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柳原支所発地域力向上支援金事業(区単位の地域活動支援)
柳原支所発地域力向上支援金事業(区単位の地域活動支援)

柳原支所発地域力向上支援金事業(区単位の地域活動支援)

柳原支所発地域力向上支援金事業(区単位の地域活動支援)

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長野市が2014年度に創設した「支所発地域力向上支援金」を柳原支所が運用し、区や住民団体の公民館清掃・堤防除草・防災啓発など小さな困りごとに支所長裁量で助成する制度。参加団体は令和5年度の3団体から令和8年度は8団体に拡大し、限られた予算枠内で交付上限を柔軟に調整しながら支援している。

柳原支所発地域力向上支援金事業(区単位の地域活動支援)

概要

長野市は2014年度、「地域力」(地域住民の総合力)の向上に資する事業に対し、市内32地区を所管する各支所の支所長が裁量で予算の範囲内で助成する「長野市支所発地域力向上支援金」制度を創設した。全市共通の交付要綱は対象事業の大枠(保健福祉、教育文化、安全安心、環境保全・景観形成など)と交付限度額の上限のみを定め、募集対象や具体的な交付率・上限額、選考方法は地区ごとに支所長が決定する仕組みになっている。 (参考:長野市支所発地域力向上支援金交付要綱支所発地域力向上支援金 - 長野市公式ホームページ

長野市北部、千曲川沿いに位置する柳原地区では、小島区・布野区・村山区・中俣区・柳原団地区といった区(自治会)や、少年スポーツ団体、住民有志の会などが、この支援金を活用して公民館の清掃負担軽減、千曲川堤防沿いの環境整備、防災啓発機材の導入、多世代交流の場づくりといった小規模な活動を続けている。公開されている令和5〜8年度(2023〜2026年度)の対象事業一覧によれば、参加団体数は3団体から8団体へと拡大する一方、1団体あたりの交付上限額は段階的に引き下げられており、限られた予算の中でより多くの団体に支援を行き渡らせる運用がなされている。 (参考:柳原支所発地域力向上支援金事業 - 長野市公式ホームページ令和7年度対象事業一覧令和8年度対象事業

背景・課題

長野市支所発地域力向上支援金交付要綱は、その趣旨として「少子高齢化及び過疎化が進む現況において、地域の活性化及び課題の解決に向けた地域住民の総合力(地域力)の向上が不可欠である」ことを明記している。市中心部の第一〜第五地区から中山間地の鬼無里・大岡・信州新町・中条まで、人口動態や地域課題が大きく異なる32地区を抱える長野市にとって、全地区一律の補助メニューでは各地区固有の困りごとに対応しきれないという課題があったことがうかがえる。 (参考:長野市支所発地域力向上支援金交付要綱

柳原地区でも、住民の高齢化に伴う地域運営の担い手不足が具体的な形で表れていた。柳原団地区では公営住宅特有の事情により高齢化率が50%を超え、1世帯あたりの平均人数も1.5人程度と少なく、外出の機会が乏しく自宅で過ごす時間が長い高齢者の孤立が懸念されていた。小島区では、住民の集会や体操教室、サロン活動などで日々使われる公民館ホール(約120㎡)の清掃を高齢の利用者自身が担っており、大きな負担となっていた。千曲川に面した布野区では、夏場になると人の背丈ほどまで雑草が伸び、通行の妨げとなるほか不法投棄も誘発していたが、河川管理者による草刈りの頻度は区の要望に届いていなかった。こうした「区の自主財源だけでは後回しになりがちな、しかし放置できない小さな困りごと」の解消が、支援金活用の出発点になっている。 (参考:令和5年度対象事業一覧令和6年度対象事業一覧

取り組みのプロセス

全市共通の要綱と支所長裁量という制度設計

交付要綱では、支援金の交付対象者を「地区内で地域の活性化及び課題の解決に向けた活動をしている団体又は当該活動をしようとする団体」と定め、対象事業を①保健福祉の充実、②教育文化の振興、③安全安心の実現、④環境保全・景観形成、⑤その他地域の活性化・課題解決に資する事業、の5分野に整理している。宗教的・政治的活動や特定企業・個人の利益追求を目的とする事業、他の補助金と重複する経費、構成員への人件費・謝礼、会合の飲食費などは対象外とされる一方、交付率は対象経費の全額まで認められる余地があり、交付額にも一定の上限が設けられているなど、市全体としては比較的柔軟な枠組みが定められている。この枠内で、募集対象の範囲、対象事業の内容、交付率・上限額、募集方法・期間、選考方法・基準を地区ごとに決めるのは支所長の裁量に委ねられている。 (参考:長野市支所発地域力向上支援金交付要綱

柳原支所での運用開始(令和5年度)

公開資料で確認できる限り、令和5年度(2023年度)は中俣区・村山区・柳原団地区の3団体が対象となり、1団体あたりの交付上限額が設定されていた。中俣区は区内3か所の公民館を移動して使える可搬式プロジェクターを購入し、独自の防災・安否確認システム「結ネット」の使用方法説明会やスマートフォン教室に活用した。村山区は刈払機2台を購入し、通学路の法面や千曲川堤防上の道路交差部の除草を行った。柳原団地区はカラオケシステムを導入し、高齢者が集うカラオケサークルの場を公民館に設けた。いずれの事業も事業費のほぼ全額が交付額でカバーされている。 (参考:令和5年度対象事業一覧

参加拡大とテーマの広がり(令和6年度)

令和6年度(2024年度)は小島区・布野区・村山区・柳原団地区の4団体に拡大し、上限額は前年度と同水準で維持された。小島区はロボット掃除機を導入して公民館清掃の負担を軽減し、布野区は千曲川堤防沿いの除草・清掃を継続的な環境整備事業として実施した。村山区はワイヤレスマイク一式を導入し、行事での案内放送を明瞭にしたほか、災害時に避難場所で住民へ情報を伝える手段としても位置づけた。柳原団地区はプロジェクターとスクリーンを導入し、育成会児童7名を含む住民向けに映像・DVDを使った講習会や映画鑑賞会を開催し、多世代の日常的な関わりの機会づくりを進めた。 (参考:令和6年度対象事業一覧

参加急増に伴う交付上限の見直し(令和7年度)

令和7年度(2025年度)には対象団体が7団体に急増し、少年サッカーチーム「東北デルソーレフットボールクラブ」と少年野球チーム「柳原ファイヤーズ」が新たに加わった。団体数の増加に対応する形で、1団体あたりの交付上限額はさらに引き下げられた。布野区・小島区は、長野市が推進する地区単位の水害対応行動計画「コミュニティタイムライン」(風水害編)を区民に説明するためのプロジェクターをそれぞれ購入し、防災啓発をテーマとする事業が初めて登場した。中俣区は前年の小島区に続いてロボット掃除機を導入し、柳原団地区は住民の高齢化で手入れが行き届かず約3分の1が枯死していた緑地帯(ドウダンツツジ・サツキ)の再生に生垣バリカンを活用した。 (参考:令和7年度対象事業一覧

さらなる参加拡大とすそ野の広がり(令和8年度)

令和8年度(2026年度)は対象団体が8団体に達し、交付予定額はさらに幅を持たせて配分された。柳原ファイヤーズは2年連続で野球用具(チーム備品)の更新を申請し、東北デルソーレフットボールクラブも2年連続でユニフォーム等の更新を申請しており、後者は選手数が44人に増えたことに伴うユニフォーム不足の解消を理由に挙げている。新たに「小島お祭り愛好会(コアラの会)」が加わり、やなぎはらまつりや小島神社秋祭りで使う綿あめ機の更新を通じて、子どもと保護者が共に地域行事の運営に関わる機会づくりに取り組み始めた。小島区は公民館の椅子搬出入に伴う高齢者の負担と事故リスクを問題視し、椅子用台車とアンプ内蔵スピーカーを、布野区は重いパイプ椅子に代えて、重ねて収納できる軽量タイプの椅子を導入するなど、公民館運営の細部にわたる改善が続いている。 (参考:令和8年度対象事業

この事例の特徴

「全市共通ルール+支所裁量」による地区仕様のローカライズ

長野市の交付要綱は対象事業の分野や上限額の天井といった最小限の枠組みのみを定め、募集対象の範囲や実際の交付率・上限額、選考基準は各支所長が地区の実情に応じて設定する。柳原支所が上限額を年度ごとに機動的に見直してきたのは、この裁量の幅を活かした運用の一例である。全市一律の細かなルールを作り込むのではなく、骨格だけを共通化し運用を現場に委ねる制度設計は、地区ごとの人口規模や課題の違いが大きい自治体にとって参考になる。 (参考:長野市支所発地域力向上支援金交付要綱

固定的な予算枠の中で交付上限を可変にする配分方式

柳原支所における年度別の交付総額の推移を見ると、参加団体数が3団体から4団体、7団体、8団体へと拡大する一方で、交付総額そのものはほぼ横ばいで推移している。団体数が7団体に達した令和7年度以降、その中で1団体あたりの上限額を引き下げることで、増え続ける応募団体を広く受け入れている様子がうかがえる。予算総額を大きく増やせない状況でも、上限額を可変にすることで「申請しても採択されない」という機会損失を抑え、参加のすそ野を広げている点が特徴的である。 (参考:令和5年度対象事業一覧令和6年度対象事業一覧令和7年度対象事業一覧令和8年度対象事業

「小さな困りごと」を対象にした低ハードルの申請設計

支援対象となっている経費は、ロボット掃除機、刈払機、ワイヤレスマイク、プロジェクター、生垣バリカン、椅子用台車など、いずれも比較的少額の備品購入が中心である。大規模な計画策定やハード整備ではなく、区の運営会議や公民館運営の中で日常的に生じる「あと一歩の改善」を助成対象とすることで、専門知識やまちづくりの経験がない一般の地縁団体でも申請しやすい設計になっている。一方で交付対象外経費として、一定額以上でありながら使用期間が2年以内にとどまる物品や、構成員への人件費・謝礼、会合の飲食費などが明確に除外されており、複数年度にわたって使用できる物品購入を後押しする姿勢が徹底されている。 (参考:長野市支所発地域力向上支援金交付要綱

選考委員会による審査と実績報告(自己評価)によるPDCA

対象事業は毎年度、「選考委員会」での審査を経て決定される。具体的な選考基準の詳細は、柳原支所発の公開資料からは確認できなかった。交付を受けた団体は、事業完了後15日以内または年度末3月31日のいずれか早い日までに、収支に関する決算書類や自己評価をまとめた実施報告書、活動の様子を撮影した写真等の資料を支所に提出することが要綱で定められており、単発の助成で終わらせず翌年度以降の運用改善につなげる仕組みが組み込まれている。 (参考:柳原支所発地域力向上支援金事業 - 長野市公式ホームページ長野市支所発地域力向上支援金交付要綱

調査時点の成果

参加団体数の継続的な拡大

公開資料で確認できる範囲では、対象団体数は令和5年度の3団体から令和6年度4団体、令和7年度7団体、令和8年度8団体へと4年間で着実に拡大している。村山区と柳原団地区は4年連続で採択されており、小島区・布野区・中俣区も複数年度にわたって申請と実績報告を重ねている。継続的な応募と新規団体(令和8年度の小島お祭り愛好会)の参入が同時に起きている点は、制度が単発の一過性の助成にとどまらず、地区内で一定の認知と利用実績を積み重ねていることを示している。 (参考:令和5年度対象事業一覧令和6年度対象事業一覧令和7年度対象事業一覧令和8年度対象事業

高齢者の日常負担の軽減

小島区・中俣区でのロボット掃除機導入、村山区・小島区での掃除機や椅子用台車の更新・増設など、公民館という日常的な活動拠点の維持管理にかかる高齢者の身体的負担を軽減する事業が複数年度・複数区にわたって継続的に採択されている。柳原団地区のカラオケサークルや映像上映会も、高齢化率50%を超える公営住宅団地において、引きこもりがちな高齢者に外出・交流の機会を提供する取り組みとして位置づけられている。 (参考:令和6年度対象事業一覧令和7年度対象事業一覧令和8年度対象事業

千曲川沿いの環境整備と防災啓発への波及

村山区・布野区による千曲川堤防や法面の除草・清掃事業は、交通事故や不法投棄のリスク低減という区独自の課題解決に加え、河川管理者による対応が行き届かない範囲を地域側が補完する役割を果たしている。令和7年度以降は、布野区・小島区がコミュニティタイムラインの説明会にプロジェクターを活用するなど、環境整備にとどまらず防災啓発の場づくりへと活動の幅が広がっている。 (参考:令和6年度対象事業一覧令和7年度対象事業一覧

世代を超えた地域行事の担い手継承

東北デルソーレフットボールクラブ、柳原ファイヤーズという2つの少年スポーツ団体は複数年度にわたって用具・ユニフォームの更新を続けており、東北デルソーレフットボールクラブは選手数が38人から44人に増加したと報告している。令和8年度に新規参入した小島お祭り愛好会(コアラの会)は、地域行事の担い手不足を課題として掲げ、子どもと保護者が共に準備・運営に関わる機会づくりを目的としており、既存の区単位の活動とは異なる、任意団体・世代間交流を軸とした活動の広がりを示している。なお、これらの成果は各団体の実施報告書(自己評価)に基づくものであり、長野市による定量的な政策評価(地域力の向上度合いそのものを測る指標など)は調査時点では確認できなかった。 (参考:令和7年度対象事業一覧令和8年度対象事業

他地域への示唆

「最小限の全市ルール+現場裁量」という制度設計の応用可能性

長野市のように地域ごとの人口規模や課題が大きく異なる自治体では、全地区一律の詳細な補助要件を定めるよりも、対象分野や上限額の天井だけを共通ルール化し、募集対象・交付率・選考基準といった運用の詳細を現場(支所・地区担当課)の裁量に委ねる方が、地域固有のニーズに機動的に対応しやすい。この設計は、複数の地区・支所・出張所を抱え、本庁が全ての助成制度を細部まで一元管理することが難しい他の自治体にも応用できる考え方である。 (参考:長野市支所発地域力向上支援金交付要綱

固定予算の中で「採択率」ではなく「参加率」を優先する配分の工夫

柳原支所の運用では、応募団体数が増えても上限額を引き下げることで、予算総額をほぼ一定に保ちながら多くの団体を採択している。限られた予算で申請を後押ししたい他地域の小口助成制度にとって、「予算超過分は不採択にする」のではなく「1件あたりの支援額を段階的に絞る」という調整弁を持たせる設計は、地縁団体側の申請意欲を維持しながら財政規律も保つ、再現性のある工夫といえる。 (参考:令和7年度対象事業一覧令和8年度対象事業

属人性の低い「小口・単年度完結型」助成の再現性

柳原支所の各事業は、特定のリーダーや専門家の存在に依存せず、区の役員や少年団の保護者会など、どの地域にも存在しうる担い手が「公民館の掃除が大変」「堤防の草が伸びて危ない」といった日常的な困りごとを事業計画書に落とし込むことで成立している。人件費や継続的な運営費を対象外とし、単年度で完結する備品購入に絞り込む設計も相まって、特別な体制構築をせずに他地域の支所・出張所単位でも導入しやすいモデルになっている。 (参考:長野市支所発地域力向上支援金交付要綱

残された課題:参加団体数を超えた効果測定の仕組み化

一方で、公開されている情報からは、参加団体数の推移や個別事業の自己評価は把握できるものの、支援金が地区全体の「地域力」向上や高齢者の孤立解消、防災意識の底上げにどの程度寄与したかを示す定量的な指標は確認できなかった。他地域が同様の小口助成制度を設計する際には、採択件数や交付総額といった実施実績の管理にとどまらず、地域課題そのものの変化をどう測定し公表するかを、制度設計の段階からあわせて検討する余地がある。 (参考:令和5年度対象事業一覧令和6年度対象事業一覧令和7年度対象事業一覧令和8年度対象事業

参照元


2026年8月時点の調査内容に基づいて作成

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