
豊洲ぐるりパークの利活用・指定管理(豊洲グリーン100プロジェクト)
東京湾に面した約19.8haの水辺公園群「豊洲ぐるりパーク」を、民間4社の共同事業体が指定管理。BBQ広場やレストランなど収益施設の収入で園内の緑育成・環境教育を回し、税負担を抑えて魅力を高める「稼ぐ公園」の運営事例を紹介する。
東京都江東区の臨海部に位置する「豊洲ふ頭内公園」(愛称:豊洲ぐるりパーク)は、豊洲公園・豊洲ぐるり公園・豊洲六丁目公園・豊洲六丁目第二公園の4園からなる総面積約19.8haの水辺公園群である。東京湾に面した埋立地に造成され、豊洲市場の周囲をぐるりと囲む全長約4.5kmの園路を持ち、24時間365日利用できる。2017年7月に部分開園、2018年4月に全面開園した。(参考:豊洲ぐるり公園 - 江東区、豊洲ふ頭内公園 - Wikipedia)
この公園群は、2019年4月から民間4社の共同事業体「豊洲パークマネジメントJV」が指定管理者として運営している。区が直接管理する従来の方式ではなく、BBQ広場やレストランといった収益施設を公園内に整備し、その収入を活かして園内の緑育成や環境教育、各種イベントを展開する「稼ぐ公園」の運営に切り替えた点が特徴である。自主事業「豊洲グリーン100プロジェクト」のもと、住民参加型の花壇づくりや清掃、マーケット、スポーツ・水辺イベントなどを通じて、水辺空間を賑わいとコミュニティの拠点へと育てている。(参考:豊洲で新たなスタイルのパークマネジメントが始まります! | 豊洲ぐるりパーク、豊洲公園・ぐるり公園でのイベント開催や撮影申し込み窓口「豊洲ぐるりパークセンター」開設 | とよすと)
豊洲ぐるりパークは、豊洲市場やタワーマンション、大型商業施設が集積する再開発エリアの水際線に沿って整備された、比較的新しい大規模公園である。レインボーブリッジや東京湾を望む良好な景観と広大な敷地を備える一方で、埋立地の水辺公園を魅力的に保ち続けるには、芝生や植栽の維持、にぎわいづくり、飲食やレジャーの機能整備など、相応の手間と費用がかかる。区が単独で管理する方式では、利用者が求める飲食店の設置や施設の充実に対応することが難しいという課題があった。(参考:豊洲公園・ぐるり公園でのイベント開催や撮影申し込み窓口「豊洲ぐるりパークセンター」開設 | とよすと、豊洲ぐるり公園 - 江東区)
こうした背景には、都市公園を行政の財源だけで支えるのではなく、民間の事業ノウハウと資金を取り込んで質を高めようとする全国的な流れがある。2017年の都市公園法改正により、公園内に収益施設を設けて運営する事業者が、その収益の一部を広場整備など「公園機能の増進」に充てることを条件に占用を認められる仕組み(Park-PFIや設置管理許可制度)が整えられた。江東区も民間活力を活かした公園づくりを各地で進めており、たとえば若洲公園では、飲食店や売店などの収益施設の収入を園路・広場の整備に充てるPark-PFI事業を導入している。豊洲ぐるりパークは、その流れのなかで「税金を投入せずとも公園の魅力を高める」運営を目指した取り組みである。(参考:若洲公園整備事業(Park-PFI) | 江東区、豊洲公園・ぐるり公園でのイベント開催や撮影申し込み窓口「豊洲ぐるりパークセンター」開設 | とよすと)
2019年4月、江東区は公募を経て、共同事業体「豊洲パークマネジメントJV」を4園および東電堀の豊洲五丁目スロープの指定管理者に選定し、新しいスタイルのパークマネジメントを開始した。JVの代表企業は緑化・木材を手がける物林で、建設コンサルタントのオリエンタルコンサルタンツ、スポーツ施設運営のアシックススポーツファシリティーズ、木材建材商社のJKホールディングスが参画する。緑、空間設計、スポーツ・健康、流通といった異なる専門性を持つ企業が一つの事業体を組み、公園の維持管理から収益施設の整備・運営までを担う体制である。(参考:豊洲パークマネジメントJV | 豊洲ぐるりパーク、豊洲で新たなスタイルのパークマネジメントが始まります! | 豊洲ぐるりパーク)
運営の窓口として、JVは管理事務所「豊洲ぐるりパークセンター」を設置した。日常的な清掃や設備管理に加え、公園でのイベント開催やスポーツ大会、ドラマ・CMなどの商業撮影、駐車場や乗船場の管理まで、利活用に関わる相談・申し込みを一手に引き受けるワンストップの窓口である。区の許認可手続きに不慣れな企業や市民でも、空間を使いたいというニーズをここに持ち込めば対応が受けられるようにし、利活用のハードルを下げている。(参考:豊洲公園・ぐるり公園でのイベント開催や撮影申し込み窓口「豊洲ぐるりパークセンター」開設 | とよすと)
収益の柱として、公園内には飲食・レジャー施設が整備された。ぐるり公園の南端、レインボーブリッジやお台場を望む立地には、都内でも有数の規模を持つ「手ぶらBBQ広場」を整備し、機材や食材を持ち込まずに楽しめるサービスを提供している。園内の先端部には本格的なフランス料理が味わえるパークレストランやコーヒースタンドも置かれ、水辺の景観を活かした飲食体験が公園の集客力を支えている。これらの施設からの収入を、公園の維持や自主事業の原資として循環させる設計である。(参考:手ぶらBBQ広場 | 豊洲ぐるりパーク、空と海と、グリーン。 | 豊洲ぐるりパーク)
こうした運営基盤の上で展開されるのが、自主事業「豊洲グリーン100プロジェクト」である。「空と海と、グリーン。100年先まで美しい景観が続くしくみ」を掲げ、緑の育成と環境教育を軸に、公園を介したゆるやかなコミュニティづくりを進めている。具体的には、地域住民とともに花壇を整える「豊洲ガーデンクラブ」、清掃活動「TOYOSUクリーン100プロジェクト」、子ども向けの「豊洲SDGsクラブ」「豊洲パークガーデンラボ」、外遊び・水辺の体験プログラムなどが用意されている。ガーデンクラブでは、毎年200種類を超える花を種から育て、5,000ポット以上の苗を住民とともに育成するなど、地域の人が手を動かして景観をつくる活動が続いている。(参考:豊洲グリーン100プロジェクト | 豊洲ぐるりパーク、豊洲ガーデンクラブ | 豊洲ぐるりパーク、ガーデン情報 | 豊洲ぐるりパーク)
これらの地道な緑育成と並行して、季節ごとのイベントが賑わいを生み出している。手づくり品や雑貨が並ぶ「豊洲スタイルマーケット」やマルシェ、植物フェス、スポーツフェス、水辺の音楽イベント、公園での野外上映会など、毎月テーマを変えた企画が打たれてきた。マーケットやイベントは来園のきっかけをつくると同時に、出店者や来街者を巻き込みながら公園を地域の交流の場として機能させている。(参考:豊洲グリーン100プロジェクト | 豊洲ぐるりパーク、豊洲ぐるりパーク 公式サイト)
第一の特徴は、「維持管理」と「収益事業」と「自主事業」を一つの主体が一体で回している点である。多くの公園指定管理が清掃・修繕などの維持管理を中心とするのに対し、本事例ではBBQ広場やレストランといった収益施設の運営を組み込み、そこで得た収入を緑育成・環境教育・イベントといった自主事業の原資へと循環させている。区の財政負担をできるだけ増やさずに公園の質を高める「稼ぐ公園」の考え方を、具体的な事業構成として実装している。(参考:豊洲公園・ぐるり公園でのイベント開催や撮影申し込み窓口「豊洲ぐるりパークセンター」開設 | とよすと、手ぶらBBQ広場 | 豊洲ぐるりパーク)
第二に、専門性の異なる複数企業による共同事業体という運営体制である。緑化・木材、建設コンサルタント、スポーツ施設、流通という異業種が一つのJVを組むことで、植栽や景観づくり、空間設計、スポーツ・健康プログラム、収益施設の調達といった多面的な機能を、一括して公園運営に持ち込める。単独企業では揃えにくい総合力を、事業体の組成によって確保している点が、大規模・多機能な水辺公園の管理に適している。(参考:豊洲パークマネジメントJV | 豊洲ぐるりパーク)
第三に、「100年先の景観」という長期ビジョンと、住民が手を動かす参加型活動を結びつけている点である。豊洲グリーン100プロジェクトは、景観を世代を超えて受け継ぐ共有財産と位置づけ、ガーデンクラブや清掃、子ども向けの環境教育を通じて、来園者を単なる消費者ではなく公園を育てる担い手へと巻き込もうとしている。にぎわいイベントによる短期的な集客と、緑づくり・教育による長期的なコミュニティ醸成を、同じプロジェクトの両輪として設計している。(参考:豊洲グリーン100プロジェクト | 豊洲ぐるりパーク、ガーデン情報 | 豊洲ぐるりパーク)
本事例は2019年に始まり継続している取り組みだが、調査時点では来園者数や事業収支、イベント動員数といった定量的な成果を示す公開データは確認できなかった。この点は、効果を客観的に評価するうえでの制約として留意が必要である。(参考:豊洲ぐるり公園 - 江東区)
その上で、客観的に確認できる到達点としては次の要素が挙げられる。まず、収益施設(都心部最大級の手ぶらBBQ広場、パークレストランなど)が公園内に整備され、行政の財源に過度に依存しない運営の枠組みが形になっていることである。次に、豊洲ガーデンクラブが200種類を超える花を種から育て、年間5,000ポット規模の苗を住民の手で育成し続けるなど、住民参加による緑育成が一過性でなく継続されていること、そして豊洲スタイルマーケットや各種フェス、野外上映会といった定例・季節イベントが毎月のように開催され、水辺公園が日常的な賑わいと交流の場として運用されていることである。にぎわいづくりと緑育成・環境教育を同一の運営体が束ねている点が、調査時点で確認できる主要な成果といえる。(参考:豊洲グリーン100プロジェクト | 豊洲ぐるりパーク、豊洲ガーデンクラブ | 豊洲ぐるりパーク、ガーデン情報 | 豊洲ぐるりパーク、手ぶらBBQ広場 | 豊洲ぐるりパーク)
第一の示唆は、収益施設の収入を公園の質向上へと循環させる「稼ぐ公園」モデルの実装である。豊洲ぐるりパークは、BBQ広場やレストランといった集客力のある施設を公園内に置き、その収益を緑育成・環境教育・イベントの原資に回すことで、区の財政負担を抑えながら魅力を高めようとしている。良好な水辺景観や広い敷地という資源を持つ公園であれば、Park-PFIや設置管理許可制度を活用して収益機能を組み込み、得られた収入を公共的な活動へ再投資する設計は応用しやすい。ただしこのモデルは集客が見込める立地条件に支えられている面があり、来園需要の小さい地域では収益施設の成立可能性を慎重に見極める必要がある。(参考:手ぶらBBQ広場 | 豊洲ぐるりパーク、若洲公園整備事業(Park-PFI) | 江東区)
第二に、異業種の専門性を束ねる共同事業体という体制づくりである。大規模で多機能な公園を一社で運営するのは難しいが、緑化・空間設計・スポーツ・流通など異なる強みを持つ企業がJVを組むことで、植栽から収益施設まで幅広い機能を一括して担える。地域の事業者を含めて役割を分担する共同事業体の組成は、属人的な熱意に依存せず運営を続けるうえで参考になる。(参考:豊洲パークマネジメントJV | 豊洲ぐるりパーク)
第三に、利活用のワンストップ窓口を設けて、企業や市民が空間を使いやすくする仕組みである。豊洲ぐるりパークセンターは、イベント・スポーツ大会・商業撮影などの相談から申し込みまでを一括で受ける窓口として機能し、行政手続きの煩雑さが利活用の障壁になることを防いでいる。公園を「使ってもらう」ことを前提に、申請・相談の入口を明確化する運営は、他の自治体・指定管理者にも取り入れやすい工夫である。あわせて、にぎわいイベントだけでなく住民参加型の緑育成や環境教育を継続的なプログラムとして組み込むことが、公園を一過性の集客装置で終わらせず、長期的なコミュニティの拠点へと育てる鍵となる。(参考:豊洲公園・ぐるり公園でのイベント開催や撮影申し込み窓口「豊洲ぐるりパークセンター」開設 | とよすと、豊洲グリーン100プロジェクト | 豊洲ぐるりパーク)
2026年6月時点の調査内容に基づいて作成
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