
千葉駅前大通り(中央公園プロムナード)ウォーカブル推進とグランドデザイン一部改定
千葉市は2023年、京葉銀行が歩道に設置した「パレットテラス」を起点に千葉駅前大通り(中央公園プロムナード)で歩道活用の社会実験を反復実施。産学官の対話の場「中プロ・デザインラボ」を経て2026年にグランドデザインを一部改定し、車道幅員を縮小して「ひと中心」の空間へ再編する方針を打ち出した。
千葉市中央区、JR千葉駅から中央公園へと続く「千葉駅前大通り」(愛称:中央公園プロムナード、通称「中プロ」)で、歩道空間を活用した社会実験の反復実施と、産学官による対話の場づくりを組み合わせたウォーカブル推進の取り組みが進んでいる。
きっかけは2023年8月、京葉銀行が創立80周年を記念する取り組みの一環として本店営業部前の歩道に設けた木製デッキ「パレットテラス」である。以降、千葉市都市局都市部は毎年内容を変えながら社会実験を重ね、2025年には千葉大学・千葉市中心市街地まちづくり協議会と共同で対話の場「中プロ・デザインラボ」を設置、デジタルプラットフォームでの市民意見収集も始めた。こうした積み重ねを経て、千葉市は2026年6月25日、2016年策定の「千葉駅周辺の活性化グランドデザイン」を一部改定し、中央公園プロムナードの再編を優先整備プログラムに位置付けるとともに、「中央公園プロムナード周辺のまちづくりビジョン」を新たに策定した。現在片側3車線ある車道の幅員を縮小し、緑豊かな「ひと中心」の空間へ再編する方針を打ち出し、2026年度中に基本計画を策定、2027年度以降に車線規制を伴う社会実験・交通影響検証へと進む計画である。 (参考:千葉市:千葉駅周辺の活性化グランドデザイン、千葉市:中央公園プロムナード周辺のまちづくりビジョンを策定しました、千葉駅前大通りが歩行者中心の公園のように過ごせる緑の空間のプロムナードへ(チバテレ))
「千葉駅周辺の活性化グランドデザイン」は2016年3月に策定された。駅周辺の建築物更新が停滞し求心力の低下が懸念されるなか、JR千葉駅の駅舎・駅ビル建替えや再開発事業を機に、まち全体をリニューアルする必要があるとの判断から、駅周辺を東エリア(業務・商業の集積地)、西エリア(生活支援機能の充実する臨海部への玄関口)、北エリア(公共施設と千葉公園を備える住環境エリア)の3つに区分し、優先整備プログラムを定めた。中央公園プロムナードの再編は、この初版グランドデザインの段階から優先整備プログラムの一つに位置付けられていた。 (参考:千葉市:千葉駅周辺の活性化グランドデザイン)
しかし中央公園プロムナードは長らく片側3車線の車道が空間の大半を占める自動車中心の道路であり、「ちば・まち・ビジョン」が掲げる「ひと中心」の方向性とは隔たりがあった。沿道には市民作品を展示する「パラソルギャラリー」(2000年〜)や回遊性向上を目的とした「ちば富士見屋台横丁」(2017年〜、r-223主催)といった賑わいづくりの取り組みは存在したものの、道路空間そのものの再編には至っていなかった。加えて沿道建築物の多くが更新期を迎えつつあり、建て替えのタイミングを都市の将来像づくりにどう活かすかが課題として意識されるようになっていた。 (参考:千葉市:千葉駅前大通りウォーカブル推進、千葉市:中央公園プロムナード周辺のまちづくりビジョンを策定しました)
1. 民間発の一歩:パレットテラス設置(2023年8月)
京葉銀行の創立80周年を記念する取り組みの一環として、本店営業部前の歩道に約30平方メートルの木製デッキ「パレットテラス」が設けられた。ベンチ6脚とプランターを配置しただけの小規模な施設だが、車道優先だった歩道の一角を人が滞在できる空間に変える最初の実践となり、以降の行政主導の取り組みの呼び水となった。 (参考:千葉市:千葉駅前大通りウォーカブル推進)
2. 段階的な社会実験の反復(2023年11月〜2025年10月)
千葉市都市局都市部は、京葉銀行本店営業部前の歩道を中心に、内容を変えながら複数回の社会実験を実施した。2023年11月10日から毎週金曜日の昼(11〜14時)と夜(16〜19時)の2部制で「パレットマルシェ」の実施を開始し、当初は2024年2月22日までの予定だったが、需要を踏まえて2024年6月28日まで延長された。この間、キッチンカー等の出店を通じて需要と安全性を検証した。なお、京葉銀行を中心とする県内企業の実行委員会は2022年7月から3か月に1回程度、フードロスをテーマにした「CHIBA SDGs Parklet Project」を別途開催しており、パレットマルシェと連携する形で実施されている。2024年11月1日から3日には、イスとテーブルを自由にレイアウトできる休憩・滞在スペースと、人工芝を敷いた3m×3mの「プチ広場」を無償で貸し出す実験を行った(雨天のため11月2日は中止)。2025年10月24日から26日には、市民出店やデジタルスタンプラリーに加え、WHILL社製の電動車椅子やLime社製の電動シートボードといった複数のパーソナルモビリティを試せる機会を設け、セコムが開発した自律走行型の警備ロボット「cocobo」を歩道上で走行させる実証も行った(雨天のため26日は中止)。令和7年度の実験はSoci株式会社がプロポーザル方式で受託し、前年度実験を踏まえてストリートの認知拡大や、地域に眠る潜在的な担い手の発掘を目的として実施された。 (参考:千葉市:令和6年度中央公園プロムナードでの社会実験、千葉市:令和7年度中央公園プロムナードでの社会実験、千葉市:千葉駅前大通りウォーカブル推進、Soci Inc. News & Think)
3. シンポジウムと産学官の対話の場づくり(2024年11月〜2025年11月)
2024年11月16日、千葉市役所1階正庁で「中央公園プロムナードの未来を考えるシンポジウム」が開催された(定員150人)。北原理雄・千葉大学名誉教授が「歩いて楽しい街〜千葉都心の再生にむけて〜」と題して基調講演を行い、広島都心会議の関係者、建築設計家、京葉銀行、神谷俊一・千葉市長を交えたパネルディスカッションが行われた。これを契機に2025年2月21日、千葉市・千葉大学・千葉市中心市街地まちづくり協議会の3者で対話の場「中プロ・デザインラボ」を設立。第1回では千葉大学松浦研究室(建築学を学ぶ学生・大学院生)による提案発表会が行われ、2月21日から3月7日には市役所1階イベントスペースで提案の展示会も開催された。デザインラボはその後も継続的に開催され、2025年内に5回、2026年4月までに少なくとも7回を数えた。並行して2025年10月6日には、千葉市中心市街地まちづくり協議会と千葉大学、千葉市が連携する形でmygrooveを活用したデジタルプラットフォームを設立し、市民・事業者からの意見募集を常設化した。2025年11月20日には有識者を交えた「中プロ・オープンラボ」シンポジウムを京葉銀行本店駐車場で開催(定員50人)。千葉大学准教授2名、一般財団法人計量計画研究所研究員、GrooveDesigns代表がパネリストとして登壇し、まちづくりビジョン策定に向けた議論を行った。 (参考:千葉市:中央公園プロムナードの未来を考えるシンポジウム、千葉市:「(仮称)中プロ・デザインラボ(第1回)」を開催します!、千葉大学プレスリリース、千葉市:デジタルプラットフォームを設立しました。、千葉市:「中プロ・オープンラボ(シンポジウム)」を開催します)
4. グランドデザイン改定とまちづくりビジョン策定(2026年6月〜7月)
2026年6月25日、千葉市は「千葉駅周辺の活性化グランドデザイン」の一部改定を発表した。中央公園プロムナードの再編を優先整備プログラムに明記したほか、業務・商業機能をより集積させる方向性を打ち出し、各エリアの位置付けを見直すとともに、公園通りについても新たにウォーカブルなまちづくりを掲げた。同時に「中央公園プロムナード周辺のまちづくりビジョン」の策定を公表し、7月14日付で市公式サイトに詳細を公開した。ビジョンは「公園のように過ごすみんなのプロムナード」を将来像に掲げ、現在片側3車線ある車道の幅員を縮小し、緑を基調とした質の高い多機能な公共空間へと転換していく方針と、場所性・機能性・経済活動・景観印象・移動回遊の5つの戦略フレームワークを示した。 (参考:千葉市:千葉駅周辺の活性化グランドデザイン、千葉市:中央公園プロムナード周辺のまちづくりビジョンを策定しました、千葉駅前大通りが歩行者中心の公園のように過ごせる緑の空間のプロムナードへ(チバテレ)、建設新聞(日本工業経済新聞社))
5. 基本計画策定と本格実証へ(2026年度以降)
千葉市は2026年度中に「中央公園プロムナード基本計画策定等業務」を発注し、プロムナード再編の基本計画に加え、千葉駅東口駅前広場の改修基本計画も併せて策定する予定である(2026年2月16日募集開始、4月上旬〜中旬契約、2027年3月22日委託期間終了)。並行して「景観形成推進地区指定等検討業務」も発注し、沿道の景観計画や地区の景観デザインに関する基準を改定していく(2026年7月下旬契約、2027年3月19日完了予定)。市はこれらの計画策定を経たうえで、2027年度以降に車線の一部を規制した交通影響検証を実施する方針を示している。 (参考:千葉市:令和8年度中央公園プロムナード基本計画策定等業務委託、千葉市:中央公園プロムナード景観形成推進地区指定等検討業務委託、千葉駅前大通りが歩行者中心の公園のように過ごせる緑の空間のプロムナードへ(チバテレ))
銀行の遊休スペース活用から始まったボトムアップ性
行政計画の一方的な提示ではなく、地域金融機関のCSR事業として設置された小規模なウッドデッキが最初の実践となり、そこに行政が着目して社会実験・計画へと段階的に育てていった。大規模な予算や合意形成を前提とせず、既存の民間資産を起点にできる点は再現性が高い。
内容を変えながら反復する社会実験
単発のイベントで終わらせず、2023年11月から2025年10月まで4期にわたり社会実験を継続。休憩スペースの検証から出店による賑わいづくり、モビリティ実証(電動車椅子・電動シートボード)、警備ロボットの自律走行実証へとテーマを段階的に拡張し、毎回異なる角度から歩道活用の可能性を検証している。
社会実験と並走する産学官の対話の場
千葉市・千葉大学・千葉市中心市街地まちづくり協議会の3者が「中プロ・デザインラボ」を継続開催し、社会実験の知見や学生提案を議論の材料としながら、その成果をグランドデザイン改定という上位計画に接続した。社会実験を実施するだけでなく、実験と計画策定の間に対話の場を意図的に挟み込んでいる点が特徴である。
デジタルプラットフォームによる意見収集の常設化
対面のシンポジウムやデザインラボに加え、2025年10月にmygrooveを活用したデジタルプラットフォームを設立し、市民・事業者からの意見募集を常時受け付ける体制を整えた。対面イベントに参加できない層にも接点を広げ、意見投稿やリアクションといった定量データで参加状況を把握できる仕組みとなっている。
計画への結実: 2026年6月25日に「千葉駅周辺の活性化グランドデザイン」を一部改定し、中央公園プロムナードの再編を優先整備プログラムに位置付けた。同時に「中央公園プロムナード周辺のまちづくりビジョン」を策定し、車道幅員縮小による「ひと中心」の空間再編という具体的な方針を明文化した。 (参考:千葉市:千葉駅周辺の活性化グランドデザイン、千葉市:中央公園プロムナード周辺のまちづくりビジョンを策定しました)
社会実験の継続実施: 2023年11月から2025年10月まで、少なくとも4期にわたり歩道を活用した社会実験を実施した。実験内容は休憩スペースの検証からモビリティ実証、ロボット実証へと拡張されており、単年度で終わらない継続性が確認できる。 (参考:千葉市:令和6年度中央公園プロムナードでの社会実験、千葉市:令和7年度中央公園プロムナードでの社会実験)
対話の場の定着: 「中プロ・デザインラボ」は2025年2月の第1回から2026年4月までに少なくとも7回開催され、継続的な議論の場として定着した。デジタルプラットフォームでは、記事執筆時点でフォロワー94名、意見投稿400件、リアクション196件という具体的なエンゲージメント実績が確認できる。 (参考:中プロ・デザインラボ|mygroove)
次段階の具体的スケジュール: 2026年度中に基本計画策定業務・景観形成推進地区指定検討業務が発注され、2027年度以降には車線規制を伴う交通影響検証の実施が予定されている。ただし、調査時点では実際の車道幅員縮小や車線規制はまだ実施されておらず、計画段階にとどまる。 (参考:千葉市:令和8年度中央公園プロムナード基本計画策定等業務委託、千葉駅前大通りが歩行者中心の公園のように過ごせる緑の空間のプロムナードへ(チバテレ))
小さな民間発の実践を行政が育てる進め方
金融機関のCSR事業として設置された小規模なウッドデッキを、行政が着目して社会実験・計画へと段階的に発展させた進め方は、大規模な予算措置や合意形成を前提としない再現性のあるモデルといえる。駅前の遊休スペースや民間施設の軒先など、既存の民間資産を起点に小さく始める発想は、財政的制約のある他地域でも応用しやすい。
社会実験と計画策定の間に「対話の場」を挟む設計
社会実験を実施するだけでは、単発の話題づくりで終わりやすい。千葉市の事例では、社会実験の知見や大学生の提案を議論する「デザインラボ」を継続的に開催し、そこでの合意形成を経て初めてグランドデザイン改定という上位計画に反映させている。実験と計画の間に対話の場を意図的に設けるプロセス設計は、実験結果を一過性のイベントで終わらせず、政策形成につなげたい他地域にとって参考になる。
対面と常設デジタルの二段構えによる意見収集
シンポジウムやデザインラボといった対面の場に加え、常時アクセス可能なデジタルプラットフォームを並行して運用し、フォロワー数・投稿数・リアクション数という定量指標で参加状況を可視化している。対面イベントの参加者が限られがちな地方都市においても、常設のデジタル窓口を組み合わせることで、参加のハードルを下げつつ合意形成の進捗を数値で把握できる。
車線減少という影響の大きい変更を段階的に進める慎重さ
車道幅員縮小は沿道交通や物流に影響しうる変更であり、千葉市は2023年の小規模な歩道活用実験から2027年度以降の車線規制を伴う交通影響検証まで、4年以上をかけて段階的に合意形成とエビデンス収集を進めている。交通量の多い駅前幹線道路を扱う他地域にとって、性急に本格改変へ踏み切らず、実験の規模とテーマを毎年少しずつ拡張しながら合意形成を積み重ねる進め方は、再現性のあるアプローチとして参考になる。
2026年08月時点の調査内容に基づいて作成
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