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杉並区×5大学連携協定
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杉並区と区内5大学が20年以上にわたり展開する包括連携。図書館ネットワークや学生ボランティア、デザイン協定など多様な協働事業を実施

杉並区×5大学連携協定

概要

杉並区は、区内に立地する5つの高等教育機関(女子美術大学・女子美術大学短期大学部、高千穂大学、東京女子大学、東京立正短期大学、明治大学)と包括連携協定を締結し、20年以上にわたり協働事業を展開している。2004年の協定締結以来、図書館ネットワーク参加4大学による蔵書約89万冊の区民開放、学生ボランティア活動、女子美術大学によるデザイン協定など、各大学の専門性を活かした多様な連携が行われている。 (参考:杉並区公式サイト

背景・課題

協定締結の経緯

杉並区と区内大学との連携は2004年10月29日に始まる。当時、明治大学、女子美術大学・女子美術大学短期大学部、高千穂大学、東京立正女子短期大学(現・東京立正短期大学)、立教女学院短期大学の5つの高等教育機関が杉並区と包括協定を締結した。それ以前から各大学は公開講座の実施や図書館ネットワークの構築など個別に区と協力関係を築いていたが、より組織的かつ包括的な連携体制を構築するため、正式な協定締結に至った。 (参考:明治大学公式サイト

2011年12月2日には東京女子大学が新たに加わり6大学体制へと拡大。その後、立教女学院短期大学が2018年度から学生募集を停止し閉学に向かうこととなったため(正式廃止は2021年)、2019年4月1日に改めて5大学との包括協定が締結され、現在の体制となっている。 (参考:東京女子大学公式サイト

連携の目的

この協定は、教育、文化、まちづくり等の分野で相互に連携を深め、区民の生涯学習を支援するとともに、地域社会の発展と人材育成を目指すものである。大学の人的、知的、物的資源を地域に開放し、区民が主役となるさまざまな取り組みに応えていくことを基本理念としている。

取り組みのプロセス

図書館ネットワークの構築

2004年7月26日、杉並区立図書館と区内大学図書館による「杉並区図書館ネットワーク」が発足した。公共図書館と大学図書館が単一の連携組織を形成する先駆的な取り組みである。参加しているのは女子美術大学、高千穂大学、東京立正短期大学、明治大学の4大学図書館で、杉並区に住所がある満20歳以上の区民(東京立正短期大学は満18歳以上)が直接利用できる。 (参考:すぎなみ学倶楽部 - 図書館ネットワーク

各大学図書館の蔵書と特色は以下の通りである。

  • 女子美術大学図書館:約17万冊。約半数が芸術関連資料で、開架率90%
  • 高千穂大学図書館:約27万冊。社会科学系が半数以上を占め、会社史6千タイトル以上を所蔵
  • 東京立正短期大学図書館:約5万冊。絵本・紙芝居・保育関連資料が充実
  • 明治大学和泉図書館:約40万冊。人文科学・社会科学系が豊富

女子美術大学とのデザイン協定

2007年5月28日、杉並区は女子美術大学とデザインに関する個別協定を締結した。区が外部に発信するポスター等のデザイン力向上を目的とし、大学内の「学生デザインルーム」においてプロのデザイナー指導のもと学生が行政課題に対応したデザイン制作に取り組んでいる。「すぎなみ自転車ロック大作戦」キャンペーンポスターや食品ロス削減啓発ポスター、杉並区子ども読書月間PRポスターなどが制作されている。 (参考:杉並区公式サイト - デザイン協定すぎなみ学倶楽部 - 女子美術大学

明治大学和泉ボランティアセンターの活動

明治大学は2008年に和泉キャンパス(第一校舎地下1階)に和泉ボランティアセンターを設置し、約1万人の在籍学生と地域活動をつなぐハブ機能を果たしている。地域包括支援センター(ケア24)永福や近隣福祉施設と協力し、年3回程度の高齢者との「お茶会」を実施。コロナ禍でも手紙やオンライン形式で継続し、この活動は令和3年度杉並区青少年善行表彰を受賞した。 (参考:明治大学 - ボランティアセンターすぎなみ学倶楽部 - 明治大学

その他、キャンパス周辺のごみ拾い、杉並障害者福祉会館主催イベントへの参加、「どこ竹@竹とんぼ教室」への参加、区立杉並和泉学園での学習支援ボランティアなどを展開している。

東京女子大学の地域貢献活動

東京女子大学は2011年の協定参加以降、ボランティア・ステーションを中心に地域貢献活動を推進している。心理・コミュニケーション学科の松尾教授ゼミを中心に、外国にルーツを持つ児童への毎週水曜日の学習支援(阿佐谷地域区民センター)、区立小中学校での英語教育支援、バリアフリー映画会での視覚障害者支援、西荻・寺子屋食堂(子ども食堂)のボランティア、善福寺サロンでの高齢者との交流などを実施している。 (参考:すぎなみ学倶楽部 - 東京女子大学

東京立正短期大学と商店街の連携

東京立正短期大学は、堀ノ内妙法寺門前の商店街「千日紅繫和会」と協定を締結し、「千日紅花祭り」「千日紅市」に学生がスタッフとして参加している。専攻科「地域と子育て」の授業では、和田商店街と連携してマスクチェーン等の制作・販売を行い、売上金を商店街に寄付する取り組みも行っている。わんぱく相撲杉並区大会へのボランティアスタッフ派遣や近隣地域の清掃活動など、少人数の短期大学ならではの地域密着型活動を展開している。 (参考:すぎなみ学倶楽部 - 東京立正短期大学

高千穂大学のボランティア活動

高千穂大学はボランティアサークルを中心に、児童館でのサマーキャンプやドッジボール大会の運営支援、高井戸警察署・杉並区役所と連携した地域住民向けイベントへの参加など、地域に根ざした活動を展開している。2017年1月には活動の様子が杉並区社会福祉協議会の広報誌に掲載された。 (参考:高千穂大学 - ボランティア

情報誌『すぎ☆キャン!』の発行

2013年9月に創刊された情報誌『すぎ☆キャン!』は、杉並区と杉並5大学の活動を区民に紹介する媒体である。各大学の取り組みや学生活動を掲載し、2025年3月発行の第7号まで継続的に発行されている。 (参考:杉並区公式サイト - すぎ☆キャン!

推進体制

包括協定に基づき「杉並区と区内高等教育機関との連携協働推進協議会」が設置され、連携事業全体を統括している。大学連携講座の企画・実施、学生ボランティアイベントの調整、情報誌の編集・発行、新規連携事業の検討などを担う。区側の窓口は教育委員会事務局生涯学習推進課が一本化して担当し、大学側との連携を円滑に進めている。

この事例の特徴

20年以上にわたる長期継続性

2004年の協定締結から20年以上、社会状況の変化に応じて柔軟に体制を見直しながら連携を維持している。大学の閉学といった変化にも対応し、協定を再締結して継続している点が特徴的である。

各大学の専門性を活かした役割分担

女子美術大学はデザイン力を区の広報活動に活用し、明治大学は大規模なボランティアセンターを通じた継続的な地域活動を展開、東京女子大学は外国にルーツを持つ児童への学習支援など専門性を活かした教育支援、東京立正短期大学は少人数の特性を活かした地域密着型の商店街連携と、各大学が自らの強みを活かした連携事業を展開している。

図書館ネットワークによる知的資源の開放

4大学図書館の総蔵書数約89万冊という専門的な知的資源に区民がアクセスできる環境は、公共図書館だけでは提供困難な専門分野の資料や学術書に触れる機会を提供している。

学生の実践的学習機会としての地域活動

明治大学和泉ボランティアセンターの「お茶会」活動が杉並区青少年善行表彰を受賞するなど、学生の地域活動が質的に高く評価されている。地域活動への参加は学生にとっての実践的学習機会となり、大学の教育活動と地域貢献を両立させている。

調査時点の成果

図書館ネットワークの利用実績

2023〜2024年度の利用実績として、女子美術大学では登録25名・年間入館191名、高千穂大学では新規登録約40名程度、東京立正短期大学では約20名(コロナ禍前は約150名)、明治大学では杉並区民登録150名程度となっている。 (参考:すぎなみ学倶楽部 - 図書館ネットワーク

情報誌の発行継続

『すぎ☆キャン!』は2013年9月の創刊以降、第1号(2013年9月)、第2号(2014年5月)、第3号(2016年5月)、第4号(2018年4月)、第5号(2019年4月)、第6号(2020年4月)、第7号(2025年3月)と継続的に発行されている。

ボランティア活動の評価

明治大学の高齢者交流活動が令和3年度杉並区青少年善行表彰を受賞するなど、学生による地域貢献活動が公的に評価されている。

環境活動への参画

女子美術大学と東京立正短期大学は、杉並区が平成13年度から組織する「マイバッグ推進連絡会」に参加し、ごみ減量化と使い捨てプラスチック削減に向けた啓発ポスター・チラシの作成やキャンペーンに協力している。 (参考:杉並区公式サイト - マイバッグ推進連絡会

他地域への示唆

長期継続のための柔軟な体制運営

大学の閉学など予期せぬ変化にも協定を再締結して対応する柔軟性が、20年以上の継続を可能にしている。包括協定という枠組みを維持しつつ、参加機関の変動に対応できる体制設計が参考になる。

大学の専門性と地域ニーズのマッチング

女子美術大学のデザイン力、東京女子大学の教育支援力など、各大学の専門性を地域課題の解決に活用する仕組みは、画一的ではない多様な地域貢献を実現する手法として応用可能である。

推進協議会による組織的運営

区と複数大学が参加する協議会を設置し、定期的な会議を通じて連携事業の進捗確認や課題共有を行う仕組みは、官学連携を一過性のイベントで終わらせず継続的な取り組みとするために有効である。

図書館連携による生涯学習環境の向上

大学図書館の専門的蔵書を区民に開放する図書館ネットワークは、公共図書館の蔵書だけでは提供困難な専門分野へのアクセスを実現する手法として、他の自治体でも検討に値する。

参照元


2026年3月時点の調査内容に基づいて作成

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