
鞆の浦 de ART
この記事は、my grooveを運営する株式会社Groove DesignsがAIを活用し独自に調査・作成したものです。
広島県福山市鞆町で2013年度から続く現代アート展覧会。重要伝統的建造物群保存地区に指定された町家や寺院を舞台に、長年の埋立架橋計画問題を経験した港町で、現代アートを通じて新たな来訪者と関係人口を生み出してきた事例。
「鞆の浦 de ART」は、広島県福山市鞆町の町並み全体を舞台にした現代アート展覧会である。江戸期から昭和戦前期の町家や寺院が残る港町を会場に、彫刻・絵画・書・陶芸など多ジャンルの作家の作品を展示し、来訪者は町を歩きながら鑑賞する形式をとる。2013年度に始まり、2026年で14回目の開催を数える。 (参考:鞆の浦 de ART 公式サイト、鞆の浦 de ART 2018 公式サイト)
主催は鞆の浦 de ART実行委員会(事務局:福山商工会議所)で、福山市や福山観光コンベンション協会などが後援する。2025年は9月28日から10月19日にかけて県内外の24組の個人・団体が参加し、2026年は9月27日から10月18日の会期で25名以上の作家が参加する予定である。 (参考:鞆の浦で現代アート展開幕|中国新聞デジタル、鞆の浦 de ART 公式サイト)
鞆町は瀬戸内海のほぼ中央に位置し、江戸期には潮の満ち引きを利用した「潮待ちの港」として栄えた港町である。港湾施設と一体となった町並みが現存し、地割や石垣、江戸中期から昭和戦前までの町家が良好に保存されている点が評価され、2017年11月28日に約8.6ヘクタールが国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。 (参考:福山市鞆町伝統的建造物群保存地区|日本遺産ポータルサイト)
一方でこの町は、1983年に広島県が発表した港湾埋立・架橋計画をめぐり、約30年にわたる対立を経験している。道路の狭さや渋滞の解消を目的とした計画は、歴史的景観の喪失を懸念する住民や研究者、宮崎駿・大林宣彦ら文化人の反対運動を招き、2007年には住民163人が広島地方裁判所に埋立差し止め訴訟を提訴した。2009年10月の判決で住民側が勝訴し「景観利益は法的保護に値する」と認定されたことは全国的に報じられ、2012年6月に広島県知事が計画の正式中止を決定した(訴訟自体は2016年2月に終結)。 (参考:鞆の浦埋立て架橋計画問題|Wikipedia、鞆の浦景観訴訟が終結 広島県、埋め立て計画を断念|日本経済新聞)
この長期対立と並行して、鞆町では人口減少と高齢化が進行していた。最盛期の1960年代には約1万3000人を数えた人口は、2018年3月末時点で3,972人までおよそ3分の1に減少し、住民の高齢化と空き家の増加が課題となっていた。2003年には住民主導で「NPO法人鞆まちづくり工房」が設立され、太田家住宅(国重要文化財)の公開を契機に空き家を飲食店やギャラリーへ転用する取り組みが進められてきた。「鞆の浦 de ART」は、こうした人口減少下でのまちづくりの模索と、埋立架橋計画の決着という二つの動きの延長線上にある2013年度に開始された。 (参考:鞆町|Wikipedia、歴史的港湾都市・鞆の浦 再生の「まちづくり」の生成)
1. 町全体を会場とする分散型の展示形式
「鞆の浦 de ART」は専用の展示施設を持たず、太田家住宅(江戸期建造・国重要文化財、元酒造業の商家)、福禅寺・対潮楼、静観寺、明圓寺、鞆城跡といった歴史的建造物や寺社を会場として借り受け、町内各所に作品を分散配置する。会場数は2025年は11カ所、2026年は13カ所に拡大しており、来訪者は町を回遊しながら作品を鑑賞する。
(参考:鞆の浦 de ART 公式サイト、鞆の浦 de ART 2022|備後とことこ)
2. キュレーター制による作家選定
発足時から彫刻家のヨシダコウブンがキュレーターを務め、近年は他のキュレーターと共同で作家選定にあたっている。参加作家は県内外の一般作家に加え、福山市立大学教員など地域の教育機関に所属する作家が個人の立場で出展する例もあり、ジャンルは金属造形、絵画、書、盆栽、グラフィティ、陶芸など幅広い。2025年には「胎児を表現した掃除機」のような実験的な作品も出品されるなど、伝統的な町並みとの対比を意図した選定がなされている。
(参考:鞆の浦で現代アート展開幕|中国新聞デジタル、教育学部渋谷教授の絵画作品が「鞆の浦de ART2025」で展示されます|福山市立大学)
3. 周辺プログラムの併催
会期中は作品見学ツアー、地域の歴史を学ぶ勉強会、鞆町特産の薬味酒「保命酒」の利き酒コンテスト、木工などのワークショップを併催し、単なる鑑賞にとどまらない滞在プログラムを用意している。あわせてフォトコンテストも実施され、最優秀賞にはNIPPONIA鞆港町の宿泊券(朝食付きペア)と現金2万円が贈られる。
(参考:鞆の浦 de ART 公式サイト、鞆の浦deART2024 フォトコンテスト|公募データベース)
4. アクセシビリティを優先した規模調整
10周年にあたる2022年は、来場者の裾野拡大よりも高齢の来訪者にとっての回遊しやすさを優先し、参加作家を16組・1団体に絞ったコンパクトな会期構成とした。拡大を既定路線とせず、その年ごとにアクセシビリティとのバランスで規模を調整している点が特徴である。
5. 会場となる建造物整備との連動
展覧会の継続と並行して、会場側の整備も進んできた。2020年12月には町家2棟を改修した宿泊施設「NIPPONIA鞆港町」がプレオープンし2021年4月に全3棟でグランドオープン、2022年7月には明治期の町家を再生した交流施設「鞆てらす」が開業して、いずれも展覧会の会場として組み込まれている。
(参考:広島県・福山市に「NIPPONIA 鞆 港町」が新しくオープンします。|NIPPONIA、あーと、アート、ARTで彩る潮待ちの港・鞆の浦|日本遺産ポータルサイト)
1. 開発対立の"後"に立ち上げられた文化事業という位置づけ
まちづくり型のアートイベントの多くは人口減少や商店街衰退への直接対応として始まるが、本事例は約30年続いた埋立架橋計画をめぐる住民間の対立が決着した翌年度に始まっている点が特異である。景観保護運動の記念碑化や対立の総括ではなく、日常の町並みの中に現代アートを溶け込ませる形で新しい来訪動機をつくり出す方向を選んだことは、対立の記憶が残る地域における関係修復の一つの手法として読み取れる。
2. 重要文化財・伝建建造物をそのまま展示空間として使う手法
新たに専用の展示施設を建設するのではなく、国重要文化財の太田家住宅や寺院など、保存対象そのものである歴史的建造物を会場として活用している。重要伝統的建造物群保存地区の指定(2017年11月)は展覧会開始(2013年度)から4年後にあたり、建造物を公開・活用する実績が地域内で積み重なっていく過程と、展覧会の継続とが同じ時期に並行してきたことがわかる。
(参考:福山市鞆町伝統的建造物群保存地区|日本遺産ポータルサイト)
3. 商工会議所が事務局を担う運営体制
文化事業でありながら、事務局は観光・産業振興を所管する福山商工会議所が担っている。地域の観光振興策の一環として文化事業を運営する体制は、文化・観光・商業の垣根を越えた実施主体の組み方として他地域でも参照可能な点である。
4. 拡大を既定路線としない柔軟な規模設計
10周年という節目であっても会場・作家数を絞った2022年の判断は、多くの地域イベントが陥りがちな「毎年拡大」を自己目的化しない運営姿勢を示している。会場数・参加作家数は年によって増減しており、来訪者数の最大化よりも実施可能な規模を優先する調整が続けられている。
1. 13年にわたる継続開催
2013年度の開始から中断なく毎年秋に開催が続き、2026年で14回目を迎える。単年度の話題性で終わらせず、10年以上にわたって定例行事として定着させてきたこと自体が、小規模な文化イベントとしては一定の到達点といえる。
(参考:鞆の浦 de ART 公式サイト、鞆の浦 de ART 2018 公式サイト)
2. 会場数・参加作家数の拡大傾向
10周年の2022年は16組・1団体の参加であったのに対し、2025年は24組・11会場、2026年は25名以上・13会場と、直近では規模が拡大傾向にある。来場者数そのものを公式に集計した資料は確認できなかったが、参加作家数と会場数という運営側の指標では継続的な拡大が確認できる。
(参考:鞆の浦 de ART 2022|備後とことこ、鞆の浦で現代アート展開幕|中国新聞デジタル、鞆の浦 de ART 公式サイト)
3. 宿泊・交流施設整備との並走
展覧会の継続と並行して、2020年のNIPPONIA鞆港町、2022年の鞆てらすと、町家を再生した宿泊・交流施設が相次いで整備され、いずれもアートイベントの会場として組み込まれている。展覧会単体の経済効果を分離して測定した公式データは確認できなかったが、文化イベントの継続と宿泊・交流拠点整備が同時並行で進んできたことは複数の資料から確認できる。
(参考:広島県・福山市に「NIPPONIA 鞆 港町」が新しくオープンします。|NIPPONIA)
1. 対立を経た地域における「共通の場」としての文化事業
開発の是非をめぐり住民間で意見が割れた地域では、対立の当事者性を離れた新しいテーマ(この場合は現代アート)を持ち込むことで、立場の違いを越えて町に関わる共通の場をつくれる可能性がある。この手法は特定の個人や団体の関係性に依存するものではなく、実行委員会・キュレーター制という体制さえ整えば他地域でも再現しやすい。
2. 歴史的建造物は「保存」だけでなく「使う」ことで維持する
会場となる建造物を新設せず、既存の重要文化財や空き家となった町家をそのまま使う運営方法は、保存地区に指定された町並みを持つ他地域にとっても、維持コストを抑えながら建造物の公開・活用実績を積み上げる手段として参考になる。
3. 規模拡大を既定路線としない運営判断
10周年という節目であっても、来訪者数の最大化ではなくアクセシビリティを優先してあえて規模を絞った2022年の判断は、地域行事が持続可能性を優先し、拡大と縮小を柔軟に選択できることを示している。人口減少地域でイベントを企画する際、「毎年拡大」を自己目的化しない運営モデルとして参考になる。
4. 産業振興組織が文化事業の受け皿になる体制
商工会議所が事務局機能を担う体制は、文化・芸術の専門部署を持たない地域でも、既存の産業振興組織のリソース(会員ネットワーク、実務体制)を転用して文化事業を継続運営できることを示す一例である。
2026年9月時点の調査内容に基づいて作成
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