
iti SETOUCHI(旧そごう・エフピコRiM跡地再生)
この記事は、my grooveを運営する株式会社Groove DesignsがAIを活用し独自に調査・作成したものです。
広島県福山市は、2000年閉店の旧そごう福山店(後のエフピコRiM)の1階部分を地場電気設備企業・福山電業が7年の定期借家契約で借り受け、「屋根のある公園」をコンセプトに再生。全面改修でも解体でもない部分再生の手法で2023年度グッドデザイン賞ベスト100に選出された。
福山市の中心市街地、福山駅前に立つ地上9階・地下2階の複合ビル「エフピコRiM」。かつて中四国最大級の売場面積を誇った百貨店「福山そごう」が入居していたこの建物の1階部分が、2022年9月30日に「iti SETOUCHI(イチ セトウチ)」として生まれ変わった。運営を担うのは福山市の地元電気設備企業・福山電業株式会社で、市が所有する建物を7年間の定期借家契約で借り受け、フードビレッジ、マーケットストリート、ワークストリート、DIYスタジオ、イベントスペースの5エリアと、床面積の半分前後を占める広大なパブリックスペースを組み合わせた複合施設として整備した。 (参考:Real Publishing Estate、HOME'S PRESS)
「屋根のある公園」「都市の中の小さなまち」を掲げるこの施設は、9フロアのうち1階のみを対象とした部分的な改修と、商業テナントの賃料収入だけに依存しないプログラム構成が評価され、2023年度グッドデザイン賞の「ベスト100」に選出されている。 (参考:福山市公式サイト)
エフピコRiMの建物は1992年、地下2階・地上9階、売場面積約3万4400平方メートルの百貨店「福山そごう」として開業した。中四国有数の規模を誇ったが、バブル崩壊後の集客不振から経営が悪化し、そごうグループの経営破綻に伴い2000年に閉店した。 (参考:Real Publishing Estate)
閉店後、市がこの土地と建物の所有権を引き継ぎ、民間事業者への貸与を通じて再生を図る方針を選んだ。2003年に天満屋グループが10年契約で運営を引き継ぎ「福山ロッツ」として営業したが、契約更新のタイミングとなった2013年に撤退。入れ替わりでヤマト情報サービスが「リム・フクヤマ」の名で運営を始め、地元企業エフピコが命名権を取得したことで呼称は「エフピコRiM」となった。それでも建物の老朽化は解消されず、2020年8月にヤマト情報サービスも運営から手を引いている。約20年の間に3度の運営者交代・撤退を経験したことになる。 (参考:Real Publishing Estate、HOME'S PRESS)
大型商業施設の再閉館を前に、福山市は建物の今後の扱いという難しい判断を迫られた。市の試算では、全館の営業を継続するために必要な設備改修費は約65億円、建物を解体・撤去する場合の費用は約30億円にのぼるとされた。これに対し市が選んだのは、外壁撤去などを中心とした部分改修による「速度重視の再生」であり、市の負担額は約2億6千万円に抑えられた。 (参考:Real Publishing Estate)
この方針のもと、市は2020年に建物1階部分のみを対象とした運営事業者の公募を実施した。公募条件には「床面積の5〜7割をパブリックスペースとすること」という、通常の商業施設誘致では例のない厳しい要件が課された。全国的にも大型商業施設の空洞化・遊休化が課題となる中、収益の見通しにくいこの条件に応じたのは、電気設備を本業とする地元企業・福山電業だった。同社は2021年、本業とは別のまちづくり事業として本事業への参入を決め、運営事業者に選定された。 (参考:Citylab Tokyo、Real Publishing Estate)
1. 事業者選定と設計コンセプトの策定
2020年の公募を経て福山電業が選定された後、設計監修には建築家・馬場正尊氏が率いるOpen A、DIY工房部分の設計にはVUILDが参画した。設計チームは全面的な新築同然の改装ではなく、既存のエスカレーターや内装仕上げをそのまま生かしつつ、1階部分の外壁を撤去して屋内外を連続させる再生手法を採用した。エスカレーターの吹き抜けを自然換気に活用し、機械空調への依存を抑える工夫も取り入れている。 (参考:Open A)
2. プレイベントによる段階的な公開
正式開業に先立つ2022年4月30日、「Under Construction」と題したプレイベントを開催した。工事途中の建物をあえて公開し、木工ワークショップや飲食・物販マーケットを実施することで、施設が完成形ではなく「まちとともに育っていく」ものであることを来街者に体感してもらう機会とした。 (参考:福山市公式サイト)
3. 正式開業と施設構成
2022年9月30日、iti SETOUCHIは正式に開業した。施設は飲食店舗が集まる「フードビレッジ」、物販店舗が並ぶ「マーケットストリート」、コワーキング・シェアオフィス機能を持つ「ワークストリート」、木工加工機(CNCルーター等)を備えた「DIYスタジオ」、多目的に使えるイベントスペース「ケージ」の5エリアで構成される。店舗と店舗の間を、滞在・交流のためのリビングのような空間が埋める配置とし、床面積の半分前後を賃料の発生しないパブリックスペースとした。 (参考:Real Publishing Estate、福山市公式サイト)
4. 運営体制と地域産業との接点づくり
支配人には商業施設運営の経験を持たない人材があたり、支配人を務める谷口博輝氏は以前福山市役所に勤務していた経歴を持つ。館内の什器・家具の一部には、鉄鋼や繊維など福山を支えてきた地場産業の現場で使われていた機材を転用したものが採り入れられており、地域産業とのつながりを感じさせる空間となっている。 (参考:Citylab Tokyo)
1. リスクを限定する賃貸借スキーム
市は建物の所有権を維持したまま、7年間の定期借家契約で1階部分を福山電業に貸し出した。賃料水準は周辺地価に準じる一方、公募条件で定めたパブリックスペース部分については賃料を免除し、その維持管理費用は事業者側の負担とする仕組みとした。あわせて隣接する市営駐車場も一体で貸し付け、その収入を事業者が得られるようにすることで、収益性の低いパブリックスペース運営を補う設計となっている。 (参考:Real Publishing Estate)
2. 全面改修でも解体でもない「部分再生」という選択肢
老朽化した大型商業施設の扱いに悩む自治体の多くは、「多額の費用をかけて全面改修する」か「解体して更地に戻す」かの二択に直面しやすい。福山市はこれに対し、9階建てのうち1階のみに改修範囲を絞り込むことで、市の負担額を全面改修の想定額の20分の1以下、解体費用の10分の1以下にあたる約2億6千万円に圧縮した。低リスクで再生に着手できる第三の選択肢を具体的な費用感とともに示した点は、同様の課題を抱える他自治体にとっても参考になる。 (参考:Real Publishing Estate)
3. 「常に未完成」という運営思想
iti SETOUCHIは施設を完成品として提供するのではなく、「常に未完成で、まちとともに成長していく」ことを運営の基本姿勢に据えている。DIYスタジオでの木工ワークショップや、開業前に工事現場そのものを公開したプレイベントなど、利用者自身が空間づくりに関与できる仕掛けを継続的に用意し、施設側が一方的に提供する場ではなく利用者とともに更新され続ける場であることを志向している。 (参考:Real Publishing Estate)
4. 商業収益に依存しないプログラム設計
一般的な商業施設が売場効率とテナント賃料収入の最大化を目指すのに対し、iti SETOUCHIは床面積の半分前後を非収益のパブリックスペースに割り当てている。グッドデザイン賞の選考でも「商業に依存しないプログラム」であることが評価点の一つとされており、集客装置としての商業機能と、滞在・交流の場としての公共的機能を両立させる設計思想が独自性となっている。 (参考:福山市公式サイト)
iti SETOUCHIは2023年度グッドデザイン賞において、選出作品の中からさらに絞り込まれる「グッドデザイン・ベスト100」に選ばれた。審査では、9フロアあるうち手を加えたのは1階だけだった点、コストを抑えつつ効果を最大化した改修の工夫、商業一辺倒にならない場づくりといった要素が、閉店百貨店の再生に悩む全国の自治体への一つの回答として評価を受けた。 (参考:福山市公式サイト)
運営面では、2024年7月時点の報道で、テナントスペース・レンタルオフィスともに満床状態にあることが確認されている。約20年間で複数の商業施設が入れ替わり撤退を繰り返してきた建物において、稼働率の面で一定の実績を示せている点は、遊休不動産の再生手法として実務的な成果といえる。 (参考:HOME'S PRESS)
なお、福山電業による建物の借受契約は7年間とされており、市はこの期間の運営実績・利用実態を踏まえて、契約満了後の建物の扱い(契約延長、再投資、売却等)を改めて判断する方針である。現時点では建物の恒久的な活用方針が確定しているわけではなく、あくまで期間を区切った実証的な取り組みという位置づけである点には留意が必要である。 (参考:Real Publishing Estate)
第一に、大型商業施設の閉鎖・空洞化という全国共通の課題に対し、「全面改修」か「解体」かの二択にとどまらない「部分再生」という選択肢を、具体的な費用比較とともに提示した点に価値がある。改修範囲をフロア単位に限定することで自治体の初期負担を大幅に抑えつつ再生に着手できることを、他の自治体が費用対効果を検討する際の材料として示している。
第二に、公募条件でパブリックスペースの比率を明示的に定め、その分の賃料を免除する一方で維持管理は事業者負担とする契約設計は、自治体が保有資産を民間に開放する際のリスク分担のモデルとして再現性がある。収益性の低い公共的空間の運営を、駐車場収入など周辺資産の組み合わせで補う発想は、同様の遊休不動産を抱える他の自治体でも応用可能な仕組みである。
第三に、外部の大手デベロッパーではなく、電気設備という異業種の地元企業が事業主体となった点は、地域に根ざした企業がまちづくり分野に参入する一つの経路を示している。ただし、この事業への参入判断の背景には、当該企業が新規事業として相応の投資判断を行ったという個別の経緯があり、同様の担い手が他地域で必ず現れるとは限らない。地場企業の参入を促すためには、自治体側の公募条件や賃料インセンティブなど支援スキームの設計が、担い手を確保する上での重要な要素になると考えられる。
2026年9月時点の調査内容に基づいて作成
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