
リノベーションスクール@福山
この記事は、my grooveを運営する株式会社Groove DesignsがAIを活用し独自に調査・作成したものです。
福山市が2018〜2020年に計4回開催した実践型まちづくりスクール。市内外の受講生延べ87名が伏見町の遊休不動産を題材に事業プランを練り、2年間で新規事業約20件・まちづくり会社3件設立・地価9%上昇という成果につながった官民連携の人材育成プログラム。
「リノベーションスクール@福山」は、福山市が主催し株式会社リノベリングが企画・運営した実践型のまちづくり人材育成プログラムである。2018年2月の第1回から2020年2月の第4回まで4回にわたって開催され、福山市内外から延べ87名が受講した。受講生は7〜8名程度の「ユニット」を組み、福山駅前・伏見町エリアに実在する遊休不動産を題材として、その物件を核にエリア全体の価値を高める事業プランを3日間で練り上げ、最終日には物件オーナーや地域住民を前に公開プレゼンテーションを行う形式で実施された。 (参考:官民連携による福山市の取組み(内閣府都市再生有識者懇談会資料)、過去のリノベーションスクール概要(福山市公式サイト))
スクールは、2017年3月に発足した「福山駅前再生協議会」や2018年3月策定の「福山駅前再生ビジョン」が掲げる官民連携によるまちづくりの中核施策の一つとして位置づけられた。修了生が実際に空きビルをリノベーションして開業する事例が相次ぎ、2018〜2020年の間に伏見町エリアで約20件の新規事業が生まれ、うち7件がスクール発の事業だった。まちづくり会社の設立も3件にのぼり、同エリアの地価は9%上昇するなど、人材育成プログラムが実際の不動産投資・事業創出に結びついた事例として位置づけられる。 (参考:官民連携による福山市の取組み(内閣府都市再生有識者懇談会資料))
福山駅前東側に位置する伏見町は、かつて繊維卸問屋街として栄えたが、郊外への大型商業施設の進出などにより商業機能が失われていった。再開発計画は1973年の「福山市伏見町元町地区再開発基本計画」以降、長期にわたり検討されてきたが、バブル崩壊やそごうの経営破綻などを背景にことごとく頓挫し、古い建物が数多く残る一方で人口減少が進み、2014年時点でエリアの人口はわずか101人にまで落ち込んでいた。 (参考:福山市伏見町の歴史的変遷について(レファレンス協同データベース)、福山市伏見町のリノベーションによる街づくり(LIFULL HOME'S PRESS))
福山市は2017年3月、産学金官民で構成する「福山駅前再生協議会」を発足させ、同年7月の駅前再生手法説明会(参加187人)、9月のリノベーションまちづくりアクションミーティング(参加131人)を経て、翌2018年3月に「働く・住む・にぎわい」が一体となった駅前の実現を掲げる「福山駅前再生ビジョン」を策定、地方再生のモデル都市に指定された。従来型の区画整理や再開発事業による全面的な建て替えではなく、老朽化しつつも残存する建物ストックを生かしながら民間投資を呼び込む「リノベーションまちづくり」の手法が採用され、その担い手を育成・発掘する装置として2018年2月に第1回リノベーションスクールが開催された。 (参考:官民連携による福山市の取組み(内閣府都市再生有識者懇談会資料)、これまでの取組み(福山市公式サイト)、福山市の取組み(UR都市機構))
第1回(2018年2月2日〜4日、コワーキングスペースHa-Lappa)は定員32名で受講生を募集し、スクールマスターに嶋田洋平氏、ユニットマスターに大島芳彦氏・明石卓巳氏・本郷紘一氏・瀬川翠氏ら全国のリノベーションまちづくりを牽引する講師陣を招いた。第2回(同年8月24日〜26日、伏見町・福山駅前〜中央公園エリア)、第3回(2019年1月25日〜27日、Ha-Lappa、定員24名)、第4回(2020年2月14日〜16日、フロリダホール)と回を重ね、4回累計で87名が受講した。 (参考:「リノベーションスクール@福山」の受講生を募集します!(NEWS CAST)、第2回リノベーションスクール@福山(チェック社長の鞆・福山活性化ブログ)、第3回リノベーションスクール@福山(リノベリング note)、【経済学科】第3回RENOVATION SCHOOL@福山に学生がサポートメンバーとして参加!(福山大学)、福山で行われるリノベーションスクールに参加しませんか?(SMOUT)、官民連携による福山市の取組み(内閣府都市再生有識者懇談会資料))
毎回、不動産オーナーから提供された伏見町周辺の遊休不動産を題材に、複数のユニットを編成した。3日間の日程でまち歩きや対象物件の見学、ショートプレゼンでの講評を経ながら事業計画を練り上げ、最終日には地域住民や物件オーナーに向けた公開プレゼンテーションを行った。第2回では「敷地に価値なし、エリアに価値あり」というテーマを掲げ、物件単体ではなくエリア全体での活用を検討する視点が強調された。 (参考:第2回リノベーションスクール@福山(チェック社長の鞆・福山活性化ブログ))
2017年12月に福山市から要請を受けたUR都市機構は伏見町地区に関与し、URが土地を取得したうえで地元企業がビルを買い取ってリノベーション・運営を行うという、全国初とされる方式を導入した。あわせて広島銀行は「福山駅前再生ビジョン提携融資制度『にぎわい』」を創設し、スクール修了生による事業化第1号となった「池口精肉店」(開業当初の屋号は肉バル「IKEGUCHI MEAT PUBLIC HOUSE」、2018年12月開業)はこの融資制度を活用し、建築から半世紀以上が経過した空きビルを改修した。 (参考:福山市伏見町(UR都市機構)、【URのまちづくり最前線 第14回】まちリプ@福山(UR都市機構)、福山市伏見町のリノベーションによる街づくり(LIFULL HOME'S PRESS)、官民連携による福山市の取組み(内閣府都市再生有識者懇談会資料))
2021年1月には、商店街やまちづくり会社で活躍するプレーヤーとリノベーションスクール受講生を構成メンバーとする「中心市街地ネットワーク」が発足した。新規出店を希望する人からの相談に随時対応するほか、定例の会議運営やにぎわい創出イベントの実施、勉強会・講演会の開催などを通じ、中心市街地で創業しようとする人材を継続的に支援する仕組みとして整備された。 (参考:官民連携による福山市の取組み(内閣府都市再生有識者懇談会資料))
多くの空き物件対策が個別の物件単位での改修支援にとどまりがちな中、本事例では毎回の受講生に複数物件を並行して扱わせ、エリア全体の回遊性やにぎわいを前提とした事業プランを求めた点が特徴である。単発の店舗誘致ではなく、限られたエリア内に複数の担い手を同時多発的に生み出すことを狙った設計だといえる。 (参考:第2回リノベーションスクール@福山(チェック社長の鞆・福山活性化ブログ))
リノベーションスクールという「人材・アイデア」創出の場だけでなく、UR都市機構による土地取得スキームや地域金融機関の提携融資制度という「不動産・資金」側の環境整備を同時並行で進めた点が特徴である。産学金官民で構成する福山駅前再生協議会や、その後継となる福山駅前デザイン会議には金融機関やUR都市機構自身も継続的に参加しており、単発の人材育成イベントで終わらせない体制が構築された。 (参考:官民連携による福山市の取組み(内閣府都市再生有識者懇談会資料))
2018年2月から2020年2月にかけて開催された4回のスクールで、延べ87名が受講した。伏見町エリアで実施されたリノベーション事業の件数は2018年2件、2019年9件、2020年9件(工事中を含む)と積み上がり、2020年12月時点の累計は約20件に達し、うちスクール関連事業は7件だった。 (参考:官民連携による福山市の取組み(内閣府都市再生有識者懇談会資料))
福山市の資料によれば、スクールを起点にまちづくり会社が3件設立されたほか、伏見町の地価は2018年度(平成30年度)の1㎡あたり485千円から2020年度(令和2年度)には530千円へと約9%上昇した。 (参考:リノベーションまちづくり(福山市公式サイト資料)、官民連携による福山市の取組み(内閣府都市再生有識者懇談会資料))
スクール修了生による事業化第1号は、築50年以上の空きビルを活用した肉バル「IKEGUCHI MEAT PUBLIC HOUSE」(2018年12月開業、上階はゲストハウス「AREA INN FUSHIMICHO」)で、2020年8月には社会情勢の変化に対応する形で精肉・弁当惣菜のテイクアウトを中心とする「池口精肉店」へと業態転換し、2023年3月には焼肉店「焼肉いけぐち」へ再度業態転換している。このほか、貸ギャラリー「ギャラリー フクヤマツイスト」、衣料品サービス店「ロウエン-ROEN」、醸造所・酒屋・八百屋・シェアスペースを兼ねる「WATERING HOLE/F」、シェアキッチンを備えた「Little Setouchi」など、飲食・宿泊・小売にまたがる多様な業態の店舗が伏見町エリアに開業した。 (参考:官民連携による福山市の取組み(内閣府都市再生有識者懇談会資料)、動き出した福山のリノベーションまちづくり(NEWS CAST)、「焼肉いけぐち」リニューアルオープンのお知らせ(池口精肉店公式サイト))
座学中心の人材育成プログラムと異なり、受講期間中から不動産オーナーが提供する実在物件を題材とすることで、修了後の事業化までの距離を縮めている。伏見町では2年間で生まれた新規事業約20件のうち7件がスクール発という実績があり、遊休不動産と担い手候補が共に存在する中心市街地であれば、他地域でも再現可能性の高い手法といえる。
リノベーションスクールという一過性の人材発掘機会を、2021年発足の「中心市街地ネットワーク」という継続的な相談・支援の場につなげた点は、他地域でも参考になる。人材育成プログラムを単発のイベントで終わらせず、修了後の事業化・定着を支える受け皿まで含めて設計する視点が重要である。
リノベーションスクールという「人材・アイデア」の創出装置だけを取り出して模倣するのではなく、土地取得スキームや地域金融機関の提携融資制度といった「資金・不動産」側のハードルを下げる仕組みとあわせて検討することが、他地域における事業化率を左右する要因になり得る。単発の人材育成イベントを企画するだけでなく、金融機関やUR都市機構のような不動産取得の実務を担える組織を官民連携の枠組みに継続的に参加させる体制づくりが、再現性を高める鍵となる。
2026年9月時点の調査内容に基づいて作成
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