
コミュニティふらっと高円寺南(ふらっとすぎはち)
88年の歴史を持つ杉並第八小学校の校舎を改修し、図書館・コミュニティ施設・公園が一体となった多世代交流拠点として2025年4月にオープンした廃校活用事例
2025年4月、杉並区高円寺南に「コミュニティふらっと高円寺南」がオープンした。愛称は「ふらっとすぎはち」。88年間にわたり地域の子どもたちを育んできた杉並第八小学校の校舎を解体せずに改修し、図書館・コミュニティ施設・保育園・公園が融合した複合施設として生まれ変わった。 (参考:杉並区公式サイト)
施設は地下1階・地上3階建ての建物と約4,700平方メートルの屋外公園で構成される。1階・地下1階にはコミュニティふらっと高円寺南、2階・3階には高円寺図書館が入り、敷地内には高円寺東保育園も併設されている。建物の波打つ屋根は高円寺名物「東京高円寺阿波おどり」の編笠をイメージした意匠で、地域文化への敬意を形にしている。 (参考:すぎなみ学倶楽部)
杉並第八小学校は1932年に東京府豊多摩郡杉並第八尋常高等小学校として創立された。緑豊かな環境の中で88年間にわたり地域の子どもたちを育んできたが、少子化の進行により2009年度に適正配置検討対象校に指定された。高円寺地域の6校による協議を経て、2013年に「高円寺地域における新しい学校づくり計画」を策定。杉並第四小学校、杉並第八小学校、高円寺中学校の3校を統合し、施設一体型の小中一貫教育校を設置する方針が固まった。 (参考:杉並区公式サイト 高円寺学園)
2020年4月、高円寺中学校の敷地内に新設された「高円寺学園」が開校。これに伴い、杉並第八小学校は2020年3月末をもって閉校となった。 (参考:杉並区公式サイト 高円寺学園)
杉並区は閉校と同時期の2020年4月、「旧杉並第八小学校跡地施設の整備等に係る基本計画」を策定した。地域住民との対話を重ね、旧校舎で培われた地域の絆を受け継ぎながら、幅広い世代が出会い交流できる緑豊かな複合施設を目指す方針を掲げた。 (参考:杉並区公式サイト)
既存校舎を解体せず改修活用することで環境負荷を低減し、同時に震災救援所としての防災機能を維持する点が重視された。校舎には地域の記憶が刻まれており、その面影を残すことで住民の愛着を保ちながら新たな価値を生み出す方針が打ち出された。 (参考:杉並区公式サイト)
高円寺地域6校の協議を経て、2013年に新しい学校づくり計画を策定。2020年2月から3月にかけて各校で閉校式が行われ、4月に小中一貫校「高円寺学園」が開校した。杉並第八小学校は同年3月末をもって88年の歴史に幕を閉じた。 (参考:杉並区公式サイト 高円寺学園)
2020年4月に基本計画を策定し、図書館・コミュニティふらっと・保育園・公園の複合施設として整備する方針を決定。既存校舎を活かした改修工事を実施した。 (参考:杉並区公式サイト)
2025年4月1日、コミュニティふらっと高円寺南と高円寺図書館がオープン。同月13日にはオープニングイベントを開催し、阿波踊り公演、日本フィルハーモニー交響楽団による弦楽デュオ、女子美術大学生による似顔絵コーナー、親子向けワークショップなど多彩なプログラムを展開した。 (参考:高円寺経済新聞)
2025年8月30日、すぎはち公園の開園により複合施設「ふらっとすぎはち」が完全体として稼働開始。開園記念イベントとして8月30日・31日に祭りを開催予定。 (参考:杉並区公式サイト すぎはち公園)
杉並区のコミュニティふらっと全8施設に共通する取り組みとして、毎日午後4時から午後9時を「ティーンズタイム」に設定。この時間帯は小中高校生が優先的に自習コーナーを利用できる。小学生は午後5時(夏期は午後6時)、中学生は午後6時(夏期は午後7時)まで利用可能で、予約不要・無料で使える。 (参考:杉並区公式サイト コミュニティふらっと)
また、火曜・水曜・金曜の午後4時以降、中高生が楽器練習室を予約なしで無料利用できる。ドラム、キーボード、アンプが完備された防音室で、周囲を気にせずバンド練習ができる環境は、音楽文化が根付く高円寺ならではの配慮といえる。 (参考:すぎなみ学倶楽部)
高円寺は「東京高円寺阿波おどり」の開催地として全国的に知られている。1957年に「高円寺ばか踊り」として始まったこの祭りは、当初は隣町の阿佐谷七夕祭りに対抗する夏のイベントとして企画された。第1回の観客は2千人だったが、その後成長を続け、現在では毎年約1万人の踊り手と約93万人の観客が訪れる東京の夏の風物詩となっている。 (参考:NPO法人東京高円寺阿波おどり振興協会)
この地域文化を継承するため、地下1階の第2多目的室は天井高を確保し、阿波踊りの練習に最適な空間として設計されている。防音仕様のため、大きな掛け声や鳴り物の音を出すことも可能。定員110名を収容でき、バドミントンなどのスポーツにも対応する。 (参考:すぎなみ学倶楽部)
南側が全面ガラス張りとなった建物は開放感に溢れ、天井高を活かした空間設計が特徴。1階のラウンジでは高円寺図書館が所蔵する新聞や雑誌約120種類を自由に読むことができ、予約不要・無料で気軽に立ち寄れる。3階の一般書コーナーには90席の閲覧席があり、Wi-Fi完備で電源コンセントも利用可能。 (参考:ふらっとすぎはち公式サイト)
旧小学校体育館を改装した屋内球戯場は、中学生以下の子どもが優先的に利用できる施設として整備された。土足禁止でボール遊びができるが、野球バット・ラケット・ゴルフクラブ等の使用や大きく場所を独占しての利用は禁止されている。開場時間は4月〜9月が午前9時〜午後6時、10月〜3月が午前9時〜午後5時。 (参考:杉並区公式サイト すぎはち公園)
校舎を解体せず改修活用することで、新築に比べCO2排出量を大幅に削減した。全国では少子化により毎年約450校の廃校施設が発生しており、文部科学省は2010年から「みんなの廃校プロジェクト」を立ち上げて有効活用を推進している。杉並区の取り組みは、既存建物を活かしながら地域ニーズに応える好例といえる。 (参考:文部科学省 みんなの廃校プロジェクト)
旧小学校が持っていた震災救援所機能を継承している。災害時には広い体育館(屋内球戯場)を避難スペースとして活用し、広いはらっぱでの一時避難も可能。日常的に地域住民が利用する場所であることが、発災時の避難行動にも寄与すると考えられる。 (参考:杉並区公式サイト)
指定管理者制度を導入し、「すぎはち共創グループ」(東急コミュニティー・図書館流通センター・協和産業の共同企業体)が選定された。施設管理、図書館運営、清掃管理を一体的に行う体制を構築している。施設長の栗林英二氏は、家庭でも職場でもない「第三の居場所」として、訪問者がリラックスして楽しめる空間を目指すと語っている。 (参考:高円寺経済新聞)
杉並区は2025年4月現在、区内に8カ所の「コミュニティふらっと」を展開している。高円寺南のほか、阿佐谷、永福、成田、東原、方南、本天沼、馬橋に設置されており、赤ちゃんから高齢者まであらゆる世代が交流し助け合える場として位置づけられている。高円寺南は学校跡地を活用した複合施設という点で、他施設とは異なる特徴を持つ8番目の拠点である。 (参考:杉並区公式サイト コミュニティふらっと)
既存校舎を解体せずに改修活用する手法は、環境負荷の低減とコスト削減の両立を可能にする。校舎には地域の記憶が刻まれており、その面影を残すことで住民の愛着を保ちながら新たな価値を創出できる点は、他地域の廃校活用でも参考になる。
阿波踊りの練習に対応した多目的室、音楽文化を支える楽器練習室など、地域の文化的特性を施設設計に反映させたことで、単なるコミュニティ施設を超えた地域アイデンティティの拠点となっている。廃校活用においては、その地域ならではの文化や活動を支援する機能を組み込むことが有効である。
施設名「ふらっと」には、「気軽に立ち寄れる」と「年齢を問わずフラットに利用できる」という二重の意味が込められている。保育園・図書館・コミュニティ施設・公園を一体整備することで、乳幼児から高齢者まで多様な世代が自然に交差する環境を創出している。複合施設化により世代間の壁を低くする設計思想は、他地域でも応用可能である。
ティーンズタイムの設定や楽器練習室の無料開放など、中高生を積極的に受け入れる仕組みを構築している点が特徴的である。学校でも家でもない「サードプレース」として機能することで、若い世代の地域への帰属意識を育む効果が期待できる。
2026年3月時点の調査内容に基づいて作成
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