
NTTデータ豊洲の共創拠点(INFORIUM豊洲イノベーションセンター/ヘルスケア共創ラボ)— 企業の本社内拠点をエリアの共創装置へ開く
東京都江東区の豊洲センタービルにNTTデータが構える共創拠点「INFORIUM豊洲イノベーションセンター」と「ヘルスケア共創ラボ」の事例。顧客との新規事業共創のための企業拠点が、スマートシティ協議会や再開発のまちづくりイベントを通じて、エリアの共創装置へ開かれていく構図を整理する。
本事例は、株式会社NTTデータが本社機能を置く豊洲センタービル(東京都江東区豊洲3-3-3)内に構える二つの共創拠点を扱う。一つは10階の「INFORIUM豊洲イノベーションセンター」(約520㎡)で、顧客や産学官の関係者と新たなビジネスアイディアや社会課題解決を共に生み出す、対面とデジタルの双方を活用する共創スペースと位置づけられている。もう一つは2階の「ヘルスケア共創ラボ」で、生活者の健康データを活用しながら企業・パートナーと健康・ウェルビーイング領域の新規事業を共創する施設である。 (参考:INFORIUM豊洲イノベーションセンター(NTTデータ)、600名の健康データを活用して商品・サービス等を検証できる「共創実証ラボ」の開設(NTTデータ))
これらはもともとNTTデータが自社の事業やクライアントとの共創のために整えた施設だが、近年は豊洲というエリアのまちづくり・スマートシティの文脈へと開かれてきた点に注目できる。NTTデータは民間主導のまちづくり組織「豊洲スマートシティ推進協議会」の構成員として都市データ基盤「バーチャル豊洲」を構築し、自社拠点を地域の体験イベントの会場として提供し、IHI・三菱地所が主導する大規模再開発「豊洲セイルパーク」の開業前まちづくりイベントに協力企業として参画している。本稿は、一企業の事業用拠点が「エリアの共創装置」へと広がっていく構図を、まちづくりの観点から整理する。 (参考:豊洲スマートシティについて(TOYOSU SMART CITY)、「(仮称)豊洲4-2街区開発計画」の街区名称を「豊洲セイルパーク」に決定(三菱地所))
豊洲は、再開発によって生まれた比較的新しいまちであり、オフィス・住宅・商業・文化施設が混在する「職・住・遊・学」が重なるエリアである。2019年に豊洲エリアが国土交通省のスマートシティ先行モデルプロジェクトに選定されたことを契機に、清水建設・三井不動産・IHI・NTTデータ・三菱地所など豊洲に関わる民間企業と東京都・江東区が連携して「豊洲スマートシティ推進協議会」が設立され、先進技術と都市OSを活用した「ミクストユース型未来都市」の実現が掲げられてきた。NTTデータはこの協議会に2018年11月から参画している。 (参考:豊洲スマートシティについて(TOYOSU SMART CITY)、豊洲スマートシティにおいて来街者のペルソナに応じたレコメンド情報配信の実証実験を開始(NTTデータ))
このまちには多くの企業が拠点を構えるが、企業の拠点は通常、自社の業務やショールーム機能に閉じており、エリア全体の共創資源として活かされにくい。NTTデータ自身も、豊洲センタービル内のイノベーション拠点が技術展示中心の場であった時期には、ハイブリッド勤務の浸透などを背景に利用のあり方を見直す必要に直面していた。2022年7月、同社は10階の拠点をリニューアルし、「技術を展示する場」から「リアルとデジタルが融合し、顧客とともに知恵を出し合う共創の場」へとコンセプトを転換している。 (参考:INFORIUM豊洲イノベーションセンター(NTTデータ))
同時に、豊洲というまちの側にも課題があった。商業施設や文化施設が点在する一方で、来街者がエリア内を回遊しきれていないこと、そして職住が近接する街でありながら住民・ワーカー・来街者が互いに出会う機会が限られていることである。再開発の最終局面を迎えた豊洲二・三丁目地区では、新たに整備される街区を起点に「働く人も暮らす人も出会えるまち」をどうつくるかが問われていた。こうした文脈の中で、NTTデータの共創拠点は、自社事業のためだけでなく、エリアの回遊性や交流を高める装置として位置づけ直されていくことになる。 (参考:豊洲スマートシティにおいて来街者のペルソナに応じたレコメンド情報配信の実証実験を開始(NTTデータ)、巨大イベント!25年夏開業の豊洲4-2街区、まちづくりイベント「TOYOSU Good Neighbors Week」が開催(とよすと))
NTTデータの豊洲の共創機能は、豊洲センタービル内の二つの拠点に分かれている。10階の「INFORIUM豊洲イノベーションセンター」は約520㎡で、技術を体験できるギャラリー、大型LEDを設置し講演やセミナーにも使える多目的スペース、オープンなコミュニケーションエリア、ワークショップに使えるイノベーションラボなどで構成される。同社の未来予測手法を背景に、顧客とともに新規事業の構想を練り、課題解決の糸口を探る場として運営されている。 (参考:INFORIUM豊洲イノベーションセンター(NTTデータ))
2階の「ヘルスケア共創ラボ」は、2023年に開設された健康・ウェルビーイング領域の共創施設である。生活者が健康データを活用してウェルビーイングを実現する未来社会の実現を目指す施設と同社は説明しており、約600名の社員モニターから得た健診データやFitbitの歩数・睡眠データを利用企業に提供し、実データで商品・サービスを検証できる場を整えた。三井不動産、東京海上日動、明治、ダイエー、ブレインスリープなど、業種を超えた企業が参加企業として名を連ね、業界・官民の垣根を越えたヘルスケアエコシステムの構築を目指している。 (参考:600名の健康データを活用して商品・サービス等を検証できる「共創実証ラボ」の開設(NTTデータ))
NTTデータの豊洲への関与は、自社施設の運営にとどまらない。豊洲スマートシティ推進協議会の構成員として、同社は都市OS・データプラットフォーム上に「バーチャル豊洲」を構築した。これは、まちの3Dモデル上にセンサー等から得られるデータをマッピングし、可視化やシミュレーションを行う基盤で、東京都の「スマート東京」先行実施エリアプロジェクト(2020〜2022年度)の中で整備・実証された。協議会には東京都・江東区が幹事として加わり、地域事業者や大学等とも連携しながら、NTTデータは民間構成員としてIHI・三菱地所・清水建設・三井不動産・日立製作所などと同じテーブルでまちのデジタル基盤づくりに関わっている。 (参考:豊洲スマートシティ資料(国土交通省)、豊洲スマートシティについて(TOYOSU SMART CITY))
この基盤を使い、2022年12月から2023年2月にかけては、来街者のペルソナに応じてレコメンド情報を配信し、来訪のきっかけづくりと、エリア内での回遊を促す行動変化を検証する実証実験が行われた。NTTデータの人流分析(BizXaaS MaP)で来街者の行動属性や志向を分析してペルソナを構築し、unerryのビーコン基盤を通じてスマートフォンに情報をプッシュ配信する仕組みで、清水建設のミチノテラス豊洲、三井不動産の江戸前場下町、チームラボプラネッツTOKYOといった施設が連携先として参加した。2024年12月には協議会がプライム事業者となる東京都のデータ連携事業として、移動とエリアサービスのチケットを一体化する「豊洲スマートパス」が実装され、2025年度も継続的に取り組みが進められている。 (参考:豊洲スマートシティにおいて来街者のペルソナに応じたレコメンド情報配信の実証実験を開始(NTTデータ)、豊洲スマートシティ推進協議会の実証実験に対して人流ビッグデータおよび行動変容サービスを提供(unerry)、豊洲スマートシティ(東京都 データ連携・活用促進事業))
2025年、ヘルスケア共創ラボは健康・ウェルビーイング領域で複数の共創プログラムを展開した。一つは「FemCareTechビジネスコンテスト」で、ラボにとって初のビジネスコンテストとして、女性の健康課題をテクノロジーで解決するフェムテック/フェムケア分野のアイデアを公募した。応募は2024年12月から2025年1月にかけて約60社(件)に上り、二次審査を通過した5社が最終ピッチに臨んだ。最終審査・表彰式は国際女性デーにあたる2025年3月8日、原宿で開催された女性の健康をテーマとするイベント内で行われ、産後女性の身体回復を支援するオンラインサービスを提案した株式会社CoNCaが最優秀事業賞を受賞、伴走支援による事業化サポートが副賞として用意された。 (参考:「FemCareTechビジネスコンテスト」開催のお知らせ(NTTデータ)、NTTデータ ヘルスケア共創ラボ主催のビジネスコンテストでSana LaboがFemtech Japan賞を受賞(共同通信PRワイヤー))
もう一つは大阪・関西万博への出展である。ヘルスケア共創ラボは2025年4月13日から5月10日まで、万博会場の「フューチャーライフエクスペリエンス」パビリオン内に「AI×XR×日本文化」をテーマとする展示を出展した。来場者がMeta Quest 3を用いて妖怪から城を守るXRアトラクション「SAMURAI:XR」では、音声認識型のパーソナライズAI診断によって参加者ごとに異なる体験が提供され、NTTデータは個性を可視化するツール「MediaGnosis」やデジタルヒューマンとのインタラクション部分を担当した。展示は日本XRセンターやメタバース推進協議会との共創として実現している。 (参考:大阪・関西万博「フューチャーライフエクスペリエンス」への出展(NTTデータ)、NTTデータ ヘルスケア共創ラボが大阪・関西万博にXRアトラクションを出展(PR TIMES/日本XRセンター))
これらの活動は、豊洲のまちづくりとも接点を持った。2025年2月17日から22日にかけて、IHIと三菱地所が主催する開業前まちづくりイベント「TOYOSU Good Neighbors Week 〜働く人も暮らす人も、豊洲のお隣さんに出会える1週間〜」が開催された。これは同年夏に開業を控えた大規模再開発「豊洲セイルパーク(旧称・豊洲4-2街区開発計画)」の機運を高めるイベント群で、豊洲パークマネジメントJVが共催、NTTデータ・BIPROGY・富士フイルムビジネスイノベーションが協力企業として名を連ねた。 (参考:巨大イベント!25年夏開業の豊洲4-2街区、まちづくりイベント「TOYOSU Good Neighbors Week」が開催(とよすと))
この一週間のうち2月18日、ヘルスケア共創ラボは自らの拠点(豊洲センタービル2階)を会場に、「最新技術体験会&企業交流会」を定員50名で開催した。ゲストスピーカーの講演に加え、FemCareTechビジネスコンテストや大阪・関西万博出展といった同ラボの取り組みを紹介し、来場者が健康・ウェルビーイング分野の先端技術を実際に体験できる構成とした。豊洲セイルパークが掲げる、職・住・遊・学を貫くオープンイノベーションを街ぐるみで育てるという世界観を、健康・ウェルビーイング技術の体験という形で先取りして示した企画である。同年11月には開業後の「TOYOSU GOOD NEIGHBORS FES」も豊洲セイルパークで開催され、NTTデータのコーラスがライブ出演するなど、一過性で終わらない継続的な関与がみられる。 (参考:2025年2月18日 豊洲4-2街区開発計画 開業前イベント「最新技術体験会&企業交流会」(NTTデータ)、豊洲のお隣さんでつくる参加型文化祭「TOYOSU GOOD NEIGHBORS FES」が開催(とよすと))
なお、豊洲セイルパークそのものの開発事業者はIHIと三菱地所であり、インキュベーション施設「LIFESTYLE LAB "TOYONOMA"」やシェア企業寮「TRIAL HOUSE "TAMESU"」を核に、生まれた製品・サービスを暮らしの中で試す「テストマーケティングコミュニティ」を構想している。NTTデータは開発事業者ではなく、あくまでイベントへの協力企業という立場でこの再開発に関わっている点は、構図を理解するうえで押さえておきたい。 (参考:「(仮称)豊洲4-2街区開発計画」の街区名称を「豊洲セイルパーク」に決定(三菱地所))
この事例の中心的な特徴は、企業が自社事業のために整えた共創拠点を、エリアのまちづくりに開いている点にある。INFORIUM豊洲もヘルスケア共創ラボも、出発点は顧客やパートナー企業との新規ビジネス共創という企業活動である。しかしNTTデータは、これらの拠点を協議会の体験イベントや再開発の開業前イベントの会場として提供し、定員を設けて外部の参加者を迎え入れている。企業のショールームや会議施設を「閉じた事業空間」のままにせず、地域の人や企業が出会う場として開放する発想は、再開発エリアに多くの企業拠点が集積する都市部で応用余地が大きい。 (参考:2025年2月18日 豊洲4-2街区開発計画 開業前イベント「最新技術体験会&企業交流会」(NTTデータ)、INFORIUM豊洲イノベーションセンター(NTTデータ))
NTTデータの豊洲への関与は、性格の異なる三つの層に整理できる。第一に、協議会の構成員として都市データ基盤「バーチャル豊洲」を構築する「基盤」の層。これは特定企業の利益というより、まちの共有財に近いデジタルインフラづくりである。第二に、INFORIUMとヘルスケア共創ラボという自社拠点を地域の共創・体験の場として開く「拠点」の層。第三に、IHI・三菱地所が主導する再開発のまちづくりイベントに協力企業として加わる「連携」の層である。一企業が、開発事業者でもデベロッパーでもない立場から、データ基盤・自社施設・連携協力という複数のチャネルを束ねてエリアに関与している構図は、企業のまちづくり参加のあり方として示唆に富む。 (参考:豊洲スマートシティ資料(国土交通省)、豊洲スマートシティについて(TOYOSU SMART CITY))
防災・交通・賑わいといった従来のまちづくりテーマに対し、本事例は「健康・ウェルビーイング」という比較的新しい切り口を持ち込んでいる点も特徴である。ヘルスケア共創ラボは、実データを使って生活者とともにサービスを検証する場であり、FemCareTech(女性の健康)や万博出展(AIによる個性可視化)など、人の健康・生き方に踏み込んだテーマを扱う。豊洲セイルパークが掲げる「職・住・遊・学のオープンイノベーション」や、製品を暮らしの中で試す「テストマーケティングコミュニティ」という構想とも親和性が高く、まちのなかで健康・ウェルビーイングを共創するという新しい接続点を生んでいる。 (参考:600名の健康データを活用して商品・サービス等を検証できる「共創実証ラボ」の開設(NTTデータ)、「(仮称)豊洲4-2街区開発計画」の街区名称を「豊洲セイルパーク」に決定(三菱地所))
協議会での取り組みは、人流データの観測、3Dモデル上での可視化(バーチャル豊洲)、そしてレコメンド配信による回遊の行動変容という、データを軸にしたまちづくりのサイクルとして組み立てられている。来街動機の促進やエリア回遊といった、従来は把握しづらかったまちづくりの目標を、定量的なデータと施策で扱おうとする姿勢が明確である。室内での共創ワークショップと、屋外のまちでのデータ駆動の回遊デザインが、同一企業・同一エリアの中で地続きになっている点は、企業のショールームを超えた価値といえる。 (参考:豊洲スマートシティにおいて来街者のペルソナに応じたレコメンド情報配信の実証実験を開始(NTTデータ)、豊洲スマートシティ推進協議会の実証実験に対して人流ビッグデータおよび行動変容サービスを提供(unerry))
本事例は、企業の共創拠点と継続的なエリア関与を束ねた取り組みであり、単一施策としての定量的成果を示すことは難しい。公表情報から確認できる成果は、主に次の点に整理できる。
都市データ基盤の構築・実証:協議会の枠組みのもと、まちの3Dモデルにデータをマッピングする「バーチャル豊洲」が東京都の先行実施プロジェクトの中で構築され、人流分析とレコメンド配信を組み合わせた回遊促進の実証実験が2022〜2023年にかけて実施された。2025年度には移動・サービスを束ねる「豊洲スマートパス」など、実装フェーズの取り組みへと発展している。 (参考:豊洲スマートシティ資料(国土交通省)、豊洲スマートシティ(東京都 データ連携・活用促進事業))
健康・ウェルビーイング共創の具体的な実績:ヘルスケア共創ラボの初のビジネスコンテスト「FemCareTechビジネスコンテスト」には約60社(件)の応募が集まり、最終ピッチを経て受賞事業に伴走支援が用意された。また同ラボは大阪・関西万博のパビリオンにXR・AIを使った体験を出展し、外部パートナーとの共創として実現させた。 (参考:「FemCareTechビジネスコンテスト」開催のお知らせ(NTTデータ)、NTTデータ ヘルスケア共創ラボ主催のビジネスコンテストでSana LaboがFemtech Japan賞を受賞(共同通信PRワイヤー)、大阪・関西万博「フューチャーライフエクスペリエンス」への出展(NTTデータ))
エリアのまちづくりイベントへの継続的参画:2025年2月の「TOYOSU Good Neighbors Week」では自社拠点を会場に定員50名の体験会を開催し、同年11月の開業後イベント「TOYOSU GOOD NEIGHBORS FES」にも出演するなど、再開発エリアの機運醸成とコミュニティ形成に協力企業として継続的に関わっている。 (参考:2025年2月18日 豊洲4-2街区開発計画 開業前イベント「最新技術体験会&企業交流会」(NTTデータ)、豊洲のお隣さんでつくる参加型文化祭「TOYOSU GOOD NEIGHBORS FES」が開催(とよすと))
一方で、共創ワークショップや体験イベントの参加者数・反響、回遊実証における来街者数・行動変容率といった、まちづくり上の効果を示す定量データは、公表情報からは十分に確認できなかった。また、自社拠点での室内の共創と、まちでのスマートシティ実証とを一体のプログラムとして明示する一次情報も確認できておらず、両者は「同一企業・同一エリアでの活動」として地続きに整理できるにとどまる。成果の本格的な評価には、今後の継続的な情報公開が求められる。
多くの再開発エリアやオフィス街には、企業のショールーム・研修施設・イノベーション拠点が点在している。しかしその多くは自社事業に閉じており、まちの共創資源として活用されにくい。本事例は、企業が自前の共創拠点を地域の体験イベントやコンテストの場として開放し、外部の参加者を迎え入れることで、まちの交流や事業創発の装置に転用できることを具体的に示している。新たな施設を整備しなくても、既存の企業拠点を「開く」だけでまちづくりの資源が増えるという発想は、企業集積のある地域で広く応用できる。
NTTデータが開発事業者でもデベロッパーでもない立場からエリアに多面的に関わることができた背景には、豊洲スマートシティ推進協議会という官民連携のプラットフォームの存在がある。協議会が東京都・江東区・大学・複数企業を束ねる「場」として機能しているからこそ、一企業はデータ基盤づくり・自社拠点の開放・再開発イベントへの協力といった複数の関わり方を選べる。エリアに企業を巻き込みたい地域では、まず企業が参画しやすい共通のプラットフォーム(協議会・エリアマネジメント組織など)を整えることが、個別企業の関与を引き出す前提になる。
防災・交通・賑わいに加えて、健康・ウェルビーイングは住民・ワーカーの生活に直結する共創テーマになりうる。実データを使って生活者とともにサービスを検証する場(リビングラボ的な拠点)や、地域の課題解決を競うコンテストは、企業の専門性とまちの暮らしを結びつける接点になる。職住が近接し、住民・ワーカー・来街者が混在するエリアでは、暮らしの質そのものを共創対象に据える切り口が、新しいまちづくりの入口を開く。
ただし、この構図は、本社機能と複数の共創拠点を持つ大企業が、データ基盤を構築できる技術力と、協議会という官民連携の受け皿の双方を備えていたからこそ成立している面がある。同等のリソースを持たない地域では、単独企業に多層的な関与を期待するより、複数の中小企業・大学・行政がそれぞれの強みを持ち寄れる協働の枠組みをどう設計するかが先決となる。また、企業の関与は事業上の動機と不可分であり、まちづくりの公共的な目的と企業の利害をどう整合させ、持続させるかは、横展開にあたって常に問われる論点である。
2026年6月時点の調査内容に基づいて作成
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