった喫煙が同じ告知に並んでいる。単独の論点だけを動かそうとして膠着している自治体にとって、隣接する論点を束ねて一つの改定にするという組み立ては検討に値する。

「守られているか」を調べてから、方向を決める

一律禁止が現場で守られていないなら、それは規制の強度ではなく設計の問題である可能性が高い。杉並区は、喫煙について一律禁止という「正しそうな」選択に飛びつく前に利用実態を調べ、4割超が分煙を条件に容認していることを確認したうえで分煙施設併存という着地点を選んだ。多数派の意見(半数が全面禁煙)だけを見ていれば出てこない設計であり、調査を意思決定の前に置くことの実利がはっきり表れている。

子どもの声は「場」ではなく「経路」を設計すると集まる

子ども参加というと意見交換会やワークショップの開催に向かいがちだが、参加できる子どもの数には限りがある。杉並区は児童館という既存の拠点網と学校配備端末という既存の設備を組み合わせ、二次元コードを配るだけで672人分の回答を得た。新しい組織も予算措置も必要とせず、児童館や学童保育、GIGA端末が整備されている自治体であれば同じ構成を再現できる。ただし杉並区の場合、試行中の評価アンケートの周知は学校・幼稚園・保育園へのチラシ配布などで行われており、意思決定の前段で使った児童館経由の子ども専用チャネルとは異なる設計だったとみられる。意思決定の前段では厚く聞いた子どもの声が、評価段階でも同じ密度で拾われていたかどうかは記録からは判然としない。参加経路の設計は、意見収集段階だけでなく評価段階にも意識して引き継ぐ必要がある。

「試行」という位置づけが、反対意見を含む記録を残す

杉並区は約9か月の試行期間を設け、その間の評価を数値と自由記述の両方で公表した。試行という枠組みは、変更の可逆性を担保して合意形成のハードルを下げると同時に、実施後にしか出てこない課題——時間外の花火、条件を守らないボール遊び、全面禁煙を求める声——を公的な記録として残す。この記録は次の見直しの出発点になるだけでなく、他自治体が同種の施策を検討する際の実データにもなる。本実施の判断根拠を委員会資料として公開している点も含め、追跡可能なプロセスとして設計されている。

規制を強める方向には、条例上の手当てを別途検討する必要がある

禁止を外す方向の変更は運用ルールの改定で足りるが、新たに義務や制限を課す方向は事情が異なる。杉並区の喫煙不可については、条例に根拠がないという指摘が区議会から出ており、実効性の担保という点で論点が残っている。運用ルールでの先行実施はスピードの面で有効な手段だが、規制強化を含むパッケージでは、試行から本実施に移る段階で条例改正の要否を整理しておくことが望ましい。この非対称性は、同様の見直しを検討する自治体が最初に確認すべき点である。

ルールは「終着点」ではなく、利用者が関わる入口になりうる

杉並区の担当課は、本採用ではなく試行としたのはその先を見据えたためであり、公園が居心地のよい場所になれば利用者自身が公園をよくしようという意識が生まれると述べている。区内には約350か所の公園があり、限られた職員だけできめ細かく運営するには限界があるという実務認識が背景にある。聴っくオフ・ミーティングでも、ルールを話し合うこと自体がまちづくりの第一歩だという参加者の発言が記録されている。禁止事項の見直しを、管理の効率化ではなく利用者が公園に関わる入口として位置づける視点は、公園ボランティアや管理の担い手不足に直面する自治体にとって参照価値がある。 (参考:女子SPA!(後編)聴っくオフ・ミーティング報告書(令和6年3月23日)

参照元


2026年8月時点の調査内容に基づいて作成

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