
ひたちBRT自動運転バス実証実験の積み重ね(2018〜2024年)
茨城県日立市の廃線跡BRT専用道で、小型バスの基礎検証から中型バスの長距離走行、ガードレール接触事案の克服までを段階的に重ね、6年かけて中型バス全国初のレベル4認可に到達した実証プロセスを追う事例。
茨城県日立市のひたちBRT専用道では、2018年から2024年にかけて自動運転バスの実証実験が段階的に積み重ねられ、2024年11月26日に中型バスとして全国初となるレベル4(運転者を必要としない自動運転車)の認可取得へと至った。出発点は2018年10月に産業技術総合研究所(産総研)と日立市が実施した小型バス「ポンチョ」による基礎的な実証評価であり、その後、車両を中型バスへと大型化し、走行区間を延伸し、路側センサとの協調や遠隔監視といった検証項目を一段ずつ加えながら、約6年をかけて社会実装の技術・運用基盤を固めていった。 (参考:第1章 ひたちBRTにおける実証実験の経緯(RoAD to the L4)、ひたちBRT(Wikipedia))
本事例の主眼は、2025年2月に始まった営業運行(関連事例「ひたちBRT レベル4自動運転バス営業運行」で詳述)という到達点そのものではなく、そこに至るまでの「実証の階段」をどう設計し、登り切ったかにある。特に2020年の中型バス実証ではガードレールへの接触事案を経験したが、原因究明・対策・再開という一連のプロセスを公開した上で技術検証として歩みを再開しており、社会実装が一度の成功で完結するものではなく、検証の反復のなかで成立することを示す記録となっている。 (参考:12月14日発生のひたちBRT自動運転の接触事案の原因調査結果と対策(日立市))
ひたちBRTは、利用者減少により2005年に廃止された日立電鉄線の跡地を転用したバス高速輸送システムであり、一般車両や歩行者が入り込みにくい専用道を持つ。この閉鎖的で連続した走行空間は、一般道を共用する場合に比べて自動運転車両の判断負荷を下げられるため、技術の社会実装を試す場として早くから着目された。地方都市が共通して抱える運転手不足、高齢運転者の事故リスク、人口減少下での路線維持の困難さといった構造的課題に対し、廃線跡という既存インフラを自動運転の実験場へ転用する発想が起点となっている。 (参考:ひたちBRT(Wikipedia)、廃線跡を走るBRTで自動走行バスならではの課題を検証(DG Lab Haus))
もっとも、専用道という好条件があっても、路線バスの自動運転を実用化するには一度の実証では到底足りない。車両のサイズ(小型から中型へ)、走行距離(数kmから約10kmへ)、運用の自動化水準(運転手介入の度合い)、路側インフラとの連携、そして利用者の社会受容性といった複数の変数を、それぞれ検証して積み上げる必要がある。日立市の取り組みは、これらの変数を一度に動かすのではなく、年度ごとに主要な変数を一つずつ切り替えながら検証する設計を採った点に課題解決の特徴がある。 (参考:第1章 ひたちBRTにおける実証実験の経緯(RoAD to the L4)、ひたちBRTで実施される自動運転バスの実証実験とは(KDDI))
最初の段階は、2018年10月19日から28日にかけて産総研と日立市が共同で実施した「ラストマイル自動走行の実証評価」である。小型バス「日野ポンチョ」の改造車両を用い、大甕駅とおさかなセンターの間の約3.2km(専用道と一般道を含む)を走行した。専用道区間では運転手が操作に介入しないレベル4相当の自動運転を行いつつ、実証全体としては運転手が同乗する形態をとった。自己位置の推定にはGPSと路面に埋設した磁気マーカーを併用し、SBドライブの遠隔運行管理システム「ディスパッチャー」によって走行状況の監視や遠隔停止を検証した。周辺施設も含めた移動サービス(MaaS)としての検証や、乗降時の安全性、高齢層のスマートフォン決済対応といった社会受容性の論点も併せて確認され、一般住民が試乗する基礎的な実証として位置づけられた。 (参考:廃線跡を走るBRTで自動走行バスならではの課題を検証(DG Lab Haus)、第1章 ひたちBRTにおける実証実験の経緯(RoAD to the L4))
第二段階は、2020年11月30日から2021年3月にかけての中型バスによる実証である。路線バスと同型のいすゞ「エルガミオ」改造車(最高速度40km/h、運転手が責任を負うレベル2運用)を用い、走行区間を常陸多賀駅〜大甕駅〜おさかなセンターの約9km(専用道区間約7km)へと大きく延伸した。1日4往復程度で一般住民が有料で乗車し、沿道に配置した光学式・電波式の路側センサと車両を無線で連携させ、車両からは見えにくい範囲を補い合う協調走行、KDDIの通信基盤を用いた映像・センサデータの常時伝送による遠隔監視、信号協調などが検証された。車両の大型化・区間延伸・路側インフラ連携という複数の新要素を一度に検証する実証だった。 (参考:ひたちBRTで実施される自動運転バスの実証実験とは(KDDI)、ひたちBRT(Wikipedia))
この第二段階の途中、2020年12月14日午前9時52分ごろ、大甕駅西口付近で操舵が突然大きく切れ、車両の右前部がガードレールに当たる事案が起きた。乗客は乗せておらず、運転手を含む乗員3名に負傷はなかったが、自動運転による実証運行は直ちに停止された。産総研は12月25日に原因調査結果と対策を公表し、走行前の設定時に、位置推定に用いる2つの機器のうち磁気マーカー受信機の再起動を行っていなかったため、GPS方式から磁気マーカー方式へ位置推定が切り替わる地点で更新前の位置・方向情報が使われ、直進中にハンドルが急旋回したことが直接の原因だったと説明した。対策として、一方の機器を再起動した際にもう一方の機器の再起動確認を促す表示を出すシステム改善や、走行速度・走路に応じて操舵量を制限する制御が導入された。その上で、茨城交通が安全確認を経て、2021年1月に技術検証として自動運転を再開している。 (参考:12月14日発生のひたちBRT自動運転の接触事案の原因調査結果と対策(日立市)、自動運転バスがガードレール接触事故 ひたちBRT実証実験中に(レスポンス))
第三段階は、2022年12月16日から2023年2月28日にかけてのレベル4を見据えた実証である。中型自動運転バスを用い、後にレベル4認可区間となる河原子〜南部図書館の専用道約6.1kmを自動走行し、一般道は手動運転とする運用で、専用道区間内のすべてのバス停への停車も試された。利用者対応の面では、当初は体験乗車なしで運行データを蓄積し、2023年2月上旬に関係者による体験乗車、2月中旬以降に一般の体験乗車へと段階的に開放する手順が踏まれた。この実証は、2023年度に乗務員が同乗する形のレベル4自動運転移動サービス、2025年度に車内完全無人のレベル4自動運転移動サービスの社会実装を掲げる事業の中間段階に向けて、車両技術とサービス運用の両面を検証する位置づけだった。これらの積み重ねを経て、2024年11月26日に中型バスとして全国初、対象区間6.1kmは全国最長となるレベル4の認可が取得された。 (参考:第2章 事業目的・目標・事業費・事業体制(RoAD to the L4)、ひたちBRT区間で自動運転バスの実証実験を行います(日立市)、ひたちBRT(Wikipedia))
第一の特徴は、変数を一段ずつ切り替える「実証の階段」の設計にある。2018年は小型バス・3.2km・社会受容性の確認、2020年は中型バス・約9km・路側センサ協調と遠隔監視、2022年はレベル4を想定した6.1km区間での技術・サービス検証と、年度ごとに車両サイズ・走行距離・検証項目を主に一つずつ変えて積み上げた。すべてを同時に最適化しようとせず、何を検証しているのかを切り分けながら段階を踏む構成は、実証で得られた知見を次の段階へ確実に引き継ぐことを可能にした。 (参考:第1章 ひたちBRTにおける実証実験の経緯(RoAD to the L4))
第二の特徴は、走行データだけでなく利用者との接点の持たせ方も段階管理した点である。基礎実証の2018年・2020年は一般住民を乗せて社会受容性や決済・運賃面を確かめ、レベル4を見据えた2022年は体験乗車なしの期間から関係者、一般へと開放範囲を段階的に広げた。技術的な難度が上がる局面では一般の乗車をいったん絞り、運行が安定した段階で再び体験の機会を開くという調整が、安全確保と社会的な周知を両立させている。 (参考:ひたちBRT区間で自動運転バスの実証実験を行います(日立市)、ひたちBRTで実施される自動運転バスの実証実験とは(KDDI))
第三の特徴は、実証中に発生した接触事案を隠さず、原因究明から対策、再開までのプロセスを公開した透明性にある。事案の直接原因が磁気マーカー受信機の再起動漏れという運用上の手順の欠落であったこと、それに対しシステム側で再起動確認を促す改善と速度・走路に応じた操舵量制限を施したことまでが、産総研と日立市から公表された。コンソーシアムに研究機関が参画し、事故を第三者的に調査・公表できる体制が、社会的信頼を保ったまま実証を継続する基盤となった。 (参考:12月14日発生のひたちBRT自動運転の接触事案の原因調査結果と対策(日立市))
技術・制度の両面で、約6年の積み重ねは一つの到達点に達した。2018年の小型バスによる基礎実証から、2020年の中型バス・約9km・路側センサ協調走行、2022年のレベル4を想定した6.1km区間での検証へと段階を重ね、2024年11月26日に中型バスとして全国初、対象区間6.1kmは全国最長となるレベル4の認可取得に至った。これは個々の実証で確かめた車両性能・走行環境・安全監視・サービス運用の検証結果が、制度的な認可という形で結実したことを意味する。 (参考:ひたちBRT(Wikipedia)、第1章 ひたちBRTにおける実証実験の経緯(RoAD to the L4))
同時に、この積み重ねは社会実装の難しさも具体的に可視化した。2020年の接触事案は、自動運転の社会的リスクが必ずしもアルゴリズムの限界によるものではなく、機器の起動忘れのような運用手順の欠落から生じうることを示した。原因が究明され対策が講じられた一方で、こうした事案が公道に近い専用道で現実に発生しうること自体が、技術検証と並んで運用プロトコルの検証が不可欠であることを示す成果(教訓)となっている。なお、認可後の2025年2月に始まった営業運行は、その後の運用上の制約も明らかにしており、認可取得が終着点ではないことを裏づけている(営業運行の実態は関連事例「ひたちBRT レベル4自動運転バス営業運行」、その先の車内無人化は「ひたちBRT 車内無人(運転士レス)レベル4運行への移行」を参照)。 (参考:12月14日発生のひたちBRT自動運転の接触事案の原因調査結果と対策(日立市)、第2章 事業目的・目標・事業費・事業体制(RoAD to the L4))
第一に、自動運転バスの社会実装を企画する際は、単発の実証ではなく「変数を一段ずつ切り替える複数年の実証計画」として設計する発想が参考になる。日立市は車両サイズ・走行距離・運用水準・路側インフラ連携・社会受容性といった要素を年度ごとに切り分けて検証した。一度にすべてを試すと、うまくいかなかった際に原因の切り分けが難しくなる。何を検証する段階かを明確にして積み上げることで、各段階の知見が次へ継承され、最終的な認可という到達点に論理的につながった点は、規模や条件の異なる他地域でも応用しやすい。 (参考:第1章 ひたちBRTにおける実証実験の経緯(RoAD to the L4))
第二に、公開の実証で事故が起きた場合の対処の型として示唆に富む。本事例では、研究機関(産総研)がコンソーシアムに参画していたことで、接触事案の原因(磁気マーカー受信機の再起動漏れ)を第三者的に調査・公表し、具体的な再発防止策を示した上で、技術検証として運行を再開できた。実証に伴う事故を「隠す・撤退する」のではなく、「調査し・対策し・公開した上で再開する」プロセスとして設計できるかどうかが、社会的信頼を損なわずに取り組みを継続する分岐点となる。自前の事業者だけでなく、調査・公表を担える主体を体制に組み込んでおくことが再現可能な要点である。 (参考:12月14日発生のひたちBRT自動運転の接触事案の原因調査結果と対策(日立市))
第三に、自動運転の社会的リスクが運用手順の欠落から生じたという事実は、実証で検証すべき対象がAIの走行性能だけではないことを示している。受信機の再起動確認のような人手の運用フローを、システム側で強制的に確認させる仕組みへと作り替えることが対策となった。他地域が同様の取り組みを行う際は、車両技術の評価に加えて、起動・点検・引き継ぎといった運用プロトコルそのものを実証の検証項目に明示的に組み込む視点が重要になる。 (参考:12月14日発生のひたちBRT自動運転の接触事案の原因調査結果と対策(日立市))
第四に、利用者との接点を技術段階に応じて開閉する運用は、住民の理解形成と安全確保を両立させる手法として参考になる。基礎実証では一般住民を乗せて受容性を確かめ、難度の高いレベル4検証の初期は乗車を絞り、安定後に体験乗車を再び開放する。社会実装は技術の完成だけでなく、地域に受け入れられる過程を伴う。乗車機会の設計を技術の成熟度と連動させる考え方は、新しいモビリティを地域へ導入する他の場面にも応用できる。 (参考:ひたちBRT区間で自動運転バスの実証実験を行います(日立市))
2026年6月時点の調査内容に基づいて作成
この記事は公開情報に基づき、AIを用いた詳細調査により作成されました。記事内容への修正依頼、お問合せ等は以下までお寄せください。
問い合わせ:support@groove-designs.com
よくあるご質問(FAQ)もあわせてご確認ください。
#
総合計画
#
まちづくり指針
#
エリアビジョン
#
景観計画
#
緑の基本計画
#
公共空間活用
#
ウォーカブル
#
公園活用
#
防災・減災
#
空き家活用
#
エリアプラットフォーム
#
公民連携プラットフォーム
#
公民連携
#
地域コミュニティ
#
地域交流拠点
#
多文化共生
#
子育て支援
#
文化芸術
#
自動運転バス
#
モビリティマネジメント
#
モビリティハブ
#
関係人口
#
移住促進
#
探究学習
#
グリーンインフラ
#
生物多様性
#
参加型予算
#
都市整備
#
まちなか
#
駅前広場
#
協働のまちづくり
#
リノベーションまちづくり
#
フューチャーセンター
#
スマートシティ
#
AI
#
リビングラボ
#
空きスペース活用
#
居場所づくり
#
子ども食堂
#
沿線まちづくり
#
健康
#
社会教育
#
持続可能な都市
#
計画策定
#
まちづくり
#
コミュニティ形成
#
ワークショップ
#
社会実験
#
市民参加
#
子ども・若者
#
子育て世代
#
シニア