
福山市立常石ともに学園(公立イエナプラン教育校)
この記事は、my grooveを運営する株式会社Groove DesignsがAIを活用し独自に調査・作成したものです。
少子化による学校再編の波の中で、廃校予定だった旧常石小学校を、地元造船大手ツネイシホールディングスの提案をきっかけに日本初の公立イエナプラン教育校へ転換した福山市の事例。異年齢学級と探究学習を軸とした教育が、県内外からの教育移住者を継続的に集めている。
福山市立常石ともに学園は、2022年4月に広島県福山市沼隈町で開校した、日本で初めての公立イエナプラン教育校である。オランダ発祥のイエナプラン教育は、異なる学年の児童が混在する「異年齢学級」を基本単位とし、「対話」「遊び」「仕事(学習)」「催し」の4つの活動を軸に学びを組み立てる教育モデルであり、私立では2019年開校の長野県佐久穂町・大日向小学校に次いで、常石ともに学園は公立校として国内初の実践校となった。(参考:イエナプラン教育は、個性を尊重し多様な学びを実現する選択肢の一つ|先端教育オンライン)
前身となる市立常石小学校は、少子化に伴う福山市の学校再編計画の中で存続が危ぶまれていたが、地元造船大手ツネイシホールディングス(現・常石グループ株式会社)からの教育導入提案を機に、廃校ではなく新たな公立校への転換という道を選んだ。開校後は、市内在住者だけでなく東京都・埼玉県、さらには仙台や沖縄など遠方からの「教育移住」家庭を継続的に受け入れており、少子化対策や関係人口創出とは異なる「教育」を核とした人口誘導のモデルケースとなっている。(参考:常石ともに学園とは?教育移住した家族の本音|honnoki)
学校統廃合の波にのまれかけた地域
常石地区は、造船業を中心とした「ものづくりの町」として発展してきた人口約3,000人の集落で、常石小学校区は15年間で人口が3割近く減少していた。少子化が進む中、福山市は内海小学校・内浦小学校・能登原小学校・常石小学校・千年小学校の5小学校と、内海中学校・千年中学校の2中学校を統合し、施設一体型の義務教育学校として再編する方針を進めていた。この再編は2022年4月、義務教育学校「想青学園」の開校として実現している。(参考:公立初のイエナプラン教育校「常石ともに学園」開校、3,000人の町の未来をともにつくる|中川敬文)
このままでは常石小学校もほかの小規模校と同様に、地域から学校そのものがなくなる可能性があった。
造船大手からの提案と市の教育方針との合致
転機となったのは2018年12月、常石造船グループを傘下に持つツネイシホールディングス株式会社が、福山市教育委員会に対しオランダ発祥のイエナプラン教育の導入を提案したことである。同時期、福山市教育長はオランダ視察でイエナプラン教育に触れ、2016年に市が掲げていた「福山100NEN教育」(子ども一人ひとりの学ぶ速度や関心の違いに向き合う教育方針)の方向性と一致すると判断した。福山市は2018年度から市内7校のパイロット校で異年齢学習の試行をすでに始めており、その延長線上にイエナプラン教育を位置づけることができた。(参考:公立初「イエナプラン教育校」に移住者も集う訳 福山市立常石小「異年齢集団教育」の成果|東洋経済オンライン)
2019年3月、福山市議会でイエナプラン教育校創設の方針が正式に発表され、常石小学校の校舎を活用して2022年4月に開校することが決まった。(参考:知ってた⁉️日本の公立校で初のイエナプラン教育校「常石ともに学園」が、広島県福山市に2022年春開校!|マナプリ)
学校再編プロセスの公平性という論点
一方で、この経緯には課題も指摘されている。市内には常石学区以外にも小規模校の存続を求める地域(山野学区、内海学区など)があったが、それらの要望は受け入れられず、常石学区のみが民間企業からの提案を機に存続・転換の道を得た。地域によって扱いが異なったことへの疑問や、異年齢集団教育や個別最適化そのものは既存の小規模校の複式学級でも一定程度実現可能だったのではないかという指摘もあり、学校再編の意思決定プロセスの公平性は検証課題として残っている。(参考:【vol.8】福山市のイエナプラン教育校開校と開校経緯の問題点|エマ研)
1. 3年間の移行期間を設けた段階的導入
福山市は2022年の本開校に先立ち、2019年度から2021年度までの3年間を移行期間と位置づけ、常石小学校において異年齢集団での教育活動を段階的に試行した。2019年度は一部の教育活動、2020年度以降は1〜3年生の全教育活動を異年齢集団で実施するなど、制度を一度に切り替えるのではなく、教員・児童・保護者が徐々に新しい学び方に慣れていくプロセスを取った。(参考:知ってた⁉️日本の公立校で初のイエナプラン教育校「常石ともに学園」が、広島県福山市に2022年春開校!|マナプリ)
2. 対話集会による合意形成
2020年9月には、教育哲学者の苫野一徳氏を招いた対話集会が開催され、教育関係者約100人、保護者約20人が参加した。「テストをせずに成績をつけるにはどうするのか」といった保護者の率直な疑問に、当時の広島県教育長・平川理恵氏も交えて向き合う場が設けられ、一方的な説明ではなく双方向の対話を通じて理解を広げる進め方が取られた。2021年6月には校章デザインの公募も行われ、開校準備そのものを地域住民や保護者とともにつくるプロセスとして設計した。(参考:知ってた⁉️日本の公立校で初のイエナプラン教育校「常石ともに学園」が、広島県福山市に2022年春開校!|マナプリ)
3. 校舎改修による学びの空間づくり
校舎の改修企画・設計はUDSが担当し、「ともに学び、ともに生きる」という教育理念を空間として具現化した。1階中央には円形の大きなオープンスペースを設け、児童・教職員・地域住民が交流できる拠点とした。旧職員室は対話のための円卓空間「ビッグサークル」に、家庭科室は「キッチンシアター」に改修されたほか、教室と廊下の間仕切りをガラス張りにして開放感を持たせ、黒板を撤去してホワイトボードとプロジェクターに置き換えた。図書館は児童文学評論家・赤木かん子氏監修のもと、じゅうたん敷きの床とソファを配置し、児童が自然に本を手に取りたくなる空間に作り替えられている。職員室もフリーアドレス化され、教員同士の対話が生まれやすい環境を意図的に作った。(参考:福山市立常石ともに学園|UDS株式会社、公立初イエナプラン校 福山市立「常石ともに学園」見学|久田教育総合研究所)
4. 開校と新規入学者の受け入れ
2022年3月末に旧・常石小学校が閉校し、同じ校舎を使って翌4月に常石ともに学園が開校した。2020年10月に開催された保護者説明会には延べ202人が参加するなど、開校前から高い関心を集めており、応募段階では市外からの応募が入学者のおよそ半数を占めた。抽選の結果、新1年生32人のうち市外からの転入者は8人にのぼり、仙台や沖縄など遠方から移住してきた家庭もあった。この結果、児童数は閉校前の70人弱から開校時には130人近くまで増加した。(参考:公立初「イエナプラン教育校」に移住者も集う訳|東洋経済オンライン、公立初のイエナプラン教育校「常石ともに学園」開校、3,000人の町の未来をともにつくる|中川敬文)
異年齢学級と4つの基本活動を軸とした時間割
常石ともに学園では、1〜3年生・4〜6年生をそれぞれ1つのグループとする異年齢学級を基本単位とし、1学級あたり30人程度・全6学級、定員180人の規模で運営している。時間割はチャイムを使わず、「対話」「遊び」「仕事(学習)」「催し(行事・祝い)」の4つの活動を軸に組み立てられており、学年別に一斉に同じ内容を学ぶ従来型の授業スタイルとは異なる。(参考:【福山市】3学年縦割り学級30名×6クラス…22年度にイエナプラン教育導入市立小学校が開校|グローバルエデュ)
ブロックアワーとワールドオリエンテーションによる自立学習
学習の中心となるのが「ブロックアワー」と呼ばれる時間で、児童は1週間から1日単位で自分の学習計画を立て、それに沿って学習を進める。算数の授業を例にとると、同じ教室内で児童一人ひとりが異なる内容・異なる方法で学習を進めている場面が見られる。もう一つの柱である「ワールドオリエンテーション」は、児童自身の疑問や関心を出発点とする探究学習で、低学年では保護者が持ち寄った教材(例えば韓国のスーパーのチラシ)をきっかけに問いを立てるなど、地域や家庭の人材を授業に取り込んでいる点も特徴的である。(参考:公立初イエナプラン校 福山市立「常石ともに学園」見学|久田教育総合研究所)
「公立校である」ことがもたらす教育移住のハードルの低さ
常石ともに学園への移住家庭には、既存の一斉授業型教育への疑問やイエナプラン教育の理念への共感に加えて、「公立校で学費がかからない」という経済的な要因を移住の決め手に挙げる声がある。私立の大日向小学校(長野県佐久穂町)が学費負担を伴うのに対し、常石ともに学園は公立校であるため、家庭の経済状況を問わず教育移住のハードルを下げている点が、他のオルタナティブ教育を掲げる私立校との大きな違いである。(参考:常石ともに学園とは?教育移住した家族の本音|honnoki)
移住者と地域住民をつなぐ民間の受け皿
学校単体で移住支援を完結させるのではなく、地域団体「つねいし日和」が住まい探しの支援から地域行事への参加促進までを担い、移住者と地元住民が「常石お散歩日和」などの活動をともにする関係づくりを進めている。学校が核となりながらも、移住後の定着支援を地域側の民間組織が分担する体制が敷かれている点は、教育移住を一過性の転入で終わらせないための工夫といえる。(参考:常石ともに学園とは?教育移住した家族の本音|honnoki)
児童数の回復と高い入学希望倍率
開校時に70人弱から130人近くまで増加した児童数は、2025年時点で約170人に達し、定員180人にほぼ近い水準まで回復している。新1年生の募集枠は例年、福山市内からの希望者だけでほぼ埋まる状態が続いており、市外からの入学希望者を含めるとさらに競争率が高くなる。統廃合の危機にあった学校が、地域内外から選ばれる学校へと転換した点は、定量的に確認できる最も明確な成果である。(参考:常石ともに学園とは?教育移住した家族の本音|honnoki)
継続的な教育移住の実現
開校から現在まで、東京都・埼玉県をはじめ、仙台・沖縄など全国各地から「教育」を主目的とした移住家庭が生じ続けている。移住した保護者からは、子ども自身の「入学したい」という意思を尊重できたことや、以前は自信を持てなかった子どもが学校生活を通じて前向きな発言をするようになったといった変化が語られている。ただし、こうした声は個別の家庭の主観的評価であり、児童全体の学力や適応状況を定量的に示す公表データは確認できなかった。(参考:常石ともに学園とは?教育移住した家族の本音|honnoki)
行政・教育関係者からの継続的な視察対象に
開校翌年以降、広島県教育委員会の委員や福山市議会議員による視察が継続的に行われているほか、2022年11月時点で学校見学会が「全日程締め切り」となるなど、教育関係者からの関心も高い水準を保っている。公立イエナプラン校としての先行事例であることから、視察や研修の受け入れ自体が学校運営の一部として定着している。(参考:12月12日、菅田委員が福山市立常石ともに学園を訪問しました|広島県教育委員会、公立初イエナプラン校 福山市立「常石ともに学園」見学|久田教育総合研究所)
廃校を「新しい教育モデルへの転換点」に読み替える視点
常石ともに学園の出発点は、少子化による学校統廃合という多くの自治体が直面する課題であった。廃校をただ受け入れるのではなく、外部(この場合は地元企業)からの提案を教育方針の転換点として取り込み、新しい教育モデルの実践校に生まれ変わらせたプロセスは、人口減少地域の学校再編を検討する自治体にとって一つの選択肢を示している。ただし、常石地区のケースは地元有力企業の存在という個別条件に支えられた面もあり、同様の提案主体を持たない地域では、行政自らが教育方針の転換を主導する必要がある点に留意が必要である。
「公立×オルタナティブ教育」という組み合わせの再現可能性
イエナプラン教育のような異年齢学級・自立学習・探究学習といった要素は、私立校の専売特許ではなく、公立校の枠組みの中でも制度設計次第で導入可能であることを常石ともに学園は示した。名古屋市立山吹小学校が「名古屋型イエナプラン」として、既存校の中に児童が学び方を選択できる時間(YST)を部分的に導入する取り組みを進めているように、常石のような全面転換だけでなく、既存の学校運営の中に要素を段階的に取り入れる漸進的なアプローチも選択肢となる。全面転換か部分導入かは、対象校の規模や地域の合意形成の状況に応じて判断すべき論点である。(参考:公立小と融合する「名古屋型イエナプラン」 自律と尊重の学びに注目|中日新聞Web)
合意形成に要する時間を織り込んだスケジュール設計
常石ともに学園は、提案から本開校まで約3年半、うち3年間を移行期間として、教育関係者・保護者との対話集会や校章デザインの公募などを重ねながら段階的に制度を切り替えた。学校教育のあり方を大きく変える取り組みほど、拙速な制度変更ではなく、関係者が新しい学び方を理解し受け入れるための時間を計画段階から確保しておくことが、円滑な導入の条件になると考えられる。
学校再編の公平性に対する説明責任
一方で、常石学区以外の小規模校区からの存続要望が退けられた経緯は、学校統廃合を伴う施策において、なぜある地域だけが特別な扱いを受けるのかという公平性の説明責任が住民から求められることを示している。民間からの提案を機に個別の学校を存続させる場合、他の地域にも同様の機会や代替案を示すなど、再編プロセス全体の納得感を高める工夫が求められる。(参考:【vol.8】福山市のイエナプラン教育校開校と開校経緯の問題点|エマ研)
2026年09月時点の調査内容に基づいて作成
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