
ひたちBRT 車内無人(運転士レス)レベル4運行への移行(国内初の無人路線バスを目標)
茨城県日立市のひたちBRTでは、乗務員が同乗するレベル4自動運転の営業運行を起点に、ローカル5Gを用いた遠隔監視を基盤として車内に係員が乗らない「車内無人」運行への移行を進める。実現すれば国内初の無人路線バス営業運行となるが、2026年4月より運行は休止中である。
茨城県日立市のひたちBRTでは、2025年2月3日に始まった中型バスによるレベル4自動運転の営業運行(その概要・実績は関連事例「ひたちBRT レベル4自動運転バス営業運行」で詳述)を、最終的に「車内無人」での路線バス運行へと発展させる取り組みが進められている。車内無人とは、運転席を含むバス車内に茨城交通の乗務員(運転士・保安員)が一人も乗車せず、遠隔監視のみで路線バスを営業運行する状態を指す。実現すれば国内初の無人路線バス営業運行となる。運行主体は茨城交通株式会社で、みちのりホールディングスや先進モビリティ、産業技術総合研究所などが参画する官民連携体制のもと、経済産業省・国土交通省「RoAD to the L4」の社会実装拠点として位置づけられている。 (参考:茨城交通ニュースリリース、みちのりホールディングス プレスリリース)
ここで重要なのは、レベル4の営業運行開始そのものはゴールではなく、車内無人化に向けた一段階として設計されている点である。当面は安全確保のため運転席に乗務員が乗車した「乗務員乗車型」で走行実績を積み重ね、ローカル5G等を活用した遠隔監視体制を整えながら、運転士が車内からいなくなる「車内無人」運行を2026年度中に実現することを目指している。ただし、その前提となるレベル4営業運行自体が2026年4月1日より休止しており、再開時期・理由はいずれも本稿執筆時点(2026年6月)で公表されていない。車内無人化の実現スケジュールは流動的な状況にある。 (参考:日立市公式ウェブサイト)
この取り組みの根底にあるのは、地方公共交通が直面する運転手不足と、それに伴う路線維持の困難さである。経済産業省は、自動運転バスの社会実装を「労働生産性の改善」を目指す施策として位置づけており、運転士という人的資源の制約を技術で代替することが、運転士レス(車内無人)運行を目指す本質的な動機となっている。バスを動かすために必ず人が運転席に座らなければならない限り、運転手不足は解消されない。車内無人化は、自動運転の社会的価値を運転手不足対策へと直結させる、決定的なステップとして構想されている。 (参考:経済産業省プレスリリース)
一方で、乗務員を車内から完全になくすことには、技術認可とは別の難しさが伴う。第一に、現在の自動運転バスは安全確保の観点から着席乗車に限られ、国内で立ち乗りに対応した車両はまだなく、その分だけ一度に運べる人数が抑えられる。実際にひたちBRTでも、自動運転で運行する便が満席となり乗車できない利用者が出るケースが報告されており、乗務員がいなくなれば運賃収受や乗客対応をどう代替するかも課題となる。第二に、車内に係員が乗っていない状況では、乗客が車内で転倒するといった事態が起きても、遠隔の監視者にできるのは映像越しの呼びかけや外部機関への連絡までで、その場で身体的な介助を行うことはできない。こうした「車内に人がいないこと」自体が生む新しいリスクへの対応が、無人化の前提条件となる。 (参考:SOMPOインスティチュート・プラス)
加えて、ひたちBRTの路線は全区間が自動運転対象ではない。自動運転区間はバス専用道のうち南部図書館〜河原子BRT間の約6.1kmに限られ、その前後には一般道を手動運転する区間が残る。車内無人運行を成立させるには、手動運転区間も含めた自動化、すなわち専用道外でのレベル4化の検討が避けられない。技術の認可を取ることと、運転士が一切乗らない状態で一本の路線バスを成立させることの間には、大きな隔たりがある。 (参考:RoAD to the L4 第3章 運行計画、経済産業省プレスリリース)
車内無人化は、車内の人員配置を段階的に減らしていくプロセスとして設計されている。2022〜2023年度の実証段階では、自動運転バス1台にドライバー1名、車内乗務員2名、説明員1名、車内補助員1〜2名という手厚い体制が組まれ、安全管理と利用者対応を多人数で担保しながら走行データを蓄積した(2018年からの実証の積み重ねは関連事例「ひたちBRT自動運転バス実証実験の積み重ね」で詳述)。これに対し、2025年2月に始まった営業運行では人員が大幅に絞り込まれ、運転士1名・保安員1名・遠隔監視員0名という「乗務員乗車型」の構成へ移行した。実証から営業運行への移行そのものが、車内の人を減らすプロセスの第一段階だったといえる。 (参考:RoAD to the L4 第3章 運行計画、RoAD to the L4 日立市事例)
次の段階として経済産業省が示した2025年度の工程には、「遠隔監視型レベル4の許認可取得・運行」「可用性等の向上(立ち乗り対応方策の検討を含む)」「乗務員乗車型レベル4での長期営業運行」「専用道外におけるレベル4自動運転化の検討」が並ぶ。このうち遠隔監視型レベル4の許認可取得が、車内無人化の核心にあたる。乗務員乗車型が「人を車内に残したまま自動で走る」状態であるのに対し、遠隔監視型は「車内の人をなくし、監視を遠隔に移す」状態であり、両者の間にこそ運転士レスへの本質的な飛躍がある。 (参考:経済産業省プレスリリース)
走行環境の整備も並行して進んだ。営業運行開始当初、水木交差点では一部レベル2での運行が残っていたが、2025年2月28日の歩行者用信号機設置を起点に許認可が段階的に整い(3月25日に関東運輸局の走行環境条件付与書、5月14日に茨城県警の特定自動運行変更許可、5月15日に茨城運輸支局の道路運送法に基づく許可)、2025年5月19日からバス専用道の全線でレベル4自動運転による営業運行が実現した。専用道区間のすべてを人の介入なしで走り切れる状態を整えることは、その先の車内無人化に向けた走行環境側の前提条件となる。 (参考:産業技術総合研究所ニュース)
遠隔監視の通信基盤も早くから準備されてきた。2020年度には経済産業省・国土交通省の共同事業として、中型自動運転バスと路側センサー、遠隔監視装置を組み合わせた実証が日立市で行われ、車両が正常に運行しているか・不安定な挙動がないかを遠隔から確認する仕組みが検証された。遠隔からの映像監視を運行に支障なく成立させるには、走行中の各車両が捉えた映像を途切れなく安定的に送り続けられる通信環境が欠かせず、この2020年度実証では遠隔監視装置のネットワーク環境をKDDIが提供した。さらに2024年度には、NEC・みちのりホールディングス・ティアフォーが総務省「地域デジタル基盤活用推進事業(自動運転レベル4検証タイプ)」の実証団体として、日立市でローカル5Gを活用した遠隔監視・通信システムの検証を実施しており(この通信システム検証の詳細は関連事例「ローカル5G活用 自動運転レベル4通信システム実証」を参照)、こうした実証の積み重ねによって、車内無人運行に不可欠な遠隔監視体制の技術基盤が形づくられてきた。 (参考:KDDI IoTポータル be CONNECTED.、NECプレスリリース)
第一の特徴は、「車内無人化」を最初から到達目標に据え、営業運行をその手前の一里塚として位置づけている点である。多くの自動運転実証が「営業運行の実現」をゴールに掲げるのに対し、ひたちBRTでは営業運行を「乗務員乗車型での走行実績の蓄積期間」と明確に定義し、その先にある運転士レス運行を本丸としている。レベル4認可・営業運行という社会的に注目される成果を、それ自体の達成で完結させず、無人化という運転手不足対策の核心へ接続する設計思想が、この事例を他と分けている。 (参考:みちのりホールディングス プレスリリース)
第二の特徴は、「車内の人」と「監視する人」を分離し、後者を遠隔に集約していく構想である。将来的には一人の遠隔監視者が複数台のバスを同時に見守る体制が想定されており、これは一台に一人の運転士を張り付ける従来のバス運行とは根本的に異なる人員モデルである。2020年度の実証では遠隔監視に「dispatcher」と呼ばれるシステムが用いられ、日立電鉄の南営業所で監視が行われた。「運転」という労働を車内から消し、「監視」という労働を遠隔で薄く広く共有する——この人員モデルの転換こそが、運転手不足という構造的課題に対する本事例の回答である。 (参考:ひたちBRT ラストマイル自動走行実証評価、KDDI IoTポータル be CONNECTED.)
第三の特徴は、無人化のハードルが「車両技術」よりも「車内に人がいないこと」から生じる運用課題に集約されている点である。立ち乗りの可否、運賃収受の代替、車内で乗客が転倒した際の対応——いずれも自動運転の認識・制御技術とは別の、人がいなくなることで初めて顕在化する論点である。とりわけ立ち乗りの解禁は、自動運転バスが地域交通として定着するための中長期的な課題として明確に認識されている。技術認可の先に「無人で人を運ぶ」ことの難しさが層をなしている構造が、この事例から具体的に読み取れる。 (参考:SOMPOインスティチュート・プラス)
車内無人化に向けた前提条件のうち、走行環境面では着実な進展が確認できる。2025年5月19日にバス専用道全線でのレベル4営業運行が実現し、専用道区間を人の介入なしに走破できる状態が整った。経済産業省が示した2025年度の工程には「遠隔監視型レベル4の許認可取得・運行」が掲げられており、乗務員乗車型から遠隔監視型へ移行する道筋が政策レベルで明示されている。日立地域全体を「面的・集約的に自動運転で運行する地域」とする方向性も示されており、車内無人化は単一路線の技術実証にとどまらず、地域交通モデルの転換として構想されている。 (参考:産業技術総合研究所ニュース、経済産業省プレスリリース、みちのりホールディングス プレスリリース)
一方で、目標時期は当初計画から後ろ倒しになっている点を客観的に押さえておく必要がある。RoAD to the L4の事業計画(第2章)では、2023年度に乗務員乗車型レベル4の社会実装、2025年度に「車内完全無人」でのレベル4移動サービス社会実装を最終目標としていた。しかし、2025年2月の営業運行開始時点で公表された目標は「2026年度中の車内無人運行」であり、完全無人化のタイミングは当初想定よりも遅れている。技術認可と現実の無人運行の間にある運用上の難しさが、この時期のずれに表れている。 (参考:RoAD to the L4 第2章 事業目的・目標、茨城交通ニュースリリース)
さらに、その前提となるレベル4営業運行自体が2026年4月1日より休止しており、日立市公式サイトには「今後の自動運転バスの運行につきましては、改めてご案内いたします」と記されるのみで、再開時期も休止理由も公表されていない。乗務員乗車型の運行が現に止まっている状況は、その先の車内無人化の実現時期を一層不透明にしている。運行体制やコスト、制度設計を含めて「動かし続ける仕組み」をどう整えるかが、無人化以前の課題として残っていることを示唆している。 (参考:日立市公式ウェブサイト)
第一に、車内無人化を目指すなら「営業運行の開始」と「運転士レスの実現」を別の到達点として分けて設計することが有効である。ひたちBRTは、社会的に評価されやすいレベル4認可・営業運行をいったん通過点と定義し、その先に遠隔監視型への移行という難所を置いた。営業運行の華やかさで取り組みを完結させず、運転手不足対策の本丸である無人化までを一続きの工程として描く姿勢は、自動運転を「実証で終わらせない」ための枠組みとして他地域でも参照できる。逆に言えば、営業運行開始を最終目標に据えてしまうと、運転士が乗り続ける限り運転手不足は解消されないという本質を見失いかねない。 (参考:みちのりホールディングス プレスリリース)
第二に、無人化の最大の障壁が車両技術ではなく「車内に人がいないこと」から生じる運用課題にある、という認識が重要である。立ち乗りの可否、運賃収受の代替、車内事故時の対応——これらは自動運転の認識・制御性能をいくら高めても自動的には解けない論点であり、制度・運用・設備の側で別途準備する必要がある。同様の取り組みを構想する自治体・事業者は、車両やセンサーの調達計画と同じ重みで、「乗務員がいなくなった後の車内運用」を早期に設計テーマに据えるべきである。 (参考:SOMPOインスティチュート・プラス)
第三に、運転士という人員モデルを「一台に一人」から「遠隔の一人が複数台」へ転換できるかどうかが、自動運転バスが運転手不足対策として成立するかの分岐点になる。ひたちBRTはローカル5G等の通信基盤と遠隔監視システムを早期から整備し、この人員モデルの転換を技術面から準備してきた。ただし、遠隔で複数台を安全に見守るには映像伝送の安定性をはじめとする通信基盤が不可欠であり、走行環境(専用道・信号制御)と通信環境の双方への投資が前提となる。技術導入そのものより、誰が・どこから・何台を・どう監視するのかという運行管理体制の再設計が、再現にあたっての核心となる。 (参考:KDDI IoTポータル be CONNECTED.、ひたちBRT ラストマイル自動走行実証評価)
第四に、目標時期の後ろ倒しと2026年4月以降の運行休止という現実は、車内無人化が直線的には進まないことを率直に示している。当初2025年度を目標としていた完全無人化が2026年度へ繰り延べられ、しかも前提の営業運行自体が一時停止している事実は、自動運転の社会実装が「認可取得」では終わらず、継続運行のための体制とコストの設計こそが正念場であることを物語る。先進事例の華やかな成果だけでなく、こうした停滞や見直しの局面も含めて学ぶことが、過度な期待や拙速な導入を避けるうえで他地域にとって有益である。 (参考:日立市公式ウェブサイト、RoAD to the L4 第2章 事業目的・目標)
2026年6月時点の調査内容に基づいて作成
この記事は公開情報に基づき、AIを用いた詳細調査により作成されました。記事内容への修正依頼、お問合せ等は以下までお寄せください。
問い合わせ:support@groove-designs.com
よくあるご質問(FAQ)もあわせてご確認ください。
#
総合計画
#
まちづくり指針
#
エリアビジョン
#
景観計画
#
緑の基本計画
#
公共空間活用
#
ウォーカブル
#
公園活用
#
防災・減災
#
空き家活用
#
エリアプラットフォーム
#
公民連携プラットフォーム
#
公民連携
#
地域コミュニティ
#
地域交流拠点
#
多文化共生
#
子育て支援
#
文化芸術
#
自動運転バス
#
モビリティマネジメント
#
モビリティハブ
#
関係人口
#
移住促進
#
探究学習
#
グリーンインフラ
#
生物多様性
#
参加型予算
#
都市整備
#
まちなか
#
駅前広場
#
協働のまちづくり
#
リノベーションまちづくり
#
フューチャーセンター
#
スマートシティ
#
AI
#
リビングラボ
#
空きスペース活用
#
居場所づくり
#
子ども食堂
#
沿線まちづくり
#
健康
#
社会教育
#
持続可能な都市
#
計画策定
#
まちづくり
#
コミュニティ形成
#
ワークショップ
#
社会実験
#
市民参加
#
子ども・若者
#
子育て世代
#
シニア