
シモキタ園藝部(下北線路街の植栽管理・緑のまちづくり)
東京都世田谷区の下北線路街(小田急線地下化跡地・約1.7km)で、住民・市民が緑を地域の共有資源として手入れするシモキタ園藝部の事例。反対運動から協働へと転換した経緯、順応型管理やワーカーズコープ型の組織運営、コンポストによる循環の仕組みを、公民連携と都市緑地のコモンズ化の視点から整理する。
シモキタ園藝部は、東京都世田谷区の「下北線路街」(東北沢〜下北沢〜世田谷代田の約1.7km)の植栽管理を担う一般社団法人である。下北線路街は、小田急線の連続立体交差事業によって鉄道が地下化した後に生まれた線路跡地で、2016年から順次施設が完成し2022年5月に全面開業した。シモキタ園藝部は「まちのみどりを、自分たちの手で」を掲げ、緑を鑑賞の対象としてではなく地域の共有資源(コモンズ)として位置づけ、住民・市民が日常的に手入れをする仕組みをつくっている。(参考:シモキタ園藝部 公式サイト、ソーシャル・イノベーションとしての都市緑地のコモンズ化――シモキタ園藝部を事例として(三浦倫平、都市社会研究2025))
活動は2020年3月に「下北線路街園藝部」として発足し、小田急電鉄から植栽管理の業務委託を打診されたことを契機に2021年8月に法人化した。2024年11月時点で緑を愛する住民・市民の約250名が部員として登録し、拠点「こや」を中心に、のはら広場ほか下北線路街の植栽管理、園藝学校でのエコガーデナー育成、コンポストによる堆肥化、養蜂(シモキタハニー)などを展開している。これらの活動は「植える→育てる→活かす→還す」という循環のコンセプトで束ねられている。(参考:シモキタ園藝部 公式サイト、ソーシャル・イノベーションとしての都市緑地のコモンズ化(三浦倫平、都市社会研究2025))
一連の取り組みは外部からの評価も得ており、2023年に「第43回緑の都市賞」で最高賞である内閣総理大臣賞を、2023年度「日本造園学会賞(事業・マネジメント部門)」を受賞。2025年9月にはのはら広場が環境省の「自然共生サイト」に認定された。(参考:都市の緑3表彰 受賞者決定(都市緑化機構、2023年10月)、2023年度日本造園学会賞(日本造園学会)、自然共生サイトの認定 令和7年度第1回(環境省))
下北沢では2000年代初頭、連続立体交差事業に合わせて整備が予定された補助54号線や区画街路10号線(駅前広場)、さらに高層化を許容する地区計画に対し、住民の反発が広がっていた。計画が具体化するにつれ、地下化で生まれる線路跡地はむしろ公共のために使うべきだという声が高まり、その主張を束ねる言葉として掲げられたのが「緑」だった。(参考:ソーシャル・イノベーションとしての都市緑地のコモンズ化(三浦倫平、都市社会研究2025))
複数の運動団体が動くなか、NPO法人「グリーンライン下北沢」は跡地の使い道について住民から広く声を集め、専門家と連携して具体案をまとめ、2012年2月に世田谷区へ提出した。この団体が掲げた「緑」は「人と自然がつながり、人と人がつながるコミュニティを育む場」であり、見て楽しむ対象にとどまらず、人と地域を結びつける共有財(コモンズ)と捉えられていた。この理念は後にシモキタ園藝部へと受け継がれていく。当時同団体に参加し、現在はシモキタ園藝部の共同代表理事の一人を務める関橋知己氏は、「ただ緑を増やすのではなく、コミュニティにとっての公共の場とすることで、この線路跡地が生かされる」と訴え続けてきたと語っている。(参考:ソーシャル・イノベーションとしての都市緑地のコモンズ化(三浦倫平、都市社会研究2025))
対話の場づくりも進んだ。2016年10月、世田谷区は線路跡地の上部利用について誰でも自由に参加して話し合える場として「北沢PR戦略会議(現・シモキタリングまちづくり会議)」を設け、その中に「緑あふれるまちづくり」を目的とする「緑部会」が生まれた。緑部会にとって重要な転機となったのが、下北沢駅南西口に計画されていた立体緑地への対応である。米ニューヨークのハイラインを手本にしたこの高架状の緑地は、設計段階で規模が当初のイメージより膨らみ、その分だけ地上に残る緑地や小広場が計画の半分ほどに縮む見通しとなった。近隣住宅への影響も指摘されたことから、緑部会は2018年3月の区の報告会で代替案を示し、同年7月には緑地の長さをおよそ半分に抑える案を住民アンケートの結果とともに区へ提出した。世田谷区はこれを受け入れて立体緑地を当初予定のおよそ半分の長さで設置することを決め、そこで新たに生まれた地上の余地が、後の「シモキタのはら広場」となる。(参考:ソーシャル・イノベーションとしての都市緑地のコモンズ化(三浦倫平、都市社会研究2025))
こうして緑地空間を確保する見通しは立ったが、次の課題は「その緑地を誰が、どのように日常的に維持管理するか」であった。管理業者に委ねる従来型の植栽管理では、市民が緑を「見る」対象として消費するだけで、人と緑・人と人が関わり合う日常は生まれにくい。跡地の緑を持続的に手入れし、活用する担い手をどう組み立てるかが、取り組みの出発点となる問いだった。(参考:ソーシャル・イノベーションとしての都市緑地のコモンズ化(三浦倫平、都市社会研究2025)、東京はもっと緑化に向き合える。シモキタ園藝部から考える、都市緑化の可能性(Yahoo!サストモ))
担い手づくりの起点となったのは、下北線路街のランドスケープ全体構想に2018年から関与していたランドスケープデザイン事務所「フォルク(folk)」の存在である。代表の三島由樹氏は、管理業者に委ねる「見る庭」ではなく、地域の内外から集う人々が植物に手を触れ、それを暮らしのなかに取り込んでいく「使う庭」=「現代のまちの雑木林」というコンセプトを小田急電鉄に提案した。小田急電鉄も「主役は地域のプレーヤーであり、デベロッパーはサポート役になる」という「支援型開発」をエリア開発の考え方に据えていたことから、この提案を受け入れた。(参考:ソーシャル・イノベーションとしての都市緑地のコモンズ化(三浦倫平、都市社会研究2025))
フォルクは「使う庭」の担い手を集めるため、「下北線路街園藝部」という団体の立ち上げを企画し、2019年10月から2020年3月にかけて公開ワークショップを3回開催した。第1回「下北園藝探検隊」(2019年10月26日)では下北沢の個性的な鉢植えや家庭菜園を再発見し、続く「下北のまちと園芸のはなし」「下北園藝企画談義」で、参加者が取り組みたい企画や運営の在り方を話し合った。ここに緑部会のメンバーや新たな地域内外の主体が加わり、その多くが後の中心的な担い手となった。2020年4月以降はコロナ禍で対面活動が制限されたが、オンラインを併用して「園藝部会議」を毎月開催し、古樹屋・ちゃや・園藝学校・コンポストといった現在の主要事業の原型となるアイディアが議論のなかから生まれていった。この時期には、出されたアイディアをその場でイラスト化することで具体的なイメージが喚起され、さらに新しい発想が触発される進め方がとられた。(参考:ソーシャル・イノベーションとしての都市緑地のコモンズ化(三浦倫平、都市社会研究2025)、総勢150名「シモキタ園藝部」が下北沢の植物とまちの新しい関係を育て中(SUUMOジャーナル))
こうした議論を重ねる中で、小田急電鉄から下北線路街の植栽管理を任せたいという申し出があり、これを機に団体は2021年8月に一般社団法人シモキタ園藝部となった。翌2022年3月には活動拠点「こや」が整い、本格的な運営が動き出す。同じ頃に整備されたのはら広場では、世田谷区が「身近な広場条例」に沿って所管する区域と小田急電鉄の管理区域とを束ね、区の区域分を小田急に委託することで、エリア全体を小田急が一体的に管理する形が整えられた。設計施工監理はフォルクが担当した。2022年3月には世田谷区主催の「種まきワークショップ」で町内会や園藝部メンバーが種を蒔き、その後は子どもたちが思い思いに歩いた跡が、広場の小道になっていった。(参考:ソーシャル・イノベーションとしての都市緑地のコモンズ化(三浦倫平、都市社会研究2025))
活動は「植える・育てる・活かす・還す」の循環として整理されている。「植える」ではのはら広場での植栽づくりに加え、各家庭で手に負えなくなった鉢植えを預かって仕立て直し、次の育て手へと橋渡しする「古樹屋(ふるぎや)」を通じて、緑がまち全体を巡る流れをつくる。「育てる」ではのはら広場と下北線路街の植栽管理を担い、後述する順応型管理のもとで水やり・草刈り・剪定・落ち葉掃きなどを行う。「活かす」では四季に応じたイベント企画を月に2〜3回実施し、野花を使ったワイルドティーや切花・リース、近隣の建物屋上で採取した非加熱の蜂蜜「シモキタハニー」などを開発・販売する。「還す」ではコンポスト事業が、植栽管理で出る刈り草・雑草や近隣店舗のコーヒー粕などを堆肥化し、樹勢回復や古樹屋、野菜栽培に再び活かす。(参考:ソーシャル・イノベーションとしての都市緑地のコモンズ化(三浦倫平、都市社会研究2025)、シモキタ園藝部 公式サイト)
担い手を継続的に育てる仕組みとして、2022年4月には「シモキタ園藝學校」を開校した。約1年間・年9回の公開講座「エコガーデナー養成講座」では、植栽管理の基礎技術に加え、自然と親しみながら暮らしを豊かにする知恵を学べる。修了生はその後、植栽管理を支える中核として現場に立つ。日々繰り返される順応型管理そのものが、担い手にとっての学びや楽しみの時間にもなっている。(参考:園藝學校(シモキタ園藝部 公式サイト)、ソーシャル・イノベーションとしての都市緑地のコモンズ化(三浦倫平、都市社会研究2025))
第一の特徴は、植栽管理の方式そのものにある。シモキタ園藝部は、植物の状況を見ながら適宜に草刈りや剪定を行う「順応型管理」を採用している。これは、作業の項目や量をあらかじめ決め、決まった日にまとめて一律に手を入れる従来型の方式――一般的な公園で採られる「確定型管理」――とは対照的だ。雑草を無差別に刈るのではなく一つひとつの特性を理解して選別し、人の通行を妨げる枝や樹木の生育に望ましくない枝を見極めて剪定する。仕様書に従う義務的な作業ではないため、部員が日常的に手を加える楽しみが生まれ、きめ細やかな管理が可能になる。関橋氏は「市民が触れてはいけない緑ではなく、関われる緑があることで、心が豊かになり、緑と人が関わり合って豊かなコミュニティになる」と、この管理方式を循環を支える活動として位置づけている。(参考:市民が主役となる「シモキタ園藝部」の異質な植栽管理=エリマネの理想形(CIVIC PRIDE)、ソーシャル・イノベーションとしての都市緑地のコモンズ化(三浦倫平、都市社会研究2025))
第二の特徴は、協同労働(ワーカーズコープ=労働者協同組合)に着想を得た組織運営である。法人化にあたり、出資額に応じて理事や社員の役割を分け合って運営の中心を担い、年会費さえ払えば誰でも部員として加われる。資金の拠出も経営も実働も、すべてをメンバー自身が引き受ける点に特色があり、企画案は誰でも参加できる「のはら会議」やSlackで提案・審議される。「課題があっても完全には認められない、ということはない」というオープンな雰囲気が保たれ、一つのアイディアに複数のメンバーが連なることで実現性が高まる、フラットな組織文化が意思決定を支えている。(参考:ソーシャル・イノベーションとしての都市緑地のコモンズ化(三浦倫平、都市社会研究2025))
第三に、活動の対価を現金だけに限定しない経営設計が挙げられる。収入の柱は小田急電鉄からの植栽管理委託費で、そこに事業収入・会費・助成金を足し合わせて運営を支える。人件費は、活動の中核を担うコアメンバーには時給を、専門的な仕事には個別の報酬を用意する一方、それ以外の活動には1時間500円分のクーポンを充てる。このクーポンは拠点「ちゃや」やワークショップ参加費として利用でき、他人に譲ることもできるためコミュニティ通貨のような機能を持つ。200名を超える部員全員に時給を支払えばコストが過大になるため、現金では難しいつながりをクーポンという「モノ」が可能にしている。「お金が目的だと園藝部は割に合わない。楽しいからやっている」という関橋氏の言葉が示すように、活動それ自体に楽しさ・学び・生きがいといった非市場的な価値を見出せることが、この経営を成り立たせている。(参考:ソーシャル・イノベーションとしての都市緑地のコモンズ化(三浦倫平、都市社会研究2025))
第四に、行政・鉄道事業者・市民の関係のつくり方がある。反対運動から出発した経緯を持ちながら、世田谷区は複数の課(街づくり課・工事第一課・公園緑地課)が緑部会との対話を重ね、立体緑地の技術的な検討情報を共有した。担当職員が互いに顔の分かる間柄(「顔の見える関係」)を大切にして助言を重ねたことが、園藝部のその後の活動を後押しした。鉄道事業者である小田急電鉄も、自社の利益を優先する姿勢から、地域の求めに沿う「支援型開発」へと立場を転じている。こうした三者の態度変容は、200回以上に及ぶ北沢の各種会議を通じて積み上げられた信頼関係に基づいている。(参考:ソーシャル・イノベーションとしての都市緑地のコモンズ化(三浦倫平、都市社会研究2025)、市民が主役となる「シモキタ園藝部」の異質な植栽管理=エリマネの理想形(CIVIC PRIDE))
第五に、活動の対象を植物にとどめず「都市の生態系」全体の循環に広げている点がある。コーヒー滓や果物の切れ端といった街の生ごみも、自然界の分解力を借りて循環の輪へと組み込み、雑草や刈り草を捨てるべき「ゴミ」ではなく「宝物」とみなして堆肥へと変えていく。コンポスト事業では、刈り草・雑草を微生物の力で発酵・分解させる「切り返し」を2週間に1回のペースで計6回行うと堆肥が完成する。試行錯誤のなかで、当初1週間に1立方メートルと見込んだ雑草が夏場には約4立方メートルに達したため集草置き場を新設するなど、現場の状況に応じて手法を更新し続けている。人が出すゴミも循環対象に含める発想は、緑地を「都市の生態系」として捉え直す試みとして位置づけられる。(参考:ソーシャル・イノベーションとしての都市緑地のコモンズ化(三浦倫平、都市社会研究2025)、下北沢が変わった!シモキタ園藝部がコンポストと共に目指す、緑と循環のある下北沢(コンポストマガジンcomposter))
担い手の広がりとして、初期のワークショップ時に約20名だった参加者は、2024年11月時点で約250名の登録部員へと拡大した。このうち植栽管理を中心的に担うコアメンバーは、園藝学校を卒業して技術・知識を持つ人が20名ほどである。部員には建築家・デザイナー・編集者・学生など多様な職種・年代が含まれ、地縁に限られない新しいコミュニティが形成されている。(参考:ソーシャル・イノベーションとしての都市緑地のコモンズ化(三浦倫平、都市社会研究2025)、「緑が好き!」で集った地域コミュニティが企業から植栽管理を受託!(greenz.jp、2025年2月))
生物多様性の面では、2025年9月、のはら広場が環境省の「自然共生サイト」に「維持タイプ」で認定された。これは改定生物多様性国家戦略に基づき、企業や地域の生物多様性保全活動を評価・支援する制度で、令和7年度第1回では全国201か所が新たに認定された。認定サイトは「保護地域以外で生物多様性保全に資する区域(OECM)」として国際データベースへの登録が予定されている。約700㎡ののはら広場は「野原と雑木林」「草花・樹木・虫たちと共生する自然の庭」をコンセプトに2022年に開園し、園藝部は開園以来、生き物調査・植生調査、インセクトホテルの設置やビオトープの構築、近隣の落ち葉の活用などを続けてきた。ツマグロヒョウモンやタケトラカミキリなどの昆虫、キキョウやフキノトウなどの植物が確認されている。(参考:シモキタのはら広場が自然共生サイトに認定されました!(シモキタ園藝部note)、自然共生サイトの認定 令和7年度第1回(環境省))
循環の実績として、コンポスト事業では2022年7月に堆肥づくりを始めてから2024年12月までに8クール分の堆肥が完成している。完成した堆肥は樹勢回復や古樹屋の活動、野菜栽培に活かされ、街から出る有機物を廃棄せずに地域内で循環させる仕組みが機能している。(参考:ソーシャル・イノベーションとしての都市緑地のコモンズ化(三浦倫平、都市社会研究2025))
外部評価としては、2023年に「第43回緑の都市賞」で最高賞である内閣総理大臣賞を受賞し、2023年度「日本造園学会賞(事業・マネジメント部門)」を株式会社フォルクとともに受賞した。学会賞では、ワーカーズコープ方式によってプロの造園業者と市民が協同できる仕組みが構築され、都市における生物多様性を象徴する空間が景観性を伴いながらマネジメントされている点が評価された。これらの受賞は、市民主体の緑地管理という取り組みが、造園・都市緑化の専門分野において評価されたことを示すものである。(参考:都市の緑3表彰 受賞者決定(都市緑化機構、2023年10月)、2023年度日本造園学会賞(日本造園学会))
第一に、対立を協働へ転換するプロセスの設計である。この事例は、再開発への反対運動を出発点としながら、行政が「北沢PR戦略会議」のような誰でも参加できる継続的な対話の場を設け、市民が批判にとどまらず代替案と住民アンケートという建設的な提案を持ち込んだことで、区・鉄道事業者・市民の三者が態度を変容させていった。行政の複数部署が横断的に関わり、担当職員が「顔の見える関係」を前提に助言する姿勢は、合意形成に難航する跡地活用や公共空間再編を抱える地域にとって参照しやすい。(参考:ソーシャル・イノベーションとしての都市緑地のコモンズ化(三浦倫平、都市社会研究2025))
第二に、「誰が緑地を維持管理するのか」という普遍的な課題に対する、順応型管理という設計思想である。仕様書に基づく確定型管理では担い手の関与が受動的になりがちだが、「使う庭」を前提に現場の状況へ能動的に対応する管理方式は、日常的に手を加える楽しみを生み、担い手の定着につながる。これは属人的なカリスマに依存する仕組みではなく、園藝学校というエコガーデナー育成の回路と組み合わせることで担い手を継続的に再生産できる点で、他地域でも設計可能な再現性を持つ。(参考:市民が主役となる「シモキタ園藝部」の異質な植栽管理=エリマネの理想形(CIVIC PRIDE)、園藝學校(シモキタ園藝部 公式サイト))
第三に、市民主体の活動を経済的に持続させるための対価設計である。多数の参加者全員に賃金を支払うことは財政的に困難だが、時給・個別報酬・クーポンを組み合わせ、クーポンにコミュニティ通貨的な機能を持たせることで、現金だけでは築けないつながりと持続可能性を両立させている。ボランティアの善意に依存しきらず、かといって全面的な有償化にも頼らない中間的なモデルは、担い手の確保に悩む多くのエリアマネジメント組織にとって示唆に富む。あわせて、収入の多くを植栽管理委託費に依存する経営基盤は、委託条件の変化に左右されうる構造的な留意点でもある。(参考:ソーシャル・イノベーションとしての都市緑地のコモンズ化(三浦倫平、都市社会研究2025))
第四に、「消費される緑」から「関わる緑(コモンズ)」への発想の転換である。緑地を市民が鑑賞・消費するだけでは、都市の自治や地域への愛着には結びつきにくい。市民が緑を共有資源として手入れし、街から出るゴミまでも循環に取り込むことで、生態系への関わりが「街」への愛着へと拡張していく。デベロッパーがサポート役に回る「支援型開発」と、出資・経営・活動を全員が担うフラットな組織を組み合わせたこの事例は、公共空間の維持管理を「行政の発注」でも「企業の収益事業」でもない第三の形へと開く、都市緑地のコモンズ化のモデルとして参照できる。(参考:ソーシャル・イノベーションとしての都市緑地のコモンズ化(三浦倫平、都市社会研究2025)、東京はもっと緑化に向き合える。シモキタ園藝部から考える、都市緑化の可能性(Yahoo!サストモ))
2026年07月時点の調査内容に基づいて作成
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