
Re-Design SETAGAYA(生成AI「Hideki」・DXの見える化)
東京都世田谷区が「Re-Design SETAGAYA」を掲げて進める自治体DX。非エンジニアの職員4人が3か月で内製した生成AI基盤「Hideki」を全庁で運用し、RAGやOCR×生成AIで業務を効率化。さらにDXの進捗を「見える化」として区民に公開する事例。
「Re-Design SETAGAYA(リ・デザイン セタガヤ)」は、東京23区で最も人口が多い世田谷区(約92万人)が掲げる自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)のコンセプトである。区は「あらゆる世代が安心して住み続けられる世田谷をともにつくる」ことを目的に、デジタル技術を使って「行政サービス」「参加と協働」「区役所」の3つの領域を再構築し続けるという方針を、DX推進方針(令和3年3月のVer.1、令和5年9月のVer.2、令和8年3月のVer.2.1)として整理してきた。この事例の核心は、外部ベンダーへの丸投げではなく、非エンジニアの区職員が自ら生成AI基盤「Hideki(ヒデキ)」を内製して全庁に展開し、その取組みの進捗を「見える化」として区民に開示している点にある。 (参考:世田谷区DX推進方針 Ver.2.1(世田谷区)、Re-Design SETAGAYA 世田谷区DX推進方針Ver.2(世田谷区・PDF))
世田谷区は令和3年3月に「DX推進方針Ver.1」を策定し、行政のデジタル化に着手した。しかし区自身が方針の改定にあたって認めているように、区民が行政サービスに十分満足できているとは言い難い状況だった。とりわけ、くみん窓口・出張所は年度末・年度当初などの繁忙期に長い待ち時間が発生し、来庁・記入・待機という区民の負担が積み残されていた。そこで区は令和5年9月に方針をVer.2へバージョンアップし、「行かない 書かない 待たない」新たな窓口プロジェクトをはじめとする重点事業(リーディングプロジェクト)を設定し、令和5・6年度の2年間に集中して推進することとした。 (参考:Re-Design SETAGAYA 世田谷区DX推進方針Ver.2(世田谷区・PDF)、DX推進担当部 DX推進担当課(世田谷区))
もう一つの課題が、職員の業務負担と新技術の扱い方であった。DX推進方針Ver.2は、生成AIなどの新技術について「リスクと効果を勘案しながら研究・検討を進める」と位置づけている。生成AI(ChatGPT)は業務効率化の可能性を持つ一方、行政は公共性の高い情報を大量に扱うため、入力内容が外部に流出したり学習に使われたりするリスクを避けなければならず、安全なアクセス環境をどう確保するかが導入の前提条件になっていた。この「効果は魅力的だが、そのままでは使えない」というジレンマが、内製という選択の出発点になった。 (参考:Re-Design SETAGAYA 世田谷区DX推進方針Ver.2(世田谷区・PDF)、非エンジニア職員が3カ月で内製開発 世田谷区の生成AI「HIDEKI」とは?(デジタル行政))
DX推進方針という設計図。
Re-Design SETAGAYAは、DXを「環境・技術進化に合せ、仕事のやり方と風土を見直し続けること」と定義し、3つの方針を羅針盤に据える。方針1「行政サービスのRe-Design(区民の視点からの変革)」は、「行かない 書かない 待たない」新たな窓口・キャッシュレス化・手続きと相談のオンライン化を進める。方針2「参加と協働のRe-Design(新たなつながりの創出)」は、SNSや区民参加型デジタルプラットフォーム、オープンデータ整備を通じた「つながる区役所」を目指す。方針3「区役所のRe-Design(問題発見/解決型組織へ)」は、ワークスタイル変革により職員が相談や企画立案に注力できる体制をつくる。区はこれらを「即着手できるものからスモールスタートし、トライアンドエラーによる改善を常に繰り返す」という姿勢で進めている。 (参考:Re-Design SETAGAYA 世田谷区DX推進方針Ver.2(世田谷区・PDF))
生成AI「Hideki」の内製開発。
この「スモールスタート」の象徴が、2024年1月に稼働した生成AI基盤「Hideki」である。開発を担ったのは、DX推進担当部の業務改善支援担当3名と情報化基盤・クラウド環境管理担当1名の計4名。DX推進担当部の職員は在籍年数2年未満の事務職で、生成AIの知識は「ニュースで見た」程度からのスタートだった。区が2016年から利用してきたMicrosoft Azureの機能・サービスのみで環境を構成し、Azure OpenAI Serviceを活用。UIには全職員が使い慣れたMicrosoft Teamsを用い、チャット投稿をトリガーに応答する仕組みとした。外部ネットワークと接続しない閉域構成とすることで、入力内容の外部流出やAIの学習を防いでいる。通常業務と兼務しながらローコードツールを組み合わせて活用し、実際に手を動かした期間は約3か月。委託ではなく内製を選んだのは、ベンダー依存を避け、比較的低コストで全職員が生成AIを使える環境を、継続的かつ迅速に整備・改善していくためだった。 (参考:世田谷区が生成AI(ChatGPT)サービスを3ヶ月で内製開発(株式会社クラウドネイティブ/PR TIMES)、非エンジニア職員が3カ月で内製開発 世田谷区の生成AI「HIDEKI」とは?(デジタル行政)、アジャイルで変革する世田谷区のDX推進(Microsoft導入事例))
「話しかけたくなる」キャラクター設計。
Hidekiは、単なる無機質な応答ツールではなく、親しみやすい人格を与えられている。担当職員は「無機質に答えるよりは、職員が使っていて楽しくなる形がよい」と考え、サングラス姿の男性アイコン(生成AIで作成)に、「明るくポジティブ」「自分をまだ若いと思っている」「絵文字を多用する」といった性格を設定した。ありふれた日本人男性の名前「ヒデキ」を採ることで、「こういう人いるよね」と気軽に話しかけてもらう狙いがある。この心理的ハードルを下げる工夫もあり、Hidekiは正規職員と会計年度任用職員を合わせた1万人以上に展開され、1日あたり約300回利用されるまでに定着した。 (参考:世田谷区のAIチャットボット「ヒデキ」を非エンジニアの職員がローコードで開発(Ledge.ai)、非エンジニア職員が3カ月で内製開発 世田谷区の生成AI「HIDEKI」とは?(デジタル行政))
RAG・OCR×生成AI・黒塗りAIへの発展。
区はHidekiを土台に、伴走支援を受けた株式会社クラウドネイティブと連携しながら用途を広げた。文書を小さな単位に区切って登録し、質問に関連する箇所を精度よく引き当てるRAG(検索拡張生成)を組み込み、ドキュメントライブラリ内のファイルをもとに回答を生成するチャットボットを実現。紙書類の処理では、OCRが読み取ったテキストを生成AIが補正して読取り項目を自動抽出する仕組みを構築し、帳票定義の作業時間は従来の半日〜1日から約1時間へと大きく縮まり、自由記述欄の認識率も従来の50%程度から90%超へ向上した。さらに、情報公開条例が定める非開示情報の規定とその運用解釈をもとに、非開示にすべき候補箇所を根拠条文つきで自動的に洗い出す「黒塗りAI」の検証も進めている。 (参考:世田谷区役所様 導入事例(株式会社クラウドネイティブ))
窓口・オンライン化とDXの見える化。
生成AIと並行して、区は方針1の「行かない 書かない 待たない」を具体化してきた。混雑状況のホームページ上での見える化、電子申請の拡充、マイナンバーカードを使って書かずに申請できる申請書作成支援ソリューションの導入、まちづくりセンターでのマイナンバー関連手続きの拡大などである。加えて区公式LINEでは、ごみ収集日の前日通知機能や公園プールの予約機能を提供している。こうした一連の取組みを「より多くの人に認知してもらい、利便性向上を実感してもらう」ため、区は「DXの取組みの見える化」として進捗をまとめた資料をホームページで公開し、随時更新している(2026年7月時点)。Hidekiについても、基盤構築・プロンプト組込み・RAG活用・OCR×生成AIによる紙書類処理・今後の活用展望という5本の記事で取組みを開示している。 (参考:DXの取組みの見える化について(世田谷区)、Re-Design SETAGAYA 世田谷区DX推進方針Ver.2(世田谷区・PDF))
第一の特徴は、生成AI基盤を「委託ではなく内製」で立ち上げたことである。多くの自治体が生成AIをベンダーのパッケージ導入に頼るなかで、世田谷区はAzureのマネージドサービスとローコードツールを組み合わせ、職員自身の手で全庁基盤を構築した。ベンダー依存を避けたことで、利用者アンケートを踏まえた基盤改修や新機能追加を、外部の開発サイクルを待たずに機動的に進められる体制が生まれている。 (参考:世田谷区が生成AI(ChatGPT)サービスを3ヶ月で内製開発(株式会社クラウドネイティブ/PR TIMES))
第二に、担い手が「非エンジニアの事務職」だった点である。在籍2年未満・生成AIの知識はニュース程度から始めた職員が、自主的にクラウドやネットワークを学びながら、行政ネットワークの隔離環境にAIを載せるという「非常に骨の折れる」セキュリティ課題を、クラウドネイティブの伴走支援を得て乗り越えた。現場の業務を知る職員が開発を担うことで、文章のたたき台づくりや長い資料の要約、表計算の関数作成といった実務のユースケースに素早く応える設計ができている。 (参考:非エンジニア職員が3カ月で内製開発 世田谷区の生成AI「HIDEKI」とは?(デジタル行政)、世田谷区役所様 導入事例(株式会社クラウドネイティブ))
第三に、ツールの「使われ方」まで設計していることである。キャラクター設定という一見些末な工夫が、職員が気軽に話しかける心理的ハードルを下げ、1日約300回・1万人規模という定着につながっている。技術の導入と利用の定着を切り分けず、後者にまで手を打っている点は、庁内に眠りがちな新ツールを実際の業務変化へ結びつけるうえで示唆的だ。 (参考:世田谷区のAIチャットボット「ヒデキ」を非エンジニアの職員がローコードで開発(Ledge.ai))
第四に、成果を「測り」「見せる」ことをセットにしている点である。区はHideki導入後に利用職員へアンケートを行い、生産性向上の実感率や削減時間を数値で把握したうえで、DXの進捗を「見える化」としてホームページで公開している。DXは手段が目的化しやすいが、効果測定と対外開示を組み合わせることで、区民の認知・実感と職員のモチベーションの双方に働きかける構図をつくっている。 (参考:DXの取組みの見える化について(世田谷区)、世田谷区が生成AI(ChatGPT)サービスを3ヶ月で内製開発(株式会社クラウドネイティブ/PR TIMES))
生成AI「Hideki」については、利用職員へのアンケート(回答127名)で73%以上が生産性向上を実感したと回答した。効果は時間でも把握されており、通常業務で1日平均約34分、企画やアイデアの素案づくりでは1回あたり平均約77分の削減が報告されている。稼働は2024年1月で、その後は正規職員・会計年度任用職員を合わせた1万人以上が利用し、1日あたり約300回使われる庁内インフラへと定着した。 (参考:世田谷区が生成AI(ChatGPT)サービスを3ヶ月で内製開発(株式会社クラウドネイティブ/PR TIMES)、非エンジニア職員が3カ月で内製開発 世田谷区の生成AI「HIDEKI」とは?(デジタル行政))
個別業務でも定量的な改善が確認されている。OCR×生成AIによる帳票処理では、帳票定義にかかる時間が従来の半日〜1日から約1時間程度になり、自由記述欄の文字認識率も50%程度から90%超へ向上した。区はこうした取組みを「DXの取組みの見える化」ページで随時公開し続けている。一方で、成果として現時点で明確に数値化されているのは主に職員側の業務効率化であり、窓口の待ち時間短縮やオンライン手続きの利用拡大といった区民側の利便性向上をどこまで数値で実証できるかは、見える化資料の拡充とともに今後さらに検証が進む段階にある。現状は「内製した生成AI基盤が全庁に定着し、その効果と進捗を開示する仕組みが立ち上がった」段階として捉えるのが妥当である。 (参考:世田谷区役所様 導入事例(株式会社クラウドネイティブ)、DXの取組みの見える化について(世田谷区))
第一に、この事例は「生成AIの全庁展開は、少人数・短期間・低コストの内製でも成立しうる」ことを具体的な数値とともに示している。クラウドのマネージドサービスとローコードを組み合わせれば、専任のエンジニア部隊がなくても、事務職の職員が3か月で庁内基盤を立ち上げられる。「まず小さく試し、使いながら直す」というスモールスタートの姿勢は、大型の情報システム調達に慣れた自治体ほど参考になる進め方だろう。
第二に、担い手を外部ではなく職員に置いたことの再現性である。属人的に見えるアプローチだが、実際には「Azureのマネージドサービス+ローコード」という汎用的な部品と、ベンダーによる伴走支援の組み合わせで成り立っており、特定の天才的個人に依存しているわけではない。むしろ、現場業務を知る職員が開発に関わることで、実務に即したユースケースを素早く形にできる点にこそ移植可能な学びがある。ただし、行政ネットワークの隔離環境にAIを安全に載せる作業は相応に難易度が高く、閉域構成やセキュリティ設計を支える伴走パートナーの存在が前提となる点は、導入を検討する自治体が押さえておくべき現実的な留意点である。
第三に、「効果測定」と「見える化」をセットで設計した発想は、ツールの種類を問わず応用できる。導入して終わりにせず、削減時間や利用率といった指標で効果を測り、その進捗を区民に開示する。この一連の流れは、DXの成果を職員の内輪の実感にとどめず、区民の認知・自分ゴト化につなげる回路になりうる。加えて、Hidekiのキャラクター設計が示すように、新ツールの定着は技術性能だけでなく「使いたくなる」体験設計に左右される——この視点は、庁内システムに限らず、住民向けのデジタルサービスを普及させたい地域にも通じる教訓である。
2026年7月時点の調査内容に基づいて作成
この記事は公開情報に基づき、AIを用いた詳細調査により作成されました。記事内容への修正依頼、お問合せ等は以下までお寄せください。
問い合わせ:support@groove-designs.com
よくあるご質問(FAQ)もあわせてご確認ください。
#
総合計画
#
まちづくり指針
#
エリアビジョン
#
景観計画
#
緑の基本計画
#
公共空間活用
#
ウォーカブル
#
公園活用
#
防災・減災
#
空き家活用
#
エリアプラットフォーム
#
公民連携プラットフォーム
#
公民連携
#
地域コミュニティ
#
地域交流拠点
#
多文化共生
#
子育て支援
#
文化芸術
#
自動運転バス
#
モビリティマネジメント
#
モビリティハブ
#
関係人口
#
移住促進
#
探究学習
#
グリーンインフラ
#
生物多様性
#
参加型予算
#
都市整備
#
まちなか
#
駅前広場
#
協働のまちづくり
#
リノベーションまちづくり
#
フューチャーセンター
#
スマートシティ
#
AI
#
リビングラボ
#
空きスペース活用
#
居場所づくり
#
子ども食堂
#
沿線まちづくり
#
健康
#
社会教育
#
持続可能な都市
#
計画策定
#
まちづくり
#
コミュニティ形成
#
ワークショップ
#
社会実験
#
市民参加
#
子ども・若者
#
子育て世代
#
シニア