
2024年度福山駅前広場運営実証実験(ROSE HARBOR FUKUYAMA)
この記事は、my grooveを運営する株式会社Groove DesignsがAIを活用し独自に調査・作成したものです。
福山市がJR福山駅前のタクシー・バス乗降場を2024年9月〜10月に人工芝広場へ一時転換し、公募で選ばれた8社コンソーシアムに運営を委託して交通処理と広場利用ニーズを検証した社会実験。平日約400人、休日イベント時1,000人超が利用した。
福山市は2024年9月25日から10月25日にかけて、JR福山駅前広場のタクシー乗降場・待機場、バス案内所前、路線バススペースを一時的に人工芝の広場空間へ転換し、公募プロポーザルで選ばれた地元8社コンソーシアム「福山駅前南広場運営協議会」(代表:福山駅前開発株式会社)に運営を委託する社会実験を実施した。愛称は「ROSE HARBOR FUKUYAMA(ローズハーバー フクヤマ)」。 (参考:2024年度福山駅前広場運営実証実験業務委託に関するプロポーザルを実施します、(終了しました)福山駅前広場実証実験が始まります!)
タクシー・バスの乗降場所を実際に一時移設したうえで、ベンチやテーブル、子ども向けの「KIDS PARK」、キッチンカーの出店、ステージでの音楽ライブなどを配置し、交通処理への影響と広場としての利用ニーズを同時に検証した。2023年3月策定の「福山駅前広場整備基本方針」を踏まえた検討プロセスの一段階として位置づけられており、この実証実験を含む一連の検討は2026年5月策定の「福山駅前広場整備基本計画」(関連事例「福山駅前広場整備(基本方針~基本計画)」で詳述)へとつながっている。 (参考:2024年度福山駅前広場運営実証実験業務委託に関するプロポーザルを実施します、(終了しました)福山駅前広場実証実験が始まります!)
福山駅前広場は、送迎車乗降場と駐車場が地下にある立体構造で、バス・タクシー・一般車が輻輳する交通結節点である一方、人が滞留し交流する「広場」としての機能は乏しいという課題が、2020〜2022年度に実施された複数回の市民アンケート(回答者延べ約13,000人)を通じて把握されてきた。福山市はこれを受け、2021年に学識経験者や交通事業者、商工事業者、自治会などで構成する「福山駅前広場協議会」を設置し、駅前広場の再編に向けた検討を進めてきた。 (参考:福山駅前広場市民説明会資料)
2023年3月に策定された「福山駅前広場整備基本方針」では、「交通結節機能」と「都市の広場機能」という性質の異なる2つの機能を、限られた敷地の中でどう両立させるかが検討の軸に据えられた。この方針を踏まえ、2024年2月にまとめられた「福山駅前広場整備に係る検討内容(中間とりまとめ)」では、検証すべき論点が「施設計画」「動線計画」「運営計画」の3つの観点に整理された。福山市はこれに先立つ2022年11月にも、タクシー待機場に人工芝や仮設家具を設置し、タクシーの呼び出し方式(ショットガンシステム)や空間デザインへの評価を検証する小規模な実証実験を実施しており、体験者アンケートでは約96%が肯定的な評価を示していた。これは主に「施設計画」「動線計画」の観点を検証するものであり、2024年度の実証実験は、これに続く「運営計画」の観点、すなわち広場の運営を実際に民間事業者に委ねた場合に、日常的に使われ、収益や賑わいを生み出せる空間になり得るかを検証する段階として位置づけられた。 (参考:福山駅前広場市民説明会資料)
公募プロポーザルによる運営事業者の選定
福山市は2024年度福山駅前広場運営実証実験業務委託についてプロポーザルを実施し、企画提案書(380点)、プレゼンテーション(80点)、業務実績(20点)、見積書(20点)の合計500点で評価した。応募は1者で、代表構成員を福山駅前開発株式会社とし、山陽SC開発、フューレック、築切家守舎、クロスエージェント、KI企画、アイデアル、そらやLandscape/モリタ、エフエムふくやまの8社で構成する「福山駅前南広場運営協議会」が受注候補者として選定された。契約期間は契約締結日から2024年12月27日までで、実証実験の実施期間はそのうち2024年9月25日から10月25日までとされた。 (参考:2024年度福山駅前広場運営実証実験業務委託に関するプロポーザルを実施します)
広場空間の設営と交通機能の一時再配置
実証実験の対象区域は、タクシー乗降場・待機場、福山駅前バス案内所前、路線バススペース(6・7番乗り場)の3区域だった。これに伴い、期間中は複数の交通機能が一時的に移設・変更された。タクシー乗降場は南口から伏見町北側へ移設(9月27日正午〜10月22日正午)、路線バスの6・7番乗り場は8・9番乗り場へ統合(9月25日〜10月25日)、送迎バス乗降場は駅東側の高架沿いへ移設(9月27日〜10月23日)され、あわせて東側高架沿い道路の一方通行化と堀端公園西側道路の通行止めが実施された。 (参考:福山駅前広場運営実証実験業務委託仕様書、福山駅前を広場に 実証実験本格化)
役割分担としては、福山市が人工芝の設置・撤去、安全対策用のコーンやバリケードの設置、タクシー乗降場・待機場と路線バススペースへの交通誘導員の配置(各1名)、行政手続きの支援、アンケートによる効果検証を担当し、運営協議会は広場運営の企画立案、出店者を含む関係者調整、什器の調達・設営、プロモーション、期間中の清掃・維持管理、広報用動画(ショート版・ロング版)の制作、業務完了報告書の作成までを担った。 (参考:福山駅前広場運営実証実験業務委託仕様書)
「結節(つながり)」をコンセプトにした広場運営
市が仕様書で示した基本コンセプトは「結節(つながり)」であり、「人とまち」「人と人」「人と場所」「人と情報」など、広場を介した多様なつながりを生み出す企画が求められた。これを受けて運営協議会は「ROSE HARBOR FUKUYAMA」の名称で、タクシー乗降場跡地に人工芝を敷いたラウンジ空間を整備し、ベンチやテーブル、子ども向けの遊び場「KIDS PARK」を設置したほか、期間中はキッチンカーによる飲食提供、ステージでの音楽ライブ、シャボン玉などを使ったイベントを実施した。中心となる催しは2024年9月28日午後4時に開幕し、10月20日まで行われた(交通機能の変更自体は10月25日まで継続)。 (参考:2024福山駅前広場 実証実験『ROSE HARBOR FUKUYAMA』が行われます!、ウォーカブルな駅前空間!福山駅前広場実証実験『ローズハーバーフクヤマ』が開催中!)
運営にあたっては、同時期に駅周辺で予定されていた他イベントとの調整も必要だった。9月28日・29日には歩行者天国イベント「オープンストリートフクヤマ」がバス案内所前の一部区域を使用し、10月18日・19日には「日本ばら会全国展 福山大会」がタクシー待機場の一部を使用する予定だったため、運営協議会はこれらの日程・区域を避けて自らの企画を配置する必要があった。また近隣住民への配慮から、音の出る活動は午後10時までとする制約も設けられていた。 (参考:福山駅前広場運営実証実験業務委託仕様書)
「空間デザインの検証」と「運営の検証」を切り分けて段階的に実施
福山市は2022年11月に空間デザインとタクシー運用(ショットガンシステム)を検証する実証実験を行った上で、2024年度は運営そのものを検証対象とする実証実験を別途実施した。両者を同じ枠組みで一度に検証するのではなく、「配置・動線が成立するか」という設計上の論点と、「民間事業者が実際に広場を運営し、日常的な賑わいを生み出せるか」という運営上の論点を時期をずらして個別に検証した点は、駅前広場のように交通機能と滞留機能を同時に扱う公共空間整備において、原因の切り分けを可能にする進め方といえる。
交通インフラの一時的な物理移設を伴う実地検証
この実証実験は、机上のシミュレーションではなく、タクシー乗降場や路線バス乗り場、送迎バス乗降場を実際に約1か月間、別の場所へ物理的に移設するという形で行われた。バス停の統合や一方通行化、周辺道路の通行止めまで踏み込んで実施したことで、配置転換にともなう近隣住民からの苦情対応や交通誘導の実務上の課題を、計画段階では見えにくい形で洗い出せる設計になっている。 (参考:福山駅前広場運営実証実験業務委託仕様書)
福山市が2026年3月に開催した市民説明会の資料によると、2024年9月〜10月に実施したこの実証実験では、広場空間(約500㎡)の平日1日あたり利用者数が約400人、土日のイベント開催時には利用者が1日あたり1,000人を超えたことが報告されている。この数値は、2018年のビジョン策定以降に積み重ねられてきた市民参加の実績(協議会・デザイン会議を34回開催し、アンケートには延べ約13,000人が回答、市民対話集会・シンポジウムには延べ約750人が参加したこと)と並んで、基本計画策定に至る「これまでの取組」の実績の一つとして提示されている。 (参考:福山駅前広場市民説明会資料)
この実証実験を含む検討プロセスは、その後2024年末から2025年にかけて浮上したバスターミナル北口移転構想の検討と凍結を経て、2026年5月28日の「福山駅前広場整備基本計画」策定に結実した。同計画では駅舎と路線バス乗降場の間に約5,800㎡、隣接する複合商業施設前に約1,300㎡の広場空間を確保する方針が示されており、概算事業費は約40億円、広場空間全体の完成は2033年度末を見込んでいる。基本計画に至る経緯の詳細は、関連事例「福山駅前広場整備(基本方針~基本計画)」で扱っている。 (参考:福山駅前広場整備基本計画の策定、福山駅前広場整備基本計画)
「デザインの検証」と「運営の検証」を分けて段階的に実証する
駅前広場のような公共空間の再編では、空間配置が成立するかという設計上の論点と、民間事業者が実際に運営して賑わいを生み出せるかという運営上の論点が、しばしば一つの実証実験に混在しがちである。福山市のように、まず小規模な実証実験で空間デザインと交通運用の成立性を検証し、その後に別の実証実験で運営そのものを検証するという2段階のアプローチは、うまくいかなかった場合に原因が「設計」にあるのか「運営」にあるのかを切り分けやすくする。限られた予算と期間で実証実験を計画する他自治体にとっても、検証したい論点を一度に詰め込まず、段階を分けて設計する発想は参考になる。
交通インフラの一時的な物理移設によるリスクの前倒し検証
シミュレーションだけでなく、タクシーやバスの乗降場所を実際に約1か月間移設し、近隣対応や交通誘導といった運用面の課題を実地で洗い出した点は、恒久的な施設整備に着手する前に運用リスクを前倒しで発見する手法として応用可能である。特に、交通結節機能を伴う駅前広場の再編は、いったん恒久施設として整備すると設計変更が困難になりやすいため、期間を区切った実地検証によって「机上では想定していなかった苦情や運用の詰まり」を事前に把握できる意義は大きい。
2026年09月時点の調査内容に基づいて作成
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