
京都市脱炭素先行地域推進コンソーシアム
この記事は、my grooveを運営する株式会社Groove DesignsがAIを活用し独自に調査・作成したものです。
2022年に国の脱炭素先行地域に選定された京都市が、寺社・商店街・住宅地・大学などを対象に8分野のワーキンググループで進める官民コンソーシアム型の脱炭素まちづくり。景観規制と両立する太陽光導入や修学旅行を活用した普及に特徴がある。
京都市は2022年11月、環境省が地域脱炭素の先行モデルとして選定する「脱炭素先行地域」の第2回選定において選ばれた。環境省は2025年度末までに全国100地域以上の選定を目標に掲げ、2026年2月時点で全国102地域(実施中99地域)を選定しており、京都市はその初期段階の選定地域の一つに位置づけられる。 (参考:脱炭素先行地域制度について(環境省)、京都市:脱炭素先行地域づくり事業)
選定を受け、京都市は「京都の文化・暮らしの脱炭素化で地域力を向上させるゼロカーボン古都モデル」という計画のもと、2023年3月に「京都市脱炭素先行地域推進コンソーシアム」を設立した。TERA Energy、阪急阪神不動産、京都銀行、JTB、龍谷大学、立命館大学など多様な企業・団体が参画し、総会の下に文化遺産、商店街、住まい、再生可能エネルギー供給、ファイナンス、グリーン人材、サステナブルツーリズムなど8分野のワーキンググループ(WG)を設置して個別プロジェクトを並行して推進している。 (参考:京都市:京都市脱炭素先行地域推進コンソーシアムについて、コンソーシアムについて-脱炭素京都)
対象エリアは京都市南部の伏見エリアを中心とした約2.93km²(市域の0.35%)で、寺社などの文化遺産15箇所(2030年度までに100箇所へ拡大)、伏見大手筋・納屋町・竜馬通りの3商店街(187店舗)、既存住宅100戸、伏見工業高校跡地等・三宅市営住宅跡地に整備する新築ZEH街区414戸、龍谷大学・立命館大学等のグリーン人材育成拠点3箇所(2030年度までに6拠点へ拡大)を対象需要家とする。これらの地域コミュニティ拠点における電力消費に伴うCO2排出を2030年度までに実質ゼロにすることを目標としている。 (参考:京都の文化・暮らしの脱炭素化で地域力を向上させるゼロカーボン古都モデル(京都市提案書))
京都市全体の温室効果ガス排出量は、2013年度と比べて20.9%減少した2020年度時点で6,206千t-CO2となっている。部門別では家庭部門(1,773千t-CO2)と業務部門(1,590千t-CO2)からなる民生部門の排出量が最も多く、脱炭素の実現には民生部門対策が重要な課題とされていた。京都市は2030年度目標を当初の「40%以上削減」から「46%削減」へ上方修正しており、より踏み込んだ対策が求められる状況にあった。 (参考:京都の文化・暮らしの脱炭素化で地域力を向上させるゼロカーボン古都モデル(京都市提案書))
対象エリアとなった伏見エリアは、伏見稲荷大社や藤森神社、醍醐寺といった文化遺産と伏見大手筋商店街などの商店街がまちの中心的な拠点として地域力を支えてきた地域である一方、京都市内で最も人口減少数が大きい地域でもあった。特に近郊自治体への子育て世代(30代)の転出超過は年間約1,000人に上り、少子高齢化の進展やインターネット販売の普及による商店街の活力低下、地域行事の担い手不足といった課題が指摘されていた。また、伏見エリアは市内で65歳以上人口が最も多い地域(81,260人)でもあり、災害時に住民が安心できる身近な防災拠点の不足も課題とされた。 (参考:京都の文化・暮らしの脱炭素化で地域力を向上させるゼロカーボン古都モデル(京都市提案書))
さらに、京都市の宿泊客数はコロナ禍前の2018年度に1,582万人に達した後、感染拡大により2020年度には531万人へ急減しており、観光需要の落ち込みからの回復と、環境先進エリアとしての新たな都市の魅力創出が同時に求められていた。京都市には全国から年間約70万人の生徒が修学旅行で訪れ(コロナ禍前)、中学校の修学旅行先としては全国の約半数のシェアを占めるとされ、この教育旅行という京都特有の来訪者層をどう脱炭素の取組と結びつけるかも計画立案時からの論点だった。 (参考:京都の文化・暮らしの脱炭素化で地域力を向上させるゼロカーボン古都モデル(京都市提案書))
選定からコンソーシアム設立まで
2022年11月の脱炭素先行地域選定を受け、京都市は2023年3月17日に「京都市脱炭素先行地域推進コンソーシアム」の設立総会を開催した。会員は取組を主体的に実施する「正会員」と趣旨に賛同し支援する「一般会員」の2種類で構成され、会費は無償である。総会の下に8つのワーキンググループを設置し、各WGの会員企業・団体が個別プロジェクトを担う体制を敷いた。 (参考:京都市脱炭素先行地域推進コンソーシアム設立総会(脱炭素京都)、京都市:京都市脱炭素先行地域推進コンソーシアムについて)
文化遺産WG:寺社への太陽光・蓄電池導入
文化遺産WGでは、僧侶らによって設立された電力会社TERA Energyの協力を得て、伏見稲荷大社や藤森神社、真宗大谷派伏見6寺院、総本山醍醐寺など15箇所の寺社を皮切りに、駐車場や境内の付帯施設のうち設置に適した場所を見極めて太陽光パネルや蓄電池を据え付け、機器の省エネ改修と再エネ調達を組み合わせて2030年度までに対象の文化遺産100箇所すべてで脱炭素化を完了させる方針である。TERA Energyは「屋根貸し方式」を用いて寺社側の初期費用負担なしで太陽光発電設備を設置できる仕組みを提供しており、この事業モデルを伏見エリアから市内全域、さらに全国へ広げることも視野に入れている。 (参考:文化遺産WG-脱炭素京都、お寺とお宮の発電プロジェクト(TERA Energy))
商店街WG・住まいWGの並行実施
商店街WGでは伏見大手筋商店街・納屋町商店街・竜馬通り商店街(全長約560mのアーケード、加盟187店舗)を対象に、アーケードや個々の店舗に太陽光パネルや蓄電池を設置し、省エネ機器への更新や再エネの調達を組み合わせて脱炭素化を進めている。住まいWGでは、地元の工務店と大手住宅メーカー10社が加盟する一般社団法人優良ストック住宅推進協議会と連携し、既存住宅100戸をZEH水準まで改修する取組を進めるとともに、市有地を活用した新築ZEH街区の整備にも着手している。2023年11月には、伏見工業高校跡地とそれに隣接する市有地の活用に関する基本協定が締結され、阪急阪神不動産(代表事業者)・京阪電鉄不動産・積水ハウスの3社が優先交渉事業者に特定された。 (参考:商店街WG-脱炭素京都、住まいWG-脱炭素京都、京都・伏見工高跡地など阪急阪神不グループを特定(建設通信新聞))
移動・観光の脱炭素とゼロカーボン修学旅行の企画
文化遺産や商店街といった地域コミュニティの拠点をつなぐ移動手段の脱炭素化にも取り組んでおり、市内タクシー738台のEV転換を掲げる。EVタクシーで脱炭素化された寺社等を回る体験学習プログラムとして、サステナブルツーリズムWG(京都市観光協会、京都文化交流コンベンションビューロー、JTB、立命館大学等が参画)が「ゼロカーボン修学旅行」の企画・商品化を進めている。旅行生が持ち帰った経験がそれぞれの出身地での取組につながることを狙いとしている。 (参考:京都の文化・暮らしの脱炭素化で地域力を向上させるゼロカーボン古都モデル(京都市提案書)、脱炭素修学旅行・サステナブルツーリズム-脱炭素京都)
総会を通じた進捗管理
コンソーシアムは設立以降、毎年総会を開催して各WGの取組実績を共有している。2024年7月4日の令和6年度総会ではTERA Energy、阪急阪神不動産等から令和5年度の実績が報告され、2025年7月10日の令和7年度総会でも事務局からの取組状況報告と令和6年度実績の共有に加え、環境省担当者による講演が行われた。 (参考:令和6年度京都市脱炭素先行地域推進コンソーシアム総会開催、令和7年度京都市脱炭素先行地域推進コンソーシアム総会開催)
歴史的景観規制と再エネ導入の両立
京都市は新景観政策のもと「太陽光パネルの景観に関する運用基準」を定めており、文化遺産WGでは歴史的景観を損なわないことを前提に、駐車場や敷地内の付属施設など目立たない箇所を選んで太陽光発電設備を設置する手法を採っている。世界遺産や国宝・重要文化財を数多く抱える京都特有の景観規制と、再エネ導入という一見相反する要請を、設置場所の工夫によって両立させようとする点は、歴史的市街地を持つ他地域にとっても参考になるアプローチである。 (参考:京都の文化・暮らしの脱炭素化で地域力を向上させるゼロカーボン古都モデル(京都市提案書))
宗教者主導の電力会社を仲介役とする合意形成
寺社という、行政や一般的な事業者だけでは個別交渉が難しい多数の零細な文化財所有者に対し、京都市内の僧侶らが自ら設立した電力会社TERA Energyが仲介役となって導入を働きかけている点が特徴的である。宗派の本山が集積する京都の地の利を生かし、本山を通じて関連寺院に働きかける手法も採られている。設備導入によって寺社に蓄電池を備えることは、地域の防災拠点としての機能強化にもつながるとされ、脱炭素と防災という2つの価値を同時に生み出す設計になっている。 (参考:文化遺産群の設備導入者へ地域の取組について、インタビュー(誓願寺)-脱炭素京都、お寺とお宮の発電プロジェクト(TERA Energy))
修学旅行という来訪者層を脱炭素普及の担い手に
多くの脱炭素先行地域の取組が住民や事業者を対象にした施策にとどまる中、京都市は年間約70万人が訪れる修学旅行生という京都特有の来訪者層を、脱炭素の学びを地元に持ち帰る「普及の担い手」として位置づけている。単に交通手段をEV化するだけでなく、脱炭素転換した寺社を巡る体験型学習プログラムとして商品化し、旅行代理店を通じた実施を促す構想も含まれる。観光需要と教育需要、脱炭素の普及啓発を一つの企画に統合する設計は、他の観光都市・教育旅行受入地域にとって示唆に富む。 (参考:脱炭素修学旅行・サステナブルツーリズム-脱炭素京都)
自治体補助に依存しない資金循環の模索
コンソーシアムのファイナンスWGでは、金融機関・機関投資家に加えて市民も出資者となれる「京都脱炭素ファンド」の組成を進めている。機関投資家・企業向けのファンドに加え、インターネットを通じて小口出資が可能な市民出資型のファンドを設け、個人が出資という形で先行地域の取組と直接つながる仕組みを用意している。公的資金(補助)に依存し続けるのではなく、長期的・大規模な脱炭素事業の実行力として民間資金を呼び込む体制を志向している点は、多くの脱炭素先行地域が直面する「補助終了後の持続性」という共通課題への一つの応答といえる。 (参考:京都の文化・暮らしの脱炭素化で地域力を向上させるゼロカーボン古都モデル(京都市提案書))
文化遺産WG・商店街WGの合意形成は道半ば
2026年1月時点の計画改定内容によれば、文化遺産100箇所のうち導入可能性を確認した98件のうち、実際に取組実施の合意を得られているのは13寺社にとどまり、残る85寺社については本山と連携しながら継続して働きかけている段階にある。商店街WGでも、対象187店舗のうち取組実施の意思表示を得られているのは27店舗で、アーケード整備(2箇所)については各商店街振興組合の理事会承認を得ている。目標に対する進捗はまだ初期段階だが、誓願寺(新京極商店街)では省エネ空調への更新を契機に、防災や子育てなど地域コミュニティ活動へも取組が波及した事例が報告されている。 (参考:京都の文化・暮らしの脱炭素化で地域力を向上させるゼロカーボン古都モデル(京都市提案書)、文化遺産群の設備導入者へ地域の取組について、インタビュー(誓願寺)-脱炭素京都)
新築ZEH街区は具体的な事業者・スケジュールが確定
三宅市営住宅跡地(14戸)は2022年4月に株式会社山中商事への売却を終え、ZEH以上の街区としての開発合意も得ている。伏見工業高校跡地では、阪急阪神不動産・京阪電鉄不動産・積水ハウスの3社が優先交渉事業者に特定され、次世代ZEH+戸建125戸、Nearly ZEH-Mファミリー向け分譲228戸、ZEH-M Orientedコンパクト分譲82戸に、学生・社会人向け寮114室を加えた計549世帯・約1,600人規模の街区として計画が具体化している。分譲マンション棟等は2026年4月に着工し、2028年1月末の竣工が見込まれている。 (参考:京都・伏見工高跡地など阪急阪神不グループを特定(建設通信新聞)、京都・伏見稲荷で誕生する新しい街(LIFULL HOME'S PRESS))
グリーン人材育成拠点で先行成果
グリーン人材育成拠点の一つである龍谷大学深草キャンパスでは、2024年4月から8棟に合計460kWの太陽光パネルが本格稼働し、年間発電量551,336kWhによってキャンパス使用電力の約4%を代替しており、年間のCO2削減量は243トンと試算される。この設置によりキャンパス全体の再生可能エネルギー由来電力の比率は約85%に達したとされ、大規模電力需要家であるキャンパスを先行導入拠点とすることで、初期段階から数値として示せる成果を生み出している。 (参考:龍谷大学、深草キャンパスに太陽光パネル増設(大学ジャーナルオンライン))
タクシー事業者のEV化は進行中
コンソーシアム参加事業者であるMKグループの開示によれば、京都拠点のZEV(ゼロエミッション車両)保有台数は2025年3月末時点で223台(保有車両の27%)に達し、2025年に30%、2030年までに全車EV化するという自社目標に向けて増加を続けている。カーボンニュートラルオプション(CO2排出量実質ゼロでの移動)の利用実績も2025年度上半期は延べ27件・CO2換算115kg分となり、前年同期比で2倍以上に伸びている。ただし、これはMKグループ単独の実績であり、脱炭素先行地域計画が掲げるタクシー738台全体のEV転換目標の達成状況を示すものではない点には留意が必要である。 (参考:環境配慮のタクシーが進化!MKグループが2025年度上半期の成果を発表(PR TIMES))
歴史的景観と再エネ導入は「設置場所の工夫」で両立し得る
世界遺産や重要文化財を抱える京都市が、景観を損なわない設置箇所の選定と自治体独自の運用基準整備によって寺社への太陽光導入を進めている手法は、城下町や伝統的建造物群保存地区など、景観規制の強い歴史的市街地を抱える他地域にとっても応用可能な考え方である。太陽光導入と景観保全を対立させるのではなく、双方が両立する設置条件を自治体側が具体的に整理して示すことが、所有者の合意形成を進める前提条件になる。
業界内の信頼できる仲介者を通じた合意形成
多数の小規模な施設所有者(寺社や個人商店等)を対象とする脱炭素施策では、行政が個別に働きかけるよりも、業界内部の当事者性を持つ仲介者(京都の場合は僧侶が設立した電力会社)を介した方が合意形成が進みやすい可能性が、13/98という現時点の合意率からもうかがえる。宗教施設に限らず、伝統産業の組合や商店街振興組合など、業界内に信頼関係を持つ主体を仲介役として位置づける発想は、他分野の脱炭素施策にも転用できる。
来訪者・関係人口を施策の「担い手」に組み込む設計
住民や地元事業者だけでなく、教育旅行という京都特有の来訪者層を脱炭素の学びを持ち帰る担い手として位置づけたゼロカーボン修学旅行の発想は、観光地や教育旅行の受入地域が地域外の関係者を巻き込みながら施策の認知を広げる際の応用可能なモデルとなる。地域資源を活かした「体験としての脱炭素」という切り口は、住民向け広報だけでは届きにくい層への波及経路を作る。
大規模コンソーシアム型事業は初期の合意形成に時間を要することを織り込む
8つのWGにまたがる並行事業を抱える本事例では、対象100箇所中13箇所、対象187店舗中27店舗というように、着手から数年を経ても合意形成率が数割にとどまる分野がある一方、大学キャンパスのように大口需要家が先行して具体的な成果(発電量・CO2削減量)を出している分野もある。多数のステークホルダーを巻き込む大規模な脱炭素コンソーシアムを設計する際は、初期段階から一律の進捗を期待するのではなく、合意形成に時間を要する裾野の広い分野(多数の零細施設所有者が対象)と、比較的早期に成果を出しやすい分野(大口需要家・自治体保有施設等)を区別し、後者の早期成果を前者への波及の呼び水として位置づける段階的な進捗管理が有効と考えられる。
2026年8月時点の調査内容に基づいて作成
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