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上井草駅周辺まちづくり(北口駅前広場整備事業)
上井草駅周辺まちづくり(北口駅前広場整備事業)

上井草駅周辺まちづくり(北口駅前広場整備事業)

上井草駅周辺まちづくり(北口駅前広場整備事業)

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西武新宿線上井草駅の北口駅前広場整備事業。2011年設立の住民協議会が高架化と地下化の比較検討を自ら行ったうえで構想をまとめ、区境を越えて練馬区側の協議会と連携した。2040年完成予定という長期事業を、継続的な住民対話で支えている事例。

上井草駅周辺まちづくり(北口駅前広場整備事業)

概要

東京都杉並区の上井草駅は、西武新宿線の各駅停車のみが停まる住宅地の駅である。2024年度の1日平均乗降人員は18,819人。ホーム間を結ぶ跨線橋も地下通路もないため、通勤で駅を使う人は往路か復路のどちらかで踏切の横断を避けられない。駅周辺の4か所の踏切はすべて、ピーク時には1時間のうち40分以上遮断機が下りたままとなる、いわゆる「開かずの踏切」であり、駅前のバス通りは片側の歩道幅員が約1.5メートルしかない。 (参考:西武鉄道 駅別乗降人員上井草駅周辺まちづくり計画(中間のまとめ)

杉並区は2024年3月6日、この駅の北側に約2,804平方メートルの駅前広場を整備する都市計画事業の認可を東京都から取得した。バス・タクシーの乗降場を広場に集約し、駅に接続するバス通りを幅員8メートルから15メートルへ拡幅する。東京都が同日に事業認可を受けた西武新宿線(井荻駅~西武柳沢駅間)連続立体交差事業と一体で進められ、区施行部分の事業期間は2040年3月末までとされている。 (参考:上井草駅周辺まちづくり|杉並区まちづくり広場パネル(2026年5月)

この事例の特徴は、施設整備そのものよりも、そこに至る13年間のプロセスにある。事業の出発点は行政計画ではなく、2011年に地域住民が設立したまちづくり協議会が高架方式と地下方式の長短を自ら比較検討したうえでまとめた構想であり、その構想は駅の立地する杉並区の枠を越えて、隣接する練馬区側の住民組織との連携を自ら提案していた。

背景・課題

上井草駅周辺は、大正から昭和初期の井荻町土地区画整理事業によって道路が碁盤の目状に整えられた住宅地である。屋敷林や生産緑地が残り、駅の北側には杉並区の「みどりの保全地区」に指定された区域もある。駅の近くには杉並区で唯一の総合スポーツ施設である上井草スポーツセンターと早稲田大学のラグビー用グラウンドがあり、周辺には普通科・工業科・農業科を含む4つの高校が立地している。アニメ制作会社が複数集まる地域でもある。 (参考:上井草駅周辺地区まちづくり構想上井草駅周辺道路・交通施設整備計画

一方で、鉄道が地区を南北に分断していることから生じる問題が長く積み残されてきた。地区内の4つの踏切はすべて、東京都が2004年に策定した「踏切対策基本方針」において、渋滞や事故を招く恐れが大きい踏切として「重点踏切」に位置づけられている。ホーム間の移動ができない駅構造とあいまって、朝夕のラッシュ時には車も歩行者も自転車も駅前のバス通りと踏切の一帯へ流れ込み、混雑が一点に集中する。 (参考:上井草駅周辺道路・交通施設整備計画

交通結節点としての機能も弱かった。荻窪方面へ向かうバスの停留所は駅から100メートルほど歩いた先にあり、幅の狭い歩道に置かれているため、バスを待つ列が歩道に収まりきらない。タクシーの乗降施設はなく、南口改札前の道路に停車する車両が通行を妨げていた。駅周辺には待ち合わせや休憩のためのスペースもほとんどない。 (参考:上井草駅周辺道路・交通施設整備計画

課題を複雑にしていたのが行政区域の境界である。上井草駅そのものは杉並区にあるが、駅の西側にある2つの踏切と、それに関わる千川通り・井草高通りは練馬区内を通っている。駅の南北分断を解消するには、駅の所在地である杉並区だけでは完結しない。連続立体交差事業の区間は西東京市にもまたがっており、東京都・杉並区・練馬区・西東京市・西武鉄道という複数主体の調整が前提となる構図だった。 (参考:上井草駅周辺地区まちづくり構想上井草駅周辺地区のまちづくり|練馬区

動きの起点となったのは、2008年6月に西武新宿線の井荻駅~東伏見駅付近が東京都の連続立体交差事業の事業候補区間に選定されたことである。立体化の可能性が視野に入ったことで、両区が地域へまちづくりの検討を呼びかけた。 (参考:上井草駅周辺地区(下石神井四丁目)まちづくり構想|練馬区西武新宿線沿線まちづくり|杉並区

取り組みのプロセス

1. 住民協議会の設立と、区境を越えた早期の接触(2011年)

練馬区側では2011年5月、町会・商店会・公募区民による「上井草駅周辺地区(下石神井四丁目)まちづくり協議会」が発足した。杉並区側では同年9月、地域の有志による「上井草駅周辺地区まちづくり協議会」が設立総会を開き、86名の応募のもと会長と18名の運営委員を選出した。杉並区側の協議会は翌10月、杉並区まちづくり条例に基づく「市街地整備型まちづくり協議会」に認定され、構想をまとめて区に提案できる立場を得ている。 (参考:上井草駅周辺地区まちづくり構想上井草駅周辺地区(下石神井四丁目)まちづくり構想|練馬区

両協議会の接触は早い。杉並区側の活動記録によれば、設立からわずか3か月後の2011年12月に練馬区の協議会と顔合わせを行い、翌2012年1月には石神井公園駅周辺の合同見学会と意見交換を実施している。同年10月以降の杉並側の定例会には練馬区の協議会から毎回6名が参加し、駅周辺の議論を共有した。 (参考:上井草駅周辺地区まちづくり構想

2. 街頭アンケートと構想づくり(2012年〜2014年)

杉並区側の協議会は2012年3月23日・24日、上井草駅改札付近に本部テントを設けて街頭活動を行い、パンフレット2,000部を配布したうえでアンケート286票を回収した。回答からは、「静かな住宅地」(49.3%)「緑の多いまち」(20.6%)が地域の良さとして挙がる一方、マイナス面としては「商店街が寂しい」(36.7%)「駅改札内で上下線の行き来ができない」(26.5%)「開かずの踏切」(25.5%)が上位を占めた。駅構造と踏切の問題が、住民の実感として数値で確認された形である。 (参考:上井草駅周辺地区まちづくり構想

協議会は3年間で定例会28回、運営委員会33回を重ね、まち歩き、見学会、防災マップづくりなどを織り交ぜながら検討を進めた。2014年3月には構想の素案を紹介する広報紙を地区の全世帯(約5,200世帯)に配布し、41件の意見・要望を回収。寄せられた意見の趣旨と協議会の考え方を対にした一覧を構想の資料編に収録したうえで、2014年4月に『ここに暮らすみんなの安心・元気・夢を育むまち 上井草』と題した構想を取りまとめ、区に提案した。練馬区側の協議会も2013年3月に提言書を区へ提出し、区はこれをもとに2014年11月、まちづくり条例に基づく重点地区まちづくり計画として構想を策定している。 (参考:上井草駅周辺地区まちづくり構想重点地区まちづくり計画|練馬区

3. 構想から行政計画への接続(2016年〜2019年)

杉並区は、上井草・井荻・下井草の3協議会から2014年に提案された構想を受け、2016年2月に「西武新宿線沿線各駅周辺地区まちづくり方針」を策定した。方針は「交通体系」「土地・建物利用」「住環境」の3分野を立て、「人と人とをつなぐ、みどり豊かな便利で快適なまち」を目標に掲げている。 (参考:西武新宿線沿線まちづくり|杉並区まちづくり広場パネル(2026年5月)

方針を具体化する段階では、区は説明会形式ではなくオープンハウス形式を採用した。2018年11月18日から20日にかけて井草中学校でパネル展示とスライド上映を行い、3日間で延べ160名が来場。踏切除却や立体化の早期実現、バス通りの安全対策、駅前広場の設置を求める意見が寄せられた。区はこれを踏まえ、2019年2月に「上井草駅周辺まちづくり計画(中間のまとめ)」を公表している。 (参考:まちづくりニュース第1号上井草駅周辺まちづくり|杉並区上井草駅周辺まちづくり計画(中間のまとめ)

2019年2月には東京都から、鉄道立体化の構造形式は高架方式が最適であり、線路北側に側道を整備するとの都市計画素案が示された。これを受けて区は「上井草駅周辺道路・交通施設整備計画」の案を作成し、2019年6月14日から7月5日まで意見を募集。47件・延べ130項目の意見が寄せられた。意見のなかには、説明に具体的な数字が示されず道路幅や範囲が分からないため意見を出しづらいという、手続き自体への指摘も複数あり、区は表現の修正・追記に応じたうえで、2019年7月に整備計画を策定した。 (参考:整備計画(案)意見募集の結果上井草駅周辺道路・交通施設整備計画

4. 都市計画手続きと事業認可(2019年〜2024年)

2019年8月、井草中学校体育館で都市計画素案説明会を開催(来場者122名)。その後の検討で広場の形状と面積に変更が生じたため、同年11月に素案変更の説明会をあらためて開催した(同83名)。広場部分の面積は約3,100平方メートルから約2,900平方メートルへ縮小されている。 (参考:まちづくりニュース第4号

2020年10月7日から15日にかけては都市計画案等の説明会が開かれ、8日間で延べ約490名が参加した。会場は練馬区立上石神井中学校、練馬区立関中学校、杉並区立四宮小学校、東京都立農芸高等学校、西東京市立東伏見小学校の5か所で、行政区域をまたいで設定された。2021年11月26日に都市計画決定、2024年3月6日に東京都・杉並区がそれぞれ事業認可を取得している。 (参考:上井草駅周辺まちづくり|杉並区説明会等|練馬区西武新宿線(井荻駅~西武柳沢駅間)連続立体交差事業|東京都建設局

5. 「まちづくり広場」による継続的な接点づくり(2022年〜)

事業化の前後から、区は「まちづくり広場」と呼ぶ屋外・小規模会場でのパネル展示を繰り返している。2022年10月15日は西武スマイルパーク下石神井駐車場(75名)、2023年10月21日は下石神井千川児童遊園(80名)と、いずれも練馬区内の会場で練馬区と共同開催された。2024年6月8日は杉並区側の上井草北自転車駐車場西側の緑地で開催し(75名)、同日に練馬区も下石神井商店街事務所で自区の第5回まちづくり広場を開いている。2025年2月8日は特別養護老人ホーム上井草園の会議室で共同開催され、杉並区が駅前広場整備事業の概要を、練馬区が下石神井四丁目のまちづくりルールに関する意見のまとめを、同じ会場で並べて展示した。 (参考:上井草駅周辺まちづくり|杉並区まちづくりニュース第5号まちづくりニュース第6号

2024年12月18日から21日には、東京都・沿線自治体・西武鉄道が連携して用地補償説明会を開催した。杉並区内では12月21日に三谷小学校体育館で行われ、107名が来場している。現在は物件調査と補償費の算定の段階にある。 (参考:まちづくりニュース第6号まちづくり広場パネル(2026年5月)

この事例の特徴

住民組織が「賛否」ではなく「比較」の主体になった

一般に、鉄道立体化の構造形式(高架か地下か)は事業者が比較検討して示し、住民はそれに賛成か反対かで応じる構図になりやすい。上井草の協議会は、この順序を逆にした。2014年の構想には、高架形式と地下形式の長所・短所を協議会自身が整理した表が掲載されている。高架形式については「駅周辺をシンボリックに仕立てやすい」「高架下を利用できる」を長所に挙げる一方、「景観面、騒音面で不安」を短所として明記した。地下形式についても「地上部・線路跡を利用できる」「地上部がすっきりする」と「駅の中心性が損なわれる」「振動発生の恐れ」を併記している。 (参考:上井草駅周辺地区まちづくり構想

さらに資料編では、連続立体交差事業の効果を「安全・安心」「魅力づくり」「にぎわいづくり」の3観点に分けて評価している。そこには「交通容量が増え、環八や新青梅街道などからの交通流入量が増える」「高架の場合、緑視率が低下し、遠くから見える屋敷林や寺社の緑が見えにくくなる」「高架の場合、線路北側の日当たりが悪くなる」「地元資本の商店等の出店が保証されにくい」といった不利益も、記号付きで並べられている。自分たちが推進を掲げる事業のマイナス面を、自分たちの文書に残したうえで結論を出した点が特徴的である。 (参考:上井草駅周辺地区まちづくり構想

区境をまたぐ連携が、住民提案として文書に書き込まれた

構想の方針1には「提案3 行政及び隣接地区と連携した取り組みを期待します」という項目があり、駅西側の2つの踏切と千川通り・井草高通りが練馬区内を通ることを理由に、練馬区や下石神井地区のまちづくりとの連携、さらに連続立体交差事業の連続性を考えて井荻・下井草地区の協議会との連携も図るべきだと明記されている。行政が調整の必要性を認識するより前に、住民側が越境の必要を言語化していた。 (参考:上井草駅周辺地区まちづくり構想

練馬区の構想(2014年11月)にも、駅前の交通環境の向上が大きな課題であることから、駅の所在地である杉並区および周辺地域と引き続き十分な連携を図る旨が記されている。両区が同じ地区について、それぞれの制度で別々に計画を持ちながら、相互参照する形になっている。 (参考:上井草駅周辺地区(下石神井四丁目)まちづくり構想|練馬区

駅前広場を「交通広場」と「都市の広場」の二重機能で定義した

整備計画は、駅前広場の機能を2つの視点で定義している。「交通広場」としては、乗降場の集約による乗換え利便性の向上と、駅・広場・バス通りが互いに接する配置による歩行者の安全確保。「都市の広場」としては、緑の量感とゆとりのある空間、地域の顔となる美観・象徴性への配慮、そして災害時にも使える空間という3点が挙げられている。交通処理施設としてだけでなく、人々が憩い集う交流機能と一時避難の防災機能を持つ空間として位置づけられている。 (参考:上井草駅周辺道路・交通施設整備計画

高架化に伴う側道を、歩行者ネットワークの資産に読み替えた

側道はもともと、高架橋が沿線に落とす日影といった影響をやわらげる目的で線路沿いに設けられる道路である。上井草ではこれを、駅周辺の回遊性向上と歩行者・自転車空間のネットワーク形成という積極的な目的に接続した。駅北西側の付属街路第11号線は現況約5.45メートルの道路を幅員19〜20メートルに拡幅する計画で、うち歩道2.5メートル・車道5メートルに対し、11.5メートルが「歩道・オープンスペース」に充てられている。旧井草川の遊歩道を活かしたみどりの回遊ネットワークの一部として設計されており、延焼遮断や避難路としての防災機能も併せて位置づけられた。 (参考:上井草駅周辺道路・交通施設整備計画まちづくり広場パネル(2026年5月)

寄せられた意見を、否定的なものも含めてそのまま公開している

区がまちづくり広場の記録として公開している意見一覧には、事業を歓迎する声だけでなく、「なぜ高架になったのか。地下の方が買収は少なくなるのでは」「高架より地下の方が安全であるように思われる」といった構造形式への疑問や、「にぎわいは求めていない。現状を維持できれば良い」という整備の方向性そのものへの異論が、要約されずに並んでいる。「北口にバスが乗り入れると排気ガスや音が問題になる」「駅前広場をつくるには立ち退かなければならない。戻ってこられるように市街地再開発事業などに取り組まないのか」といった、事業の負の側面に踏み込む声も同様である。 (参考:まちづくり広場でいただいた主な意見(2026年5月)まちづくり広場でいただいた主な意見(2024年6月)

調査時点の成果

2026年8月時点で、駅前広場そのものはまだ工事に着手していない。現段階は用地取得に向けた物件調査と補償費算定の段階であり、物理的な成果はまだ現れていない。確認できるのは、制度的な到達点と、そこに至る合意形成の実績である。

制度上のマイルストーン

2011年の協議会設立から数えて13年目にあたる2024年3月6日、杉並区は東京都から都市計画事業認可を取得した。対象は杉並区画街路第3号線(道路部分の延長118メートル、幅員15メートル/広場部分2,804平方メートル)、付属街路第10号線(延長37メートル、幅員12〜14メートル)、付属街路第11号線(延長69メートル、幅員19〜20メートル)である。事業期間は2040年3月31日まで。同日に東京都が認可を受けた連続立体交差事業は延長約5.1キロメートルで、19か所の踏切(うち杉並区内4か所)が除却される。事業完了予定は東京都施行分が2038年3月末、杉並区施行分が2040年3月末とされている。 (参考:上井草駅周辺まちづくり|杉並区西武新宿線(井荻駅~西武柳沢駅間)連続立体交差事業|杉並区まちづくり広場パネル(2026年5月)

住民提案が計画体系に位置づけられた

区が策定した「上井草駅周辺道路・交通施設整備計画」の位置づけ図には、上位計画である杉並区まちづくり基本方針と並んで、「上井草駅周辺地区まちづくり構想(『上井草駅周辺地区まちづくり協議会』提言)」が明示的に記載されている。住民組織の提案が、参考資料としてではなく計画の系譜上に置かれている点は、構想づくりの成果として確認できる。 (参考:上井草駅周辺道路・交通施設整備計画

対話の量的な蓄積

区が公表している来場者数を積み上げると、2018年11月のオープンハウス(160名)から2026年5月のまちづくり広場(139名)まで、オープンハウス・説明会・まちづくり広場・用地補償説明会を合わせて延べ1,700名規模の来場が記録されている。最多は都市計画決定の前段にあたる2020年10月の都市計画案等説明会で、8日間・5会場で約490名。まちづくり広場の来場者数は会場によって幅があり、2025年2月の特別養護老人ホーム会議室が約40名だったのに対し、2025年7月の早稲田大学上井草グラウンドは209名、2026年5月の井草森公園は139名だった。 (参考:上井草駅周辺まちづくり|杉並区

認知は完全ではない

2026年5月23日のまちづくり広場では、来場者139名のうち123名がシールアンケートに回答した。「連続立体交差事業等について知っていましたか」という設問に対し、「知っていた」89名に対して「知らなかった」が34名(回答者の約28%)を占めた。都市計画決定から4年半、事業認可から2年を経てなお、来場者の3割近くが事業を知らずに訪れている。居住地の内訳は井草地域80名、井草地域以外43名で、関心のあるテーマは交通体系分野53名、土地・建物利用分野37名、住環境分野32名と分散した。 (参考:まちづくり広場でいただいた主な意見(2026年5月)

担い手の継続性は課題として残る

協議会の会員数は、2011年9月の設立総会時の応募者86名に対し、2012年4月の総会時点で84名、2013年4月の総会時点では72名と推移している。構想策定までの3年間で会員はゆるやかに減少しており、協議会自身も構想の最終章で「経済的・技術的・人的に安定した組織づくりを目指す」ことを課題として挙げ、定期開催から「関心をもつ人が必要なときにいつでも集える体制」への移行を掲げていた。 (参考:上井草駅周辺地区まちづくり構想

他地域への示唆

構造形式の比較検討を、住民側の作業として先に済ませておく

鉄道立体化やバイパス整備のような大規模事業では、構造形式や線形の選択が事業者から示された時点で、住民側は賛否の表明しかできない立場に置かれやすい。上井草の協議会は、事業が候補区間の段階にあるうちに高架方式と地下方式の長短を自ら整理し、緑視率の低下や日照への影響、地元商店の出店が保証されにくいことといった不利益まで自分たちの文書に書いたうえで推進を選んだ。この「比較してから選ぶ」という順序を踏んだことが、その後の長い事業期間を通じて地域が判断の根拠を参照し続けられる状態をつくっている。専門的な検討支援は必要になるが、比較の主体が誰かという設計は、どの地域でも事業化前の段階であれば選択できる。

駅は行政境界に無頓着であることを、組織設計の前提に置く

上井草の場合、駅は杉並区にあり、駅の南北分断を生んでいる踏切と主要道路の一部は練馬区にある。両区は別々の条例に基づく別々の制度で動いており、実際に杉並区は都市計画事業として、練馬区は重点地区まちづくり計画とまちづくりルールとして、異なる手法で同じ地区に関わっている。制度を統合したわけではない。にもかかわらず越境が成立したのは、住民組織どうしが設立3か月で顔合わせをし、定例会に相互参加するという「場の共有」から始めたためである。制度の統合は自治体の判断を要するが、場の共有は現場レベルで始められる。行政の共同開催は、その10年後に追いついてきた。

緩和措置として生じる用地を、地域側の目的に読み替える

高架化に伴う側道、緩衝緑地、代替施設用地といった「事業の副産物」は、緩和のための最低限の整備にとどまりがちである。上井草では、日影影響の緩和を理由に必要となる側道を、幅員19〜20メートルのうち11.5メートルを歩道・オープンスペースに充てる街路として設計し、旧井草川遊歩道につながる回遊ネットワークと防災上の避難路機能を与えた。事業者側の理屈で発生する用地に対して、地域側が先に「何に使いたいか」を持っているかどうかで、同じ用地の質が変わる。事業計画が固まる前に、副次的に生じる空間の使い道まで構想に書き込んでおく価値がある。

周知は一度で終わらない。会場の性格を変えて回すことが実務になる

事業期間が15年を超えると、計画を知る住民と知らない住民が絶えず入れ替わる。上井草では都市計画案説明会(2020年10月)の約490名が参加者数のピークで、意思決定の直前に関心が集中する一方、事業認可後のまちづくり広場は40〜209名と幅がある。2026年5月時点でも回答者の約28%が事業を知らなかった。区は公園、大学のグラウンド、高齢者施設の会議室、駐輪場脇の緑地、商店街の駐車場と、性格の異なる会場を毎回変えて開催している。会場を固定した年1回の説明会では届かない層に接触するための方法として、屋外・小規模・多頻度という設計は他地域でも移植しやすい。

反対意見をそのまま残すことが、長期事業の信頼の担保になる

区が公開する意見記録には、構造形式への疑問や「にぎわいは求めていない」という整備方針そのものへの異論、立ち退きへの不安が要約されずに載っている。協議会の構想も、素案に寄せられた41件の意見の趣旨と自分たちの考え方を対にして掲載した。完成が20年以上先の事業では、賛同の記録より「どんな懸念が出され、どう答えたか」の記録のほうが後年の参照価値が高い。担当者も住民も入れ替わることを前提にすれば、異論を含む記録の蓄積そのものが引き継ぎの資産になる。

成果が出る前の期間をどう設計するかが問われる

構想策定(2014年)から事業完了予定(2040年)まで26年ある。協議会の会員数は構想づくりの3年間ですでに86名から72名へ減った。人が入れ替わることを前提とすれば、活動の熱量に依存しない形で情報を積み上げる仕組みが要る。杉並区は2018年から2025年までにまちづくりニュースを6号、練馬区は準備号から第23号までを発行し、パネル資料や寄せられた意見の一覧をウェブ上に累積させている。 (参考:上井草駅周辺地区まちづくりニュース|練馬区公式ホームページ)特定の人物やリーダーシップに依存せず、紙とウェブと定例的なイベントで記録を残していく方式は、属人性を排した継続手段として参考になる。

参照元


2026年8月時点の調査内容に基づいて作成

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よくあるご質問(FAQ)もあわせてご確認ください。


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