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つくばスタートアップパークとスタートアップ・エコシステム
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つくばスタートアップパークとスタートアップ・エコシステム

つくばスタートアップパークとスタートアップ・エコシステム

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大学・国立研究機関が集積するつくば市が、起業支援拠点「つくばスタートアップパーク」と、県・市・大学・研究機関・金融機関による産学官金コンソーシアムを組み合わせ、研究シーズ由来のディープテック・スタートアップの創出と社会実装を後押しする事例。市が自前のアクセラレーターを抱え込むのではなく、束ね・つなぎ・実証の場を差し出す側へと役割を組み替えてきた過程に特徴がある。

つくばスタートアップパークとスタートアップ・エコシステム

概要

つくばスタートアップパーク(愛称STAPA、正式名称:つくば市産業振興センター)は、つくば市が2019年10月1日に開設した起業家支援拠点である。つくばエクスプレスつくば駅から徒歩約5分、旧・情報通信研究機構(NICT)のオフィスを転用したとされる建物に、コワーキングスペース、セミナールーム、無料の交流スペース、カフェ、そしてスタートアップ向けの事業支援室(専用オフィス)を備える。市内の新規中小企業・大学や研究機関の研究者・学生には利用料を半額にする減免制度を設け、常駐するマネージャーが起業や経営の相談に応じる。研究の街つくばで生まれる技術シーズを、研究室の外に持ち出して事業へと育てるための「玄関口」として位置づけられた施設である。 (参考:つくば市産業振興センター(愛称:つくばスタートアップパーク) - つくば市SERVICE - つくばスタートアップパーク

ただし、この事例の本質は一つの施設にあるのではない。STAPAは、国が選定した「スタートアップ・エコシステム拠点都市」、茨城県知事とつくば市長が共同会長を務める「つくばスタートアップ・エコシステム・コンソーシアム」、そして筑波大学や産業技術総合研究所などの研究機関に集積する研究シーズという、三つの層が重なった構造の結節点として機能している。支援の対象も、ITやWebサービスのスタートアップというより、研究成果に根ざし、事業化に長い時間と多額の資金、そして社会実装のための規制対応を要する「ディープテック」が中心にある。市が掲げる科学技術の社会実装の構想全体は関連事例(C10)で扱い、本稿では起業・スタートアップの創出と成長を支える仕組みそのものに焦点をあてる。 (参考:スタートアップ・エコシステムの概要 - つくば市つくば市の取組(令和5年度フォローアップ) - 内閣府

背景・課題

つくばは、1963年の閣議了解で建設が決まった筑波研究学園都市を母体とする街である。産業技術総合研究所、物質・材料研究機構(NIMS)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)筑波宇宙センター、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)などの国立研究機関と民間研究所を合わせて約150の研究機関が立地し、約2万人が研究開発に従事する。日本でも稀な知的資源の集積地でありながら、その研究成果は長く論文や特許にとどまりがちで、事業化や社会実装、すなわち「使われる技術」へと展開する回路は十分に太くなかった。世界水準の研究が足元にあるのに、それを担う起業や企業がまちに根づきにくいという、研究都市ならではのねじれが出発点にある。 (参考:つくば市の取組(令和5年度フォローアップ) - 内閣府

課題は、起業を増やすという一般論にとどまらなかった。研究シーズ由来のディープテックは、SNSアプリのような身軽なスタートアップとは支援の勘所が異なる。実証実験や試作に時間と設備がかかり、量産・上市までの期間が長く、医療機器や自動走行のように社会へ出すには規制対応や安全性の実証が避けられない。短期の収益が見えにくいため、リスクマネーの出し手も限られる。こうした息の長い事業を、相談窓口や補助金だけで支えるのは難しい。つくば市は2018年4月にスタートアップ推進室を設け、同年12月に「つくば市スタートアップ戦略(第1期)」を策定。成長段階に応じて切れ目なく支える「スタンドバイ・スタートアップ」と、科学技術をまちに実装する「ディプロイシティつくば」という二つの柱を掲げ、施設・組織・都市を組み合わせた仕組みづくりへ踏み出した。 (参考:つくば市スタートアップ戦略 - つくば市つくば市の取組(令和5年度フォローアップ) - 内閣府

取り組みのプロセス

拠点をつくる:STAPAの開設(2019年)

第1期戦略の中核施設として、2019年10月1日にSTAPAが開設された。この旧NICTのオフィスを約1億4千万円かけて再整備したもので、駅近の立地に、用途の異なる場を一つの建物へ束ねた。コワーキングスペースは定期指定席が月18,000円、定期自由席が月15,000円、ドロップインが1時間300円(1日最大1,500円)と、まず使ってみられる価格帯に設定し、交流スペースは無料で開放した。カフェは受賞歴のある地元の焙煎店が運営し、市や市内のクラフトビール醸造所と共同開発した「TSUKUBA TOMORROW BEER」なども提供する、人が立ち寄りたくなる場としてしつらえた。市内の新規中小企業や、大学・国立研究機関の研究者、学生が起業する場合には利用料を半額にする減免を用意し、研究者や学生が一歩を踏み出すハードルを下げている。 (参考:SERVICE - つくばスタートアップパークつくば市がスタートアップ拠点「つくばスタートアップパーク」をオープン - PR TIMES(つくば市)つくば市の取組(令和5年度フォローアップ) - 内閣府

産学官金で束ねる:コンソーシアムと国の拠点都市(2020年)

施設の翌年、支援の担い手を一つのテーブルに集める枠組みが立ち上がる。2020年2月26日、つくば市・茨城県・大学・研究機関・民間企業が協力して「つくばスタートアップ・エコシステム・コンソーシアム」を設立した。茨城県知事とつくば市長を共同会長とし、つくば市が事務局を担い、筑波大学・産総研・NIMS・農研機構などが理事として名を連ねる。掲げる目標は「ディープテック・スタートアップの世界的拠点都市の実現」で、エコシステムの形成促進、産学官金連携によるスタートアップの創出・成長、実証フィールドの提供と社会実装の推進、市外からの人材・資金・企業の獲得を活動の柱とする。会員には3大学、産総研やJAXAなど8つの国立研究開発法人に加え、メガバンク・地域金融機関・政府系金融・証券・監査法人、そしてAntlerやBeyond Next Venturesなどのベンチャーキャピタルが参画し、その規模はおよそ60団体に及ぶ。 (参考:つくばスタートアップ・エコシステム・コンソーシアムを設立 - PR TIMES(つくば市)スタートアップ・エコシステムの概要 - つくば市MEMBER 会員団体紹介 - TSUKUBA STARTUP JOURNEY

この地域の枠組みは、国の制度とも接続している。内閣府は2020年7月14日、「世界に伍するスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略」に基づきグローバル拠点都市4件・推進拠点都市4件を選定した。つくば市と茨城県は、東京都や周辺自治体とともに構成する「スタートアップ・エコシステム東京コンソーシアム」の一員として、最上位のグローバル拠点都市に位置づけられている。つくば単独ではなく首都圏の広域連携の中に組み込まれることで、国際情報発信やアクセラレーション支援といった国の後押しを引き込む構図である。この東京コンソーシアムは2025年6月4日に第2期のグローバル拠点都市として再選定され、枠組みは継続している。 (参考:スタートアップ・エコシステム拠点都市の選定について - 内閣府第2期スタートアップ・エコシステム拠点都市の選定について - 内閣府スタートアップ・エコシステムの概要 - つくば市

育てる機能は専門家へ:起業家教育と「自前主義」からの転換

つくば市の取り組みで注目したいのは、支援メニューを固定せず、市が担う部分と外部に委ねる部分を組み替えてきたことである。人材育成では、2022年度から「つくばアントレプレナー育成プログラム(BizDev講座)」を、筑波大学を中心とするエコシステムと連携して実施。研究の事業化シーズを、投資の対象となるビジネスプランへと磨き上げる実践型の講座で、受講者のなかから筑波大学・農研機構・JAXAの関係者による4社が会社設立に至った。あわせて、筑波大学の起業体験プログラム「筑波クリエイティブ・キャンプ」の修了者を補助対象とするなど、大学の教育プログラムと市の支援を地続きにしている。 (参考:つくば市の取組(令和5年度フォローアップ) - 内閣府

一方で市は、自前で抱えていた機能を手放す判断もしている。かつて市が予算を組んで運営していた研究シーズの事業化を支援するアクセラレーション事業は、2022年度(令和4年度)に廃止された。その代わりに、研究者と経営人材をつなぐBeyond Next Ventures、ディープテックに投じるリアルテックファンド、海外展開を見据えたAntler、事業会社との接点をつくる東京海上日動など、専門の投資家・支援機関との連携を厚くしていった。資金供給や本格的なアクセラレーションは、それを得意とする民間の担い手に委ね、市は相談窓口・教育・場の提供・関係者の結節という役割に軸足を移す——「全部を自前でやる」のではなく「束ねて、つなぐ」側へと立ち位置を変えた点が、この事例の現実的な学びになっている。2023年2月には対象期間を2028年3月までとする第2期戦略を策定し、2026年1月に改定している。 (参考:つくば市の取組(令和5年度フォローアップ) - 内閣府つくば市スタートアップ戦略 - つくば市

都市そのものを実証の場に:スーパーシティ特区(2022年)

ディープテックの事業化で避けて通れないのが、社会に出すための実証と規制対応である。つくば市は2022年4月、大阪市と並ぶ全国2か所の一つとして「スーパーシティ型国家戦略特区」に指定された。大胆な規制改革とともに先端技術・サービスを暮らしのなかで実装することを掲げ、自律走行ロボットや次世代モビリティ、行政手続きのデジタル化などの実証を、まちを舞台に進める枠組みである。コンソーシアムが活動の柱に「実証フィールドの提供と社会実装の推進」を据えていることと合わせて、つくばは起業家に対して、資金や場所だけでなく「技術を試せる都市」そのものを差し出している。研究機関の集積を生かしたロボットの社会実装の歩みは関連事例(C28)に、特区を軸にした社会実装の全体像は関連事例(C10)に詳しい。 (参考:つくば市をスーパーシティとして指定することが決定されました - つくば市つくばスーパーサイエンスシティ構想 - つくば市

見せて、交わる:交流イベントの連なり

エコシステムは、人と情報が日常的に行き交うことで温まる。ベンチャーカフェ東京が運営する「TSUKUBA CONNÉCT」は、毎月決まった金曜日に投資家・専門家へのピッチやネットワーキング、30分のメンタリング(Office Hours)を無料で提供する定例の場として根づいている。市が主催する「Tsukuba Startup Night」は2019年から続く交流イベントで、2025年は12月11日にCIC Tokyo(東京・虎ノ門)で開催され、「ディープテックが未来をつくる」をテーマに、研究者・起業家・自治体首長らが登壇した。さらに2025年は、コンソーシアムの構成員によるイベントを12月5日から19日に集中させる「TSUKUBA STARTUP WEEK 2025」を編成し、ピッチコンテストや研究シーズのマッチング、資金調達セミナーなどを束ねて発信している。つくばの強みを、研究都市の外(東京)にも持ち出して見せる動線が組まれている点が特徴的である。 (参考:TSUKUBA CONNÉCT - Venture Café Tokyoつくばのスタートアップ交流イベント「Tsukuba Startup Night 2025」を開催します - PR TIMES(つくば市)TSUKUBA STARTUP WEEK 2025 公式サイト

この事例の特徴

第一の特徴は、起業支援を「一つの施設」ではなく「施設・組織・都市の三層構造」として組み立てたことである。多くの自治体がインキュベーション施設を整備して起業支援とするのに対し、つくばではSTAPAという拠点の背後に、県市・大学・国研・金融が同じテーブルにつく産学官金コンソーシアムがあり、さらにその外側に国のグローバル拠点都市という広域の枠組みが重なる。施設は人が出会い相談する「窓口」、コンソーシアムは資源を束ね社会実装を進める「エンジン」、拠点都市は国の支援と広域連携を呼び込む「看板」という具合に役割が分かれ、支援の射程を一自治体では届かないスケールへ広げている。 (参考:スタートアップ・エコシステムの概要 - つくば市つくばスタートアップ・エコシステム・コンソーシアムを設立 - PR TIMES(つくば市)

第二に、支援の対象を、地域に固有の資源であるディープテックに明確に定めたことである。約150の研究機関と約2万人の研究者という集積を前提に、研究シーズの事業化と社会実装に的を絞る。これは身軽なITスタートアップを量産する都市型の支援とは設計思想が異なり、長い事業化期間、設備・資金の重さ、規制対応といったディープテック固有の難しさに、実証フィールドの提供や専門VCとの接続で応えようとする。「どこのまちでも通用する起業支援」ではなく、「つくばだからできる起業支援」を選んだことが、他都市との差別化を生んでいる。 (参考:つくば市の取組(令和5年度フォローアップ) - 内閣府つくばスーパーサイエンスシティ構想 - つくば市

第三に、自治体が自らの役割を抱え込まず、組み替えてきたことである。市は当初、自前のアクセラレーション事業まで運営していたが、これを廃止し、資金供給や本格的な事業育成は専門の投資家・支援機関に委ね、自らは相談・教育・場の提供・関係者の結節という補完的な機能に絞り込んだ。行政が「最後まで面倒を見る」のではなく、「自分が得意な部分だけを担い、苦手な部分は外部の担い手につなぐ」という割り切りは、限られた人員と予算で持続的に支援を続けるうえで現実的であり、率直に振り返る価値のある判断である。 (参考:つくば市の取組(令和5年度フォローアップ) - 内閣府

調査時点の成果

一方で、これらの成果を仕組みそのものの効果としてどこまで評価できるかは慎重に見る必要がある。象徴例として挙げられるCYBERDYNEは2004年の設立で、今回の拠点・コンソーシアム・拠点都市選定(2019年以降)よりも前から育ってきた企業であり、近年生まれたディープテック企業の多くはまだ成長の途上にある。ディープテックの社会実装は本来5年〜10年単位の長い営みで、エコシステム整備の成否を短期の起業数や創業数だけで測ることは難しい。市が自前のアクセラレーション事業を廃止したことが示すように、自治体が直接成果を「生み出す」というより、起業や投資が起きやすい環境を「整える」段階にあるというのが、調査時点での実像に近い。 (参考:つくば市の取組(令和5年度フォローアップ) - 内閣府筑波大学発ベンチャー - 筑波大学 国際産学連携本部

他地域への示唆

起業支援は「施設をつくること」と同義ではない——施設はネットワークを束ねる結節点として設計する。 つくばの取り組みは、コワーキング施設を整えるだけでは起業は増えないという前提に立ち、STAPAを産学官金コンソーシアムや国の拠点都市という重層的な枠組みの「窓口」として位置づけた。施設を計画する自治体にとって、ハコの仕様を決める前に「その施設は誰と誰をつなぐ結節点なのか」「背後にどの組織と資源を束ねるのか」を設計することが、使われ続ける拠点と遊休化する拠点を分ける。

自治体は「全部を自前でやる」のではなく、得意な役割に絞って外部の専門家につなぐ。 つくば市は自前のアクセラレーション事業を廃止し、資金供給や本格的な事業育成を専門のVC・支援機関に委ね、自らは相談・教育・場の提供・関係者の結節という補完機能に軸足を移した。限られた人員と予算しか持たない多くの自治体にとって、行政が苦手な機能まで抱え込むより、地域の担い手や外部の専門機関に役割を分担し、自治体は「つなぎ役」に徹する設計のほうが、支援を長く続けやすい。何を手放すかの判断こそ、再現性のある教訓である。

ディープテックは身軽なIT起業とは別物——地域固有の資源と「実証できる都市」を前提に支援を組む。 研究シーズ由来の事業は、長い事業化期間・資金の重さ・規制対応という固有の壁を抱える。つくばは研究機関の集積に的を絞り、スーパーシティ特区として都市そのものを実証フィールドに差し出すことで、この壁に応えようとしている。流行のIT起業支援を模倣するのではなく、自分のまちにしかない資産(研究機関・産業・自然・特定の規制環境)を見極め、そこでこそ試せる事業に支援を寄せることが、他都市と競合しない独自の立ち位置を生む。

県・市・国の枠組みを重ね、一自治体では届かないスケールを引き込む。 つくばは県知事と市長の共同会長によるコンソーシアムを土台に、国のグローバル拠点都市という広域連携へ接続し、首都圏全体の支援や国際発信を呼び込んでいる。単独では資源も発信力も限られる自治体にとって、近隣自治体・都道府県・国の制度と意図的に「重ねる」ことは、自前の予算を増やさずに支援の射程を広げる現実的な手段になる。

参照元


2026年6月時点の調査内容に基づいて作成

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この記事は公開情報に基づき、AIを用いた詳細調査により作成されました。記事内容への修正依頼、お問合せ等は以下までお寄せください。

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