
福山城NEXT400事業
この記事は、my grooveを運営する株式会社Groove DesignsがAIを活用し独自に調査・作成したものです。
広島県福山市が、築城400年記念事業「令和の大普請」の話題性を一過性で終わらせないため、2023年度から官民組織FVAを中心にナイトタイムエコノミーを軸とした通年プログラムを展開し、旗艦イベント「カツナリ・デ・ナイト」や城泊・陣幕パーティーなど有料コンテンツを育ててきた事業。
福山城NEXT400事業は、2022年の築城400年を機に福山市が実施した記念事業「令和の大普請」の成果を一過性のブームで終わらせず、福山城を核とした賑わいを継続的に生み出すために2023年度から始まった取り組みである。柱に据えたのは「ナイトタイムエコノミー」で、初代藩主・水野勝成をテーマにした年間イベント「カツナリ・デ・ナイト」を中心に、月替わりで花見・音楽祭・夜店・茶会などを実施するほか、城泊(キャッスルステイ)や陣幕を使った貸切パーティーといった有料の観光コンテンツも展開している。 (参考:福山市「福山城築城400年記念事業について」(2023年2月16日資料))
事業の実施体制は、福山観光コンベンション協会・福山商工会議所・福山市の3者が共同で組織した「福山ビジットアソシエーション(FVA)」が事業全体を統括する立場を担い、実際のイベント企画・運営は毎年度プロポーザル方式で選定した民間事業者に委ねる形をとっている。2026年時点でも複数年契約でこの枠組みが継続しており、名称としては当初の「NEXT400」から「カツナリ・デ・ナイト」がより前面に出る形でブランドが変化しつつも、月替わりの通年プログラムと官民連携の運営体制という基本構造は維持されている。 (参考:広報ふくやま2023年8月特集「新しい福山城をもっと楽しもう!」、福山市「福山城築城400年記念事業について」(2023年2月16日資料))
福山城は2017年度から2022年度にかけて「令和の大普請」と名付けられた5か年の築城400年記念事業を実施し、天守北面(1〜4階部分)の鉄板張り復元や福山城博物館の全面リニューアルなどを行った。事業費は約33億円で、このうちふるさと納税等による寄附が11億8千万円以上(個人約8,100人、団体・企業約260)に達し、市民・企業の関心を集める記念事業として大きな注目を得た。市内での認知度は2017年度の25.5%から2022年度には77.6%へ、首都圏での認知度も7.3%から19.4%へ上昇し、テレビ放送時間も2020年の17分から2022年には336分に拡大するなど、記念事業単体としては高い効果を上げた。 (参考:福山市「福山城築城400年記念事業について」(2023年2月16日資料))
見方を変えれば、この盛り上がりは「築城400年」という一度きりの節目と、天守のリニューアルという工事完了のタイミングによるものであり、記念事業が終了する2022年度末以降、来訪意欲やメディア露出が自然に落ち込むリスクを抱えていた。福山市自身、2023年2月の庁内資料で「にぎわいの継続」を今後の課題として明記しており、これまで昼間の観光・見学が中心だった福山城の使われ方を、夜間も含めて多様化させることで、一時的な話題性を継続的な来訪・宿泊・消費行動に転換する必要があるという認識が、NEXT400事業の出発点になっている。 (参考:福山市「福山城築城400年記念事業について」(2023年2月16日資料))
1. 「にぎわいの継続」を掲げた移行方針の策定
福山市は令和の大普請が完了する前の2023年2月、事業総括と並行して「NEXT400年〜にぎわいの継続に向けて〜」と題した方針を庁内で共有した。この段階で、福山城の活用軸を「ナイトタイムエコノミー」に定め、月ごとにテーマを割り振った通年プログラム(例:2月刀剣特別展、3〜4月花見、5月音楽祭、6月毎週土曜の夜店、7月ジャズナイト、8月築城記念イベント、9月茶会、10月月見能、通年でのナイトキャッスル演劇)を組む方向性を打ち出した。記念事業が終わる年度末を待たず、次のフェーズの設計に着手した点が特徴である。 (参考:福山市「福山城築城400年記念事業について」(2023年2月16日資料))
2. 官民混成組織「福山ビジットアソシエーション(FVA)」による運営
観光協会・商工会議所・市の三者連携組織であるFVAを事業の実施主体に位置づけ、FVAが月ごとのテーマに応じたイベントの企画・運営事業者をプロポーザル方式で公募・選定し、民間事業者による開催を支援する体制とした。2023年度は「NEXT400福山城魅力創出イベント2023(仮称)」として公募が行われ、5社の提案の中から株式会社第一エージェンシーが選定されている。2026年度分のプロポーザルでは名称が「カツナリ・デ・ナイト〜福山城魅力創出イベント〜」に変わり、契約期間も2027年3月31日までとする複数年の枠組みで継続している。 (参考:福山観光コンベンション協会「NEXT400福山城魅力創出イベント2023プロポーザル実施結果」、福山観光コンベンション協会「カツナリ・デ・ナイト〜福山城魅力創出イベント〜プロポーザル実施について」)
3. 旗艦イベント「カツナリ・デ・ナイト」の年次開催
初代福山藩主・水野勝成をテーマにした「カツナリ・デ・ナイト」は、福山城の築城記念日(8月28日前後)に合わせて毎年開催される旗艦イベントに育っている。1620年代の城下町を再現した「町人町マルシェ」、能・太鼓・琴などの伝統芸能ステージ、普段非公開の伏見櫓の特別公開などを組み合わせ、2023年は200個限定で用意されたランタンの一斉リリースを演出のクライマックスに据え、2025年(3年目)には300機規模のドローンショーを目玉に切り替えるなど、年ごとに演出を更新しながら継続している。 (参考:note「8月26日『カツナリ・デ・ナイト』レポート」、note「8月23日『カツナリ・デ・ナイト』16,000人が来場」、note「福山城×ドローンショー」)
4. 有料コンテンツの段階的な整備
無料の集客イベントと並行して、収益化を意識した有料コンテンツを段階的に積み上げてきた。2023年度には天守での没入型演劇「福山ナイトキャッスル〜鬼日向の城〜」を開始し、月1回程度(全12回)、定員25名・料金6,000円(一般)で通年運営した。天守最上階の「天空の間」は博物館閉館後にMICEやイベント向けに貸し出す方針を2023年2月にまとめ、同年5月から予約受付を開始した。福山城公園の広場を、両家(水野家・阿部家)の家紋入り陣幕やかがり火で装飾して貸し切る「陣幕パーティー」も、400年記念事業で復元した陣幕を活用した商品として提供している。 (参考:福山観光コンベンション協会「福山城陣幕パーティー」、中国新聞デジタル「福山城でいざパーティー」)
5. 城全体を舞台にした宿泊体験「キャッスルステイ」の事業化
2022年10月に実施した「キャッスルステイ(城泊)」の実証実験では、単独施設ではなく天守・櫓・御湯殿を含む福山城全体を会場としたことや、御湯殿での能鑑賞、伏見櫓の特別見学が高く評価された一方、案内役の知見不足や入浴設備の欠如といった課題も明らかになった。この結果を踏まえて運営方法や法令対応の検討が進められ、2025年2月には民間事業者(VMG HOTELS & UNIQUE VENUES)による専用サイトが開設され、「一日城主」として瀬戸内の食や伝統文化体験、周辺観光を組み合わせた宿泊商品として本格運用されている。 (参考:福山市「福山城築城400年記念事業について」(2023年2月16日資料)、福山市「福山城天空の間」、福山城キャッスルステイ公式サイト)
6. 通年プログラムの継続と更新
その後も、「日本一早い豆まき」と称する「福まき」(2024年1月)、日本酒祭り(2024年10月、広島の酒蔵8蔵が参加)、没入型演劇「福山ナイトキャッスル」(2026年1月、全18回で延べ320名)、地域の茶道流派(表千家・裏千家・上田宗箇流)と連携した「福山城御茶之席〜廃藩の記憶を辿る〜」(2026年2月、104名)など、月替わりテーマに沿ったプログラムが年度をまたいで更新され続けている。 (参考:note「日本一早い豆まき『福まき』」、福山観光コンベンション協会「福山城 酒肴祭」、note「2026年1・2月イベントレポート」)
節目イベントの「翌年」を節目の最中から設計したこと
多くの自治体は周年記念事業そのものの企画には力を入れるが、記念事業終了後の失速は事後的な課題として扱われがちである。福山市は令和の大普請が完了する前年度末(2023年2月)の段階で、既に「にぎわいの継続」を課題として明文化し、次年度以降の月別プログラムまで具体化していた。記念事業の「打ち上げ花火」と、その後の「日常化」を同じ検討プロセスの中で計画した点は、他の周年事業を抱える自治体にとって再現しやすい実務上の工夫といえる。
「誰が年間計画を持つか」と「誰が個別イベントを実行するか」を分離したガバナンス
FVAという官民混成の常設組織が年間の月別テーマとブランド(水野勝成、NEXT400/カツナリ・デ・ナイトという世界観)を一貫して保持し、個々のイベントの実施は毎年度プロポーザルで選ばれる民間事業者に委ねるという二層構造をとっている。これにより、市が大規模なイベント制作機能を自前で持たなくても、複数年にわたり内容を更新しながら物語やブランドの一貫性を保つことができる。単発の民間委託とは異なり、委託事業者が変わっても事業の背骨(テーマ設計・広報・ブランド)が途切れない設計になっている点が特徴である。
無料イベントから有料の高単価コンテンツまでを段階的に用意したこと
多くのナイトタイムエコノミー施策はライトアップや無料イベントによる来訪者数の増加にとどまりがちだが、福山城NEXT400事業は「無料の年次フェスティバル(カツナリ・デ・ナイト)」「有料の没入型演劇(1名6,000円)」「個人・小人数向けの特別室貸切(天空の間、1回35,000円)」「大人数向けの広場貸切(陣幕パーティー、50名で335,000円)」「宿泊を伴う城泊」という価格帯の異なる複数商品を積み上げ、来訪者の動機や予算に応じた選択肢を用意している点が独自性である。 (参考:福山市「福山城天空の間」、福山観光コンベンション協会「福山城陣幕パーティー」)
復元した文化財そのものを収益商品の素材にしたこと
陣幕パーティーで使用する水野家・阿部家の家紋入り陣幕は、令和の大普請の一環で復元されたものであり、記念事業のための「見せる」投資が、そのままMICE向けの「貸す」商品の素材としても機能している。文化財の復元・保存投資を、来訪促進の効果だけでなく、収益を伴う利活用商品の原資としても位置づけている点は、単なる観光PRにとどまらない工夫である。
旗艦イベントの動員数は年々拡大している
カツナリ・デ・ナイトの来場者数は、2023年の約11,000人から2025年(3年目)には約16,000人に増加した。演出内容をランタンリリースからドローンショーへ更新するなど、毎年コンテンツを見直しながら動員を伸ばしている点は、単発の記念イベントではなく継続的な集客装置として機能しつつあることを示している。 (参考:note「8月23日『カツナリ・デ・ナイト』16,000人が来場」)
通年プログラムが複数年にわたり運用され続けている
没入型演劇「福山ナイトキャッスル」は2023年4月の開始から約3年間にわたり、通算18回・延べ320名を集めて2026年1月の公演で千秋楽を迎えた。単発の実証にとどまらず複数年度にわたって運営が続いた一方、月1回程度で通年運営した初年度と比べると2年目以降は開催頻度が大きく絞られており、その後は旗艦イベントである「カツナリ・デ・ナイト」など他の通年プログラムに軸足が移っていったとみられる。運営プロポーザル自体は2027年3月までの複数年契約に更新されており、FVAによる運営体制そのものは継続している。 (参考:note「2026年1・2月イベントレポート」、福山観光コンベンション協会「カツナリ・デ・ナイト〜福山城魅力創出イベント〜プロポーザル実施について」)
高単価のMICE商品は立ち上がりに時間を要している
一方で、陣幕パーティーのように客単価の高いユニークベニュー商品は、予約受付を本格化させた2024年度の利用実績が2件にとどまり、福山観光コンベンション協会は2025年5月開催の世界バラ会議福山大会という具体的な需要創出機会に合わせて、利用を後押しする助成制度を新設している。無料イベントが順調に集客を伸ばす一方で、高単価のMICE利用は自然増を待つだけでは進みにくく、外部の大規模需要(コンベンション等)と組み合わせた誘導策が必要になっている実態が読み取れる。 (参考:中国新聞デジタル「福山城でいざパーティー 陣幕やかがり火で趣深く」、中国新聞デジタル「福山城でのパーティーに助成制度新設」)
宿泊商品は実証実験を経て民間事業として自立した
2022年10月の実証実験段階では案内役の知見不足や入浴設備の欠如といった課題が指摘されていたキャッスルステイは、2025年2月に民間事業者による専用サイトが開設され、通年予約可能な商品として独立した運営に移行した。行政主導の実証から、課題を踏まえた改善を経て民間事業として自走する段階に至った事例として位置づけられる。 (参考:福山城キャッスルステイ公式サイト)
周年事業の「終了後」を、事業期間中に既に計画しておく
築城・開港・市制施行など、周年を機に大規模な記念事業を実施する自治体は多いが、その効果はしばしば記念事業の終了とともに減衰する。福山市の事例は、記念事業が終わる年度の途中で既に次フェーズの体制・プログラム・ブランドを具体化していた点が参考になる。周年事業を単年度・単発の打ち上げで終わらせず、事業計画の最初の段階から「終了翌年度に何を残すか」を設計しておくことは、他の自治体でも属人性に依存せず再現可能な進め方である。
常設の運営母体と、入れ替わる実行事業者を分ける
FVAのように行政・商工会議所・観光協会が共同で担う常設組織が年間テーマとブランドを保持し、個々のイベント実行は毎年度の公募で選ばれる民間事業者に委ねるという役割分担は、単一の観光資源を長期的に育てたい他の自治体にも応用できる。特定の企業や個人の力量に依存せず、担い手が入れ替わっても事業の一貫性を保てる点で、持続可能性の高い運営モデルといえる。
無料イベントと有料商品を同じ資産の上に多層的に設計する
福山城NEXT400事業は、無料の年次フェスティバルで幅広い来訪者を集めつつ、その同じ資産(城郭・史跡・復元された調度品)を使って、演劇鑑賞・貸切利用・宿泊という異なる価格帯の商品を並行して用意している。一つの歴史的資産の活用を「集客(無料イベント)」と「収益化(有料商品)」に機能分担して設計する発想は、天守や城下町、歴史的建造物を抱える他の自治体にも応用可能である。ただし、陣幕パーティーの立ち上がりの鈍さが示すように、高単価商品は単独では需要が生まれにくく、コンベンションや広域からの集客イベントと組み合わせて需要を作り出す設計が併せて必要になる点も、他地域が計画段階で織り込むべき教訓である。
2026年9月時点の調査内容に基づいて作成
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