
福塩線対策協議会(沿線まちづくり・利用促進)
この記事は、my grooveを運営する株式会社Groove DesignsがAIを活用し独自に調査・作成したものです。
広島県福山市・府中市・世羅町・三次市の沿線4市町がJR福塩線対策協議会を設立し、非電化区間で輸送密度166人/日まで落ち込んだ福塩線の維持に向け、イベント補助やレンタサイクル、パーク&ライド実証などを継続的に展開する事例。
JR福塩線(福山駅~塩町駅、全長78.0km)の沿線4市町―広島県福山市・府中市・世羅町・三次市―は、利用者減少が続く同線の利用促進と沿線地域の活性化を目的に「福塩線対策協議会」を設立し、共同で取り組みを進めている。事務局は福山市都市交通課に置かれ、沿線でのイベント開催に対する乗車運賃補助(上限1万円)、河佐駅前での夏季限定無料レンタサイクル、府中天満屋と連携したパーク&ライドの実証事業、開業110周年記念ヘッドマークの運行など、多様で小規模な施策を継続的に展開している。福塩線は特に非電化区間(府中~塩町間)で輸送密度が166人/日(2023年度)、収支率4.6%という深刻な経営状況にあり、鉄道としての存続そのものが議論の対象になりうる中での取り組みである。 (参考:福塩線について - 福山市ホームページ、輸送密度2,000人/日未満の線区別経営状況に関する情報開示 - 西日本旅客鉄道)
沿線人口減少とモータリゼーションによる利用者減少
福塩線は1914年7月に福山~府中間が開業した歴史ある路線で、開業以来学生や高齢者を中心とした沿線住民の生活を支えてきたが、沿線人口の減少やマイカー利用の定着に伴い利用者は長期的に減少してきた。福山市は、福塩線を学生や高齢者にとって欠かせない移動手段と位置づけ、今後も暮らしを支える公共交通として維持していくことを協議会活動の目的として掲げている。 (参考:福塩線について - 福山市ホームページ)
電化区間と非電化区間の極端な利用格差
福塩線は福山~府中間(23.6km)が直流1,500Vで電化されている一方、府中~塩町間(54.4km)は非電化のまま残されており、この境界を境に運行本数・利用実態ともに大きな差が生じている。JR西日本が公表した2023年度区間別平均通過人員(輸送密度)によれば、福山~府中間が6,194人/日であるのに対し、府中~塩町間はわずか166人/日と、約37倍の開きがある。 (参考:2023年度区間別平均通過人員(輸送密度)について - 西日本旅客鉄道)
非電化区間(福塩北線)の深刻な経営状況
JR西日本が2024年10月に公表した輸送密度2,000人/日未満線区の経営状況(2021~2023年度平均)によれば、府中~塩町間の収支率はわずか4.6%、営業係数は2,188円(100円の運輸収入を得るのに2,188円の費用がかかる計算)にのぼる。同区間の平均通過人員は1987年度の898人/日から2023年度には166人/日まで落ち込み、ピーク時の2割弱の水準にまで縮小している。JR西日本は2022年4月、輸送密度2,000人/日未満の線区について路線バスへの転換や上下分離方式、第三セクター化などを含む「交通のあり方の見直し」を沿線自治体と協議していく方針を示しており、福塩北線はこの見直し対象路線に含まれている。 (参考:輸送密度2,000人/日未満の線区別経営状況に関する情報開示 - 西日本旅客鉄道、存廃問われる「福塩線」なぜ凋落? - 乗りものニュース)
2018年豪雨と高速バスへの需要流出
乗りものニュースの報道によれば、福塩北線は沿線人口の減少に加え、広島市方面への移動需要が高速バス「ピースライナー」に奪われていることや、2018年7月の西日本豪雨による長期運休後、通学生の利用が鉄道に戻りきらなかったことも利用者数低迷の要因として指摘されている。 (参考:存廃問われる「福塩線」なぜ凋落? - 乗りものニュース)
1. 沿線4市町による協議会の設立と広域的な受付体制
福塩線対策協議会は、福山市・府中市・世羅町・三次市の沿線4市町で構成され、事務局を福山市都市交通課に置いている。イベント補助の申請窓口は福山市都市交通課のほか、府中市地域づくり課、世羅町企画課、三次市まちづくり交通課でも受け付けており、電化区間の起点自治体(福山市)から非電化区間の終点自治体(三次市)まで、行政区域をまたいだ一体的な運営体制を構築している。 (参考:福塩線に乗って出かけよう! - 福山市ホームページ)
2. 沿線イベントへの乗車運賃補助(継続実施)
対象となる行事の例として、学校や保育所が実施する遠足・社会見学、自治会・子ども会主催の親睦旅行、沿線で開催するウォーキングイベントなどが挙げられる。10人以上の団体が福塩線または沿線駅舎を利用してこうした行事を行う場合、乗車運賃を1団体・年度内1回・上限1万円まで補助する制度を継続的に運用している。 (参考:福塩線に乗って出かけよう! - 福山市ホームページ、福塩線 - 世羅町ホームページ)
3. 河佐駅前の無料レンタサイクル(2022年度から継続)
府中市の河佐駅前で、夏休み期間に合わせて大人用8台・子ども用2台、計10台の無料レンタサイクルを貸し出す取り組みを、少なくとも2022年度から2026年度まで毎年継続して実施している。河佐峡や芦田湖周辺の周遊を促し、駅の利用と観光の両面から福塩線利用のきっかけをつくる狙いがある。 (参考:福塩線河佐駅で無料レンタサイクル開始 - 中国新聞デジタル、福塩線河佐駅で自転車無料レンタル - 中国新聞デジタル)
4. 府中天満屋と連携したパーク&ライドの実証事業
府中市は福塩線対策協議会と地元商業施設・府中天満屋が連携し、府中駅を起点に福塩線で通勤する会社員らを対象に、天満屋の駐車場に車を停めて電車通勤に切り替えるパーク&ライドのモニター事業を実施している。募集は先着5名という小規模なもので、参加者は駐車料金(1か月分)を支払う代わりに商品券と利用者証を受け取る仕組みになっており、アンケートを通じて利用ニーズを検証する実証実験の位置づけである。 (参考:モニター参加者募集中~府中天満屋の駐車場に停めて福塩線で通勤しよう~ - 府中市ホームページ)
5. 開業110周年記念ヘッドマークの運行(2024年度)
福山~府中間の開業110周年(1914年開業)を記念し、2024年に沿線市町内在住・在勤・在学者らを対象にヘッドマークデザインを公募したところ、応募総数148点が集まった。福塩線対策協議会が選定した最優秀作品(東京都在住・広島県府中市出身の占部博士氏によるデザイン)を用いたヘッドマークを制作し、2024年11月から2025年3月まで福塩線の車両に掲出して運行した。 (参考:福塩線について - 福山市ホームページ、【ヘッドマーク運行開始】福塩線(福山~府中間)開業110周年を記念したヘッドマークのデザインを募集します - 福山市ホームページ)
6. キャラクター絵本と缶バッジによる利用促進(2025年1月〜)
府中市は2024年、福塩線をモチーフにした絵本「おしゃべりなふくえんせん」を制作し、市内の保育所・幼稚園への寄贈や市立図書館での配架を通じて福塩線を身近に感じてもらう取り組みを行った。福塩線対策協議会はこれと連携し、2025年1月からイベント補助を利用した団体の希望者に絵本キャラクターの缶バッジを配布している。継続的な仕掛けとして、その後第2弾となる新デザインの缶バッジも追加されている。 (参考:福塩線について - 福山市ホームページ、絵本読んで福塩線乗ってね 府中市、保育所などに配布へ - 中国新聞デジタル)
7. 隣接する芸備線対策協議会との共同ガイドブック発行
福塩線対策協議会は、同じく存続が課題となっているJR芸備線の芸備線対策協議会と共同で、沿線各地のグルメ情報や見どころをまとめた「芸備線・福塩線完全攻略ガイド2025」を発行した。ガイドブックは沿線の駅や施設で配布されるほか、PDF形式でも公開されており、両路線をまたいで周遊する利用者を想定した内容になっている。 (参考:芸備線対策協議会について - 三次市ホームページ)
8. 単発の企画列車事業(2020年度)
過去には、新型コロナウイルスの感染拡大と2018年西日本豪雨の影響を受けた沿線地域の活性化を目的に、福山・世羅・三次の地元ワイナリー6種類のワインと府中市の食材を使った弁当を提供する「福塩線ワイン列車」を2020年11月に運行するなど、季節性の高い単発企画も実施してきた。 (参考:福塩線の魅力再発見 福塩線ワイン列車が走ります! - NEWSCAST)
1. 行政区域をまたぐ「路線単位」の広域協議会
多くの沿線まちづくりが単一自治体や単一駅を単位に展開されるのに対し、福塩線対策協議会は電化区間の起点(福山市)から非電化区間の終点(三次市)まで、性質の異なる4つの自治体が一つの路線を単位に協議会を組成している点が特徴である。イベント補助の申請窓口を4市町それぞれに置くなど、住民から見て居住自治体の窓口で手続きが完結する体制を維持しながら、施策の企画・運用は協議会として一体的に行っている。
2. 大規模投資でなく、低コストな施策のポートフォリオで継続性を確保
パーク&ライドの実証(先着5名規模)、レンタサイクル(10台)、イベント補助(上限1万円)など、個々の施策はいずれも小規模である。ただし、これらを組み合わせて年間を通じて複数の切り口から利用促進を図ることで、限られた予算の中でも取り組みを途切れさせずに継続している点が特徴的である。単発の大型投資に頼らず、毎年少しずつ形を変えながら露出を維持する運営スタイルといえる。
3. 民間商業施設・地元産業との連携
府中天満屋との連携によるパーク&ライドや、地元ワイナリーと連携したワイン列車など、行政単独ではなく沿線の民間事業者を巻き込んだ施策を組み込んでいる。特にパーク&ライドは、商業施設側にとっても駐車場の付加価値向上や来店動線の創出につながりうる設計であり、双方にメリットのある連携形態になっている。
4. 隣接する危機的ローカル線同士のクロスプロモーション
芸備線対策協議会との共同ガイドブック発行は、それぞれが個別に情報発信するのではなく、三次市を結節点として隣接する2つの危機的ローカル線が連携し、周遊需要を相互に取り込もうとする工夫である。単独路線では生み出しにくい「乗り継いで巡る」需要を、協議会間の連携によって作り出そうとしている。
継続的な事業実施という実績
公開情報からは、各施策による利用者数増加への定量的な効果検証や公式評価の資料は確認できなかった。ただし、河佐駅の無料レンタサイクルは少なくとも2022年度から2026年度まで5年以上にわたり毎年継続実施されており、イベント補助制度や絵本・缶バッジ企画も継続的に運用されるなど、単発で終わらず複数年にわたり施策を維持している点は確認できる。 (参考:福塩線河佐駅で自転車無料レンタル - 中国新聞デジタル、JR福塩線河佐駅前で無料レンタサイクルを実施します - 福山市ホームページ)
輸送密度は微増だが、構造的な経営課題は継続
JR西日本の公表データによれば、府中~塩町間の平均通過人員は2022年度160人/日から2023年度166人/日へ、福山~府中間も5,861人/日から6,194人/日へと、いずれも前年度比で微増している。ただしこれは全国的な移動需要の回復傾向とも重なる時期であり、協議会施策単体による効果と特定できる根拠は公開情報からは確認できない。非電化区間の収支率は依然4.6%(2021~2023年度平均)にとどまっており、路線の構造的な経営課題そのものが解消されたわけではない。 (参考:2023年度区間別平均通過人員(輸送密度)について - 西日本旅客鉄道、輸送密度2,000人/日未満の線区別経営状況に関する情報開示 - 西日本旅客鉄道)
話題化の実績
開業110周年記念ヘッドマークのデザイン公募には148点の応募が集まり、最優秀作品を選定して2024年11月から2025年3月まで運行するという一連のプロセスが完了した。地域住民や沿線出身者を巻き込む企画として、利用促進策にとどまらない話題づくりの機能を果たしている。 (参考:福塩線について - 福山市ホームページ)
1. 単独自治体では成立しない「路線単位」の広域連携
性質の異なる複数自治体にまたがる公共交通路線を単一自治体の施策として維持しようとすると、区域外の区間には投資根拠を持ちにくい。福塩線対策協議会のように、路線そのものを単位として沿線自治体が対等に協議会を構成し、申請窓口は各自治体に置きながら施策は一体的に運用する体制は、同様に複数自治体にまたがるローカル線・バス路線を抱える地域にとって再現性のある枠組みである。
2. 大型投資でなく、低コストな施策を積み重ねて「途切れさせない」運営
福塩線対策協議会の各施策は補助上限1万円、レンタサイクル10台など、いずれも小規模である。路線の存廃議論のように解決に時間がかかる構造的課題を前に、大型投資の成果を待つのではなく、低コストな施策を複数継続的に積み重ねることで路線への関心と接点を維持し続けるアプローチは、財政規模の小さい自治体でも着手しやすい。
3. 民間商業施設との連携は、双方にメリットのある設計が鍵
パーク&ライドにおける府中天満屋との連携は、駐車場という遊休資産の活用機会を商業施設側に提供しつつ、公共交通側は自動車から公共交通への行動変容を後押しするという、双方にメリットのある設計になっている。公共交通の利用促進策を検討する他地域においても、単に協力を依頼するのではなく、連携先の事業メリットを明確にした設計が実効性を左右する。
4. 隣接する危機路線同士の連携で周遊需要を作る
福塩線対策協議会と芸備線対策協議会による共同ガイドブックのように、単独路線では生み出しにくい周遊需要を、地理的に隣接する路線の協議会同士が連携することで作り出す発想は、同様に複数の危機的ローカル線が交差する地域における参考事例になる。
5. 利用促進策と並行して、路線の構造的課題への向き合いも避けられない
福塩線の非電化区間は収支率4.6%という深刻な経営状況にあり、JR西日本は上下分離方式や路線バス転換を含む見直しを提起している。イベント補助やレンタサイクルのような利用促進策は、沿線への関心喚起や利用機会の創出には一定の効果が期待できる一方、単独で路線の構造的な収支課題を解消できる規模ではない。同様の危機的ローカル線を抱える他地域にとって、利用促進策と、上下分離・運行形態見直しなど制度的な議論を並行して進める視点を持つことが、路線単位の対策協議会という枠組みに共通して求められる示唆といえる。
2026年09月時点の調査内容に基づいて作成
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