
ちば・まち・ビジョンの変更(都市マスタープラン改定)
千葉市が3つの都市計画マスタープランを統合した「ちば・まち・ビジョン」(2023年策定)を、千葉県の広域都市計画マスタープラン策定との整合や災害リスク区域の新規指定を踏まえて変更する取り組み。目標年次を2035年に統一し、居住促進区域を見直す。
「ちば・まち・ビジョン」は、千葉市が2023年9月に策定した都市づくり・まちづくりの総合指針である。都市計画法に基づく「都市計画区域マスタープラン(都市計画区域の整備、開発及び保全の方針)」「都市計画マスタープラン」、都市再生特別措置法に基づく「立地適正化計画」という3つの法定計画を1冊に統合した点が最大の特徴で、計画期間は2023年度から2032年度までの10年間、「ウォーカブル(歩きたくなる)、リバブル(暮らしやすい)、サステナブル(持続可能)な美しく心地よい千葉へ」を目標に掲げる。 (参考:千葉市:ちば・まち・ビジョン)
本事例は、このビジョンを策定からわずか1年余りで部分変更に着手した取り組みである。千葉市は2024年12月5日に「ちば・まち・ビジョンの変更に関する基本的な考え方」を公表し、千葉県が2025年度に策定を進める広域都市計画マスタープランとの整合を図るため目標年次を2035年に統一して将来人口推計を95万3,900人に見直すこと、土砂災害特別警戒区域等の新たな指定状況に応じて立地適正化計画の居住促進区域を変更すること、一方で都市づくりの目標や各分野の方針は維持することを示した。統合型マスタープランを固定的な「10年計画」としてではなく、上位・広域計画の動きや災害リスク情報の更新に応じて機動的に見直す計画マネジメントの事例として参考になる。 (参考:千葉市:ちば・まち・ビジョンの変更に関する基本的な考え方)
政令市への権限移譲と3計画統合の経緯
2015年(平成27年)、千葉市は都道府県から都市計画区域マスタープランの決定権を引き継ぐ指定都市となった。2021年8月に策定した「千葉市都市計画見直しの基本方針」は、市が初めて自ら主導して行う都市計画の総合的な見直しの出発点となった。この基本方針に基づき、従来別々に策定・運用されてきた都市計画区域マスタープラン、都市計画マスタープラン、立地適正化計画の3計画を統合したものが「ちば・まち・ビジョン」である。 (参考:千葉市:千葉市都市計画見直しの基本方針、千葉市:ちば・まち・ビジョン)
初めての人口減少下の都市づくり
ビジョン策定時の推計では、千葉市の人口は計画期間中に約97万5千人から96万1千人へ減少するとされ、1970年(昭和45年)の区域区分(線引き)導入以降、初めて人口減少局面で都市づくりの指針を描くことになった。拡大を前提としない都市経営への転換が、コンパクトシティ政策の柱である立地適正化計画を含む3計画統合の背景にある。 (参考:千葉市:ちば・まち・ビジョン)
千葉県による広域都市計画マスタープラン策定の動き
千葉県は、約30年後を展望し県全域の都市像を描く「千葉県都市づくりビジョン」を策定し、これを踏まえて2025年度に県内全域で都市計画区域マスタープランを見直し、市町村の枠を超えた圏域単位の「広域都市計画マスタープラン」を策定する方針を示した。千葉市は「東葛・湾岸広域都市圏」に含まれるが、指定都市である千葉市の都市計画区域マスタープランは県決定の計画には含まれず、市が自ら決定する。このため、県の広域計画と市のビジョンとの間で目標年次や将来人口推計などの前提条件を揃える整合作業が必要になった。これが今回の変更の直接の契機である。 (参考:千葉県:「千葉県の都市づくり」について、千葉市:広域都市計画マスタープラン(東葛・湾岸広域都市圏)の原案の意見募集について)
1. 3計画統合による「ちば・まち・ビジョン」の策定(2021〜2023年)
2021年8月の「千葉市都市計画見直しの基本方針」策定を起点に、市は次期基本計画(2023年度開始)と歩調を合わせて3計画の統合検討を進めた。2022年11月14日から28日にかけて原案への市民意見募集を実施し、5名から51件の意見が寄せられ、2023年2月に意見の概要と市の考え方を公表した。2023年7月27日の千葉市都市計画審議会では、ビジョン本体に加え、都市再開発の方針の変更、土地利用誘導方針案、千葉都心部の容積率緩和方針案など計8議案が審議され、同年9月に策定に至った。 (参考:千葉市:「ちば・まち・ビジョン(原案)」に関する市民意見募集について、IC周辺に産業拠点 都心部で容積率の緩和方針(千葉市都計審)|日刊建設タイムズ)
ビジョンでは、機能性・利便性重視から地域固有の価値創出への転換を掲げ、市内の主要9エリアを「まちづくりのツボ」と位置付け、それぞれの将来像を示したほか、穴川・貝塚・蘇我など9カ所のインターチェンジ周辺を新たな産業拠点に位置付けた。また立地適正化計画の章には、頻発・激甚化する自然災害に対応して都市の災害リスクを回避・低減するための「防災指針」を新たに位置付け、目標年次における施策効果を測るためハード面(都市構造)とソフト面(都市空間)の両面から指標を設けた。 (参考:千葉市:ちば・まち・ビジョン、IC周辺に産業拠点 都心部で容積率の緩和方針(千葉市都計審)|日刊建設タイムズ)
2. ビジョンを実行に移す運用制度の整備(2024年)
策定後、市はビジョンの実現手段として、まちづくりに大きな影響を与える民間施設について計画や設計が確定する前のできるだけ早い段階から市と協議を行う「ちば・まち・デザイン協議」制度を2024年2月1日に開始した。千葉都心での建築物の新築・増築や、市街化区域で高さ20m超または延べ面積5,000平方メートル超の建築物などを対象に、計画段階(配置・規模・用途)と設計段階(形態・意匠・色彩・外構)の2段階で協議する仕組みである。あわせて、居住促進区域・都市機能誘導区域に係る都市再生特別措置法上の届出制度も運用されている。 (参考:千葉市:ちば・まち・デザイン協議、千葉市:居住促進区域・都市機能誘導区域に係る届出制度)
3. 都市計画基礎調査による現状の定点確認
変更の検討に先立ち、市は都市計画基礎調査のデータを用いて人口・産業・土地利用の動向を集計・分析し、ビジョン策定時に整理した都市の現状と課題に変化が生じていないかを確認した。調査の結果、既存の課題認識から目立った変化点は見られず、新規に浮上した論点もなかった。この確認結果が「目標と各分野の方針は維持し、変更は前提条件と区域の修正に限定する」という変更方針の根拠となっている。 (参考:千葉市:ちば・まち・ビジョンの変更に関する基本的な考え方)
4. 「変更に関する基本的な考え方」の公表(2024年12月)
2024年12月5日、市は「ちば・まち・ビジョンの変更に関する基本的な考え方」を公表した。変更の柱は3点で、(1)千葉県の広域都市計画マスタープランとの整合を図るため目標年次を2035年(令和17年)とし、将来人口推計を95万3,900人に見直す、(2)土砂災害特別警戒区域をはじめとする災害リスク区域の新規指定を踏まえ、立地適正化計画の居住促進区域から該当箇所を除外する、(3)千葉県における広域都市計画マスタープランの検討状況に応じて連携を図る、というものである。 (参考:千葉市:ちば・まち・ビジョンの変更に関する基本的な考え方)
5. 県の広域都市計画マスタープラン策定と並走する調整(2025年度〜)
千葉県は東葛・湾岸広域都市圏の広域都市計画マスタープラン原案を作成し、2025年11月7日から25日にかけて意見募集を実施した。千葉市はこの計画に自市の都市計画区域マスタープランは含まれないものの、広域的なまちづくりの観点から連携を図るとして、市のウェブサイトでも県の意見募集を案内した。市のビジョン変更は、この県の策定作業と並走しながら進められている。 (参考:千葉市:広域都市計画マスタープラン(東葛・湾岸広域都市圏)の原案の意見募集について)
3計画統合だからこそ可能な一体的な変更
多くの自治体では都市計画区域マスタープラン・都市計画マスタープラン・立地適正化計画が別々の文書として存在し、改定時期も目標年次もばらばらになりがちである。千葉市は3計画を1冊に統合しているため、県の広域計画との整合という外部要因が生じた際も、目標年次・人口推計・居住促進区域といった変更を1つの計画変更手続きの中で一体的に処理できる。統合の効果が策定時だけでなく改定局面で発揮されている点は、この事例の中核的な特徴である。 (参考:千葉市:ちば・まち・ビジョン、千葉市:ちば・まち・ビジョンの変更に関する基本的な考え方)
「変えない」判断を根拠とともに明示
今回の変更は全面改定ではなく、都市計画基礎調査に基づく定点確認で「現状・課題に大きな変化なし」と確認した上で、目標と各分野の方針は維持すると明言している。計画変更において何を変えるかだけでなく、何を変えないかとその根拠を公表する進め方は、計画の安定性と説明責任を両立させる手法といえる。 (参考:千葉市:ちば・まち・ビジョンの変更に関する基本的な考え方)
災害ハザード指定の更新を居住誘導区域に随時反映
土砂災害特別警戒区域や急傾斜地崩壊危険区域は、基礎調査の進捗に伴い指定が随時追加される。千葉市は新たな指定状況を捉えて居住促進区域から該当区域を除外する変更を行う方針を示しており、ビジョンに位置付けた防災指針と立地適正化計画の区域設定を連動させて運用している。居住誘導とハザード情報の突合を計画改定のトリガーとする実務は、防災まちづくりの観点から注目される。 (参考:千葉市:ちば・まち・ビジョンの変更に関する基本的な考え方)
県と政令市の計画階層間の整合
指定都市は都市計画区域マスタープランを自ら決定するため、県が策定する広域計画の「外」に立つ。それでも千葉市は、県の広域都市計画マスタープランと目標年次・人口推計を自主的に揃え、検討状況に応じた連携を明記した。法的な上下関係によらず、広域圏としての計画整合を実務的に確保しようとする県・政令市間の調整事例である。 (参考:千葉市:広域都市計画マスタープラン(東葛・湾岸広域都市圏)の原案の意見募集について)
変更方針の確定と公表
2024年12月5日に「変更に関する基本的な考え方」が公表され、目標年次の2035年への統一、将来人口推計95万3,900人への見直し、災害リスク区域の居住促進区域からの除外という変更の枠組みが確定した。都市計画基礎調査に基づく確認により、目標・方針を維持する判断も根拠とともに示された。 (参考:千葉市:ちば・まち・ビジョンの変更に関する基本的な考え方)
県側プロセスの進行
整合の相手方となる千葉県の東葛・湾岸広域都市計画マスタープランは、2025年11月に原案の意見募集まで進んだ。県・市双方の手続きが並行して進行しており、ビジョン変更の前提条件が具体化しつつある。 (参考:千葉市:広域都市計画マスタープラン(東葛・湾岸広域都市圏)の原案の意見募集について)
運用制度の始動
ビジョンの実現手段である「ちば・まち・デザイン協議」は2024年2月に運用を開始した。市の公式ページによれば、調査時点までに協議が完了した事例は生じていないとされており、制度効果の評価はこれからの段階にある。なお、ビジョンの変更自体も調査時点(2026年8月)では手続き進行中であり、変更後の計画の決定・公表には至っていない。 (参考:千葉市:ちば・まち・デザイン協議)
計画統合の便益は改定局面で測る
マスタープラン類の統合は策定時の労力削減として語られることが多いが、本事例は、上位・広域計画の変化や災害情報の更新といった「計画を取り巻く環境変化」への対応コストを下げる効果を示している。複数計画の統合を検討する自治体は、初回策定の効率だけでなく、その後10年間に見込まれる改定・整合作業の総量を比較の物差しにすることで、統合の意義をより正確に評価できる。
「確認してから変える」定点観測型の計画マネジメント
千葉市は法定の都市計画基礎調査を活用して現状・課題の変化を確認し、その結果に基づいて変更範囲を限定した。総合計画やマスタープランの中間見直しを「とりあえず全面的に」行うのではなく、既存の調査データで変化の有無をまず検証し、変更を必要最小限に絞る進め方は、限られた行政資源で計画の鮮度を保つ現実的な方法として応用できる。
広域計画と基礎自治体計画の目標年次を揃える
目標年次や人口推計の前提が計画間でずれていると、施策効果の評価や圏域単位の議論が困難になる。県の広域計画策定を機に自市計画の目標年次を統一した千葉市の対応は、都道府県による都市計画区域マスタープラン見直しが各地で予定される中で、市町村側が取り得る整合の具体的な型を示している。特に、県計画の対象外となる政令市においても自主的に整合を図った点は、広域連携の観点から参考になる。
ハザード指定の更新を計画に反映する仕組みづくり
立地適正化計画の居住誘導区域と災害レッドゾーンの重複は全国的な課題である。指定状況の更新を捉えて区域を見直すという千葉市の運用は、居住誘導区域を「策定時に一度決めたら終わり」にせず、防災情報と連動して更新し続ける計画運用のモデルとなる。防災指針を含む立地適正化計画を持つ自治体は、ハザード指定の追加を計画見直しのトリガーとしてあらかじめ組み込むことが考えられる。
2026年8月時点の調査内容に基づいて作成
この記事は公開情報に基づき、AIを用いた詳細調査により作成されました。記事内容への修正依頼、お問合せ等は以下までお寄せください。
問い合わせ:support@groove-designs.com
よくあるご質問(FAQ)もあわせてご確認ください。
#
総合計画
#
まちづくり指針
#
エリアビジョン
#
景観計画
#
緑の基本計画
#
公共空間活用
#
ウォーカブル
#
公園活用
#
防災・減災
#
空き家活用
#
エリアプラットフォーム
#
公民連携プラットフォーム
#
公民連携
#
地域コミュニティ
#
地域交流拠点
#
多文化共生
#
子育て支援
#
文化芸術
#
自動運転バス
#
モビリティマネジメント
#
モビリティハブ
#
関係人口
#
移住促進
#
探究学習
#
グリーンインフラ
#
生物多様性
#
参加型予算
#
都市整備
#
まちなか
#
駅前広場
#
協働のまちづくり
#
リノベーションまちづくり
#
フューチャーセンター
#
スマートシティ
#
AI
#
リビングラボ
#
空きスペース活用
#
居場所づくり
#
子ども食堂
#
沿線まちづくり
#
健康
#
社会教育
#
持続可能な都市
#
計画策定
#
まちづくり
#
コミュニティ形成
#
ワークショップ
#
社会実験
#
市民参加
#
子ども・若者
#
子育て世代
#
シニア