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町方町・通横町第一地区市街地再開発事業 - 昭和の防火建築帯「アーケード名店街」を継承する複合再開発
町方町・通横町第一地区市街地再開発事業 - 昭和の防火建築帯「アーケード名店街」を継承する複合再開発

町方町・通横町第一地区市街地再開発事業 - 昭和の防火建築帯「アーケード名店街」を継承する複合再開発

町方町・通横町第一地区市街地再開発事業 - 昭和の防火建築帯「アーケード名店街」を継承する複合再開発

静岡県
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静岡県沼津市の中心市街地で、昭和29年築の近代建築遺産「アーケード名店街」を再生する市街地再開発事業。約20年の合意形成を経て2025年10月に着工し、住宅105戸を含む地下1階地上10階の複合施設として令和10年頃の完成を目指す。

町方町・通横町第一地区市街地再開発事業 - 昭和の防火建築帯「アーケード名店街」を継承する複合再開発

概要

町方町・通横町第一地区市街地再開発事業は、静岡県沼津市の中心市街地、JR沼津駅南口に位置する「アーケード名店街」を中心とした約0.3haの区域で進められている第一種市街地再開発事業である。この一帯は1954年(昭和29年)、耐火建築促進法の枠組みのもとで全国に先駆けて実現した共同建築様式の商店街をルーツに持つが、建物の老朽化と賑わいの低下という課題を長年抱えてきた。地権者らが組織する町方町・通横町第一地区市街地再開発組合が施行者となり、タカラレーベン(MIRARTHホールディングスグループ)とフジタの共同企業体を特定業務代行者に迎えて、鉄筋コンクリート造地下1階地上10階建・延床面積12,400㎡、住宅105戸と商業施設からなる複合施設への建て替えを進めている。2024年3月に権利変換計画認可を経て、2025年10月1日に新築工事の起工式を実施し、令和10年(2028年)頃の完成を目指している。(参考:町方町・通横町地区第一種市街地再開発事業|沼津市公式サイト静岡県沼津市「町方町・通横町第一地区第一種市街地再開発事業」起工式開催のお知らせ|PR TIMES

町方町・通横町地区の全体計画区域は約1.8haに及び、先行する第一地区(約0.3ha)に続いて第二地区(約0.6ha)でも2023年6月に準備組合が設立され、事業協力者の選定が進むなど、地区を分けながら段階的に再開発が広がっている。なお、同じ沼津駅南口エリアでは旧西武百貨店跡地を対象とした「NUMAZU JAMS」の整備も進んでいるが、これは沼津市・UR都市機構・民間事業者が主体となる別地区・別事業であり、本事業とは施行者・敷地とも異なる(参考:沼津駅南口の新たな賑わい拠点|沼津市公式サイト)。

背景・課題

昭和29年、日本で初めての防火建築帯として誕生

アーケード名店街は、1952年に制定された耐火建築促進法に基づき、1954年(昭和29年)に本通りに完成した鉄筋コンクリート造の商業建築である。複数の地権者が一体となって建設する「共同建築様式」を採用し、1階に店舗、2階以上に住宅を配する構成で「横のデパート」とも呼ばれた。2階が歩道の上方へ張り出し、屋根付きの歩廊(ポルティコ)が途切れず連なる外観は、当時の国内には類例がなく先進的な都市建築として注目を集めた。設計には建築家・池辺陽と研究室のメンバーが携わり、モダニズムの理念のもとで店舗と住宅が混在する建物を近代的な手法で解決しようとした。同種の防火建築帯は1961年の同法廃止までに全国84都市で建設されたが、その多くが現在は老朽化に直面している。(参考:沼津の名建築「アーケード名店街」の一部解体へ 築70年で老朽化 再開発後に目指すのは「似た街並み」|東京新聞デジタルアーケード街|沼津市公式サイト

商業中心の移動と70年に及ぶ老朽化

完成当初は沼津の商業の中心として賑わったアーケード名店街だが、1957年(昭和32年)の西武百貨店出店をはじめとする大型店の相次ぐ進出により、商業機能の中心は次第に駅前へと移っていった。加えて築70年を超える建物の老朽化が進み、来街者の減少とともに街のにぎわいが失われていった。市浦ハウジング&プランニングの整理によれば、こうした「中心市街地としての賑わいと活力の低下や、エリア全体の建物の老朽化」が、地権者が再開発に向けた検討を始める直接の課題認識となった。(参考:アーケード街|沼津市公式サイト沼津市町方町・通横町地区第一種市街地再開発事業|市浦ハウジング&プランニング

取り組みのプロセス

準備組合設立から都市計画決定まで

2006年頃(平成18年)にまちづくりの検討が始まり、2010年(平成22年)に準備組合が設立された。その後、対象区域や事業手法についての協議を重ね、2015年4月(平成27年)に都市計画決定に至った。町方町・通横町第一地区市街地再開発組合の理事長は、この過程を「次の世代に引き継げるものを作ろうと地域の力を合わせてきた」と振り返っており、地権者の合意形成には長い時間が費やされた。(参考:町方町・通横町第一地区市街地再開発組合再開発|沼津市沼津アーケード名店街中心地再生実現へ前進|株式会社東海不動産

組合設立から権利変換計画認可まで

2018年3月(平成30年)に第一地区の再開発組合設立が認可され、2022年2月(令和4年)の施行区域変更認可を経て、2023年3月(令和5年)に事業計画が認可された。この事業計画認可は、沼津市が市制100周年(2023年7月1日)を迎える年と重なっており、市長は事業認可の獲得を「市のまちづくりが加速する大きなチャンス」と位置づけた。なお、タカラレーベン・フジタは事業計画認可に先立つ2022年11月に特定業務代行者として組合と基本協定を締結しており、2024年3月(令和6年)に権利変換計画が認可された。(参考:町方町・通横町第一地区市街地再開発組合再開発|沼津市沼津アーケード名店街中心地再生実現へ前進|株式会社東海不動産沼津のアーケード街で複合施設を開発/タカラL|R.E.port

解体前見学会という記憶の継承プロセス

建物の除却工事に先立ち、2024年8月26日・27日の2日間、所有者の厚意により「解体前の最後の2日」と題した見学会が開催された。市内外から約450人が訪れ、1階の店舗部分や2階以上の住宅部分、屋上からの富士山の眺望などを体験し、地元住民や建築・まちづくりに関心を持つ人々が、70年間地域を支えてきた建物との別れを惜しんだ。見学会の後、2024年9月から10月にかけて既存建物の除却工事が始まった。(参考:アーケード名店街で見学会 再開発前の歴史的建築探訪に多数の参加者|沼津経済新聞沼津本通防火建築帯見学会-沼津アーケード名店街-(沼津市)|富士山静岡空港利活用ポータルアーケード名店街、解体前に内部公開 沼津の歴史象徴「寂しいが仕方ない」|東京新聞

起工式と第二地区への波及

除却工事を経て、2025年10月1日に新築工事の起工式が現地(沼津市町方町200番地)で執り行われた。沼津市長、地元選出の国会議員、再開発組合理事長、施工を担うフジタとタカラレーベンの役員、沼津商工会議所会頭らが出席し、地域を挙げての事業として位置づけられた。建築工事は令和7年8月から令和10年1月頃までを見込み、業界紙の建通新聞は2028年11月の施設完成、2029年12月の事業完了認可という見通しを報じている。並行して、隣接する第二地区(約0.6ha)でも2023年6月に町方町・通横町A街区市街地再開発準備組合が設立され、2024年には事業協力者の公募が行われるなど、第一地区に続く動きが具体化しつつある。(参考:静岡県沼津市「町方町・通横町第一地区第一種市街地再開発事業」起工式開催のお知らせ|PR TIMES町方町・通横町再開発事業 10階建て 28年11月完成へ|建通新聞電子版沼津市町方町・通横町A街区市街地再開発準備組合が事業協力者を募集します|株式会社フォルテックス

この事例の特徴

かつての意匠を低層部に再現する「継承型」再開発

新施設は単なる高層ビルへの建て替えではなく、地上1〜3階の低層部に旧建物由来の意匠的要素(曲面の壁面やポルティコ)を組み込むことで、防火建築帯としての歴史的景観とのつながりを感じさせる設計になっている。老朽化した建物をそのまま保存するのでも、歴史性を無視して更地から再開発するのでもなく、記憶や意匠を部分的に継承しながら現代の住宅・商業複合施設へ転換するという、両者の中間的なアプローチを採用している点が特徴である。(参考:沼津アーケード名店街に新ランドマーク、複合施設に着工 2028年度完成へ|財経新聞タカラレーベンなど、沼津アーケード名店街の再開発で起工式を実施|遊都総研

地権者組合・特定業務代行者・自治体による三者連携体制

事業の施行主体はあくまで地権者らによる市街地再開発組合であり、行政や単一のデベロッパーが主導する再開発ではない。組合はタカラレーベン・フジタ共同企業体を特定業務代行者・参加組合員として迎え、保留床の取得や設計施工を委ねる一方、沼津市は都市計画決定や各種認可の主体として事業を支える。地権者・民間デベロッパー・自治体がそれぞれの役割を分担する体制は、地権者の合意形成という時間のかかるプロセスと、大規模建築の実務遂行という専門性を要するプロセスを、無理なく組み合わせる仕組みになっている。(参考:町方町・通横町地区第一種市街地再開発事業|沼津市公式サイト沼津のアーケード街で複合施設を開発/タカラL|R.E.port

約1.8haの地区を分割して段階的に進める推進方式

町方町・通横町地区全体の約1.8haを一括で事業化するのではなく、第一地区(約0.3ha)、第二地区(約0.6ha)、後発地区(約0.9ha)に分割し、権利関係の調整が進んだ地区から順に事業化する方式がとられている。第一地区が起工式を迎えた時点で第二地区の準備組合設立と事業協力者選定が並行して進んでおり、先行地区の実現が後続地区の機運づくりにつながる構造になっている。(参考:町方町・通横町地区第一種市街地再開発事業|沼津市公式サイト沼津市町方町・通横町A街区市街地再開発準備組合が事業協力者を募集します|株式会社フォルテックス

調査時点の成果

法定手続きを経て着工に至った進捗

都市計画決定(2015年)、組合設立認可(2018年)、事業計画認可(2023年)、権利変換計画認可(2024年)という一連の法定手続きを積み重ね、2025年10月に新築工事の起工式に至ったこと自体が、20年近い検討期間を経て事業が実行段階に入ったことを示す成果である。調査時点では建物本体は未完成であり、住宅・商業施設としての実際の稼働実績や経済効果はまだ確認できない段階にある。(参考:町方町・通横町地区第一種市街地再開発事業|沼津市公式サイト静岡県沼津市「町方町・通横町第一地区第一種市街地再開発事業」起工式開催のお知らせ|PR TIMES

解体前見学会に約450人が参加

除却工事の前に開かれたこの見学会には、地元だけでなく市外からも合わせておよそ450人が足を運んだ。定量的な集客実績であると同時に、老朽化した建物の解体という本来ネガティブに受け止められやすい局面において、地域住民が建物の歴史的価値を再確認し、再開発への納得感を醸成する機会として機能したことがうかがえる。(参考:アーケード名店街で見学会 再開発前の歴史的建築探訪に多数の参加者|沼津経済新聞

第二地区への波及

第一地区の事業計画認可・権利変換計画認可・起工と歩みを進める中で、第二地区でも2023年6月の準備組合設立、2024年の事業協力者公募と、後続の手続きが着実に進行している。第一地区単独の成果にとどまらず、町方町・通横町地区全体の再開発が面的に広がりつつある点が、調査時点で確認できる波及効果である。(参考:沼津市町方町・通横町A街区市街地再開発準備組合が事業協力者を募集します|株式会社フォルテックス

他地域への示唆

全国に共通する「防火建築帯」老朽化問題への一つの応答

1950年代の耐火建築促進法に基づいて建設された防火建築帯は全国84都市に存在し、多くが築70年前後を迎えて老朽化に直面している。本事例は、こうした戦後復興期の近代建築遺産を、単純な取り壊しでも凍結保存でもなく、意匠の一部を継承した建て替えによって次世代に引き継ぐという選択肢を具体的に示している。同種の建物を抱える他都市の中心市街地にとって、老朽化した歴史的建築物の扱いを検討する際の参照点になり得る。(参考:沼津の名建築「アーケード名店街」の一部解体へ 築70年で老朽化 再開発後に目指すのは「似た街並み」|東京新聞デジタル

数十年単位の合意形成を持続させる「地区分割」という技術

地権者全員の合意を一括で取り付けようとすると、規模が大きいほど事業の停滞リスクが高まる。本事例は約1.8haの対象区域を第一地区・第二地区・後発地区に分け、条件の整った地区から段階的に事業化することで、20年近くに及ぶ検討期間の中でも事業を止めずに前進させてきた。広域の再開発を計画する他地域にとって、全体最適の合意を待つのではなく、部分から着手して機運を維持するという進め方は、権利関係が複雑な大規模再開発ほど再現性の高い手法だといえる。

解体前の市民開放という低コストな合意形成策

除却工事の前に建物を市民に開放し、歴史的価値を体感してもらう見学会は、大きな予算をかけずに実施できる一方、約450人という参加実績が示すように住民の関心を可視化し、再開発に対する地域の納得感を高める効果が期待できる。老朽化した公共性の高い建物を解体する計画を持つ他地域にとって、解体・除却工程に「記憶を共有する場」を組み込むことは、比較的着手しやすい合意形成策として応用の余地がある。

参照元


2026年7月時点の調査内容に基づいて作成

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