
フリービー 無料学習支援活動(子ども食堂連携・在京外国人枠支援)
杉並区の高円寺・西荻・永福町で無料学習教室を運営する団体「フリービー」。子ども食堂2団体と連携し学びと食を一体で支えるほか、在京外国人枠入試の合格者を2年連続で輩出。2012年発足、2022年に法人形態を移行した経緯を持つ。
杉並区で、経済的事情や不登校、日本語を母国語としないことなどを理由に学習に不安を抱える中高生を対象に、無料の学習教室を運営している団体がある。2012年に発足した「フリービー」で、現在は高円寺・西荻・永福町の3拠点で教室を開き、指導経験豊富な元教員を中心とするボランティア講師が、定期テスト対策から高校入試・大学入試、英検、高卒認定試験まで幅広く指導している。杉並区内の子ども食堂2団体と連携し、学習支援を食事支援と組み合わせて提供している点、都立高校の在京外国人枠入試に2年連続で合格者を輩出している点が特徴である。 (参考:まなびの塾フリービーとは|一般社団法人まなびの塾フリービー、団体訪問 NPO法人まちの塾freebee|すぎなみ協働プラザ)
なお、団体の法人格の表記には資料によって幅がある。公式サイトは現在の運営主体を「一般社団法人まなびの塾フリービー」(2022年4月6日に「特定非営利活動法人まちの塾フリービー」から変更、代表理事:森嶋美紀子氏)としている一方、杉並区NPO活動資金助成を受給する高円寺・西荻教室については、区の広報媒体で「NPO法人まちの塾freebee」の名称と、現場代表を務める木村裕子氏の名前が継続して使われている。本稿では両者を包括する通称として「フリービー」を用いる。 (参考:お知らせ|一般社団法人まなびの塾フリービー、団体訪問 NPO法人まちの塾freebee(NPO活動資金助成事業)|すぎなみ協働プラザ)
フリービーの活動は2012年、東日本大震災をきっかけに始まった。英語教員免許を持つ森嶋美紀子氏が、震災を機に「限りある人生、何か社会の役に立てないか」と考えていたところ、知人から講師としての参加を求められたことが立ち上げの契機になったという。2013年1月29日にはNPO法人格を取得し、「特定非営利活動法人まちの塾freebee」として活動を続けてきた。 (参考:ごあいさつ|一般社団法人まなびの塾フリービー、NPO法人まちの塾freebee|CANPAN)
支援対象となる中高生が抱える事情は一様ではない。すぎなみ協働プラザの取材に対し団体側は、「勉強の仕方がわからない」「経済的に有料塾に通えない」「不登校で学習が遅れている」という3つの類型を挙げている。公式サイトはこれに加え、ひきこもり、学習遅延、発達障害、日本語を母国語としないことなど、対象をより広く説明している。学習塾に通う経済的余裕がない世帯や、学校の授業だけでは学習が追いつかない生徒にとって、無料かつ個別対応可能な学びの場は限られているという課題認識が活動の出発点にある。 (参考:団体訪問 NPO法人まちの塾freebee(NPO活動資金助成事業)|すぎなみ協働プラザ、まなびの塾フリービーとは|一般社団法人まなびの塾フリービー)
1. 中高生一人ひとりへの個別学習支援(2012年〜)
活動の中心は、教員免許を保有し長年教壇に立ってきたシニア世代を中心とするボランティア講師陣による無料の個別学習支援である。定期テスト対策や高校・大学入試対策、英検対策に加え、高卒認定試験の受験支援や、日本語を母国語としない生徒への対応も行っている。参加費は一貫して無料で、運営は助成金と寄付でまかなわれている。 (参考:まなびの塾フリービーとは|一般社団法人まなびの塾フリービー)
2. 高円寺教室の会場変更と開催時間の見直し(2023年〜2024年)
杉並区NPO活動資金助成の1年目にあたる2023年11月時点、高円寺教室は高円寺北区民集会所で毎週金曜19時から開かれ、12〜13人程度の中高生が学んでいた。助成2年目の2024年12月時点では、会場を、旧杉並第四小学校の跡地に整備された複合施設「イマジナス」(JR高円寺駅の北口を出て歩いて5分ほどの場所)に移し、開催時間も18時45分から20時30分に変更している。訪問時の参加者は9名で、うち中学生が2名、残る7名は高校生以上だった。 (参考:団体訪問 NPO法人まちの塾freebee(NPO活動資金助成事業)|すぎなみ協働プラザ、団体訪問 NPO法人まちの塾freebee|すぎなみ協働プラザ)
3. 子ども食堂ネットワークとの連携による西荻教室の開設
西荻地域では、区内の子ども食堂ネットワークとの連携がきっかけとなり、「まちナカ・コミュニティ西荻みなみ」(西荻窪駅から徒歩3分、2018年開設の多世代型コミュニティスペース)を会場に、「寺子屋子ども勉強会」として毎週月曜19時から教室を開いている。 (参考:団体訪問 NPO法人まちの塾freebee(NPO活動資金助成事業)|すぎなみ協働プラザ)
4. 子ども食堂2団体との連携による「学びと食」の一体的支援(2024年度〜)
助成2年目にあたる2024年度、高円寺教室は今年度から、区内にある2つの子ども食堂と協力する新しい取り組みを始めた。第2金曜日には「高円寺わくわく食堂」が16時から18時にウクライナ料理を提供し(大人300円、子どもは無料)、第1金曜日には別の子ども食堂がおにぎりなどの軽食を配布する。団体はこれを「孤食を避ける、学習前の腹ごしらえなど、学習環境向上のための新しいカタチの支援」と位置づけている。 (参考:団体訪問 NPO法人まちの塾freebee|すぎなみ協働プラザ)
5. 運営体制の見直しと永福町教室の開設(2022年4月〜)
2022年4月6日、運営主体は「特定非営利活動法人まちの塾freebee」から「一般社団法人まなびの塾フリービー」に変更された。同時に、永福和泉地域区民センターを会場に、毎週火曜の夜7時から9時までの枠で「永福町教室」の開催を始め、テスト対策期間や施設休館日の振替として水曜・木曜に臨時開催する体制も整えている。 (参考:お知らせ|一般社団法人まなびの塾フリービー)
学習支援と子ども食堂を組み合わせ、「学びの前提条件」まで支援範囲に含めた
無料学習塾の多くは学習指導そのものに支援範囲を限定しがちだが、フリービーは子ども食堂2団体との連携によって、学習に集中できる前提条件である「空腹でないこと」までを支援の対象に組み込んだ。第1・第2金曜日に食事提供を組み合わせることで、教室に来ればまず食べられるという安心感を用意し、学習支援単体では届きにくい生活面の困難を抱える生徒にもアプローチしやすくしている。 (参考:団体訪問 NPO法人まちの塾freebee|すぎなみ協働プラザ)
在京外国人枠という、汎用的な学習支援では埋まりにくいニーズに照準を当てている
都立高校には、日本語指導が必要な生徒のための「在京外国人生徒等対象入試」という特別な選抜枠がある。フリービーは日本語を母国語としない中高生を明示的に対象へ含め、2025年2月・2026年2月の2年連続で杉並総合高校の在京外国人枠に計6名の合格者を送り出した。一般的な学習塾や学習支援ボランティアの多くは日本語指導のノウハウを持たないため、この枠に特化した支援体制は他の無料塾との差別化要因になっている。 (参考:お知らせ|一般社団法人まなびの塾フリービー、まなびの塾フリービーとは|一般社団法人まなびの塾フリービー)
法人形態を実務の必要に応じて見直しながら、3拠点をネットワーク的に運営している
フリービーは2022年に法人形態をNPO法人から一般社団法人へ変更する一方、杉並区の助成金制度との関係では旧NPO法人としての実績・名称も併存させながら運営を続けている。単一の固定した組織形態にこだわらず、資金調達や運営効率の観点から法人形態を見直しつつ、高円寺・西荻・永福町という3つの拠点を面的に広げてきた点は、小規模な市民活動団体が事業を拡張していく過程の一例といえる。 (参考:お知らせ|一般社団法人まなびの塾フリービー、団体訪問 NPO法人まちの塾freebee(NPO活動資金助成事業)|すぎなみ協働プラザ)
在京外国人枠入試での合格実績
都立杉並総合高校の在京外国人枠入試において、2025年2月・2026年2月の2年連続で各3名、通算6名の合格者を輩出したことが公式サイトで報告されている。日本語を母国語としない生徒という、支援の担い手が限られる層に対して継続的に結果を出している点は、定量的に確認できる成果である。 (参考:お知らせ|一般社団法人まなびの塾フリービー)
高校生層の利用増加
高円寺教室では、2024年度の訪問時点で参加者9名のうち7名を高校生以上が占め、代表は前年度より高校生以上の参加者が増えたと述べている。大学等への進学準備の場として活用が進んでいることは団体側の評価として確認できる一方、公表された参加者数自体は前年度(12〜13人程度)から減少しており、教室単位の規模としては大きな伸びを示すものではない。 (参考:団体訪問 NPO法人まちの塾freebee|すぎなみ協働プラザ)
継続的な行政助成の確保
杉並区NPO活動資金助成を令和5年度・令和6年度の2年連続で受給し、2025年度以降も公益財団法人公益推進協会の「こどもオポチュニティーズクラブ基金」による助成対象事業に選定されるなど、複数年にわたり外部資金を確保しながら運営を継続している。 (参考:団体訪問 NPO法人まちの塾freebee|すぎなみ協働プラザ、お知らせ|一般社団法人まなびの塾フリービー、NPO活動資金助成|杉並区公式ホームページ)
現場からは行政支援の手薄な部分への指摘も出ている
代表は、中学生向けと比べて高校生向けの行政による学習支援が手薄ではないかという懸念を述べている。また、教室会場となっている区の施設にWi-Fi環境が整っていないことも課題として挙げられ、施設側のインターネット環境整備を要望している。これらは団体の活動の成果というより、活動を通じて可視化された制度的な余地として記録しておく価値がある。 (参考:団体訪問 NPO法人まちの塾freebee(NPO活動資金助成事業)|すぎなみ協働プラザ、団体訪問 NPO法人まちの塾freebee|すぎなみ協働プラザ)
既存の子ども食堂ネットワークに「乗る」ことで、総合支援への移行コストを抑えられる
フリービーは自前で食事提供の仕組みを一から作るのではなく、地域に既に存在する子ども食堂2団体と連携する形で「学びと食」の一体的支援を実現した。学習支援団体が単独で食事支援機能を持とうとすると調理設備や衛生管理など新たな負担が生じるが、既存の子ども食堂と組むことで、双方が得意分野に集中したまま連携の効果だけを得られる。学習支援と子ども食堂がそれぞれ別々に存在している地域では、両者をつなぐコーディネート機能を行政や中間支援組織が担うだけで、同様の連携が成立する可能性がある。
特別選抜枠のような「制度の隙間」に照準を絞ることで、限られた担い手でも成果を出しやすくなる
在京外国人生徒等対象入試のような特別な選抜制度は、対象者数が少ない分、専門的に支援できる担い手も限られる。フリービーはこのニッチな入試制度に的を絞って支援を継続することで、小規模な組織でも2年連続の合格実績という明確な成果を示せている。汎用的な学習支援だけでなく、地域内で見過ごされがちな特定の制度・選抜枠に照準を当てる戦略は、限られたボランティア人材でも成果を可視化しやすい方法として、他地域の学習支援団体にも応用できる。
行政施設を活動拠点として使う際は、Wi-Fi等の基盤整備が支援の質を左右する
学習支援の内容そのものは民間・市民団体が担えても、会場となる公共施設のインターネット環境整備は施設管理者である自治体側の対応が必要になる。フリービーが指摘したWi-Fi環境の不備は、無料学習支援を区民集会所等の公共施設で展開する際に共通して起こりうる制約であり、施設を無料学習支援の場として提供する自治体は、通信環境の整備状況をあらかじめ点検しておく価値がある。
中学生偏重になりがちな学習支援施策の中で、高校生年代への支援を意識的に位置づける
代表が指摘した「高校生への行政支援の手薄さ」は、多くの自治体の学習支援施策が高校受験を控える中学生に重点を置きがちであるという構造を映している。高校生になると進路の分岐(大学進学、専門学校、就職、高卒認定試験など)が多様化し、必要な支援内容も個別化するため、行政による画一的な支援が届きにくくなる面がある。フリービーのように高校生以上の参加者比率を意識的に高めている事例は、学習支援施策を検討する自治体にとって、対象年代を中学生に限定しない設計の参考になる。
2026年8月時点の調査内容に基づいて作成
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