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いきいきふるさと"夢"支援金事業(令和7年度採択5事業)
いきいきふるさと"夢"支援金事業(令和7年度採択5事業)

いきいきふるさと"夢"支援金事業(令和7年度採択5事業)

いきいきふるさと"夢"支援金事業(令和7年度採択5事業)

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長野市古里支所が支所長裁量で運用する小規模地域活動支援金「いきいきふるさと"夢"支援金」。令和7年度は高齢化する区の事務局づくりや伝統芸能の道具更新、シニア向け音楽イベントなど地区内4団体・5事業を採択し、完了後の評価結果も個別に公表している。

いきいきふるさと"夢"支援金事業(令和7年度採択5事業)

概要

長野市は2014年度(平成26年度)から、市内の各支所が地域の実情に応じて独自に運用できる「支所発地域力向上支援金」を全支所に配分している。古里支所はこの仕組みを「いきいきふるさと"夢"支援金事業」と名付け、地区内で活動する住民団体・サークル・保存会などを支援してきた。

令和7年度(2025年度)は、選考委員会での審査を経て2025年6月24日に4団体・5事業が採択された。高齢化する西三才区の役員体制を支えるための事務局創設、同区が所有する園地「見晴らしの丘」の整備美化、シニア世代を対象にしたジャズバンド「あっぷる☆jazz楽団」の演奏イベント、伝統芸能を継承する三才神楽保存会の太鼓・獅子舞道具の更新、そして令和元年東日本台風の被災者支援団体HEARTY DECOによる自然体験活動――内容は多岐にわたる。このうちHEARTY DECOの事業は採択後に中止となったことが、支所の公式ページで公表されている。(参考:いきいきふるさと"夢"支援金事業(古里支所発地域力向上支援金) - 長野市公式ホームページ

背景・課題

支所ごとに設計が異なる「地域力向上支援金」

長野市は平成26年度から、市内の各支所に予算を配分し、少子高齢化や過疎化が進むなかで地域の活性化や課題解決に向けた「地域力」の向上を目的として、支所長の裁量で地域の団体活動を支援する仕組みを設けている。対象事業は保健福祉、教育・文化振興、安全安心、環境保全・景観形成、その他地域活性化の5分野にわたり、団体は募集期間内に事業計画書を提出し、選考委員会の審査を経て交付対象が決定される。(参考:長沼支所発地域力向上支援金事業 - 長野市公式ホームページ

この制度の運用方法や名称は支所ごとに異なり、例えば古牧地区では「古牧の元気応援事業」という名称で実施されている。古里支所は「いきいきふるさと"夢"支援金事業」という独自の呼び名を掲げ、地区の住民自治組織や保存会、サークルなどを対象に運用している。(参考:支所発地域力向上支援金 - 長野市公式ホームページ

台風被災地でもある古里地区

古里地区は長野市北東部に位置し、人口13,047人、世帯数5,688、面積5.67平方キロメートル(令和7年4月1日現在)で、富竹区・金箱区・下駒沢区・上駒沢区・三才区・西三才区・駒沢新町区・駒沢第二団地区の8区で構成される。しなの鉄道三才駅と長野電鉄朝陽駅を結ぶ県道372号沿いに住宅地が広がり、その周辺には農地が残る。(参考:古里地区と位置 - 古里住民自治協議会古里(長野市) - Wikipedia

2019年10月の令和元年東日本台風では、千曲川・浅川の氾濫により長野市北部の長沼・豊野・古里の3地区で約934ヘクタールが浸水した。長野市の罹災証明交付データによれば、古里地区では大規模半壊35世帯・半壊55世帯・一部損傷91世帯の計181世帯が被災しており、全壊はなかったものの、隣接する長沼(873世帯)・豊野(917世帯)に次ぐ規模の被害を受けている。(参考:2019年台風19号(Hagibis)により長野市で発生した洪水災害の被害調査 - 自然災害科学

この災害を機に生まれたのがHEARTY DECOである。台風19号の被災者と支援に入った有志が、北部スポーツ・レクリエーションパークの避難所で共同生活を送るうちに育んだつながりを土台に、避難所閉鎖後も「被災者を1人にしない、孤独にさせない」ことを理念に掲げて団体化した。現在は西三才区内に拠点を構え、被災者が「自立/自律」した形で地域とつながり続けられる活動を続けている。(参考:HeartyDeco 公式サイト

高台の住宅地が抱える役員のなり手不足

古里地区の8区の一つである西三才区は、三才駅の西側に広がる高台の住宅地で、善光寺平を見渡せる南向きの立地が特徴である。1974年、宅地造成を背景に三才区から分かれて誕生し、2024年に50周年を迎えた比較的新しい区だが、他地域と同様に役員の高齢化・なり手不足という課題に直面していた。(参考:西三才区 - 古里地区

後継者難を乗り越えてきた伝統芸能

三才地区の神楽・獅子舞は、幕末から明治初期にかけて形づくられたとされる伝統芸能で、大きな獅子頭を用いて刀を持ち勇壮に舞う「男獅子」が特徴である。後継者不足で平成2年(1990年)に一度活動が止まったが、地元の氏子や三才区、公民館の後押しで翌年には新たな担い手が集まり、有志の会として再興した経緯を持つ。長年使われてきた太鼓や獅子舞道具の老朽化は、こうした継承活動が抱え続けてきた課題の延長線上にある。(参考:長野市三才|北信濃神楽採訪

取り組みのプロセス

選考委員会による審査と決定

古里支所は「いきいきふるさと"夢"支援金事業選考委員会」を設置し、募集要項に基づいて提出された事業計画書を審査する。令和7年度は2025年6月24日付で、次の4団体・5事業が対象事業として決定・公表された。(参考:令和7年度いきいきふるさと"夢"支援金事業の対象事業決定について(掲示用) - 長野市公式ホームページ

  • 高齢役員のための事務局創設事業(西三才区):パソコン等を購入し、区の事務局機能を整備する事業
  • 「見晴らしの丘」整備美化事業(西三才区):区が所有する園地の除草・土壌改良を行う事業
  • ふるさとだよ!シルバー全員集合!(あっぷる☆jazz楽団):地区のシニア世代を対象にしたトーク&ジャズ演奏イベント
  • 胴長太鼓の革の張替、子ども獅子舞のゆたんの新調(三才神楽保存会):伝統芸能の道具更新事業
  • わくわく自然体験(HEARTY DECO):自然体験活動(採択後に中止)

一つの区(西三才区)が組織運営(ソフト)と環境整備(ハード)という異なる性質の2事業を同時に採択されている点や、伝統的な住民自治組織・保存会だけでなく、災害復興を出自に持つNPOも同じ枠組みで審査対象となっている点が、この年度の特徴である。

完了後の二段階評価と公表

古里支所発地域力向上支援金は、事業完了後に支所長評価と選考委員評価を組み合わせた事業評価を行い、その内容を個別の評価書として公表する仕組みを持つ。実際に令和7年度分については、5事業のうち完了した4事業それぞれについて「評価書」がPDFで公開されており、目的の達成度・地域等への貢献・事業の継続性・費用対効果の4項目で支所長が評価したうえで、選考委員のコメントと最終評価が付記されている。中止となったHEARTY DECOの事業についても、実施状況の一覧に「事業を中止した事業者」として明記されており、成功事例だけでなく非完了の事例も含めて公表する運用になっている。(参考:いきいきふるさと"夢"支援金事業(古里支所発地域力向上支援金) - 長野市公式ホームページ

毎年入れ替わる採択団体

同じ古里支所発地域力向上支援金は令和6年度(2024年度)にも実施されており、この年は上駒沢祭典保存会、富竹の歴史を訪ねる集い、冨建千引神社神楽保存会という令和7年度とは異なる3団体・3事業が採択されている。古里地区内の8区・各種団体が年度ごとに入れ替わりで応募・採択されており、特定の団体に偏らない運用が続いている。長野市のページは令和8年度(2026年度)分の対象事業決定についても2026年7月6日更新で公表しており、制度は年度をまたいで継続している。(参考:いきいきふるさと"夢"支援金事業(古里支所発地域力向上支援金) - 長野市公式ホームページ

この事例の特徴

支所長裁量による分散型の小規模助成

長野市の支所発地域力向上支援金は、全支所共通の枠組みでありながら、各支所が予算配分の範囲内で名称も対象活動の選び方も独自に決められる分散型の制度である。古里支所は「いきいきふるさと"夢"支援金」という名称を掲げ、ジャズバンドの演奏イベントや神楽道具の張替えといった、都道府県レベルの競争的補助金では対象になりにくい小規模・ローカルな活動にまで資金を届けている。支所長という地域に近い立場の裁量で採否を決める仕組みが、規模は小さくとも申請のハードルが低い助成を可能にしている。

一つの助成ラウンドで「地域力」の異なる側面を同時に支援

令和7年度の5事業を並べると、組織運営基盤の整備(西三才区の事務局創設)、区が所有する緑地の環境整備(見晴らしの丘)、シニアの社会参加・交流機会の創出(あっぷる☆jazz楽団)、無形の伝統文化の継承(三才神楽保存会)、そして災害復興由来の団体による自然体験活動(HEARTY DECO)と、性質の異なる地域課題への対応が一つの募集枠のなかに同居している。単一目的の補助金では取りこぼされやすい「組織のなり手不足」「景観維持」「高齢者の孤立防止」「伝統芸能の後継者難」といった複数の課題に、一つの小さな制度で横断的に対応している点が特徴的である。

失敗や中止も含めて公表する評価の仕組み

事業完了後に支所長評価・選考委員評価・最終評価という三段階のプロセスを経て、事業ごとの評価書を個別に公表する運用は、小規模な支所単位の助成としては手厚い。しかも、採択後に中止となったHEARTY DECOの事業を「中止」として明記し、成果があった事業と同じページで公表している点は、成功事例のみを選んで発信しがちな行政の広報のなかでは珍しい。あっぷる☆jazz楽団の事業では、選考委員から「素晴らしい企画」と前向きな評価が付く一方、支所長評価では、想定人数を当初の100名から途中で140名へ引き上げたにもかかわらず実際の来場は70名前後にとどまったことを踏まえ、「事業規模とそれに伴う予算規模を検討する必要がある」という課題も明記されている。西三才区の事務局創設事業についても、支所長評価に「設備の劣化に対する更新についても区内で検討を進められたい」という中長期的な運用課題が記録されており、賛辞と課題指摘の両方を残す評価の型になっている。(参考:令和7年度評価書:ふるさとだよ!シルバー全員集合!(あっぷる☆jazz楽団) - 長野市公式ホームページ令和7年度評価書:高齢役員のための事務局創設事業(西三才区) - 長野市公式ホームページ

調査時点の成果

令和7年度に採択された5事業のうち、HEARTY DECOの「わくわく自然体験」は採択後に中止となった。残る4事業については、支所が公表した評価書から次の成果が確認できる。

いずれの評価書も「概ね支所長評価のとおり」という最終評価で締めくくられており、令和7年度サイクルにおいては、中止となった1事業を除く4事業が当初の目的に沿って完了したことが確認できる。

他地域への示唆

「制度は共通、運用は現場」という設計の再現可能性

支所発地域力向上支援金のように、予算の枠組みと申請・評価の手続きは全市共通としながら、実際の採否判断と対象活動の選び方は現場に近い支所長・選考委員会に委ねる二層構造は、複数の出先機関を持つ自治体であれば応用しやすい。細部の運用をすべて本庁が決めるのではなく、地域ごとに異なる名称・カラーを持たせつつ、公文書としての申請書式や評価書式は統一しておくことで、ガバナンスを保ちながら現場裁量の余地を確保できる。

完了報告を「実績の宣伝」で終わらせない評価の型

支所長評価と選考委員評価を組み合わせ、良かった点だけでなく「参加者数が想定を下回った」「設備更新の検討を続けてほしい」といった課題も記録し、中止事業も含めて公表する運用は、小規模な地域助成における評価の一つのモデルになる。派手な成果を誇示するのではなく、次の申請者や委員会が参照できる形で率直な評価を蓄積していく姿勢は、同種の小規模助成制度を運用する他自治体にとっても参考になる。

「担い手不足」への処方箋としての小さなデジタル投資

西三才区の事務局創設事業は、大規模な組織改革ではなく、パソコン整備という小さな投資で、高齢役員の事務負担軽減とデータの一元管理を実現した。役員のなり手不足は全国の自治会・町内会に共通する課題であり、抜本的な組織改革の前に、まず記録・連絡業務のデジタル基盤を整えるという小さな一手が有効打になり得ることを、この事例は示している。

想定と実績のギャップを次に生かす姿勢

あっぷる☆jazz楽団のイベントは、想定参加者数を下回る結果に終わったが、評価書はこれを失敗として片付けるのではなく、周知方法や規模設定の見直しという具体的な次のアクションに変換している。地域イベントの企画において、集客目標と実績のギャップを可視化し、次年度の設計に反映させる仕組みは、他地域のイベント型助成事業にも転用できる視点である。

災害復興のつながりを平時の地域活動に接続する

HEARTY DECOのように、災害時の避難所生活で生まれた被災者同士のつながりを、平時の地域活動を支える一般的な助成制度の対象に組み込むという発想は、被災経験を持つ他の自治体にとっても示唆的である。今回の事業自体は中止となったが、災害復興由来の団体を特別枠ではなく通常の地域力向上支援金の枠組みで受け止めている点は、被災者支援を一過性の緊急対応で終わらせず、地域コミュニティの一員として位置づけ直す仕組みとして注目に値する。

参照元


2026年8月時点の調査内容に基づいて作成

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