
グリスロ潮待ちタクシー(鞆の浦グリーンスローモビリティ事業)
この記事は、my grooveを運営する株式会社Groove DesignsがAIを活用し独自に調査・作成したものです。
広島県福山市鞆町で2019年4月に始まった、電動低速車両グリーンスローモビリティを用いる全国初のタクシー事業。実証実験のデータを根拠に国・運輸局と協議し、わずか4か月で規制の壁を越えて本格運行に移行した経緯を紹介する。
広島県福山市鞆町(鞆の浦)で2019年4月19日、タクシー事業者のアサヒタクシー株式会社が「グリスロ潮待ちタクシー」の営業運行を開始した。時速20km未満で走る電動車両「グリーンスローモビリティ」(愛称:グリスロ)を用いた、営業タクシーとしては全国初の事業化である。日本遺産・重要伝統的建造物群保存地区・ユネスコ「世界の記憶」の3つの指定を併せ持つ港町・鞆の浦の狭い路地を苦にせず走行できる小型の電動車両で、高齢化が進む住民の生活移動と、年間200万人規模の観光客の周遊支援を一台で両立させる狙いを持つ。2018年9月に国土交通省の実証調査支援事業に採択され、同年11月に2週間の実証実験を実施した。そこで得た利用実績や住民アンケートを根拠に国・運輸局と協議のうえ、実証終了からわずか4か月で緑ナンバー(一般乗用旅客自動車運送事業)を取得。2026年現在まで、鞆町エリア限定で運行が続いている。 (参考:国土交通省「グリスロで全国初のタクシー事業が始まります」、アサヒタクシー「グリスロ潮待ちタクシー(鞆の浦)」、福山市建設局「全国初の『グリスロ潮待ちタクシー』運行開始!」)
鞆町は江戸時代に潮待ちの港として栄えた歴史的な港町で、2018年時点で人口は約3,700人、高齢化率は47.2%に達していた(この30年間で人口はほぼ半減)。同じ福山市域の離島・走島はさらに高齢化率67.9%に達しており、周辺集落を含めた広い意味での生活の足の確保が課題になっていた。 (参考:福山市建設局「全国初の『グリスロ潮待ちタクシー』運行開始!」)
一方で鞆の浦は2018年に日本遺産、2017年に重要伝統的建造物群保存地区とユネスコ「世界の記憶」の指定を受けた観光地でもあり、2018年3月時点で年間213万人の観光客が訪れていた。港町特有の古い地割がそのまま残る町並みは、車同士がすれ違えないほど狭い路地や急坂が入り組み、町中の主な交差点も信号のない三叉路が中心となっている。この結果、観光シーズンの通過交通と生活道路が競合し、住民の日常の買い物・通院の移動や緊急車両の通行にまで支障が出る状態になっていた。景観保全の観点から港の埋め立て・架橋による道路整備計画は中止され、代わりにバイパスを新設する方向へ計画が転換されていたため、既存の狭い道路網を前提にした移動手段の再設計が避けられない課題として残っていた。 (参考:福山市建設局「全国初の『グリスロ潮待ちタクシー』運行開始!」)
福山駅〜鞆港間の路線バスや鞆〜仙酔島・走島間の航路は運行していたものの、いずれも幹線的なルートにとどまり、路地の奥まで入り込んで高齢者の戸口まで送り届けるような移動手段は用意されていなかった。福山市は2018年3月に「鞆まちづくりビジョン」を策定してこうした課題への対応方針を示し、同年9月には国土交通省が全国から公募した「グリーンスローモビリティの活用に向けた実証調査支援事業」の対象地域として全国5地域の一つに選ばれ、同年11月に具体的な解決策の検証として実証実験に着手した。 (参考:福山市建設局「全国初の『グリスロ潮待ちタクシー』運行開始!」、日経BP「広島県福山市:住民の足としてグリーンスローモビリティを営業運転」)
1. 3つの性格の異なるルートで実施した2週間の実証実験
2018年11月16日から29日までの2週間、7人乗りのゴルフカート型車両2台を使い、性格の異なる3ルートを並行して走らせる実証実験を行った。生活支援を目的に鞆鉄道株式会社が運行し、病院などを経由してバス停に接続する定時定路線の「暮らしおたすけルート」(約5.9km・約5.1kmの2系統)、観光振興を目的にアサヒタクシー株式会社が運行し、観光ガイドが同乗して福禅寺・対潮楼や常夜燈などの名所を不定期に周遊する「絶景おもてなしルート」(約2.4km)、高齢者の外出支援という福祉事業の枠組みで地域ボランティア団体「ひまわりの会」が運行した離島・走島の「走島おでかけルート」(約3.0km・約5.4kmの2系統)である。生活・観光・福祉という異なる移動ニーズを、それぞれの領域を担う既存の主体に運行させる形で同時に検証した点が設計上の特徴だった。 (参考:福山市建設局「全国初の『グリスロ潮待ちタクシー』運行開始!」)
2. お披露目会と全戸配布による周知、県内メディアの一斉報道
実証実験の開始に合わせてお披露目会・出発式を催し、全戸にチラシを配って周知した。この結果、実証開始翌日の2018年11月17日には広島県内のテレビ全5局(NHK、広島テレビ、RCCなど)と新聞10社が一斉に取り上げ、狭い路地を走る低速電動車両という題材が地域メディアの関心を集めた。こうした発信を通じて多くの住民や観光客が実証運行を実際に体験する機会をつくり、そこで得た声を後の意思決定の材料とする狙いがあった。 (参考:福山市建設局「全国初の『グリスロ潮待ちタクシー』運行開始!」)
3. 全国5実証地域中最多となる利用実績の獲得
2週間の実証期間中、鞆町全体で1,071人が乗車し、これは国土交通省が同時期に選定した全国5つの実証地域の中で最多の実績となった。内訳は「暮らしおたすけルート」369人(1日平均26人)、「絶景おもてなしルート」702人(1日平均50人)で、年代別では60代以上の利用が全体の約5割弱を占め、中でも70代の利用者数が最も多かった(男性58人・女性141人)。利用者の約7割が本格導入を望んでおり、地域住民の57%、観光客の73%が本格運用を「必要」と答えた。有料化した場合の利用意向も住民44%、観光客58%が「利用したい」としており、無償の実証段階から有料の本格サービスへの移行を後押しするデータが得られた。 (参考:福山市建設局「全国初の『グリスロ潮待ちタクシー』運行開始!」)
4. ドアなし車両の安全性を巡る国・運輸局との協議
本格運行に移すためには、タクシー等の緑ナンバー(一般乗用旅客自動車運送事業)を取得する必要があったが、グリスロの車両にはドアがなく、安全性の確保が国土交通省本省・中国運輸局との協議で課題として指摘された。福山市とアサヒタクシーは、鞆町中心部が狭小道路のために元々速度が出しにくく、警察の記録上も人身事故が少ないというデータや、住民自身が日頃から速度を抑え合う生活習慣を根拠として示し、運行エリアを鞆町内に限定することで安全性を担保する方向で協議をまとめた。この協議を経て「福山市におけるグリーンスローモビリティによる一般乗用旅客自動車運送事業運用要領」が策定され、福山市地域公共交通会議での審議・承認を経て、運行事業者をアサヒタクシーとする形で緑ナンバーの取得が実現した。 (参考:福山市建設局「全国初の『グリスロ潮待ちタクシー』運行開始!」)
5. 実証終了からわずか4か月での本格運行開始
2018年11月の実証実験終了から4か月後の2019年4月19日、「グリスロ潮待ちタクシー」として本格運行が始まった。使用車両はヤマハ発動機製の5人乗り電動車両「AR-05」で、見た目は一般的なタクシーに近く、運賃メーターや行灯型の表示灯といった標準的な装備を備えたうえで、運賃も通常のタクシー運賃と同水準に設定された。運行エリアは鞆町内、平地区と鞆鉄鋼団地の間を結ぶ約4km区間に設定され、運行時間は9時から18時で、電話予約制での運行となっている。 (参考:国土交通省「グリスロで全国初のタクシー事業が始まります」、アサヒタクシー「グリスロ潮待ちタクシー(鞆の浦)」、ヤマハ発動機「鞆の浦でグリスロタクシーが運行開始」)
6. 定時定路線バス・観光周遊タクシーへの派生
潮待ちタクシーの本格運行開始後、2020年3月には鞆地区内を定時定路線で走る6人乗りの「鞆の浦グリスロバス」(片道170円均一)、および土日祝限定で福山駅北口から福山城周辺を周遊する「グリスロ城まちタクシー」(1乗車200円)が相次いで運行を始めた。メーター制で運賃が変動するタクシー型の潮待ちタクシー、定額運賃の定時定路線バス、観光周遊に特化した低額タクシーという、運賃体系と用途の異なる3つのグリスロサービスが役割分担する形で鞆エリア・福山城エリアに広がっている。 (参考:日経BP「広島県福山市:住民の足としてグリーンスローモビリティを営業運転」)
生活・観光・福祉という異なる移動ニーズを、既存の担い手に分担させて同時検証したこと
多くのグリーンスローモビリティ実証実験は単一の運行主体・単一ルートで行われるが、鞆町の実証実験はバス事業者(生活支援)、タクシー事業者(観光周遊)、地域ボランティア(福祉的な外出支援)という、もともと異なる領域を担ってきた3者にそれぞれの得意分野のルートを運行させた。これにより、生活の足としての需要と観光周遊としての需要を混同せずに、別々のデータとして検証できた点が特徴である。 (参考:福山市建設局「全国初の『グリスロ潮待ちタクシー』運行開始!」)
規制のハードルを、地域固有のデータを根拠に運行エリア限定という形で乗り越えたこと
ドアのない車両で緑ナンバーを取得することは全国的にも前例のない試みであり、安全性の担保が焦点となった。福山市とアサヒタクシーは、鞆町の交通事故データや住民の生活実態という地域固有のエビデンスを国・運輸局に提示し、運行エリアを鞆町内に限定する条件付きで特例的な運用要領を共同で策定した。安全基準を全国一律で緩和させるのではなく、対象エリアを絞ることでリスクをコントロールしながら規制を乗り越えた交渉の進め方に独自性がある。 (参考:福山市建設局「全国初の『グリスロ潮待ちタクシー』運行開始!」)
実証実験を「単発の社会実験」で終わらせず、4か月で事業化まで走り切ったこと
多くの実証実験は、結果の報告書がまとまった後も本格導入の判断や制度整備に長い時間を要し、機運が失われてしまうことが少なくない。鞆町の事例では、実証実験の設計段階から取得済みのデータを使って国・運輸局との協議を並行して進めたことで、実証終了から本格運行開始までを4か月に短縮した。速度感を持って社会実験を実装に移した点は、他の交通実証にはあまり見られない特徴である。 (参考:福山市建設局「全国初の『グリスロ潮待ちタクシー』運行開始!」)
民間タクシー事業者が車両購入・運行費を自社負担する自走型の事業構造
潮待ちタクシーは、車両の購入費や運行費をアサヒタクシーが自社で負担する形で運営されている。国の実証調査支援事業は2018年度の実証段階までの支援にとどまり、本格運行以降は通常のタクシー運賃を収受する営業事業として自立的に継続している。同じ鞆エリアで後に始まった定額運賃・6人乗りの「鞆の浦グリスロバス」については、乗車定員の少なさから運転手人件費等の運行経費を運賃収入だけで賄うことが難しいという課題が指摘されており、メーター制のタクシー型サービスと定額制のバス型サービスとでは収支構造が異なる点も、この事例群を見る上での重要な観察点である。 (参考:日経BP「広島県福山市:住民の足としてグリーンスローモビリティを営業運転」)
実証実験段階で全国最多の利用実績と高い本格導入意向を獲得
2018年11月の2週間の実証実験では、国土交通省が選定した全国5つの実証地域の中で最多となる1,071人が鞆町のグリスロに乗車した。住民の57%、観光客の73%が本格運用を「必要」と回答し、有料運行に対しても住民44%、観光客58%が利用意向を示すなど、定量的な裏付けを伴って本格導入への合意形成が図られた。 (参考:福山市建設局「全国初の『グリスロ潮待ちタクシー』運行開始!」)
約7年間にわたり運行を継続
2019年4月19日の運行開始から2026年現在まで、潮待ちタクシーは鞆町エリア限定で運行を継続している。現在の運行体制は月曜から日曜まで(天候により運休の場合あり)、運行時間は9時から18時、運行区域は鞆地区内に限定され、メーター制の通常運賃に加えて貸切の観光モデルコース(30分・60分単位)が用意されている。単年度の実証や短期の社会実験で終わらず、営業事業として複数年にわたり継続している点は、成果として確認できる。 (参考:アサヒタクシー「グリスロ潮待ちタクシー(鞆の浦)」、福山市「グリーンスローモビリティ」)
関連サービスへの派生による移動手段の多様化
潮待ちタクシーの本格運行開始を起点に、2020年3月には定時定路線の「鞆の浦グリスロバス」と、福山城周辺を周遊する「グリスロ城まちタクシー」が新たに始まり、鞆エリアの移動手段は当初のタクシー1事業から、運賃体系・用途の異なる複数サービスへと広がった。単一の事業を導入して終わりにするのではなく、そこで得た知見や車両を活用しながら周辺エリアへの展開につなげている点は、確認できる定性的な成果である。 (参考:日経BP「広島県福山市:住民の足としてグリーンスローモビリティを営業運転」)
利用者・ドライバー双方からコミュニケーション面での評価
利用者からは、低速で走行するグリスロの車内や、すれ違う住民との挨拶・会話が増えたといった声が寄せられており、運転するドライバー側からも、乗客の反応を間近で受け取れる仕事の手応えを語る声が報告されている。移動時間の短縮といった効率面だけでなく、狭い港町での人と人との接点を増やす副次的な効果が定性的に確認されている。 (参考:たべタインジャー「福山・鞆の浦で全国初!グリスロ潮待ちタクシー、生活や観光の足に」)
移動手段の導入を目的化せず、地域課題の解決手段として位置づけて手法を選ぶ
鞆町の事例は「グリーンスローモビリティを導入すること」自体を目的にせず、「観光渋滞と生活道路の競合」「狭小路地での高齢者の移動困難」という具体的な地域課題を先に言語化した上で、その解決に適した車両・運行形態を選んでいる。新しいモビリティの導入を検討する他地域でも、車両ありきで用途を後付けするのではなく、解決したい交通課題を先に定義してから手法を選ぶという順序は、業種や地域を問わず再現可能な進め方である。 (参考:福山市建設局「全国初の『グリスロ潮待ちタクシー』運行開始!」)
本格運行後の担い手を実証実験の設計段階から決めておく
鞆町の実証実験は、生活支援ルートをバス事業者、観光周遊ルートをタクシー事業者、福祉的な外出支援ルートを地域ボランティアという形で、実証段階から本格運行時の担い手候補を割り当てて運行させていた。これにより、実証終了後にゼロから運行事業者を探す必要がなく、4か月という短期間での本格移行が可能になった。実証実験を単発のイベントで終わらせたくない他地域にとっては、「誰が本格運行を担うか」を実証設計の段階で決めておくことが、移行スピードを左右する実務上のポイントになる。 (参考:福山市建設局「全国初の『グリスロ潮待ちタクシー』運行開始!」)
規制上のハードルは、地域固有のデータをそろえて所管官庁と協議することで乗り越えられる場合がある
ドアのない車両の安全性という、全国一律の基準では認められにくい論点に対し、鞆町は自らの交通事故データや住民の生活実態を根拠として示し、運行エリアを限定する条件で特例的な運用要領を国・運輸局と共同で作り上げた。新しい移動サービスの導入時に既存の許認可制度が障壁になる場面は他地域でも起こり得るが、対象エリアや条件を絞り込んだ上でエビデンスを携えて協議に臨むという交渉の型は、業種を問わず参考になる。 (参考:福山市建設局「全国初の『グリスロ潮待ちタクシー』運行開始!」)
定額運賃型と従量運賃型では収支構造が異なるため、複数サービスを展開する際は運賃設計を分けて検討する
鞆エリアではメーター制の潮待ちタクシーに続き、定額運賃・6人乗りの鞆の浦グリスロバスが導入されたが、後者は乗車定員の少なさから運行経費を運賃収入だけで賄いにくいという課題が指摘されている。同じグリーンスローモビリティという車両を使っても、タクシー型(従量制・少人数)とバス型(定額制・定時定路線)とでは採算の取りやすさが異なる。複数のモビリティサービスを地域に展開しようとする他地域にとって、車両の導入自体よりも運賃制度の設計が事業の持続性を左右するという点は、見落とされがちな示唆である。 (参考:日経BP「広島県福山市:住民の足としてグリーンスローモビリティを営業運転」)
2026年9月時点の調査内容に基づいて作成
この記事は公開情報に基づき、AIを用いた詳細調査により作成されました。記事内容への修正依頼、お問合せ等は以下までお寄せください。
問い合わせ:support@groove-designs.com
よくあるご質問(FAQ)もあわせてご確認ください。
#
総合計画
#
まちづくり指針
#
エリアビジョン
#
景観計画
#
緑の基本計画
#
公共空間活用
#
ウォーカブル
#
公園活用
#
防災・減災
#
空き家活用
#
エリアプラットフォーム
#
公民連携プラットフォーム
#
公民連携
#
地域コミュニティ
#
地域交流拠点
#
多文化共生
#
子育て支援
#
文化芸術
#
自動運転バス
#
モビリティマネジメント
#
モビリティハブ
#
関係人口
#
移住促進
#
探究学習
#
グリーンインフラ
#
生物多様性
#
参加型予算
#
都市整備
#
まちなか
#
駅前広場
#
協働のまちづくり
#
リノベーションまちづくり
#
フューチャーセンター
#
スマートシティ
#
AI
#
リビングラボ
#
空きスペース活用
#
居場所づくり
#
子ども食堂
#
沿線まちづくり
#
健康
#
社会教育
#
持続可能な都市
#
計画策定
#
まちづくり
#
コミュニティ形成
#
ワークショップ
#
社会実験
#
市民参加
#
子ども・若者
#
子育て世代
#
シニア