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多摩川・二子玉川地区の堤防整備と水辺地域づくりワーキング
多摩川・二子玉川地区の堤防整備と水辺地域づくりワーキング

多摩川・二子玉川地区の堤防整備と水辺地域づくりワーキング

多摩川・二子玉川地区の堤防整備と水辺地域づくりワーキング

東京都
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2019年の台風19号で溢水した二子玉川の無堤部に、国土交通省京浜河川事務所が緊急治水対策として堤防を整備した事例。景観への配慮から長年築堤が見送られてきた区間を、住民参加の水辺地域づくりワーキングで安全と水辺のにぎわいの両立を図りながら整えた。

概要

東京都世田谷区の二子玉川駅周辺(玉川一丁目)には、多摩川下流部の東京都側で唯一堤防のない「無堤部」が長く残されていた。2019年10月の令和元年東日本台風(台風19号)では、この約540〜550mの無堤区間から多摩川の水が住宅地へあふれ出し、大きな浸水被害が生じた。これを受け、国土交通省京浜河川事務所は「多摩川緊急治水対策プロジェクト」の一環として、田園都市線の交差部付近からコヤマドライビングスクール周辺に至る区間で築堤工事を進め、2025年4月26日に堤防天端の河川管理通路を開放した。特徴的なのは、整備にあたって景観や河川空間の利活用を地域と話し合う「二子玉川地区水辺地域づくりワーキング」が、台風被害以前の2018年から設けられていた点である。安全・安心の確保と、二子玉川ならではの水辺のにぎわいをどう両立させるかを、河川管理者・世田谷区・地域住民が協議しながら整備を進めた事例といえる。 (参考:二子玉川地区堤防整備事業|京浜河川事務所二子玉川の多摩川堤防が完成し一部通路が開放|俺の居場所

背景・課題

二子玉川駅前の玉川一丁目周辺は、かつて多摩川を望む茶屋が並ぶ行楽地として発展した経緯を持つ。相次ぐ洪水に対して国による堤防整備が検討される中でも、川の眺めや水辺の景観を残したいという地域の意向が強く、堤防を宅地の背後へ回すなどの対応がとられてきた。その後の都市化で一帯が住宅地へと変わっても、駅に近い一定区間は堤防が設けられないまま残り、多摩川下流部の東京都側では唯一の無堤部となっていた。 (参考:二子玉川の多摩川堤防が完成し一部通路が開放|俺の居場所

浸水リスクは以前から顕在化していた。2007年9月の台風では玉川一丁目・三丁目の一部で避難勧告が出される(約740世帯・1,490人)など危険が高まり、京浜河川事務所は2008年10月から「二子玉川南地区無堤部解消プロジェクト」として築堤に着手しようとした。しかし、景観や河川環境への影響を懸念する住民団体が反対し、堤防の位置・形状をめぐる合意が難航。結果として約540mの区間が無堤のまま残された。安全確保のための治水と、水辺の景観・環境をめぐる価値が、長期にわたり折り合わない状態が続いていた。 (参考:二子玉川地区堤防整備|京浜河川事務所

この膠着を大きく動かしたのが2019年10月の台風19号(令和元年東日本台風)である。多摩川が増水し、残されていた無堤部から住宅地へと水が流れ込んで、二子玉川駅周辺で広範囲の浸水被害が発生した。世田谷区も台風被害の検証委員会を設置してメカニズムと軽減策を検討するなど、区全体で治水対策の見直しが迫られた。景観への配慮を理由に先送りされてきた築堤は、住民の安全という観点から早急に実現すべき課題として位置づけ直されることになった。 (参考:令和元年台風第19号に伴う浸水被害の検証|世田谷区

取り組みのプロセス

対話の枠組みは台風被害の前から動き始めていた。京浜河川事務所は堤防整備の方針や内容を地域と話し合う場として「二子玉川地区水辺地域づくりワーキング」を2018年3月に第1回を開催し、世田谷区が事務局補佐として参画した。ここでは築堤そのものの是非だけでなく、堤防のデザインや水辺の景観、河川空間の使い方を含めて意見交換が重ねられた。単なる「堤防を造るか否か」ではなく、「どのような堤防・水辺にするか」を設計の論点に据えた点が、それ以前の膠着との違いだった。 (参考:二子玉川地区堤防整備|京浜河川事務所

台風19号の後、築堤は「多摩川緊急治水対策プロジェクト」に位置づけられ、工事が本格化した。2020年度に基盤整備(R1多摩川左岸二子玉川築堤基盤整備工事)が始まり、溢水箇所付近の堤防基礎や兵庫橋付近の暫定堤防を整備。2020年11月からは京浜河川事務所による本格的な築堤工事が進み、2021年度以降は護岸工事(R3多摩川左岸二子玉川築堤護岸工事)へと段階を移した。野川に架かる兵庫橋は下流側へ約60m移設する形で架け替え工事が行われ、2023年の春に一部区間の供用が始まった。 (参考:二子玉川の多摩川築堤工事 まもなく完了へ|俺の居場所

住民の生活に近接する区間では、通常の盛土堤防とは異なる工夫が求められた。マンションに近接し用地の余裕がない箇所には、逆T型の擁壁を用いた「特殊堤(パラペット構造)」を採用し、圧迫感やプライバシーへの影響を和らげるため堤防上に植栽を施す計画とした。水辺地域づくりワーキングでは、こうした堤防のデザインや、完成後に生まれる堤防天端の通路をどう使うかといった論点も継続的に協議され、ワーキングは2023年9月の第10回まで重ねられた。 (参考:二子玉川の多摩川築堤工事 まもなく完了へ|俺の居場所二子玉川地区堤防整備|京浜河川事務所

築堤の完了に合わせ、堤防上部の空間開放も段階的に進められた。2025年3月下旬には兵庫島公園方面への歩行者用通路が一部開放され、2025年4月26日に河川管理通路が開放された。一方で、開放前の現地見学会ではマンション住民から、植栽が十分に育っていない状態での通路開放に対しプライバシー上の懸念が示された。これを受けて京浜河川事務所は植栽の養生などを理由に一部区間を当面通行止めとし、植生が根づいた段階で天端通路を全面開放する対応をとった。安全確保のための整備が、完成後にも近接住民の生活環境という新たな調整課題を伴うことを示している。 (参考:3/24(月)兵庫島公園への通路が一部開放|futakoloco二子玉川の多摩川堤防が完成し一部通路が開放|俺の居場所

整備された水辺を日常的に活かす担い手として、地域のエリアマネジメント組織も並走している。2015年に発足し2019年に一般社団法人化した二子玉川エリアマネジメンツは、多摩川沿いの区立兵庫島公園一帯を拠点に、フードトラックや「ミズベファンベース」などの利活用事業、橋脚清掃や護岸整備といった「かわのまちアクション」、さらに防災マイ・タイムライン講座による住民の防災リテラシー向上支援などを展開している。整備された堤防・河川敷を「守るためのインフラ」で終わらせず、日常的に使われる公共空間として育てる仕組みが、行政の整備と併存している。 (参考:事業・取り組み|二子玉川エリアマネジメンツ二子玉川地区におけるエリアマネジメントの取組み|世田谷区

この事例の特徴

第一の特徴は、長年ゼロサムで対立してきた「治水(安全)」と「景観・水辺の魅力」を、両立すべき設計課題へと再定義したことである。水辺地域づくりワーキングは、築堤の是非を問う交渉の場ではなく、堤防のデザインや水辺の使い方を一緒に考える設計の場として機能した。反対の論点だった「景観」を、堤防整備の要件そのものに組み込んだ点に、以前の膠着との明確な違いがある。

第二に、対話の場が災害以前(2018年)から設けられていたことである。台風19号という契機によって整備が緊急事業として一気に進んだ一方で、それ以前から積み重ねられていた協議の蓄積が、迅速な合意形成と工事着手を下支えした。危機対応と平時の対話が接続した構図といえる。

第三に、近接住民への具体的配慮を技術と運用の両面で講じている点である。逆T型擁壁による特殊堤や植栽といった構造上の工夫に加え、開放時期を植生の生育状況に合わせて調整するなど、完成後の生活影響にも運用面で対応している。

第四に、整備主体(河川管理者・自治体)と利活用主体(エリアマネジメント組織)が役割を分担している点である。造る主体と使う主体が並存することで、堤防天端や河川敷が単なる土木構造物にとどまらず、水辺のにぎわいを生む公共空間として位置づけられている。

調査時点の成果

なお、堤防天端通路の全面開放は植生の生育状況に応じて進められており、完成後の空間の使われ方や近接住民との調整は継続的な観察を要する。

他地域への示唆

この事例が投げかける第一の論点は、景観やアメニティを理由に治水を先送りすることのリスクである。二子玉川では、水辺の眺めを重んじる価値観のもとで築堤が長く見送られ、結果として大規模な浸水被害を経て初めて整備が実現した。合意環境が災害によって一変したという事実は、平時における治水と地域の価値の折り合いをどうつけるかという、他地域にも共通する重い課題を示している。

第二に、対立の争点を「設計要件」へ転換する対話の設計である。二子玉川では「堤防か景観か」という二者択一を、「景観にも配慮した堤防をどう造るか」という共同の設計課題へと置き換えた。反対の理由になっている価値を排除せず、整備の要件として取り込む枠組みは、合意が難航している他の河川整備・インフラ整備にも応用しうる。

第三に、整備と並走する利活用主体の重要性である。堤防や河川管理通路といったインフラは、造って終わりではなく、日常的に使われて初めて地域の資産となる。エリアマネジメント組織が水辺の利活用を担う構図は、河川管理者・自治体・住民・利活用主体という役割分担として整理でき、特定の個人の力量ではなく「対話の場+利活用の担い手」という仕組みに依存している点で再現性がある。

第四に、参加と合意形成は一度で完結しないという教訓である。完成後にプライバシーという新たな懸念が生じ、開放の進め方を調整する必要が生まれた。整備前の合意だけでなく、供用後の生活影響にも継続的に向き合う運用体制が、水辺と暮らしが近接する市街地では不可欠であることを、この事例は具体的に示している。

参照元


2026年07月時点の調査内容に基づいて作成

東京都
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この記事は公開情報に基づき、AIを用いた詳細調査により作成されました。記事内容への修正依頼、お問合せ等は以下までお寄せください。

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