
福岡市ウォーターフロント地区(中央ふ頭・博多ふ頭)再整備の検討
博多港中央ふ頭・博多ふ頭で進む「ウォーターフロントネクスト」構想。MICE・クルーズ・国内定期航路という止められない高稼働率インフラを抱えながら、3局横断体制と定量データで機能更新を検討する2025年12月時点の事例。
福岡市は、博多港の都心部に位置する中央ふ頭・博多ふ頭エリア(ウォーターフロント地区)について、「ウォーターフロントネクスト」と呼ぶ再整備構想を2016年から継続的に検討している。同地区にはMICE施設(マリンメッセ福岡、福岡国際会議場、福岡国際センター、福岡サンパレス)、クルーズ船ターミナル、国内外の定期旅客船ターミナルが集積しており、これらの機能を止めることなく更新しながら、「海辺を生かした連続的な賑わいや憩い空間」を創出することを目指している。 (参考:福岡市 ウォーターフロントネクスト(中央ふ頭・博多ふ頭の再整備))
検討はMICE機能を経済観光文化局、人流・クルーズ機能を港湾空港局、まちづくり全般の調整を住宅都市みどり局が分担する3局体制で進められており、2025年12月の市議会には「ウォーターフロント地区再整備の検討状況」「MICE関連施設の状況」「人流機能に係る検討」の3資料が報告された。単一用途の再開発ではなく、既存の稼働中インフラを段階的に更新していく点が本事例の特徴である。 (参考:福岡市 ウォーターフロントネクスト(中央ふ頭・博多ふ頭の再整備))
構想策定から10年、コロナ禍を挟んで停滞した長期プロジェクト
福岡市は2014年に再整備の基本方向性を示し、2015年の計画提案公募(19件の応募のうち17件の提案概要書を公表)やMICE関連施設整備方針の策定を経て、2016年3月に「ウォーターフロント地区再整備構想」を策定した。しかし2019年の民間サウンディング実施後、2020年からの新型コロナウイルス感染症拡大により検討は停滞し、2021年9月には対象を絞り込む形で検討エリアの見直しが議会報告されている。都心部再整備では天神ビッグバン・博多コネクティッドと並んで語られることが多い一方、他の2事業と比べると具体化の動きは遅れてきた。 (参考:福岡市 これまでの取り組み、LIFULL HOME'S PRESS「福岡の"第3の都心"はなぜ動かないのか?」)
「止められないインフラ」が集積する構造的な難しさ
再整備が長期化してきた最大の要因は、性格の異なる複数の高稼働率インフラが同一エリアに集積している点にある。MICE施設は令和6年度で福岡国際会議場79.0%、マリンメッセ福岡A館87.0%、福岡サンパレス77.5%という高い稼働率を維持しており、単純に休止・建替に着手できない。国内定期航路(壱岐・対馬・五島航路など)は島で暮らす人々にとって欠かせない生活の足であり運航を止められないため、更新は稼働を維持したままの現地建替か移転かの二択に限られる。 (参考:福岡市 ウォーターフロント地区再整備の検討状況について(2025年12月議会報告))
再始動の引き金となった国際定期旅客ターミナルの空洞化
2025年の検討再始動の直接的な契機は、JR九州高速船株式会社が船舶事業から撤退したことである。同社は博多〜釜山間の高速船「クイーンビートル」を運航していたが、浸水隠蔽問題を経て2025年2月に事業を廃止し、博多港国際ターミナルではチェックインカウンターなど約1,600㎡の施設が未利用となった。ターミナル自体も築32年が経過し、受変電設備などの老朽化が進んでいる。現在就航する国際フェリーは「ニューかめりあ」(博多〜釜山)1隻のみとなっている。 (参考:福岡市 人流機能に係る検討について(2025年12月議会報告))
クルーズ需要の回復に伴う輻輳とスペース不足
博多港のクルーズ寄港回数はコロナ前の2019年に229回だったが、コロナ禍で落ち込んだ後、2024年に204回、2025年は209回まで回復した。回復の一方で新たな課題も生じている。クルーズセンターでは乗客の手荷物を預けたり受け取ったりする場所が手狭になっており、手続き待ちの乗客が屋外にあふれる時間帯も生じているほか、寄港地観光へ向かう個人旅行客の比率が2019年の9%から2025年には23%まで上昇し、コンテナヤードへ荷役のために出入りするトラックの経路と、タクシーや路線バスを使う個人客の歩行ルートが重なり合う場面が増えている。 (参考:福岡市 人流機能に係る検討について(2025年12月議会報告))
老朽化するMICE施設という積年の課題
福岡サンパレスと福岡国際センターはともに1981年開業で築44年が経過し、屋上防水や空調・舞台設備が更新期を迎えている。福岡国際センターでは2階・3階の客席へ向かう来場者の主な動線が階段のみとなっており、バリアフリー面での対応が十分ではないほか、両施設とも搬出入口の高さ制約(福岡サンパレスは大型トラック1台ごとの搬出入、福岡国際センターは高さ約3.8mの大型トラックに対し入口が3.4m以下)により設営・撤去が非効率になっている。福岡サンパレスと福岡国際センターを併用する大型催事では、会場間を移動するための仮設テント通路をそのつど設置する必要があり、追加の作業負担とコストが生じている。 (参考:福岡市 MICE関連施設の状況について(2025年12月議会報告))
構想策定と基盤整備の助走期(2014〜2019年)
2014年9月の基本方向性策定を皮切りに、2015年に計画提案公募(19件応募のうち17件の提案概要書を公表)とMICE関連施設整備方針の策定、クルーズセンターの供用開始(2015年5月)が続いた。2016年3月には「ウォーターフロント地区再整備構想」を策定し、「市民や来街者が海辺を楽しめる賑わいと憩いのまちづくり」「MICEや海のゲートウェイとして賑わう国際的な交流空間づくり」「アジアのゲートウェイとして世界に開かれた新たな拠点づくり」という3つのコンセプトを掲げた。2018年には中央ふ頭西側岸壁延伸部が供用開始し、2018〜2019年にはウォーターフロント地区アクセス強化研究会を開催、2019年2月には「まちづくりの基本スキーム素案」の概要を議会報告した上で、同年2〜8月に民間サウンディングを実施し、10月にその結果を報告している。 (参考:福岡市 これまでの取り組み)
コロナ禍による停滞と検討エリアの絞り込み(2020〜2021年)
2020年以降の新型コロナウイルス感染症拡大により、まちづくりの検討は事実上停止した。この間もインフラ整備自体は部分的に進み、2020年5月にマリンメッセ福岡第1駐車場(立体駐車場、790台)、2021年2月に都市計画道路「築港石城町線」、2021年4月にマリンメッセ福岡B館(多目的展示室)がそれぞれ供用を開始している。2021年9月の議会報告では、検討対象エリアをふ頭基部側に絞り込む見直しが行われ、クルーズ機能は当面既存施設で対応し、国際定期機能も当面既存施設を活用する方針へと縮小された。 (参考:福岡市 これまでの取り組み)
民間事業者撤退を契機とした検討の再始動(2025年)
JR九州高速船の船舶事業撤退(2025年2月)を受け、福岡市は2025年9月の議会報告で国際定期旅客ターミナルの未利用化や老朽化の実態を整理した。これを踏まえ、同年12月には人流機能・MICE機能・まちづくり全体の3つの資料を同時に議会報告し、機能別の現状課題の可視化と、機能配置の方向性(国際定期機能の中央ふ頭東側への早期移転、国内定期機能の現地建替または他地区移転の検討、MICE施設の一体的・機能的な拠点形成)を示した。今後は港湾空港局・経済観光文化局による機能別検討と並行して、住宅都市みどり局が民間ヒアリング等を行いながら「まちづくりの将来像」を検討し、交通対策もあわせて検討していくとしている。 (参考:福岡市 ウォーターフロント地区再整備の検討状況について(2025年12月議会報告))
機能別に3局が並行検討し、最後に「まちづくりの将来像」として統合する体制
本事例の特徴は、MICE・人流(クルーズ・国際定期・国内定期)・まちづくり全体という性質の異なる3つの検討テーマを、経済観光文化局・港湾空港局・住宅都市みどり局という異なる部局がそれぞれ主管しながら、最終的には住宅都市みどり局が「まちづくりの将来像」として統合する二段階構造を取っている点である。単一部局が全体を一元管理するのではなく、専門性の異なる機能ごとの検討を先行させ、方向性が見えてきた段階で全体構想に統合するアプローチは、複数の異なる用途が絡み合う大規模再整備における役割分担の一つのモデルとなっている。 (参考:福岡市 ウォーターフロント地区再整備の検討状況について(2025年12月議会報告))
現況を写真・数値で可視化して議会と共有する報告スタイル
2025年12月の3資料はいずれも、未利用スペースの現況写真、稼働率の年度推移表、個人旅行客比率の推移グラフといった定量データ・実写資料を多用して現状課題を可視化している。たとえば個人旅行客比率が2019年の9%から2025年に23%へ上昇したことや、マリンメッセ福岡A館のコンサート利用日数が2018年度146日から2024年度185日に増加したことなど、抽象的な「賑わいの高まり」ではなく具体的な指標で課題と成果の両方を示す手法が一貫している。 (参考:福岡市 MICE関連施設の状況について(2025年12月議会報告)、福岡市 人流機能に係る検討について(2025年12月議会報告))
稼働を止められないインフラを動かしながら更新するという制約設計
一般的な再開発が「更地化してから作り直す」のに対し、本事例は高稼働率のMICE施設、離島住民の生活航路、活発な国際貿易港といういずれも運用停止が許されないインフラの更新を、機能を維持したまま進めなければならない制約の中で検討が組み立てられている。国際定期機能の「早期移転」、国内定期機能の「現地建替or移転」といった選択肢の併記自体が、この制約を反映したものである。 (参考:福岡市 人流機能に係る検討について(2025年12月議会報告))
防災機能を人流機能の検討に組み込んでいる点
2025年12月の人流機能検討では、港湾計画に位置づけられている中央ふ頭先端部の耐震強化岸壁(緊急物資輸送用)とその背後地の未整備状況にも言及し、大規模地震発生時の支援物資輸送拠点としての活用可能性を、2025年10月に福岡県が発表した最新の地震被害想定や他都市の事例も踏まえて検討していくとしている。港湾・MICE・人流という平常時の賑わい機能の検討に、災害時の防災機能という異なる時間軸の論点を同時に組み込んでいる点は本事例特有の視点である。 (参考:福岡市 人流機能に係る検討について(2025年12月議会報告))
MICE来場者数はコロナ前水準まで回復
ウォーターフロント地区のMICE来場者数は、コロナ禍で落ち込んだ2020年度の25万人から段階的に回復し、2024年度には267万人となった。コロナ前の2018年度(270万人)とほぼ同水準まで戻っている。催事別では、2024年度はコンサート等が151.4万人と最も多く、展示会57.9万人、会議・集会45.5万人と続く。2021年4月のマリンメッセ福岡B館開館以降はA・B館を併用する新規催事や既存催事の規模拡大が可能になり、これまでにない多様な催事の受け入れにつながっている。 (参考:福岡市 MICE関連施設の状況について(2025年12月議会報告))
クルーズ寄港はコロナ前水準に近づき、全国トップクラスの実績を維持
博多港のクルーズ寄港回数は2024年に204回、2025年は209回となり、コロナ前2019年の229回に近づいている。外部の報道でも、博多港は2024年・2025年に全国トップクラスの訪日クルーズ船寄港回数を記録したと伝えられている。日本船社の配船体制も拡大しており、郵船クルーズ・商船三井クルーズは令和元年時点の計2隻体制から現在は計4隻体制に、将来的には計6隻体制への拡大が見込まれている。 (参考:福岡市 人流機能に係る検討について(2025年12月議会報告)、フクリパ「訪日クルーズ船(外国船・日本船)寄港回数で2年連続トップ」)
機能配置の方向性が明確化
2025年12月時点で、国際定期機能は中央ふ頭東側への早期移転、クルーズ機能はターミナル・関連施設の需要に応じた規模検討、国内定期機能は博多ふ頭内での現地建替または他地区への移転の詳細検討という、機能ごとの今後の検討の方向性が議会に示された。あわせてMICE施設については、老朽化状況の詳細調査を経て「機能的・一体的に配置されたMICE拠点」の形成に向けた検討を進める方針が示されている。 (参考:福岡市 ウォーターフロント地区再整備の検討状況について(2025年12月議会報告))
段階的なインフラ整備が着実に積み上がっている
再整備構想の策定以降、クルーズセンター(2015年)、中央ふ頭西側岸壁延伸部(2018年)、都市計画道路「築港石城町線」(2021年)、マリンメッセ福岡第1駐車場(2020年)、マリンメッセ福岡B館(2021年)と、まちづくり全体の将来像確定を待たずに個別のインフラ整備が段階的に完了してきた。全体構想の合意形成が長期化する中でも、優先度の高い個別施設整備を先行させてきた点は、成果として確認できる。 (参考:福岡市 これまでの取り組み)
「止められないインフラ」を抱えた再整備の進め方
港湾、MICE施設、公共交通結節点など、稼働を止められない高稼働率インフラを都心部に複数抱える自治体は少なくない。本事例は、それらを一斉に建て替えるのではなく、機能ごとに「移転」「現地建替」「既存施設の有効活用」といった選択肢を個別に検討し、機能維持を前提に段階的な更新を図るアプローチを取っている。全面的な再開発ではなく漸進的な機能更新という進め方は、同様の制約を抱える他都市の中心市街地・港湾エリア再整備において再現性のある考え方だといえる。 (参考:福岡市 人流機能に係る検討について(2025年12月議会報告))
複数部局にまたがる大規模プロジェクトのガバナンス設計
MICE・港湾・都市整備という所管の異なる部局が関わる大規模プロジェクトでは、部局間の連携不足が停滞要因になりやすい。本事例では機能別の検討主体を明確に分けたうえで、まちづくり所管部局が全体調整と将来像への統合を担うという役割分担を取っている。これは、単独部局では専門性が追いつかない複合的な都市開発案件において、他地域が参考にできる組織設計の一例である。 (参考:福岡市 ウォーターフロント地区再整備の検討状況について(2025年12月議会報告))
民間事業者の撤退・再編という外部リスクへの備え
本事例で検討再始動の直接的な契機となったのは、市が直接コントロールできないJR九州高速船という一民間事業者の事業撤退であった。公共インフラの機能の一部を特定の民間事業者の運航に依存している場合、その事業者の経営判断が公共施設の遊休化に直結しうるという構造は、同様に民間運航事業者に依存するフェリーターミナルや空港アクセス施設を持つ他地域にとっても、リスクとして認識しておく価値がある論点である。 (参考:福岡市 人流機能に係る検討について(2025年12月議会報告))
2026年08月時点の調査内容に基づいて作成
この記事は公開情報に基づき、AIを用いた詳細調査により作成されました。記事内容への修正依頼、お問合せ等は以下までお寄せください。
問い合わせ:support@groove-designs.com
よくあるご質問(FAQ)もあわせてご確認ください。
#
総合計画
#
まちづくり指針
#
エリアビジョン
#
景観計画
#
緑の基本計画
#
公共空間活用
#
ウォーカブル
#
公園活用
#
防災・減災
#
空き家活用
#
エリアプラットフォーム
#
公民連携プラットフォーム
#
公民連携
#
地域コミュニティ
#
地域交流拠点
#
多文化共生
#
子育て支援
#
文化芸術
#
自動運転バス
#
モビリティマネジメント
#
モビリティハブ
#
関係人口
#
移住促進
#
探究学習
#
グリーンインフラ
#
生物多様性
#
参加型予算
#
都市整備
#
まちなか
#
駅前広場
#
協働のまちづくり
#
リノベーションまちづくり
#
フューチャーセンター
#
スマートシティ
#
AI
#
リビングラボ
#
空きスペース活用
#
居場所づくり
#
子ども食堂
#
沿線まちづくり
#
健康
#
社会教育
#
持続可能な都市
#
計画策定
#
まちづくり
#
コミュニティ形成
#
ワークショップ
#
社会実験
#
市民参加
#
子ども・若者
#
子育て世代
#
シニア