
PLATEAU 3D都市モデルの整備とデジタルツインの活用
つくば市が国土交通省「Project PLATEAU」に参加し、市全域の3D都市モデルを整備・オープンデータ化した事例。整備して公開するだけにとどめず、研究学園都市というフィールドで、高層建物や街路樹で衛星測位が乱れるつくば駅前の自動運転に3Dモデルを使い、NLOS衛星を検知・除外して測位を安定させるなど、3D都市モデルを「使う側」として動的に活用している点に特徴がある。
つくば市は、国土交通省が主導する3D都市モデルの整備・オープンデータ化プロジェクト「Project PLATEAU(プラトー)」に参加し、市域全体の3D都市モデルを整備して無償公開している。2022年度版(標準製品仕様書V2準拠)と2023年度版(同V4準拠)が整備され、2023年4月に公開された。建築物・道路・橋梁・植生・都市設備・土地利用・地形・都市計画決定情報に加え、洪水浸水想定区域や土砂災害警戒区域といった災害リスクモデルを含み、CityGML・3DTiles・MVTなどの標準形式で、商用利用も含め誰でも自由に使える。 (参考:3D都市モデル(Project PLATEAU)つくば市(2022年度) - G空間情報センター、3D都市モデル(Project PLATEAU)つくば市(2023年度) - G空間情報センター)
この事例の特徴は、3D都市モデルを「整備して公開する」段階で終えていない点にある。約150の研究機関が集積する筑波研究学園都市というフィールドを生かし、市は整備した3Dモデルを自前の先端実証のインプットとして使い込んでいる。象徴的なのが、高層建物や街路樹で衛星測位が乱れやすいつくば駅前で、3D都市モデルを使って遮蔽された衛星(NLOS)を検知・除外し、自動運転モビリティの測位を安定させる取り組みである。整備された3D都市モデルは、市が掲げるスーパーサイエンスシティ構想のデジタルツイン基盤に位置づけられている。 (参考:こどもMaaSサービス実証実験 - つくば市、3D都市モデルをまちづくりにいかに生かすか - PLATEAU Journal j045)
Project PLATEAUは、国土交通省が2020年度から進める取り組みで、「都市デジタルツインにより社会に新たな価値をもたらし、地域の課題を解決する」ことをミッションに掲げる。航空測量などをもとに建物や街路といった都市の地物を三次元化し、そこに名称・用途・建築年などの都市活動情報を付与して、都市空間そのものを再現する。整備されたデータは商用利用を含め無償のオープンデータとして公開され、都市計画の高度化、防災、自動運転、XR(拡張現実・仮想現実)など、幅広い分野のプラットフォームデータとして使えるよう設計されている。 (参考:PLATEAU - 国土交通省)
つくば市がこの3D都市モデルを必要とした背景には、同市が進めるスーパーサイエンスシティ構想(スーパーシティ型国家戦略特区)がある。市は自動運転、配送ロボット、MaaS(移動サービス)といった先端技術を市街地で社会実装することを掲げており、これらを実空間で動かすには、都市空間の形状を機械が読み取れる三次元データとして持っておく必要があった。とりわけ、つくば駅周辺は中高層の建物やペデストリアンデッキ、豊かな街路樹に囲まれており、自動運転の自己位置推定の要となる衛星測位(GNSS)が乱れやすい。建物に遮られて反射した信号を受け取ってしまう「マルチパス」は、測位の精度を大きく損なう要因になる。都市の三次元形状をあらかじめデータ化しておくことは、こうした測位の難しさに対処する土台でもあった。 (参考:つくばスーパーサイエンスシティ構想 - つくば市、こどもMaaSサービス実証実験 - つくば市)
一方で、3D都市モデルには「整備したものの十分に使われない」という全国共通の課題もある。データを公開するところまでは進んでも、誰がどの場面でそのデータを使うのかが定まらず、活用が広がらない例は少なくない。つくば市の取り組みは、研究機関・大学・企業という活用の担い手が地域内に揃っているという条件のもとで、整備と活用をどうつなぐかという論点に向き合う事例として読むことができる。 (参考:PLATEAU - 国土交通省)
つくば市の3D都市モデルは、2022年度版がまず整備された。建築物モデルは、市全域に相当する約283.72平方キロメートルを簡易な箱型(LOD1)で、中心市街地など約2.27平方キロメートルをより詳細な屋根形状付き(LOD2)でカバーし、一部の建物はさらに詳細なLOD3で再現された。建築物に加え、道路・橋梁・植生・都市設備・土地利用・地形・都市計画決定情報、そして洪水浸水想定区域モデルと土砂災害警戒区域モデルが含まれ、CityGML・3DTiles・MVT・GeoJSONの各形式で配信された。 (参考:3D都市モデル(Project PLATEAU)つくば市(2022年度) - G空間情報センター)
2023年度には、標準製品仕様書V4に準拠したデータへと更新された。建築物モデルにはLOD3.3が、交通分野には新たに徒歩道モデルが加わるなど、歩行者空間まで含めた詳細化が進んだ。V4対応データは2025年3月に追加で公開されている。これらのデータは、Project PLATEAUのサイトポリシーに従い、複製・公衆送信・翻案などを商用利用も含めて自由に行える。 (参考:3D都市モデル(Project PLATEAU)つくば市(2023年度) - G空間情報センター)
市は、整備した3D都市モデルを「公開して終わり」にせず、地域の事業者や研究者と活用方法を探る場を設けた。2023年6月には、つくばスタートアップパークが主催し、つくばスマートシティ協議会が共催する「イノベーションの最前線 No.03 ─デジタルツイン─」が開かれた。3D都市モデル開発を手がけるホロラボのエンジニア、自律移動ロボットを研究する筑波大学の伊達央准教授、つくば市科学技術戦略課長らが登壇し、同年4月に公開されたばかりのつくば市の3D都市モデルを題材に、XRとPLATEAUを組み合わせたデジタルツインの社会実装を議論した。整備したデータを、研究と実装の担い手に橋渡しする場づくりが、活用の起点になっている。 (参考:イノベーションの最前線 No.03 ─デジタルツイン─ - つくばスタートアップパーク)
つくば市は、整備した3Dモデルを自らの先端実証のなかで使ってきた。国土交通省が2023年10月に長野県茅野市で開いた「PLATEAUサミット2023(自治体交流会)」で、市の担当者は「つくばスーパーサイエンスシティ構想とPLATEAU 3D都市モデルを活用したデジタルツインの構築」と題して活用例を紹介している。具体的には、2022年度には自律移動ロボットの自己位置推定の地図としてLOD3相当の3D都市モデルを用いた自動走行実証を行い、2023年度には主要公園を自動走行する「3Dモデルを活用した子どもMaaS」のユースケース開発に取り組んだ。あらかじめ走行してマッピングする手間をかけずに自己位置を推定できないか、という検証である。自宅から病院まではAIデマンドタクシーで送迎し、病院に着いた後は院内の自動運転モビリティが目的の診療科まで案内する、という一連の移動を想定した医療MaaSも、同じデジタルツインの文脈で示された。 (参考:3D都市モデルをまちづくりにいかに生かすか、全国15自治体がPLATEAU活用の知見を共有 - PLATEAU Journal j045)
3D都市モデルの活用がもっとも具体的な形で現れたのが、子育て世代の外出支援を狙う「こどもMaaS」の自動運転実証である。市は東海クラリオン、JAXA(宇宙航空研究開発機構)とともに、つくば駅周辺で低速自動運転モビリティ「YADOCAR-iドライブ」(最大3名乗車)を運行する実証を行った。令和6年度(2024年度)の先行実証に続き、令和7年度は2025年11月(つくばセンター広場〜つくばカピオ前)と2026年1月にかけて実施されている。 (参考:こどもMaaSサービス実証実験 - つくば市、つくば市「こどもMaaS」導入に向けた自動運転走行の実証実験 - 東海クラリオン)
この実証で3D都市モデルが担うのは、走行中の測位を安定させる役割である。市の説明によれば、高層の建物や街路樹の多いつくば駅周辺では、マルチパスの原因となる遮蔽された衛星(NLOS:Non Line Of Sight)からの信号が測位に悪影響を及ぼす。そこで、PLATEAUの三次元形状データから、いまどの衛星が建物に遮られているか(NLOS)を判定し、その衛星の信号を測位の計算対象から外す。これにより、駅前のような遮蔽の多い環境でも測位が安定する、という仕組みである。これを、内閣府の準天頂衛星「みちびき」が提供する高精度測位補強信号(MADOCA-PPP)やJAXAが開発したソフトウェアと組み合わせている。建物の三次元形状があらかじめデータ化されているからこそ、どの方向の衛星が建物に遮られているかを推定できる、という関係である。 (参考:こどもMaaSサービス実証実験 - つくば市、つくば市「こどもMaaS」導入に向けた自動運転走行の実証実験 - 東海クラリオン)
第一の特徴は、3D都市モデルを「整備」から「活用」まで自前で回している点である。多くの自治体ではPLATEAUのデータ整備とオープンデータ化までは進んでも、その先の活用は外部の開発者や別の事業に委ねられがちだ。つくば市の場合、自律移動ロボットの研究者(筑波大学)、モビリティ企業、JAXAといった活用の担い手が地域内に揃っており、市が整備した3Dモデルを自分たちの実証のインプットとして使う回路が成立している。国土交通省のPLATEAU公式ユースケース(事業番号付きの実証事例)にはつくば市単独の事例は見当たらないが、つくばは「整備されたデータを使う側」として独自の活用を組み立てた点に独自性がある。 (参考:3D都市モデルをまちづくりにいかに生かすか - PLATEAU Journal j045、イノベーションの最前線 No.03 ─デジタルツイン─ - つくばスタートアップパーク)
第二に、3D都市モデルを「可視化やシミュレーションのための静的なデータ」という一般的な理解を超えて、走行中の自動運転の測位計算という動的な処理に組み込んだ点である。PLATEAUは景観検討、浸水シミュレーション、まちづくりの合意形成など、都市を「見る・試算する」用途で語られることが多い。これに対しつくばのこどもMaaSは、都市の三次元形状を、いまどの衛星が建物に遮られているかを判定する幾何リファレンスとして使い、リアルタイムの測位品質の改善につなげている。整備済みの3D都市モデルが、自動運転を支える実装基盤の一部として機能している点に、新規性がある。 (参考:こどもMaaSサービス実証実験 - つくば市)
第三に、研究学園都市という「測位が難しい都市環境」を、3D都市モデルの整備によって逆手に取った構図である。中高層の建物や豊かな街路樹は、自動運転にとっては衛星測位を乱す弱点だが、その都市形状を詳細にモデル化してあるからこそ、遮蔽衛星の判定が可能になる。建物や地形が詳細に再現された都市ほど、この種の測位補正が効きやすいという関係は、3D都市モデルの整備とモビリティ実装を同じ地域で進める意義を示している。 (参考:こどもMaaSサービス実証実験 - つくば市)
一方で、成果を客観的に見るうえで留意すべき点もある。第一に、NLOS除去による測位精度の向上について、改善幅を示す定量的な数値は調査時点で公開資料からは確認できなかった。第二に、つくば市の3D都市モデルには洪水浸水想定区域・土砂災害警戒区域のモデルが整備されているものの、これらを使ったつくば市独自の防災シミュレーションの活用事例は、調査時点では確認できていない。PLATEAUの高度な浸水シミュレーションや都市構造分析といった代表的なユースケースは、岡崎市・宇都宮市・仙台市など他都市で実施されており、つくば市の活用は主にモビリティ領域に重心がある。第三に、つくば市内で行われたドローン・ロボット配送における飛行経路(「空の道」)のXR可視化など、しばしばPLATEAUと混同されがちな取り組みのなかには、別の三次元基盤を用いていてPLATEAUの活用とは言い切れないものもある。整備されたデータがすべて活用されているわけではない、という事実は冷静に押さえておく必要がある。 (参考:こどもMaaSサービス実証実験 - つくば市、PLATEAU - 国土交通省)
3D都市モデルは「整備のゴール」ではなく「実装のスタート地点」として設計するとよい。 PLATEAUのデータ整備は全国で進むが、整備後に活用が広がらず死蔵される例は少なくない。つくば市が活用まで進めた背景には、自動運転やロボットといった「整備したデータの出口」が地域内にあらかじめ存在していたことがある。3D都市モデルの整備を計画する自治体は、データを公開する前の段階で「誰が、どの実証や業務で、何のために使うのか」を具体的に描いておくと、整備と活用のギャップを埋めやすい。 (参考:3D都市モデルをまちづくりにいかに生かすか - PLATEAU Journal j045)
3D都市モデルの応用は、可視化やシミュレーションに限られない。 つくばのNLOS検知のように、都市の幾何情報を自動運転の測位計算へリアルタイムに組み込む使い方がある。中高層建物や街路樹で衛星測位が乱れやすい市街地を抱える都市は、すでにオープンデータ化されているPLATEAUの建物モデルを、自動運転やモビリティの測位補助に転用できる可能性がある。整備済みのデータを「見せる」用途から「処理に使う」用途へ広げる発想は、追加の整備コストをかけずに活用の幅を広げる手がかりになる。 (参考:こどもMaaSサービス実証実験 - つくば市)
整備する側と活用する側をつなぐ「場」が、活用の鍵になる。 つくばは、つくばスマートシティ協議会やつくばスタートアップパーク、大学・国研といった産学官の場を通じて、データを整備する行政と、それを使う研究者・モビリティ企業を結びつけた。研究都市でなくても、地域の事業者・大学・スタートアップを巻き込み、整備したデータを試せる場を継続的に設けることは、活用を一過性で終わらせないための再現性のある仕組みになる。 (参考:イノベーションの最前線 No.03 ─デジタルツイン─ - つくばスタートアップパーク)
整備するレイヤーは、活用の出口から逆算して選ぶ。 つくばでは災害リスクモデルなど多様な地物が整備されている一方、活用が確認できるのはモビリティ関連の建物・地形データが中心で、すべてのレイヤーが使われているわけではない。標準仕様に沿って網羅的に整備すること自体に価値はあるが、限られた体制で活用まで回すには、自地域の課題に直結する地物から優先的に活用シナリオを描くことが、投資を成果につなげる近道になる。 (参考:3D都市モデル(Project PLATEAU)つくば市(2023年度) - G空間情報センター)
2026年6月時点の調査内容に基づいて作成
この記事は公開情報に基づき、AIを用いた詳細調査により作成されました。記事内容への修正依頼、お問合せ等は以下までお寄せください。
問い合わせ:support@groove-designs.com
よくあるご質問(FAQ)もあわせてご確認ください。
#
総合計画
#
まちづくり指針
#
エリアビジョン
#
景観計画
#
緑の基本計画
#
公共空間活用
#
ウォーカブル
#
公園活用
#
防災・減災
#
空き家活用
#
エリアプラットフォーム
#
公民連携プラットフォーム
#
公民連携
#
地域コミュニティ
#
地域交流拠点
#
多文化共生
#
子育て支援
#
文化芸術
#
自動運転バス
#
モビリティマネジメント
#
モビリティハブ
#
関係人口
#
移住促進
#
探究学習
#
グリーンインフラ
#
生物多様性
#
参加型予算
#
都市整備
#
まちなか
#
駅前広場
#
協働のまちづくり
#
リノベーションまちづくり
#
フューチャーセンター
#
スマートシティ
#
AI
#
リビングラボ
#
空きスペース活用
#
居場所づくり
#
子ども食堂
#
沿線まちづくり
#
健康
#
社会教育
#
持続可能な都市
#
計画策定
#
まちづくり
#
コミュニティ形成
#
ワークショップ
#
社会実験
#
市民参加
#
子ども・若者
#
子育て世代
#
シニア