
第3期福山市空家等対策計画
この記事は、my grooveを運営する株式会社Groove DesignsがAIを活用し独自に調査・作成したものです。
福山市が2026〜2030年度に実施する空家等対策計画。実態調査で空き家が6,359件(前回比42%増)に増えた一方、危険空家は減少という二極化を踏まえ、KPIを「現状維持」から「解消」型へ転換した事例。
第3期福山市空家等対策計画は、福山市が空家等対策の推進に関する特別措置法第7条に基づき、2026年度から2030年度までの5年間を計画期間として策定した行政計画である。2016年12月の当初計画、2021年3月の第2期計画に続く3期目にあたり、「福山みらい創造ビジョン」「福山市都市マスタープラン」「福山市住生活基本計画」等の上位・関連計画と連携づけられている。 (参考:第3期福山市空家等対策計画を策定しました)
計画の土台となったのは、2024年10月から2025年3月にかけて実施した市内全域の空き家実態調査と、2025年9月に実施した所有者アンケート調査である。実態調査では市内の空き家を5段階の危険度ランクで判定した結果、把握件数は6,359件と、前回2015年度調査の4,466件から約42%増加した。一方で、倒壊の危険性が大きい最も深刻なランクの空き家は749件から410件へと減少しており、「総数は増えているが、最も危険な物件は減っている」という二極化した状況が明らかになった。この分析を踏まえ、第3期計画では成果指標を第2期までの「現状維持」型から、危険な空き家の「解消」と活用されない空き家の「増加抑制」を掲げる指標へと転換している。 (参考:第3期福山市空家等対策計画(本文))
福山市の人口は2020年の460,930人から減少局面に入り、2025年時点で443,916人、2050年には383,669人まで減少すると推計されている。一方で住宅数は増加を続けており、2023年の住宅・土地統計調査では住宅数約22万7千戸に対し空き家率15.1%(全国13.8%、広島県15.8%)、賃貸・売却用等を除いた「その他の空き家」率は7.0%となった。住宅ストックは2018年比で約1万戸積み増され、その裏側で空き家も約4千戸増えており、新築が供給され続ける限り空き家の発生を止めにくい構図が続いている。 (参考:第3期福山市空家等対策計画(本文))
住宅ストックの老朽化も進んでいる。旧耐震基準(1981年5月以前)の住宅が全体の約26%を占め、持ち家世帯のうち高齢者のみの世帯は約3分の1に達する。2025年に実施した所有者アンケート(回答1,979件、回収率41.7%)では、所有者の約80%が60歳以上であり、空き家となった要因の約60%が「居住者の死亡」であった。築51年以上の旧耐震基準の建物が約55%を占め、管理の状況については「管理できていない」が約35.7%、そのうち「遠方に住んでいて自分で管理できない」が約25%を占めた。空き家に関して困っていることとしては「家財等の片づけ」が約22%、「何をすればよいか分からない」が約8%あり、所有者が売却や除却に向けた具体的な方針を立てられずにいる実態が定量的に把握された。 (参考:第3期福山市空家等対策計画(本文))
第2期計画(2021〜2025年度)は、空き家戸数を2020年度の13,470戸で「現状維持」する目標と、危険空家等(ランクD・E)の是正棟数を2025年度までに1,700棟とする目標の2指標で運用されてきた。しかし2023年の住宅・土地統計調査では空き家数が15,920戸まで増加し目標を達成できず、危険空家等の是正棟数も累計1,001棟(達成率58.9%)にとどまった。除却や自主的な是正により2,271棟の空き家が解消した一方、それを上回るペースで新たな空き家が発生し続けたことが要因である。この検証結果が、第3期計画で「危険な空家等への対応」を最重点方針に据える直接の根拠となった。 (参考:第3期福山市空家等対策計画(本文))
危険度ランク別の実態調査
2024年10月から2025年3月にかけて、空き家の分布と危険度を把握するため、公道から5m以内に立つ住宅を市内全域で洗い出し、現地に出向いて外観を確認する形で調査員が判定を行った。国土交通省住宅局の「地方公共団体における空家調査の手引き」に基づき、家屋の老朽度や景観状況(門柱・塀の損傷、傾き、雑草の繁茂、立木の腐朽、ごみの放置等)から、A(再利用可能)からE(倒壊の危険性が大きく周辺への影響もある)までの5段階と未判定に分類した。この結果、把握した空き家6,359件のうち、ランクAが3,259件(51.3%)と過半を占める一方、ランクEは410件(6.4%)であることが判明した。 (参考:第3期福山市空家等対策計画(本文))
所有者アンケートによる意向把握
実態調査で把握した空き家の所有者を対象に、2025年9月に郵送でアンケート調査を実施し、空き家所有の状況や管理の状況、今後の意向など26問について1,979件(回収率41.7%)の回答を得た。今後の意向を尋ねた設問では「売却・無償譲渡」が約32%、「解体」が約19%という回答が並び、所有者の多くが手放す方向を志向していることがうかがえた。流通の後押しや除却費用の補助が、実際の行動に結びつく可能性を示すデータといえる。この調査結果は、施策の優先順位づけと成果指標の設定に反映されている。 (参考:第3期福山市空家等対策計画(本文))
4つの方針への施策の再編
実態調査とアンケートの分析結果を踏まえ、空き家の状態に応じて「危険な空家等への対応」「発生予防・抑制」「適正管理の促進」「有効活用の促進」の4つの方針を設定し、それぞれ対象となる危険度ランクを明確化した(発生予防・抑制はランクA、適正管理の促進はランクB・C、有効活用の促進はランクA・B、危険な空家等への対応はランクD・E)。このうち「危険な空家等への対応」を重点方針と位置づけ、是正に着手しないまま放置される期間が延びるほど、所有者本人による解決の選択肢が狭まっていくという経験則を踏まえ、指導・勧告から命令、代執行に至る対応の判断基準(指導後5か月を経過しても是正の意思や措置の実施が確認できない場合に勧告へ移行する等)を明文化した。 (参考:第3期福山市空家等対策計画(本文))
空家等管理活用支援法人・専門家団体との連携体制の構築
2023年12月の法改正で新設された「空家等管理活用支援法人」制度を活用し、2024年11月に指定に関する事務取扱要綱を定めたうえで公募を行い、2025年3月に民間事業者1社を指定した。あわせて広島県宅地建物取引業協会、広島県司法書士会、広島県行政書士会等の専門家団体、建築指導課を総合調整窓口とする26の庁内関係部署、福山市空家等対策協議会(自治会連合会、市議会、弁護士会、宅建協会、建築士会、市立大学、社会福祉協議会等8団体で構成)との連携体制を整理し、計画の実行体制として明文化した。 (参考:第3期福山市空家等対策計画(本文))
パブリックコメントの実施と計画への反映
2026年3月16日から4月15日にかけて計画案のパブリックコメントを実施し、2件の意見(電子メール)が寄せられた。このうち1件は、危険な空家等の解消に向けて専門家団体との連携を計画に明記すべきとの指摘であり、市はこれを受けて「専門家団体や空家等管理活用支援法人と連携し、空家等の所有者が解体事業者等を選びやすくする環境整備や、空き家の除却支援制度・相談窓口等の情報提供に取り組みます」という一文を計画本文に追記し、2026年6月に計画を確定した。 (参考:第3期福山市空家等対策計画(案)に係るパブリックコメントの実施結果について、第3期福山市空家等対策計画(案)に係るパブリックコメントの結果報告)
危険度ランクを軸にした施策のマトリクス設計
多くの空家等対策計画が「危険な空き家」「活用可能な空き家」といった大まかな区分で施策を語るのに対し、本計画は実態調査で判定した5段階の危険度ランク(A〜E)を、4つの政策方針(発生予防・抑制、適正管理の促進、有効活用の促進、危険な空家等への対応)それぞれの対象範囲として明示的に紐づけている。どのランクの空き家に、どの方針の施策を、何件を対象に講じるのかが数値で示されており、対象が曖昧なまま総花的に施策を並べる計画になっていない点が特徴である。
「現状維持」目標から「解消」「増加抑制」目標への転換
第2期計画の「空き家戸数を現状維持する」という目標は、新築住宅の供給が続く限り達成が難しい構造的な問題を抱えていた。第3期計画はこれを検証したうえで、対象を「その他の空き家全体」から「周辺に大きな影響を及ぼすおそれのある危険な空家等(ランクE、410件)」に絞り込み、2030年度までにこれを「解消」するという明確なゼロベースの指標に置き換えた。あわせて「その他の空き家」の総数についても、現状の6,359件から増加させないという抑制型の指標を設定している。総量規制ではなく、リスクの高い対象への解消集中と、それ以外の総量の増加抑制という役割分担にKPIを再設計した点は、単なる目標値の引き上げにとどまらない指標設計の見直しといえる。
所有者の心理的障壁への着目
本計画は、所有者アンケートで明らかになった「家財の片づけができない」「何をすればよいか分からない」という心理的・実務的な障壁に対応するため、「空き家について考えるハンドブック」に住まいのエンディングノートの活用に関する記載を追加し、高齢者を対象とした講習会等で空き家となる前段階からの将来計画の検討を促す取り組みを新規に位置づけている。除却補助や相談窓口の整備といった供給側の施策だけでなく、所有者の意思決定を後押しする情報提供を計画に明記している点は、他の空家等対策計画と比較した際の特徴の一つである。 (参考:第3期福山市空家等対策計画(本文))
実態調査によれば、行政による是正指導と所有者側の自主的な対応が積み重なり、2015年度に4,466件あった空き家は2024年度末までに2,195件(50.9%減)へと半減した。ところが同じ2024年度に行った実態調査では、これとは別に4,164件の空き家が新たに見つかり、両者を合算した2025年4月時点の空き家総数は6,359件に達している。危険度の高いランクD・Eの空き家に限ると、2015年度の1,695件から2024年度末で800件(52.8%減)まで減少したが、新規把握分135件を加えた935件が2025年時点の残存件数であり、うち周辺への影響が最も大きいランクEは410件である。 (参考:第3期福山市空家等対策計画(本文))
危険な空家等への行政対応の実績としては、これまでに特定空家等を136件認定し、2026年3月末時点で81件(助言・指導136件、勧告5件、略式代執行2件を含む)の除却等が確認されている。市に寄せられた空き家に関する相談・通報のうち危険空家等に関するものは、法施行前10年間(2005〜2014年度)の116件から法施行後10年間(2015〜2025年度)で538件に増加した。草木の繁茂・立木等やその他の相談も合わせた全体件数は、法施行後10年間で1,092件(危険空家等538件、草木の繁茂・立木372件、その他182件)に達しており、対策の周知が進んだことの裏返しとして相談件数自体は増加傾向にある。 (参考:第3期福山市空家等対策計画(本文))
補助制度の活用実績としては、2025年12月末時点で空家除却支援事業(2024年度〜)が28件、空家等地域活性化推進事業(2021年度〜)が17件、空家等地域活用支援事業(2017年度〜)が13件、空家リノベーション補助事業(2024年度〜)が11件などとなっている。また広島県宅地建物取引業協会との協定に基づく空き家バンクの成約件数は、2016年12月の制度開始から2025年12月末までの累計で36件(同意書提出199件)である。 (参考:第3期福山市空家等対策計画(本文))
危険度ランクを軸に施策の対象を切り分けるマトリクス設計は、空き家を一律に扱う計画から脱却するための再現性の高いフレームワークである。実態調査の手法自体が国土交通省の手引きに基づく標準的なものであるため、独自の判定基準を新たに開発しなくても、他自治体が同様の調査を実施すれば同じ枠組みで施策を対象化できる。
第2期計画の「現状維持」目標が未達に終わった経緯は、新築供給が続く地域で空き家の総量そのものを抑制目標に据えることの難しさを示す教訓となる。総量よりも「周辺に深刻な影響を及ぼす危険な空き家をゼロにする」という質的な指標に絞り込み、総量については増加抑制にとどめるという役割分担は、人口減少と新築供給が同時に進む多くの地方都市に応用可能な指標設計の考え方である。
また、所有者アンケートで「困りごと」を定量的に把握し、その結果をハンドブックやエンディングノートといった具体的な情報提供施策に落とし込むプロセスは、行政の相談窓口を待つだけでなく、所有者の心理的障壁に踏み込んだ発生予防策を検討する際の材料になる。一方で、第3期計画自体はまだ2026年度に始動したばかりであり、「危険な空家等の解消」という野心的な目標が2030年度までにどこまで達成されるかは、今後の実績公表を継続的に確認する必要がある。
2026年09月時点の調査内容に基づいて作成
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