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若穂地区第三次地域福祉活動計画の策定
若穂地区第三次地域福祉活動計画の策定

若穂地区第三次地域福祉活動計画の策定

若穂地区第三次地域福祉活動計画の策定

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長野市若穂地区住民自治協議会が令和5〜9年度の5か年計画として策定した地区福祉計画。市の地域福祉計画と連動しながら、4部会・9団体による分担体制、有償ボランティアによる送迎・家事援助事業、相談窓口の一元化などを軽量な計画様式に整理した。

若穂地区第三次地域福祉活動計画の策定

概要

若穂地区第三次地域福祉活動計画は、長野市若穂地区(綿内・川田・保科・牛島の4地区、人口11,703人・4,596世帯、令和5年3月時点)を担当する若穂地区住民自治協議会が、令和5年度から令和9年度までの5か年を計画期間として策定した地区独自の福祉計画である。長野市が全32地区で設置している住民自治協議会のうち、若穂地区の協議会が3期目として取りまとめたもので、市が令和4年度に策定した「第四次長野市地域福祉計画」と整合を図りながら、地区内の福祉活動を体系立てている。(参考:若穂地区第三次地域福祉活動計画(PDF)若穂 - Wikipedia

計画の骨格は、民生児童委員協議会・社会福祉部会・福祉保健部会・子育て青少年部会という4つの福祉担当部会と、保護司会や老人クラブ連合会など9の関係団体が分担して担う既存の福祉活動を一覧化し、それぞれに5か年の実施方針を付す形をとる。あわせて、有償ボランティアが家事援助と病院送迎(福祉自動車「わかほ号」)を行う「地域たすけあい事業」や、福祉相談を一手に受け付ける「地域福祉ワーカー」といった、地区が独自に運営する相互扶助の仕組みも計画の中に位置づけられている。(参考:若穂地区第三次地域福祉活動計画(PDF)

背景・課題

長野市は平成15年(2003年)に「都市内分権」の研究に着手し、平成18年(2006年)以降、当時30地区(現在32地区)で住民自治協議会の設立を進めてきた。この過程で、市が主導して設置していた区長会連合会や交通安全推進委員会など9の連合組織、区長・保健補導員など10の委嘱制度、地区社会福祉協議会活動助成金を含む11の補助金を段階的に廃止し、平成22年度(2010年度)までに各地区の住民自治協議会へ一元化した。福祉分野の活動は、防災や環境美化、青少年育成などと並び、住民自治協議会が自主的に選択して担う活動の一つと位置づけられている。(参考:長野市が進めてきた都市内分権・住民自治協議会との協働(長野市地域・市民生活部地域活動支援課、令和7年度「地域運営組織」全国セミナー資料)

福祉分野では、平成17年(2005年)に市が初めて「長野市地域福祉計画」を策定して以降、5年ごとに改定を重ね、令和4年度(2022年度)には令和8年度までの5年間を計画期間とする「第四次長野市地域福祉計画」を策定した。この計画では、住民自治協議会単位(32)を「市と協働して地域福祉に取り組む単位」と位置づけ、地区ごとに住民自治協議会が中心となって「地区地域福祉活動計画」を策定・推進することが基本目標の一つに明記されている。若穂地区の計画は、この市の枠組みに沿って策定された地区計画の一つである。(参考:第四次長野市地域福祉計画(概要版)第四次長野市地域福祉計画を策定しました

若穂地区住民自治協議会の会長メッセージでは、計画策定の直接の背景として新型コロナウイルス感染症の影響が挙げられている。コロナ禍で予定していた福祉活動の実施が軒並み制限された数年間を経て、それでも地区住民と関係団体役員の協力によって組織力を維持できたことを踏まえ、これまでの福祉活動の成果と教訓を引き継ぐ形で第三次計画を策定するに至った。あわせて、少子高齢化によって地域課題が複雑化・困難化していることも課題として挙げられている。若穂地区は長野市の最東端に位置し、周囲を山地に囲まれた地形の中に集落が点在する地域で、市全体の高齢化率は31.1%(令和7年6月時点)に達している。(参考:若穂地区第三次地域福祉活動計画(PDF)若穂 - Wikipedia長野市が進めてきた都市内分権・住民自治協議会との協働

取り組みのプロセス

1. 市の地域福祉計画との整合を前提に据える

若穂地区住民自治協議会は、市が令和4年度に策定した第四次長野市地域福祉計画が掲げる4つの基本目標(地域福祉を推進する基盤の強化、担い手が連携できる仕組みの整備、支え合い活動と福祉サービスの充実、安全・安心な暮らしと人権・権利の保護)との整合を明示したうえで、地区計画の策定に着手した。市全体の方針を地区レベルでどう具体化するかという位置づけを最初に示す構成をとっている。(参考:若穂地区第三次地域福祉活動計画(PDF)

2. 4つの福祉担当部会に既存活動を分類する

計画では、住民自治協議会内の4部会に担当活動を割り振っている。民生児童委員協議会は個別訪問や子育て世代支援を、社会福祉部会は住民福祉大会や地域たすけあい事業、集いの場(サロン、オレンジカフェ、介護者の集い)の運営を、福祉保健部会は健康体操の普及や健診受診率向上、新春健康講演会を、子育て青少年部会はコミュニティスクールや子育て支援事業を、それぞれ担当する形で役割を整理した。既に活動していた各部会の事業を新たに区分けし直すのではなく、既存の分担をそのまま計画の骨格として明文化している。(参考:若穂地区第三次地域福祉活動計画(PDF)

3. 9の関係団体との連携を明文化する

保護司会、更生保護女性会、食生活改善推進協議会、若穂ボランティアグループ、福祉自動車協力会、老人クラブ連合会、身体障がい者福祉協会、手をつなぐ育成会、赤十字奉仕団という9団体について、それぞれの団体概要と主な活動を一覧表として計画書に組み込んだ。これらは住民自治協議会とは別の任意団体だが、地域福祉活動への参加・協力や募金活動を通じて計画の実行を支える連携先として明示されている。(参考:若穂地区第三次地域福祉活動計画(PDF)

4. 事業ごとに5か年の実施方針を付す

計画本編は、実施事業名・事業の概要・5か年間の実施方針という3列の表形式で構成されている。例えば「社会を明るくする運動」では保護司会・更生保護女性会との共催継続と学校関係者・PTAとの連携強化を、「地区福祉懇談会」では各区で互助的な体制づくりに向けた準備から着手し、定着後には若穂地区全域での全体懇談会開催も視野に入れることを、それぞれ5年間の方向性として記載している。新規事業を掲げるのではなく、既存事業の実施水準を維持・発展させる方向で5年間の指針を定めている点が特徴である。(参考:若穂地区第三次地域福祉活動計画(PDF)

5. 福祉相談窓口を一覧化して公開する

計画書の末尾には、介護・医療・保健・福祉の総合相談窓口(地域包括支援センターケアプラザわかほ)、健康相談(松代保健センター)、障がい児支援(地域生活支援センターアトリエCOCO)、子育て相談(子ども相談室)、生活困窮相談(まいさぽ長野市)といった市・県の専門窓口と、地区独自の窓口である地域福祉ワーカー・地域たすけあい事業コーディネーターを、同じ表の中に電話番号付きで並記した。住民がどこに相談すればよいか迷わないよう、外部の専門機関と地区内の相談窓口を一つの案内にまとめる形をとっている。(参考:若穂地区第三次地域福祉活動計画(PDF)

この事例の特徴

1. コロナ禍からの回復を明示的な起点とした改定

第三次計画は、単なる5年ごとの定例改定としてではなく、新型コロナウイルス感染症による活動停滞からの回復過程を明示的な出発点として位置づけている点が特徴である。感染症対策のため活動の縮小・中止が相次いだ数年間の経験を踏まえたうえで、それでも維持できた組織力を土台に次の5年間の方針を定めるという構成は、パンデミック後に活動再開・再構築を迫られた他地域の住民組織にも共通する文脈を持つ。(参考:若穂地区第三次地域福祉活動計画(PDF)

2. 新規計画ではなく「既存活動の棚卸し表」としての設計

計画の中身は、目標値や新規事業の提案ではなく、既に実施している事業の概要と5か年の実施方針を淡々と並べる表形式で構成されている。ボランティアが中心となって運営する住民自治協議会にとって、白紙から中期計画を立案する負担は小さくない。既存の部会・団体・事業をそのまま棚卸しして文書化するという軽量な計画様式は、策定・改定のハードルを下げる工夫として読み取れる。(参考:若穂地区第三次地域福祉活動計画(PDF)

3. 区単位からの積み上げを前提とした福祉懇談会の設計

「地区福祉懇談会」は、若穂地区全体で一斉に始めるのではなく、まず各区(行政連絡区)で住民同士の助け合いの土台づくりに着手し、区ごとの懇談会が定着した段階で地区全域の懇談会開催を視野に入れるという、明確な段階設計を持つ。地区全域を最初から一体運営しようとせず、より小さな単位である区から積み上げていく発想は、複数の集落・町内会からなる広域の地区で福祉の話し合いの場をつくろうとする他地域にも参考になる。(参考:若穂地区第三次地域福祉活動計画(PDF)

4. 有償ボランティアによる家事援助・送迎の制度化

「地域たすけあい事業」は、地区内の協力会員(有償ボランティア)が、日常生活に支障のある高齢者・障がい者向けに草取り・掃除・買い物代行・ゴミ出しといった家事援助を行うほか、公共交通の利用が難しい住民を対象に福祉自動車「わかほ号」2台で通院送迎を行う仕組みである。利用には会員登録が必要で、協力会員(有償ボランティア)は随時募集されている。単発のボランティア活動ではなく、コーディネーターを配置した継続的な事業として計画に組み込まれている点が特徴である。(参考:若穂地区第三次地域福祉活動計画(PDF)

調査時点の成果

4部会・9団体による分担体制の運用

計画書の時点で、民生児童委員協議会・社会福祉部会・福祉保健部会・子育て青少年部会という4部会が、住民福祉大会、地域たすけあい事業、集いの場(サロン事業、若穂縁が輪、オレンジカフェ、介護者の集い)、健康体操の普及、コミュニティスクールなど、分野別に整理された事業を運用していることが確認できる。あわせて、保護司会や老人クラブ連合会など9団体が、地域福祉活動への参加・協力や募金活動を通じてこの体制を支える形で連携している。(参考:若穂地区第三次地域福祉活動計画(PDF)

相互扶助サービスの実際の稼働

地域たすけあい事業は計画上の構想にとどまらず、家事援助と福祉自動車「わかほ号」2台による送迎が実際に運行される事業として計画書に明記されている。利用には会員登録の仕組みがあり、協力会員(有償ボランティア)も継続的に募集されていることから、単年度で終わる取り組みではなく、恒常的なサービスとして運営されていることが確認できる。(参考:若穂地区第三次地域福祉活動計画(PDF)

相談窓口の一元的な案内

福祉計画や福祉相談に関することは「地域福祉ワーカー」、福祉移送・家事援助の利用申込みは「地域たすけあい事業コーディネーター」という、住民自治協議会内の専任窓口が設けられ、市の地域包括支援センターや保健センター、障害福祉課、子ども相談室、生活就労支援センターといった外部の専門窓口と並記する一枚の案内として整備されている。(参考:若穂地区第三次地域福祉活動計画(PDF)

なお、本計画は令和5年度に始まった5か年計画であり、2026年8月時点では計画期間の4年目にあたる。地域たすけあい事業の利用者数や各部会事業の参加人数といった定量的な実施結果を示す公開資料は確認できておらず、計画期間終了後の効果検証結果は今後の公表が待たれる。

他地域への示唆

地区計画は「新規事業の提案書」ではなく「既存活動の可視化」から始められる

若穂地区の計画は、目標値や新規プロジェクトを掲げるのではなく、各部会・団体が既に担っている事業を一覧化し、5年間の維持・改善方針を付す形をとっている。ボランティア中心で運営される住民自治組織が地区福祉計画の策定・更新に着手する際、まず既存活動の棚卸しから始めるという進め方は、策定作業の負担を抑えるうえで他地域でも再現しやすい。

福祉機能を単一分野の組織ではなく、地縁の総合組織に内包させる設計

若穂地区が地域福祉活動を担う母体は、福祉専門の団体ではなく、防災・環境・青少年育成など複数分野を横断する住民自治協議会そのものである。長野市はかつて地区社会福祉協議会への活動助成金を含む複数の縦割り団体・補助金を段階的に廃止し、住民自治協議会に一元化した経緯を持つ。福祉の担い手を専門組織として独立させるのではなく、地縁に基づく総合的な自治組織の一機能として位置づける設計は、地縁組織の重複や担い手不足に悩む他地域にとって、組織統合を検討する際の一つの選択肢になりうる。ただし、長野市では委嘱制度の廃止や協働に関する条例の整備など、制度面の前提条件を段階的に整えたうえでこの体制に移行しており、単純に組織を統合するだけでは同じ機能は再現しにくい点には留意が必要である。

有償ボランティアによる生活支援・送迎の組み込み

家事援助と通院送迎を「地域たすけあい事業」として計画に明記し、会員登録制と有償ボランティアの継続募集を組み合わせて運営する仕組みは、公共交通が手薄な中山間・郊外地域で高齢者や障がい者の生活を支える手法として、属人的な担い手に依存せず再現しやすい形をとっている。

専門窓口と地区独自窓口を一枚の案内に統合する

医療・保健・障がい・子育て・生活困窮といった行政の専門相談窓口と、地区独自に配置した福祉相談窓口(地域福祉ワーカー)を、電話番号付きの一つの一覧表にまとめて公開する手法は、住民が「まずどこに相談すればよいか分からない」という制度の複雑さに起因する課題に対して、低コストで着手できる対処法である。

参照元


2026年8月時点の調査内容に基づいて作成

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