
井原線振興対策協議会(沿線まちづくり)
この記事は、my grooveを運営する株式会社Groove DesignsがAIを活用し独自に調査・作成したものです。
岡山県6市町と広島県福山市の7市町が県境を越えて構成する井原線振興対策協議会。運賃助成やこども絵画コンテスト、サイクリングロード連携等の利用促進策と、みなし上下分離による財務改善を担う別組織との役割分担で、赤字が続く第三セクター鉄道の存続を支えている。
井原線振興対策協議会は、岡山県総社市と広島県福山市神辺町を結ぶ第三セクター鉄道「井原鉄道井原線」(総延長41.7km、15駅)の沿線自治体である岡山市・倉敷市・笠岡市・井原市・総社市・矢掛町・福山市の7市町が構成する広域協議会である。1999年1月11日の井原線開業とほぼ同時期に発足し、鉄道の利用者目線に立ったサービス改善と、沿線地域を盛り上げる取り組みを両輪で進めてきた。(参考:井原線について - 福山市ホームページ、井原鉄道 - Wikipedia、【井原鉄道】赤字覚悟で開業した路線が廃止されない理由とは)
運賃助成による団体・貸切利用の下支え、こども絵画コンテスト、周年記念イベント、サイクリングロードとの連携等、日常的なソフト施策を幅広く展開する一方、鉄道施設の維持更新や「みなし上下分離」の検討といった経営基盤に関わる抜本的な取り組みは、別組織の「井原鉄道活性化協議会」が担っている。二つの協議会が役割を分担しながら、赤字基調が続く地方鉄道の存続を支えている点がこの事例の骨格である。(参考:【井原鉄道】赤字覚悟で開業した路線が廃止されない理由とは)
井原線は、旧国鉄が着工しながら国鉄再建計画により建設を凍結された路線を、岡山県・広島県と沿線市町の出資による第三セクター井原鉄道株式会社が引き継ぎ、1999年1月11日に総社駅(岡山県総社市)〜神辺駅(広島県福山市神辺町)間41.7kmで開業させたものである。(参考:井原鉄道 - Wikipedia)
開業当初から採算の厳しさが見込まれており、1日あたりの利用者数は開業時の約2,500人から2004年度の2,616人をピークに減少へ転じた。少子高齢化とモータリゼーションの進展という地方鉄道に共通する構造的要因に加え、通勤・通学利用がそれぞれ利用者の3分の1程度を占める通学依存型の需要構造ゆえに、沿線人口の減少がそのまま利用者減に直結しやすく、区域外からの非日常利用の開拓が長年の課題となってきた。輸送密度は開業時の1,253人/日から2019年には1,023人/日へと約18%低下している。(参考:【井原鉄道】赤字覚悟で開業した路線が廃止されない理由とは)
経営面では、コロナ禍前の2019年時点で約1億8,026万円の赤字を計上するなど厳しい経営状況が続いてきた。沿線自治体は、開業から数年で経営安定基金の枯渇が見込まれたことを受け、2003年度(平成15年度)には既に、鉄道施設の修繕・更新費用を自治体・岡山県・国が負担する「みなし上下分離」方式を導入しており、これにより年間2億円前後に上っていた赤字幅を大幅に圧縮してきた。この抜本的な経営改善の検討は「井原鉄道活性化協議会」が担う一方、日常的な利用促進やイベント等のソフト施策は開業時に設置された「井原線振興対策協議会」が担うという役割分担が敷かれてきた。(参考:【井原鉄道】赤字覚悟で開業した路線が廃止されない理由とは)
1. 県境を越えた7市町による広域協議会体制
井原線振興対策協議会には、岡山県側の沿線6市町(岡山市・倉敷市・笠岡市・井原市・総社市・矢掛町)に加え、広島県側の唯一の沿線自治体である福山市が参加している。事務局は井原市役所総合政策部企画振興課内に置かれ、福山市側は都市交通課が窓口を担う。なお岡山市には井原線の駅は所在しないが、鉄道が支える経済圏の一員としてみなし上下分離の費用負担スキームに加わり、応分の設備負担金を拠出しており、鉄道の受益圏を路線が通る自治体に限定せず後背圏の中核市も含めて広域で支える設計となっている。(参考:井原線振興対策協議会 - 井原市役所、井原線について - 福山市ホームページ、【井原鉄道】赤字覚悟で開業した路線が廃止されない理由とは)
2. 団体・貸切利用への運賃助成
協議会の中核事業が「井原線利用促進活動補助事業」である。親睦旅行・観光・修学旅行・遠足など5人以上の団体、または貸切での有料利用を対象に、乗車料金・貸切料金の半額を上限を設けて助成する仕組みで、構成7市町を通じて利用実績の確認を経て申請を受け付けている。(参考:利用促進活動 補助事業 | 井原鉄道株式会社)
3. 周年記念イベントと企画乗車券
開業記念日に近い1月には、井原鉄道株式会社と共催で「井原線感謝デー」を開催している。全線が1日乗り放題となる企画乗車券(大人500円・小人300円)を販売し、購入者向けのスタンプラリーや沿線各駅でのマルシェ「井原線DE得得市」等の催しを同時開催することで、1日を通じて沿線を周遊してもらう仕掛けとしている。2024年1月には開業25周年を機に、記念入場券セットや限定鉄印の頒布、フォトコンテスト、特別車両貸切ツアー企画、沿線の魅力アップアイデア募集キャンペーンなど、通常より規模を拡大した記念事業を実施した。(参考:井原線感謝デー~1日乗り放題&わくわくスタンプラリーを開催します! - 井原市役所、井原線振興対策協議会 - 井原市役所)
4. 次世代を巻き込む企画
対象を小学生とそれより幼い子どもたちに絞った「井原線こども絵画コンテスト」を毎年開催し、入賞作品を実際の鉄道車両に掲示している。子どもたちが自分の描いた絵が走る車両を沿線で目にできる仕掛けであり、単発のイベントで終わらせず沿線への愛着を継続的に育てる工夫といえる。(参考:井原線振興対策協議会 - 井原市役所)
5. サイクリングロードとの広域連携
井原線は、総社エリアの吉備路自転車道と、福山・尾道エリアの鞆の浦・しおまち海道サイクリングロードという性格の異なる2つの広域サイクリングロードを、鉄路で結ぶ位置にある。この立地を生かし「JOY!IBARASEN」の名称で、事前予約制でサイクルスタンドと輪行袋を無料貸し出しするほか、主要駅でのレンタサイクル(通常自転車300円/日、電動自転車500円/日)、渋沢栄一ゆかりの地を巡るルートや矢掛の宿場町を巡るルートなど4つの沿線サイクリングルートの整備を行っている。鉄道と自転車を組み合わせることで、日常の通勤・通学利用とは異なる観光目的の利用者層を取り込む狙いがある。(参考:サイクリング | 井原鉄道株式会社)
6. 運行会社独自の話題づくりとの連動
協議会による利用促進策と並行し、運行主体の井原鉄道株式会社自身も、駅名に企業スポンサーの愛称を付ける「駅名ネーミングライツ事業」(2023年度開始)、岡山県備中県民局と連携したデニム産業PR車両「デニムトレイン」の運行(2025年10月26日開始)、地酒・クラフトビール・「枕木かりんとう」等のオリジナル商品開発、公式キャラクター「井原あかね」によるSNS発信など、独自の攻めの施策を展開している。岡山県立大学デザイン学部による駅名標のリニューアルや、井原高校美術部による駅柱デザインなど、地元の教育機関との協働も進んでいる。(参考:【三セク協だより第60号掲載】井原鉄道(株) 地域と共に歩む井原鉄道~次の25周年に向けて~ | 第三セクター鉄道等協議会、井原鉄道で「デニムトレイン」が登場|railf.jp)
1. 沿線外の自治体も含む広域負担モデル
一般的な沿線自治体連携は「駅がある市町村」の範囲にとどまりやすいが、井原線振興対策協議会は後背圏の中核市である岡山市も構成員に含み、みなし上下分離の枠組みの中で設備負担金を拠出させている。鉄道の受益者を「駅の所在地」ではなく鉄道が支える広域的な人の移動・経済圏という観点で捉え直し、負担の輪を広げている点は、単一の沿線自治体だけでは維持コストを負いきれない地方鉄道の資金調達モデルとして応用可能性がある。(参考:【井原鉄道】赤字覚悟で開業した路線が廃止されない理由とは)
2. 「利用促進」と「経営改善」を分離した二層のガバナンス
同じ沿線自治体群が、日常的なイベントや助成事業を担う「井原線振興対策協議会」と、みなし上下分離のような財務構造・インフラ投資に関わる抜本的な検討を担う「井原鉄道活性化協議会」という2つの協議会を並走させている点も特徴である。機動力が求められるソフト施策と、時間をかけた合意形成が必要な財務再編という性質の異なる意思決定を機能別に分離することで、限られた自治体職員のリソースをそれぞれの得意分野に振り分けやすくする体制といえる。(参考:【井原鉄道】赤字覚悟で開業した路線が廃止されない理由とは)
3. 既存の広域サイクリング資源を鉄道でつなぐ発想
新規に自転車道を整備するのではなく、総社エリアと福山・尾道エリアにそれぞれ既に存在していた性格の異なるサイクリングロードを、鉄道という別の交通モードで橋渡しする発想は、追加のインフラ投資を抑えながら広域の周遊需要を生み出す工夫である。(参考:サイクリング | 井原鉄道株式会社)
1. 利用者数は増加基調が継続
井原線の年間利用者数は、2024年度に98万4,617人(前年度比1.4%増)となり4年連続の増加となった。続く2025年度も99万188人(前年度比0.6%増)とさらに増加し、増加基調は5年連続に伸びている。(参考:井原鉄道 2年連続の赤字決算に 24年度 利用者増も燃料費高騰 - 山陽新聞デジタル、井原鉄道、3年連続赤字 燃料高など響く - 中国新聞デジタル)
2. 経営は依然として厳しく、燃料費高騰の影響が続く
一方で経営面は厳しさが続いている。2024年度(2025年3月期)の井原鉄道株式会社の鉄道事業営業損益は2億6,384万円の損失(営業収益3億1,319万円)を計上した。沿線自治体等が施設維持費を負担するみなし上下分離後の収支ベースでも、2025年度は2,600万円の赤字となり、赤字は3年連続に及んでいる。燃料費高騰が主因として挙げられており、利用者数の増加が経営黒字化に直結していない現状は、利用促進策だけでは地方鉄道の収支改善が完結しないことを示している。(参考:井原鉄道 - Wikipedia、井原鉄道、3年連続赤字 燃料高など響く - 中国新聞デジタル)
3. 話題化施策による非日常利用の掘り起こし
デニムトレインの運行開始(2025年10月)や開業25周年記念事業(2024年)は、鉄道ファンや観光メディアに取り上げられる話題を生み、区域外からの非日常的な利用者を呼び込む導線として機能している。もっとも、個々の施策が利用者数の増加にどの程度寄与したかを定量的に切り分けたデータは確認できておらず、複数の施策が積み重なった結果として増加基調が続いていると捉えるのが妥当である。(参考:井原鉄道が開業25周年 記念グッズや限定鉄印の配布など見逃せない情報をまとめてみました | 鉄道チャンネル、井原鉄道で「デニムトレイン」が登場|railf.jp)
沿線の主要駅がある自治体だけで負担を分かち合うのではなく、鉄道が支える広域的な移動圏・経済圏を踏まえて後背圏の中核市にも一定の負担を求める井原線の枠組みは、「駅がある・ない」で線引きしがちな沿線連携のあり方を見直す材料になる。単一自治体では負いきれない鉄道維持コストを、受益の実態に即して圏域全体で按分する発想は、複数市町にまたがる地方鉄道全般に応用できる。
「利用促進」と「経営改善」を担う協議会を分離する体制は、機動力が求められるソフト施策と、時間をかけた合意形成が必要な財務再編とで必要な検討スピードや関係者の顔ぶれが異なることに対応した編成であり、単一の協議会に両方の役割を背負わせて意思決定が停滞するリスクを避ける工夫として参考になる。
サイクリングロードとの連携は、既存の観光資源を新規投資なしに組み合わせる発想であり、周辺に広域サイクリングロードなど既存の広域周遊資源を持つ地方鉄道であれば、比較的低コストで横展開しやすい施策である。
一方で、4〜5年連続の利用者増加という好材料がありながら、燃料費高騰という外部要因の影響で運行収支の赤字が3年連続で続いている事実は、利用促進策の充実だけでは地方鉄道の経営自立が実現しないことを示している。利用促進(振興対策協議会)と財務構造改革(みなし上下分離のような公的負担の仕組み)は、どちらか一方ではなく両輪で進める必要があるという教訓は、同種の課題を抱える他の地方鉄道沿線にも当てはまる。
2026年9月時点の調査内容に基づいて作成
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