
避難所運営をテーマにした地域防災訓練(在宅避難前提エリアで「自分事にしづらい防災」を扱う)
東京都江東区・豊洲で、在宅避難が前提となる高層住宅エリアにあえて「避難所運営」をテーマに据えた住民参加型の地域防災訓練。豊洲スマートシティ推進協議会と災害協力隊・江東区が、拠点避難所を在宅避難者の物資・情報ハブと捉え直し、オンライン意見募集と対面議論を往復させながら自助から共助への行動変容を促した事例。
東京都江東区の豊洲エリアで、2025年9月23日(祝・火)に「避難所運営」をテーマとした地域防災訓練が開催された。会場は地域の拠点避難所である江東区立豊洲西小学校。住民28名が参加し、その内訳は地域の自主防災組織「災害協力隊」のメンバーと一般参加者がおよそ6対4だった。主催は、豊洲ゆかりの企業が官民連携で組成したまちづくり組織「一般社団法人豊洲スマートシティ推進協議会」で、江東区(防災計画課)や深川消防署豊洲出張所が連携した。 (参考:【レポート】避難所運営をテーマにした地域防災訓練を開催しました!(my groove))
この訓練の特徴は、新築タワーマンションが立ち並び「在宅避難」が前提となる豊洲で、住民が自分事として捉えにくい「避難所運営」をあえて中心に据えた点にある。前年の訓練で避難所の「開設」を体験した参加者から、開設だけでなくその後の運営についても理解を深めたいという要望が寄せられたことを踏まえ、自助(在宅避難の備え)から共助(避難所運営の支え合い)へと一歩踏み込む内容で企画された。本事例は、協議会が住民とともに継続している地域防災プロジェクト「みんなで考える、とよすの防災」の一環として実施されている。 (参考:豊洲スマートシティ推進協議会「みんなで考える、とよすの防災」(my groove))
豊洲は、湾岸の再開発によって新築のタワーマンションが集積したエリアである。耐震・制震構造を標準的に備えた新しい建物が多く、大地震が起きても建物が無事であれば自宅にとどまる「在宅避難」が現実的な選択肢となる。そのため、地域住民にとって学校などの避難所は「自分が行く場所」とは捉えにくく、避難所の運営は遠い問題になりがちだという構造的な課題があった。 (参考:【レポート】避難所運営をテーマにした地域防災訓練を開催しました!(my groove)、自主避難施設・避難所(江東区))
しかし、在宅避難は避難所と無関係ではない。江東区では区立小中学校が「拠点避難所」と位置づけられ、災害発生時に最優先で開設される。拠点避難所は、避難者を受け入れるだけでなく、自宅で被災生活を送る人々へ生活必需品を届ける役割も担う。江東区の想定では物資の配給はおおむね発災から4日目以降に本格化し、あわせて地域の被害情報を集約する拠点としても機能する。会場となった豊洲西小学校もこの拠点避難所であり、在宅避難者にとっても物資と情報の結節点になる。つまり、在宅避難を選ぶ住民こそ拠点避難所の運営を理解しておく必要がある、という逆説が課題の核心にあった。 (参考:自主避難施設・避難所(江東区))
また、地域防災の担い手である「災害協力隊」は、「自分たちのまちは自分たちで守る」を掲げ、住民が互いに助け合って地域を守ることを目的に自主的に立ち上げる防災組織で、江東区は隊の結成から日常の活動までを後押ししている。一方で、こうした自主防災組織は全国的に担い手不足が課題となっており、豊洲でも隊員をどう増やすかが論点となっていた。地震は「いつか起こる」ものではなく「いつ起きてもおかしくない」ものとして、住民を当事者へと動かすことが求められていた。 (参考:災害協力隊について(江東区))
協議会は2017年度から地域住民とともに地域防災訓練を重ねてきた。2024年9月には豊洲西小学校で地域防災訓練とワークショップを開催し、現地参加に加えてオンライン参加の枠も設け、地元のマンション自治会・団地自治会が共催、江東区防災課や深川消防署豊洲出張所が協力した。この回で避難所の「開設」に関わる訓練を経験したことが、翌2025年の「運営」をテーマとする訓練へとつながっている。 (参考:豊洲五丁目・六丁目 地域防災訓練&ワークショップ(とよすと))
2025年の訓練当日は、まず江東区防災計画課による講義から始まった。講義ではまず、前年に行った避難所開設訓練を参加者とともに総括し、共助の担い手である災害協力隊が災害時にどう動くのかをあらためて確認した。続いて、訓練のメインとなる住民同士のディスカッションへと移った。 (参考:【レポート】避難所運営をテーマにした地域防災訓練を開催しました!(my groove))
ディスカッションの論点は、事前にプラットフォーム「my groove」上の意見募集で住民から集めた声の中から選ばれた。当日は「何か一つでも具体的な行動に移す」ことをゴールに掲げ、時間いっぱい議論が交わされた。主な論点と到達点は次のようなものだった。
(参考:【レポート】避難所運営をテーマにした地域防災訓練を開催しました!(my groove))
訓練後も、住民の関与は一度きりで終わらない設計になっている。協議会は意見募集を継続し、2025年11月2日に地域の「豊洲五丁目喰いしん坊祭り」へ出店して防災パネル展示と湯せん調理による防災食づくり(サバイバルグルメ教室)を行うなど、対面イベントとオンラインを往復させながら次の機会へと学びをつないでいる。 (参考:【レポート】避難所運営をテーマにした地域防災訓練を開催しました!(my groove))
第一の特徴は、テーマ設定の逆説性である。在宅避難が前提のエリアでは防災の関心が「自宅での備蓄」に集中しがちだが、この訓練は拠点避難所を「在宅避難者のための物資・情報ハブ」として捉え直すことで、避難所運営を在宅避難者にとっても無関係ではない自分事へと引き寄せた。自助に閉じやすいタワーマンション防災を、共助へと接続する切り口を提示している。
第二に、オンラインの意見募集と対面ディスカッションを往復させる設計である。議論の論点を事前に住民から吸い上げ、当日は住民自身の問いに即して深掘りし、参加後の感想を再びオンラインに戻して次のイベントへつなぐ。プラットフォーム「my groove」が記録と継続を担保することで、単発で終わりがちな防災訓練を、住民が継続的に関与する一連のプロセスへと変えている。
第三に、抽象論ではなく運用の具体に踏み込んでいる点である。「間仕切りテントは52張りで全員分はない」「トイレは断水時に使えない」といった避難所の限界を数字とともに直視し、災害協力隊の動きを「情報班」「物資班」という役割と、マンションと避難所を往復する具体的な動線にまで落とし込んだ。これにより、各タワーマンション内部の共助と拠点避難所の運営が一本の線でつながった。
第四に、啓発を担い手確保の動線として機能させた点である。自主防災組織の担い手不足という構造的課題に対し、この訓練は災害協力隊の役割を体感する場であると同時に、入隊を検討するきっかけの場にもなった。
主催者が訓練後に実施したアンケートでは、回答した16名のうち88%が、訓練を通じて災害協力隊への見方が変わったと答えている。すでに隊に参加している人にも、一般参加者にも意識の変化が見られたという。変化の具体例として「入隊しようと思った」「顔の見える日常をつくる必要性を感じた」「災害協力隊の方に感謝」といった声が挙がり、担い手不足が課題となるなかで実際の入隊意向という行動変容にまで結びついた点は、啓発イベントの成果として注目できる。 (参考:【レポート】避難所運営をテーマにした地域防災訓練を開催しました!(my groove))
訓練全体の評価としても、有用度を尋ねた設問で回答者全員が肯定的に評価し、否定的な回答は見られなかった。在宅避難が前提のエリアで自分事化しにくいテーマを扱いながら、参加者の防災意識を高め、共助への理解を前進させたといえる。一方で、参加者は28名、アンケート回答は16名と母数は小さく、地域全体への波及や継続的な関与の定着は今後の検証課題として残る。 (参考:【レポート】避難所運営をテーマにした地域防災訓練を開催しました!(my groove))
第一に、在宅避難が主流化する高層・新興住宅地での防災の捉え直しである。湾岸のタワーマンション群のように在宅避難が前提となるエリアでも、拠点避難所を「在宅避難者の物資・情報ハブ」と再定義すれば、避難所運営は自分事になり得る。自助の備蓄だけに閉じず、自助と共助を一本の線でつなぐ論点設定は、同様の住宅特性をもつ他都市の臨海再開発地区でも応用できる。
第二に、自主防災組織の担い手不足への向き合い方である。担い手を「募集する」だけでなく、役割を体感できる啓発イベントを入隊の動線として設計し、参加者の意識・行動の変化をアンケートで測る。この手法は、防災に限らず地域活動の担い手確保に共通して有効な、行動変容を起点とする巻き込みのモデルを示している。
第三に、オンラインと対面を往復させる継続設計である。意見募集で住民から論点を吸い上げ、対面で深掘りし、感想を次のイベントへ戻す。デジタルプラットフォームを記録と継続の基盤として用いることで、年に一度の訓練を「点」ではなく「線」の関与へと育てられる。特別な技術ではなく既存の参加プラットフォームで実装できる点に再現性がある。
第四に、家庭・近隣の共助と行政制度をつなぐ具体策である。「親が帰宅できず子どもだけが在宅避難となる」という、企業の一斉帰宅抑制という制度に起因する課題に対し、学校の防災計画の事前確認や日常的なご近所への声かけといった、住民が今日から取り組める行動へ翻訳して共有した。制度・行政・家庭・近隣を具体的な行動でつなぐこの姿勢は、防災の議論を「自分が次に何をするか」へ落とし込むうえで参考になる。
2026年6月時点の調査内容に基づいて作成
この記事は公開情報に基づき、AIを用いた詳細調査により作成されました。記事内容への修正依頼、お問合せ等は以下までお寄せください。
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