
福山市グローカル人材育成事業
この記事は、my grooveを運営する株式会社Groove DesignsがAIを活用し独自に調査・作成したものです。
福山市立福山中・高等学校が2017年度から行う高校1年生対象の地元探究プログラム。地元企業・団体のSDGs関連課題を調査するだけでなく、商品化・店頭販売・イベント運営まで生徒が担う「実装まで踏み込む探究」の設計を整理した。
福山市立福山中・高等学校は、2017年度から高校1年生(中高一貫課程の4年生)全員を対象に「グローカル人材育成事業」と呼ばれる地元探究プログラムを実施している。生徒は地元企業や団体が抱えるSDGsに関わる課題をヒアリングし、フィールドワークを重ねながら解決策を企画・提案し、最終的には商品化や販売、イベント運営として実行するところまで担う。生徒が備後地域の魅力や課題そのものと向き合いながら、地域の将来を支える担い手へと成長していくことをねらいとしている。 (参考:福山高校・グローカル人材育成事業(2024年度公式サイト))
事業は2026年時点で9年目を迎え、毎年10〜14程度の探究グループが商店街、地場産業、農業、観光、公共交通、大学などさまざまな地元組織と組む。単発の職場体験や発表会にとどまらず、「福山ブランド」認定企業とのコラボ商品を実際に市内店舗で販売するなど、提案を社会実装まで進める点に特徴がある。 (参考:福山高校・グローカル人材育成事業(2025年度公式サイト))
福山市立福山中・高等学校は1889年創立の私立女学校を前身とし、1969年に市立へ移管、2004年には広島県東部で初めての公立中高一貫教育校となった。「夢をみつけ、はぐくみ、かなえる」というビジョンのもと、Interaction(共感)・Intelligence(知性)・Intention(意志)という3つの"i"を校是に掲げ、国際性と地域性を兼ね備えた人材育成を志向してきた。 (参考:福山市立福山中・高等学校 学校概要)
同校は2018年にユネスコスクールへ加盟し、持続可能な開発のための教育(ESD)の重点校としての位置づけを強めた。中学から高校までの6年間を見通し、「地域課題解決プロジェクト」「国際課題解決プロジェクト」「在り方生き方探究プロジェクト」という3本柱で探究活動を体系化しており、中学段階の「My探究」で身近な課題発見の力を養い、高校段階の「地元探究(グローカル)」で実際の課題解決の実行力へとつなげる設計になっている。2019年度には、NPO法人日本持続発展教育推進フォーラムが主催する「持続発展教育(ESD)大賞」で文部科学大臣賞を受賞した。ただしこれは学校全体のESD教育に対する評価であり、グローカル事業単体への授賞ではない。 (参考:充実の進路指導に海外交流・SDGs教育も実施「福山市立福山中・高等学校」の独自プログラム - poten.jp、福山市立福山中・高等学校 - ユネスコスクール加盟校一覧)
グローカル人材育成事業は、この6年一貫のESDカリキュラムのなかで「地域課題解決プロジェクト」の中核として2017年度に始まった。公式サイトによれば、生徒が地元企業・団体のSDGs関連の取り組みを調べ、提示された課題への解決策を探るという学びのプロセスを通じて、備後地域が抱える魅力や課題そのものへの理解を深め、地域の将来を担う人材へと育っていくことが、この事業のねらいとされている。多くの学校の探究学習が調査と発表で完結しがちななか、この事業は課題解決の「実行」までを生徒に求めている点が、事業設計上の一貫した狙いになっている。 (参考:福山高校・グローカル人材育成事業に関わる探究活動(概要サイト))
年間の流れは、4月の探究先決定とグループ分けから始まる。6月には「ラーニングカフェ」として探究先の代表者を招き、活動紹介と課題についてのメッセージを聞く場を設け、生徒との質疑応答を通じて探究の方向性を固める。夏から秋にかけては、生産現場や関連施設への訪問、インタビュー調査、農業体験や工場見学などのフィールドワークを継続的に行う。10月には「ギャラリーウォーク」でここまでの気づきをポスターにまとめて相互に共有し、11月の全体発表会では学年全体の前で成果を発表し、産業支援コーディネーターやデザイナーなど外部の専門人材が講評する。12月から1月にかけては各探究先へ個別に提案をプレゼンし、2月には一般向けの成果発表・販売イベント「グローカルフェス」で締めくくる。 (参考:福山高校・グローカル人材育成事業(2024年度公式サイト)、福山高校・グローカル人材育成事業に関わる探究活動(概要サイト))
探究先の組み合わせは年度ごとに更新される。2022年度は「地元を歩いて探究しよう」をコンセプトに、JA福山市や山野峡大田ワイナリー、神石高原まる豊とまと生産出荷組合といった食関連、広島県立歴史博物館などの文化関連、アサヒタクシーや鞆鉄道といった移動・観光関連の組織を中心に構成された。2023年度は「まちづくり」をコンセプトに、iti SETOUCHI、JR西日本(備後赤坂駅)、篠原テキスタイル、岡本亀太郎本店など12の企業・団体と連携し、食・文化・観光・地場産業を横断する構成に広がった。2024年度は12グループが、商店街活性化(umbrella)、駅前開発(iti SETOUCHI)、ものづくり(キャステム)、食品ロス削減(ダイエットクックサプライ)、地域の歴史文化(御領の古代ロマンを蘇らせる会)、地場産業デニム(篠原テキスタイル)、公共交通(中国バス)、観光振興(福山観光コンベンション協会)、大学連携(福山市立大学)、水産業(マルコ水産)、農業と国際交流(wakai.farm.my)という幅広いテーマに取り組んだ。2025年度はさらに14グループに拡大し、福山市医師会や福山市公園緑地課、複数の書店といった新たな探究先も加わっている。 (参考:福山高校・グローカル人材育成事業に関わる探究活動(概要サイト)、福山高校・グローカル人材育成事業(2023年度公式サイト)、福山高校・グローカル人材育成事業(2024年度公式サイト)、福山高校・グローカル人材育成事業(2025年度公式サイト))
この事業を特徴づけているのは、提案が絵に描いた餅で終わらない点である。篠原テキスタイル班は福山デニムを使った文庫カバーを企画し、市内の書店チェーン啓文社4店舗で実際に販売した。ダイエットクックサプライ班は同社ブランド「福山工場長」とのコラボレーションで規格外食材を活用したカリツォーネを商品化し、文化祭ではキッチンカーを出店して完売させた。マルコ水産班は海苔や海産物の販売を、山野峡大田ワイナリー班は野菜の詰め放題販売やぶどう収穫体験(約900kgの収穫実績)を行うなど、生産・加工・販売の一連の流れに生徒が関わっている。御領の古代ロマンを蘇らせる会と組んだ班は、古墳の魅力を伝えるリーフレットやワークショップを企画し、古墳の草刈り・保全活動にも参加した。 (参考:福山高校・グローカル人材育成事業(2024年度公式サイト))
商品開発以外の地域活動も幅広い。本通商店街の七夕まつりやローズマインドのまちづくりに関連するバラ祭りでのボランティア、福山駅観光案内所での案内業務、探究の記録をまとめたリーフレット「福山サラダボウル」「御領」「観光案内」や冊子「Hi-Hiふくやま」の発行などが行われてきた。2025年度には、wakai.farm.myと組む班が白とうもろこしの販売収益の一部をインドネシアの高校生への奨学金に充てる「とうもろこし奨学金プロジェクト」を推進したほか、公園緑地課と組む班が公園への図書棚の設置・運営を、書店と組む班が書店紹介冊子の作成を手がけるなど、単年で完結しない継続的な地域貢献の形も生まれている。 (参考:福山高校・グローカル人材育成事業(2025年度公式サイト))
福山市立大学との連携も組み込まれている。2023年度は同大学岡辺研究室と連携し、古民家周辺の活動に生徒が参加した。2024年度は都市経営学部長によるまちづくりの視点を学ぶレクチャーや、生徒自身による街頭アンケート調査が行われ、大学のオープンキャンパスに生徒が参加する機会もあった。高校2年生以降は、探究の成果を土台に、豪華客船来港時の鞆の浦ガイド活動(「おもてなし隊」)など、より実践的な地域活動へと発展的につながっている。 (参考:福山高校・グローカル人材育成事業(2023年度公式サイト)、福山高校・グローカル人材育成事業(2024年度公式サイト))
第一の特徴は、探究の到達点を「発表」ではなく「実装」に置いている点である。多くの学校の探究学習は、調べたことをポスターやプレゼンにまとめる発表で完結しやすい。この事業は、企業とのコラボ商品を実際の店舗で販売し、収益や在庫、来店客の反応といった現実の商取引に生徒を関与させることで、探究の結果に社会的な検証の機会を組み込んでいる。
第二に、探究先の組み合わせを年度ごとに更新し、商店街・ものづくり・食・農業・歴史文化・観光・公共交通・大学・行政窓口など、地域の産業構造そのものを教材化している点である。特定の1業種や1社への依存を避け、地元の産業マップを毎年生徒に歩かせることで、備後地域の全体像への理解を促している。
第三に、事業が学校全体のESDカリキュラムのなかに明確に位置づけられている点である。中学の「My探究」で課題発見を学び、高校の「グローカル」で課題解決の実行を学び、さらに高校2・3年次の発展的な地域活動へとつながる6年間の設計があるため、単発のイベントとして終わらない継続性が担保されている。
第四に、福山ブランド認定企業との重なりである。マルコ水産、御領の古代ロマンを蘇らせる会、キャステム、篠原テキスタイル、ダイエットクックサプライ、山野峡大田ワイナリー、Wakai.Farm.myの7社・団体は、認定を受けた回・年度こそ2016年度頃から2024年度まで幅があるものの、いずれも福山ブランド認定企業であり、2024年度のグローカル事業の探究先と重なる。市の都市ブランド戦略と学校の探究学習が、同じ地元企業群を結節点として連動している構図が見て取れる。 (参考:福山高校・グローカル人材育成事業(2024年度公式サイト)、福山ブランド|福山市都市ブランド戦略)
最も明確な成果は、2017年度の開始から2026年時点で9年目に至るまで、事業が継続的に実施されている点である。探究グループ数は2023年度11団体、2024年度12グループ、2025年度14グループと、規模を維持しながら緩やかに拡大してきた。 (参考:福山高校・グローカル人材育成事業(2023年度公式サイト)、福山高校・グローカル人材育成事業(2025年度公式サイト))
具体的な成果物としては、福山デニム製文庫カバーの店頭販売(啓文社4店舗)、規格外食材を使ったカリツォーネの文化祭完売、古墳保全活動の継続、とうもろこし奨学金プロジェクトなど、単なる学習発表にとどまらない社会実装の実績が積み上がっている。学校サイドの発信によれば、探究先である篠原テキスタイルや山野峡大田ワイナリーは、2023年5月のG7広島サミットでも製品が採用されるなど、地域を代表する企業として紹介されている。ただし、これは福山市を挙げた取り組みの一部であり、福山市の公式発信でも福山デニムのサミットバッグや福山産ワインの提供は確認できるものの、生徒の探究活動との直接的な因果関係を示す記載は見当たらない。この点は学校側の発信を根拠とした事実として、慎重に扱う必要がある。 (参考:福山高校・グローカル人材育成事業(2023年度公式サイト)、福山市広報「G7広島サミットで福山の魅力を発信」)
学校全体としては、2018年のユネスコスクール加盟、2019年度のESD大賞文部科学大臣賞受賞という外部評価を得ている。もっとも、これらは学校のESD教育全体への評価であり、グローカル事業そのものの効果を測定した数値ではない。生徒の探究力や地域理解の変化を定量的に検証した第三者評価、費用対効果の分析、地元紙による事業単体の報道は、調査時点では確認できなかった。9年間の継続と実装実績という定性的な手応えは明確である一方、事業の効果を裏づける定量データや外部評価の蓄積は今後の課題として残る。
最も再現性のある学びは、探究学習のゴールを「調査・発表」から「実装」へ一段引き上げる設計である。生徒がまとめた提案を、企業とのコラボ商品として実際に店舗で販売し、来店客や売上という現実の反応にさらすことは、学びの手応えと地域への当事者意識を強める仕掛けとして、業種や地域を問わず応用できる。重要なのは「販売できる商品」という特殊な成果物ではなく、提案を社会的な検証にさらすところまで探究を設計するという発想そのものである。
二つ目は、探究先を年度ごとに更新しながら、商店街・ものづくり・食・農業・歴史文化・観光・公共交通・大学・行政窓口といった多様なセクターを組み合わせるポートフォリオ型の設計である。特定の1社の熱意や1つの目立つ産業に依存せず、地域の産業構造全体を教材として棚卸しする発想は、際立った基幹産業を持たない地域でも、既存の企業・団体をマッピングし直すことで応用可能である。
三つ目は、単発の事業としてではなく、学校全体の6年一貫のESDカリキュラムに明確に位置づけている点である。中学での課題発見、高校での課題解決の実行、その先の発展的な地域活動という一連の流れのなかにグローカル事業を組み込むことで、担当教員の異動や単年度予算の増減に左右されにくい継続性を確保している。他地域が同種の取り組みを始める際も、単発プログラムとしてではなく、学校の教育目標体系そのものに位置づけることが持続性の鍵になりうる。
一方で、留意すべき点もある。年間を通じたラーニングカフェの運営、10を超える探究先との調整、フィールドワークの引率、発表会への外部講評者の招へいといった業務は、教員側に相応のコーディネーション負荷をかけていると推測される。この負荷を誰がどう担っているかについて、公式発信からは詳細を確認できなかった。実装まで踏み込む探究学習を他地域で再現する際は、成果物の華やかさだけでなく、それを支える運営体制をどう制度化し、特定の教員の熱意に依存しない仕組みにするかが、あわせて検討すべき論点である。
2026年9月時点の調査内容に基づいて作成
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