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世田谷区第二次多文化共生プラン
世田谷区第二次多文化共生プラン

世田谷区第二次多文化共生プラン

世田谷区第二次多文化共生プラン

東京都
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東京都世田谷区が2024年に策定した4か年の多文化共生行動計画。3基本方針・12施策で日本語支援や多言語化、地域交流、区政参画を推進する。区民意識調査と外国人アンケートの二本立てKPIで毎年進捗を検証し、意識指標の下降やその要因、日本人・外国人住民間の認識差までを公表する点が特徴。

世田谷区第二次多文化共生プラン

概要

世田谷区第二次多文化共生プランは、区が令和6(2024)年3月に策定した令和6〜9年度(2024〜2027年度)の4か年行動計画である。「誰もが共に参画・活躍でき、人権が尊重され、安心・安全に暮らせる 多文化共生のまち せたがや」を基本理念に掲げ、「誰もが安心して暮らせるまちの実現」「地域社会における活躍の推進」「多文化共生の意識づくり及び偏見・差別の解消」の3つの基本方針と、それにひもづく計12施策で構成される。日本語学習支援、行政情報の多言語化・「やさしい日本語」化、地域交流、外国人住民の区政参画などを総合的に進める内容となっている。(参考:世田谷区第二次多文化共生プラン(世田谷区公式)

このプランの特筆すべき点は、計画をつくって終わりにせず、毎年度「取組み状況報告書」を公表して進捗を検証している運用にある。区は令和7(2025)年9月に「令和6年度取組み状況報告書」をまとめ、各施策の実績値だけでなく、区民意識調査と外国人アンケート調査に基づく数値目標(KPI)の推移と評価を明らかにしている。指標が目標に届かない、あるいは前年より下がった項目についても要因分析とともに公開しており、成果を誇示するのではなく現状を直視する構成になっている。(参考:令和6年度取組み状況報告書 本編

背景・課題

世田谷区は、平成30(2018)年に施行された「世田谷区多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例」の第9条に基づき、多文化共生施策を計画的に進める行動計画を定めることを区の責務と位置づけている。第一次プラン(平成31年3月策定)から約5年が経過し、新型コロナウイルス禍を経た社会情勢の変化、在留資格「特定技能」の創設をはじめとする国の制度改正などを踏まえ、第二次プランが策定された。計画に法的な裏付けがある点が、単発の施策集ではなく継続的な行動計画としての土台になっている。(参考:多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例世田谷区第二次多文化共生プラン 本編

背景にあるのは外国人住民の増加である。令和2年2月に23,124人だった区内在住の外国人人口は、コロナ禍による一時的な落ち込みを経て令和4(2022)年半ばから再び増加に転じ、令和6(2024)年2月には過去最多となる25,677人に達した。区の将来人口推計では、令和24(2042)年に4万6,000人規模まで拡大し、区の総人口のおよそ20人に1人を外国人住民が占める見通しである。増加とともに国籍の多国籍化も進んでおり、多文化共生施策の重要性が高まっている。(参考:世田谷区第二次多文化共生プラン 本編

世田谷区の外国人住民には、他地域と異なる構成上の特徴がある。区が令和7年に実施した外国人アンケート調査(有効回答253件)では、国籍は中国32.8%・韓国15.0%・台湾6.7%・米国6.3%と、アジア圏に加えて欧米系の割合が比較的高い。在留資格は永住者32.7%、技術・人文知識・国際業務19.7%、日本人の配偶者等10.2%、留学10.6%と、専門職や家族滞在・定住層が中心を占める。居住年数も「5年以上10年未満」20.6%、「10年以上20年未満」23.3%、「20年以上」19.8%と長期定住者が多数を占め、技能実習など短期就労層が中心の地域とは異なる。地域に根を張った住民が多いことは、地域活動への参加や相互理解を進める余地が大きい一方で、支援情報が本人に届いていないという課題も浮かび上がっている。(参考:令和6年度取組み状況報告書 本編

取り組みのプロセス

施策推進の中核を担うのが、令和2(2020)年4月に三軒茶屋駅上のキャロットタワー内に開設された「せたがや国際交流センター(愛称:クロッシングせたがや)」である。公益財団法人せたがや文化財団の国際事業部が運営し、外国人住民への情報提供、日本語教育の推進、地域参加の支援、多文化共生の意識づくりの4つを軸に活動する。区役所の縦割りとは別に、外国人住民が気軽に立ち寄れる常設拠点を置いたことで、日本語教室・交流事業・相談が一体的に展開できる体制となっている。(参考:せたがや国際交流センター(クロッシングせたがや)

基本方針1「誰もが安心して暮らせるまちの実現」では、日本語支援と生活基盤の整備を進めた。令和6年度は「外国人向け日本語教室」を年5期(対面・オンライン併用、各20回)開催し、日本語支援ボランティアを養成する「せたがや日本語サポーター講座」の初級は、2期・各定員40名(計80名)の予定に対し120名を超える申し込みが集まったため、3期目を急きょ追加することになった。生活面では、英語・中国語対応の「外国人相談窓口」に加え、通訳アプリを搭載したタブレット端末を庁内の区民対応窓口に新たに12か所追加(計19か所、14言語対応)配備し、窓口業務の多言語対応を強化した。転入者向けの生活便利帳「ライフ・イン・セタガヤ」は4言語で発行している。(参考:令和6年度取組み状況報告書 本編

情報発信と防災も強化された。令和6年9月のホームページ刷新により、対応言語は従来の3言語から131言語へと大幅に拡大した。防災面では、地域のボランティア日本語教室や外国人学校と連携した防災教室・初期消火訓練の実施、外国語版の防災啓発リーフレット「サザエさんマップ」の配布、防災ポータルサイトへの多言語翻訳ボタンの設置に加え、非常配備態勢時に外国人支援を担当する職員20名をあらかじめ指定するなど、平常時からの備えを整えた。(参考:令和6年度取組み状況報告書 本編

基本方針2「地域社会における活躍の推進」では、交流と区政参画を進めた。区内の大使館・大学・国際交流団体と連携する「せたがや国際メッセ(第8回)」や、日本語教室の受講者が三軒茶屋の商店街を歩く「さんちゃ にほんご まちたんけん」など、外国人住民と日本人住民が接点を持つ場を多数設けた。区政参画では、外国人住民が意見を交わす「せたがや会議(外国人との意見交換会)」を開催し、意見交換会で出た声を後述の多文化共生リーフレットの制作に取り入れることで、参加者の発言が形になって地域に還る回路をつくった。(参考:令和6年度取組み状況報告書 本編

基本方針3「多文化共生の意識づくり及び偏見・差別の解消」では、「多文化理解講座」を年6回開催したほか、区民から公募した「多文化共生のキャッチコピー」を載せた多文化共生啓発リーフレットを作成した。日本人住民側の受け入れ意識の醸成に軸足を置いた事業構成となっている点が、この基本方針の特徴である。(参考:令和6年度取組み状況報告書 本編

この事例の特徴

第一の特徴は、進捗を「二本立ての意識調査」で測っていることである。区は、無作為抽出した区民(15歳以上、外国人住民を含む)を対象とする「区民意識調査」と、外国籍区民を対象とする「外国人アンケート調査」の双方でKPIを設定している。同じ「偏見や差別が減少していると思う割合」でも、日本人を中心とする区民全体の見方と、当事者である外国人住民の見方を別々に把握する設計になっており、施策の受け手と担い手の双方から現状を捉えられる。多文化共生という、当事者と非当事者で見え方が大きく異なるテーマに対して、単一の指標で語らない姿勢がうかがえる。(参考:令和6年度取組み状況報告書 本編

第二の特徴は、報告書の透明性である。令和6年度報告書では、目標を下回った指標や前年より下降した指標についても、数値を隠さず、要因分析と今後の対応を併記している。「地域活動への参加が進んでいると思う」割合が下がった背景を、回答者に地域活動の経験がなく「わからない」という回答が増えたためと分析するなど、指標の動き方そのものを解釈しようとしている点は、成果報告にありがちな都合のよい抜粋とは一線を画す。(参考:令和6年度取組み状況報告書 本編

第三の特徴は、外部の専門部会による評価の視点を計画運用に組み込んでいることである。報告書には「男女共同参画・多文化共生推進審議会 多文化共生推進部会」の意見が収録されており、日本語教室の評価を受講者数だけでなく地域での自立した生活や日本人との交流にまで広げて測るべきだという指摘や、区内の外国人にはアジア圏出身者が多いにもかかわらず児童・生徒の海外派遣先が欧米に偏っている点を見直すべきだという指摘など、施策の設計そのものに踏み込む意見が公開されている。行政の自己評価に第三者の批評的視点を重ねる仕組みになっている。(参考:令和6年度取組み状況報告書 本編

調査時点の成果

総括的な指標である「多文化共生が進んでいると思う区民の割合」は、プラン策定時(2023年度)の37.7%から2024年度44.3%、2025年度46.2%へと着実に上昇し、2025年度末の目標50%に近づいている。日本語サポーター講座に定員を超える応募が集まったこと、通訳タブレットの利用が年1,176件に上ったことなど、支援基盤の利用は総じて拡大傾向にある。(参考:令和6年度取組み状況報告書 本編

一方で、重点施策に関わる意識指標の多くは目標との差が大きく、直近では下降した。「外国人等の地域活動への参加が進んでいると思う区民の割合」は策定時15.6%から2025年度14.9%へ、「外国人等に対する偏見や差別が減少していると思う区民の割合」は同31.1%から29.2%へと下がっている。区はこの下降の要因を、区民自身の実体験というよりも、昨今報じられる外国人による事件・迷惑行為など社会全体に広がる印象が無視できない形で作用しているためとみている。地域の施策努力だけでは動かしにくい、外部要因に左右される指標の難しさが表れている。(参考:令和6年度取組み状況報告書 本編

注目すべきは、日本人住民と外国人住民の認識のずれである。「偏見や差別が減少していると思う」割合は、区民意識調査(主に日本人)で29.2%だったのに対し、外国人アンケート調査では44.3%と約15ポイント高かった。当事者である外国人住民のほうが改善を実感している一方、日本人住民側がより悲観的に捉えているという構図であり、施策の力点を日本人側の受け入れ意識に置く根拠となっている。また、外国人アンケート調査の回答数が2024年度の54件から2025年度は253件へと大幅に増えたことで、区は回答の信頼性が高まったとしており、当事者調査の回収率向上そのものが施策の前提づくりになっている。(参考:令和6年度取組み状況報告書 本編

他地域への示唆

第一に、意識に関わるKPIを「当事者」と「非当事者」に分けて測ることの有効性である。多文化共生に限らず、福祉やジェンダー、障害者施策など、当事者と周囲で見え方が大きく異なるテーマでは、単一の満足度や理解度の指標だけでは実態を取りこぼす。世田谷区のように区民全体と当事者の双方を対象に同じ設問を投げかければ、両者のギャップそのものが施策の力点を示す診断材料になる。今回、日本人側のほうが改善を実感していないという結果が、意識醸成施策の方向づけに直結した点は、他地域でも応用できる設計の勘所である。(参考:令和6年度取組み状況報告書 本編

第二に、下降した指標や外部要因の影響を隠さず公表する運用の価値である。多文化共生の意識指標は、地域の施策努力とは無関係に、報道や社会全体の空気に左右されやすい。世田谷区が指標の下降を「わからない」回答の増加や社会的印象といった構造から解釈してみせたことは、KPIを機械的な達成・未達で判定するのではなく、なぜ動いたのかを読み解く姿勢の参考になる。数値が悪化した年こそ、その要因を言語化して次の打ち手につなげる運用は、どの分野の計画管理にも通じる。(参考:令和6年度取組み状況報告書 本編

第三に、当事者の声を「調査」で終わらせず「共同制作」へ接続する工夫である。外国人住民の意見交換会での議論を多文化共生リーフレットに反映させ、区民が考えたキャッチコピーを掲載するなど、参加のプロセスを目に見える成果物に結びつけている。アンケートやヒアリングで意見を集めるだけでなく、集めた声が形になって地域に還る回路を用意することは、参加意欲の維持につながる再現性の高い手法である。常設拠点(クロッシングせたがや)が日本語教室・交流・相談・参画を束ねている点も、施策を縦割りにしない拠点運営のモデルとして参照できる。(参考:令和6年度取組み状況報告書 本編せたがや国際交流センター(クロッシングせたがや)

参照元


2026年7月時点の調査内容に基づいて作成

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