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九州大学箱崎キャンパス跡地再開発(住友商事グループが土地利用事業者に決定)
九州大学箱崎キャンパス跡地再開発(住友商事グループが土地利用事業者に決定)

九州大学箱崎キャンパス跡地再開発(住友商事グループが土地利用事業者に決定)

九州大学箱崎キャンパス跡地再開発(住友商事グループが土地利用事業者に決定)

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福岡市東区の九州大学箱崎キャンパス跡地約28.5haで、住友商事を代表とする8社グループが2026年3月に土地利用事業者に正式決定。IOWN構想を核とした「HAKOZAKI Green Innovation Campus」として2028年度の第1期まちびらきを目指す都心近接のスマートシティ開発。

概要

福岡市東区箱崎にある九州大学箱崎キャンパス跡地(全体約50ha)のうち、南側約28.5haの土地利用事業者として、住友商事を代表とする8社グループが2026年3月26日、正式に決定した。九州大学と都市再生機構(UR)が2023年から進めてきた公募型の事業者選定を経て、2024年4月18日に優先交渉権者として選ばれてから約2年をかけて事業基本計画の審議を終え、正式契約に至ったものである。 住友商事グループは、JR九州、西部ガス、清水建設、大和ハウス工業、東急不動産、西日本新聞社、西日本鉄道の7社と組み、次世代通信基盤「IOWN」を都市インフラの核に据えたスマートシティ「HAKOZAKI Green Innovation Campus」を提案した。分譲住宅約2,000戸、医療・教育・商業機能を複合的に配置し、緑化率40%・樹木1万本以上の「箱崎創造の森」を整備する計画で、2028年度に第1期のまちびらき、2036年度にまちづくりの概成を予定する。都心近接の大学跡地約28.5haを一体開発するスマートシティ計画であり、同種の跡地開発の中でも規模の大きい部類に入る。 (参考:住友商事プレスリリース福岡市 第17回箱崎キャンパス跡地利用協議会資料

背景・課題

九州大学は施設の老朽化・狭隘化と、箱崎・六本松・原町の3地区に分散したキャンパス立地を解消するため、1991年(平成3年)10月に元岡・桑原地区(現・伊都キャンパス)への統合移転を決定した。福岡空港に近く航空法上の高さ制限を受けていたことも移転理由の一つとされる。2005年に伊都キャンパスが開校し、工学系・理学系・文系・農学系の順で段階的な移転を進め、2018年9月に統合移転が完了した。これにより箱崎地区には東京ドーム約10個分に相当する約50haの広大な跡地が生じた。 (参考:九州大学 箱崎キャンパス跡地利用

箱崎は江戸時代から唐津街道の宿場町、筥崎宮の門前町として発展してきた千年以上の歴史を持つ市街地であり、九大生を対象とした下宿や飲食店が集積する学生街としての性格も併せ持っていた。そのため大学移転は、地域商業の需要基盤が失われる空洞化リスクとしても受け止められた。一方で跡地は博多駅から約4kmという都心近接の立地にあり、地下鉄箱崎線・西鉄貝塚線が乗り入れる貝塚駅にも近いことから、福岡市にとっては都心部に残された数少ない大規模低未利用地としての活用可能性も同時に注目されていた。 (参考:福岡市 箱崎キャンパス跡地まちづくりの検討状況

課題は、単独の事業者や自治体だけでは対応しきれない開発規模とスケジュールの長さをどう管理するかにあった。福岡市・九州大学は移転完了に先立ち「跡地利用将来ビジョン検討委員会」(2012年3月〜2013年2月)を設置し、地域の意見を踏まえて「跡地利用将来ビジョン」(2013年2月)を策定。続いて「跡地利用計画」(2015年3月)、都市基盤整備や土地利用のルールを定める「グランドデザイン」(2018年7月)を段階的に積み上げ、その中で先進的まちづくり構想「FUKUOKA Smart East」を打ち出した。基盤整備を担う都市再生機構(UR)九州支社は2016年11月に九州大学と共同事業を開始し、2017〜2020年には環境影響評価(方法書・準備書・評価書)を実施している。約30年に及ぶこの準備期間は、民間公募に先立って開発の前提ルールを固めるプロセスでもあった。 (参考:UR都市機構 九州大学箱崎キャンパス跡地のまちづくり福岡市 九州大学箱崎キャンパス跡地のまちづくり

取り組みのプロセス

公募開始と3グループの応募

福岡市・九州大学・URは2023年4月28日、跡地南側約28.5ha(うち定期借地部分3.5haを含む)を対象に土地利用事業者の公募を開始した。募集にあたっては、まちづくりのコンセプト、スマートサービス、都市空間、都市機能、まちづくりマネジメントの5分野にわたる事業提案を求めた。2024年1月29〜30日の申込受付には、住友商事グループ、九州電力グループ、トライアルグループの3者が応募し、いずれも2024年2月7日の資格審査を通過した。 (参考:福岡市 第17回箱崎キャンパス跡地利用協議会資料

総合評価による優先交渉権者の決定

2024年4月16日の事業企画提案審査では3グループとも審査基準を満たし、4月18日の価格審査を経て、企画評価(750点満点)と価格評価(250点満点)を合算した総合評価が行われた。結果は住友商事グループが企画評価659点・価格評価241点の合計900点で、九州電力グループ(814点)、トライアルグループ(642点)を上回り、優先交渉権者に決定した。九州電力グループは大規模アリーナを核とする提案、トライアルグループは自社のDXノウハウを核とする提案をそれぞれ掲げており、方向性の異なる3案が競い合う公募となった。譲渡・借地価格は371億7,800万円(借地期間60年、賃貸部分3.5haは月額1,260万円)で決定している。 (参考:日本経済新聞建設通信新聞Digital

事業基本計画の審議と正式決定

優先交渉権者決定後、九州大学・URは「事業基本計画書に係る審議委員会」を設置し、実現性や地域適合性について複数回にわたる審議を重ねた。この間、福岡市も箱崎キャンパス跡地利用協議会(2024年5月時点で通算17回開催、以降も継続)を通じて進捗を確認している。2026年3月26日、審議を経て事業基本計画が承認され、住友商事グループが正式に土地利用事業者に決定、契約が締結された。同年5月には現地で安全祈願祭が開催され、事業は本格的な整備段階に移行した。 (参考:住友商事プレスリリース九州大学箱崎キャンパス跡地のまちづくり 公式サイト

段階的な土地引き渡しと開発スケジュール

基盤整備(都市計画道路等)は2025年度中に概ね完了する見込みで、2026年4月以降、土地は事業区画ごとに段階的に民間コンソーシアムへ引き渡され、2032年3月までに完了する予定である。2028年度にイノベーションコア、商業施設、多世代交流施設、住宅・学生寮などを含む第1期のまちびらきを予定し、2036年度にまちづくり全体の概成を見込む。事業期間は2025〜2036年度の約12年間に及ぶ長期プロジェクトである。周辺インフラでは、鹿児島本線の千早駅〜箱崎駅間に新駅「JR貝塚駅」が2027年開業を目指して整備中で、既存の地下鉄箱崎線・西鉄貝塚線の貝塚駅と合わせ2駅3路線が利用可能になる見通しである。 (参考:フクリパ乗りものニュース

この事例の特徴

約30年をかけた段階的な計画の積み上げの上に公募を設計した点

本事業は、1991年の移転決定から2023年の事業者公募開始までの間に、「跡地利用将来ビジョン」「跡地利用計画」「グランドデザイン」という3段階の計画文書を順に策定し、用途・高さ・景観・歴史継承といった開発の前提ルールを先に固めてから民間公募に踏み切っている。事業者選定を急がず、行政・大学・地域が合意形成にかけた期間の長さそのものが、大規模跡地の再開発プロセスとしての特徴となっている。

企画提案と価格提案を組み合わせた総合評価方式による競争

単独随意契約ではなく、企画評価750点・価格評価250点の総合評価方式で3グループを競わせたことにより、スマートシティ(住友商事G)、大規模アリーナ(九州電力G)、DX特化(トライアルG)という異なる開発コンセプトそのものを比較検討できる公募設計となった。得点差(900点・814点・642点)から、公共性と収益性のバランスが評価軸として機能したことがうかがえる。

通信インフラを都市設計の前提に据えたスマートシティ構想

個別のスマートサービスを後付けで導入するのではなく、次世代通信基盤IOWNを都市インフラの前提として位置づけ、まち全体をデジタルツイン化した上で、顔認証決済、AI見守りカメラ、オンデマンド交通、自営線による電力融通(eight-grids)などのサービスを統合的に運用する設計思想を採る。IOWNを推進する通信事業者を協力者として計画段階から組み込んでいる点が、単発の実証実験にとどまらないスマートシティ計画の特徴である。 (参考:福岡市 第17回箱崎キャンパス跡地利用協議会資料

生活インフラ企業による混成コンソーシアムという事業体構成

代表企業の住友商事に加え、鉄道(JR九州・西鉄)、エネルギー(西部ガス)、建設(清水建設)、住宅・不動産(大和ハウス工業・東急不動産)、地域メディア(西日本新聞社)という、地域の生活インフラを面で担う8社が構成員として参画している。単一デベロッパーでは抱えにくい交通・エネルギー・情報発信の各機能を、それぞれの専門企業が分担する体制を最初から組み込んでいる。

跡地固有の歴史・地域文脈を継承する開発方針

事業提案の6つの方針には「九州大学100年の歴史の継承」「福岡の文化・千年の歴史の継承」が明記されており、大学キャンパス時代の街割りグリッドや建物の高さ・色調の継承、残存する近代建築の意匠を踏まえ周辺の街並みと違和感のない高さ・稜線を構成すること、筥崎宮や箱崎商店街など周辺の歴史文化資源への回遊動線づくりが都市デザインの制約条件として組み込まれている。更地への新規開発ではなく、跡地が持つ歴史的資産を活かす前提で計画が組み立てられている。 (参考:福岡市 第17回箱崎キャンパス跡地利用協議会資料

調査時点の成果

2026年8月の調査時点で定量的に確認できるのは、事業者選定から契約締結までの進捗である。2024年4月18日の優先交渉権者決定、2026年3月26日の事業基本計画承認・土地利用事業者の正式決定と契約締結(譲渡・借地価格371億7,800万円)、同年5月の安全祈願祭実施までが、公式発表ベースで確認できる到達点である。

施設の竣工・開業実績は調査時点でまだ存在しない(第1期まちびらきは2028年度を予定)。したがって、賑わい創出や地域経済への効果といった成果は現時点では検証できておらず、公表されている数値(分譲住宅2,000戸、緑化率40%・樹木1万本以上、事業期間12年間など)はいずれも計画値である点に留意が必要である。

一方、事業者選定プロセス自体の成果としては、企画評価・価格評価を組み合わせた総合評価入札により、方向性の異なる3つの提案(スマートシティ、アリーナ、DX特化)の中から公共性と事業性を両立する提案を選び出せたことが、審査結果の点差から確認できる。また、事業と並行して鹿児島本線の新駅「JR貝塚駅」が2027年開業に向けて整備が進んでおり、跡地開発と広域交通基盤整備が連動して進捗している点も、調査時点で確認できる具体的な成果といえる。 (参考:住友商事プレスリリース乗りものニュース

他地域への示唆

開発の前提ルールを先に固めてから公募を行う進め方

移転決定から公募開始まで30年以上、跡地利用ビジョン策定からでも10年以上の期間を「将来ビジョン→利用計画→グランドデザイン」という段階的な計画文書の積み上げに充て、用途・高さ・景観・歴史継承の考え方を民間公募の前に固めている。大学統合移転や庁舎再編など大規模な公有地・法人所有地の跡地活用を検討する自治体にとって、事業者選定を急ぐ前に開発の前提ルールを地域・行政・所有者間で合意形成しておくプロセス設計は、規模によらず再現可能な手法である。

企画・価格の総合評価によって開発コンセプトの選択肢を可視化する審査設計

企画提案(750点)と価格提案(250点)を組み合わせた総合評価方式により、単なる価格競争ではなく、まちの将来像そのものが異なる複数案(スマートシティ/大規模集客施設/DX特化)を並べて比較検討できる公募となった。大規模跡地を持つ他の自治体や大学法人にとって、事業者選定の透明性を確保しつつ提案内容の多様性も担保する審査設計として参考になる。

開発後の運営を見据えたインフラ企業混成コンソーシアム

不動産デベロッパー単独ではなく、交通・エネルギー・通信・メディアの各インフラ企業を構成員に加えることで、まちびらき後の運営(モビリティ確保、エネルギー融通、情報発信)を担う主体をあらかじめ事業体に組み込んでいる。開発段階からエリアマネジメント組織の担い手を設計しておく発想は、大規模開発にありがちな「開業後の空洞化」を防ぐ観点で他地域にも応用できる論点である。

規模の大きさに比例した地域コミュニケーションの必要性

地元経済メディアの論考では、開発規模に見合うだけの丁寧な住民対話や意見集約のプロセスがまだ追いついていないとの見方も示されている。本事業では福岡市による箱崎キャンパス跡地利用協議会が2026年3月時点で通算17回開催されるなど、公式な協議体制自体は長期にわたり継続してきた経緯がある一方で、こうした指摘が出ること自体は、大学跡地のような広域的・長期的な大規模開発では、公式の審議プロセスに加えて地域側にとって実感の伴う対話の丁寧さが評価の分かれ目になり得ることを示している。他地域で同種の跡地開発を検討する際に留意すべき論点である。 (参考:NetIB-News

参照元

2026年8月時点の調査内容に基づいて作成

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