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西鉄天神大牟田線 雑餉隈駅付近連続立体交差事業
西鉄天神大牟田線 雑餉隈駅付近連続立体交差事業

西鉄天神大牟田線 雑餉隈駅付近連続立体交差事業

西鉄天神大牟田線 雑餉隈駅付近連続立体交差事業

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西鉄天神大牟田線の雑餉隈駅を含む春日原~下大利間約5.2kmを高架化し19箇所の踏切を除却した連続立体交差事業。2022年に高架切替、2024年に新駅「桜並木駅」開業。沿線3市がそれぞれの手法で高架下活用を進めている。

西鉄天神大牟田線 雑餉隈駅付近連続立体交差事業

概要

西鉄天神大牟田線の雑餉隈駅を含む春日原駅~下大利駅間、延長約5.2kmを高架化し、区間内の踏切をすべて撤去する連続立体交差事業である。福岡市博多区の雑餉隈駅周辺(約1.86km)を福岡市が、春日市・大野城市にまたがる区間(約3.3km)を福岡県がそれぞれ事業主体となって進め、西日本鉄道株式会社が鉄道事業者として工事に参画している。 (参考:福岡市 西鉄天神大牟田線連続立体交差事業(雑餉隈駅付近)福岡県 西鉄天神大牟田線(春日原~下大利)連続立体交差事業

2022年8月28日、深夜の運行終了から始発運行までの限られた時間帯(約9時間)を使って高架切替工事が実施され、区間内の踏切19箇所(福岡市区間7箇所、福岡県区間12箇所)がすべて解消された。2024年3月16日には西鉄として14年ぶりとなる新駅「桜並木駅」が開業し、同日のダイヤ改正で隣接する春日原駅が特急停車駅に格上げされた。2026年8月時点では、両側に整備する側道の全線供用(福岡市区間は令和8年度中を予定)に向けた工事と、高架下空間の活用に向けた取り組みが沿線3市でそれぞれ進行している。 (参考:NISHITETSU ONLINE MAGAZINE N×フクリパマイナビニュース福岡市 現在の工事状況

背景・課題

雑餉隈駅から下大利駅にかけての区間は、福岡都市圏南部における交通・商業の拠点である一方、地上を走る鉄道が数多くの踏切によって東西の市街地を分断してきた。福岡県が事業主体となる春日原~下大利間(約3.3km)だけでも12か所の踏切があり、合計すると1日当たりおよそ7~8時間が遮断状態となるほか、通学・通勤が重なるピーク時には1時間のうち35~40分も踏切が開かない状況だった。 (参考:福岡県 西鉄天神大牟田線(春日原~下大利)連続立体交差事業

福岡市が事業主体となる雑餉隈駅周辺(約1.86km、踏切7箇所)でも、朝夕のピーク時に最大370メートルの交通渋滞が発生していたほか、踏切による事故は平成12年度から21年度までの10年間で11件を数え、そのうち6件が死亡事故に至っていた。踏切による安全上のリスクが長年の懸案となっていた。 (参考:福岡市 事業の効果

こうした状況を受け、2007年3月、地元の校区や商店街の関係者が結成した「雑餉隈発展期成会」が福岡市に高架化を働きかけた。福岡市はこれを受けて2008年3月に都市計画決定を行い、2010年7月に事業認可を取得して事業に着手した。福岡市にとっては1968年以降6例目、延長にして12km超の実績を持つ連続立体交差事業の一つに位置づけられる。 (参考:福岡市 連続立体交差事業とは

一方、春日市域を含む福岡県区間でも、地上を走る鉄道による「駅周辺の総合的発展の阻害」や踏切遮断による渋滞・駐輪場不足が課題として認識されており、県・市・鉄道事業者がそれぞれの持ち場で足並みを揃えて事業化を進めた。 (参考:春日市 西鉄天神大牟田線(春日原~下大利)連続立体交差事業・西鉄春日原駅周辺整備事業

取り組みのプロセス

仮線への切替から一夜の高架切替まで

福岡県区間では2011年4月に鉄道高架橋の建設工事が本格的に始まり、2014年3月には列車を仮設の線路に移す「仮線切替」を実施した。仮線上での運行を続けながら本設の高架橋を建設し、2022年8月27日深夜から28日早朝にかけて、最終列車が走り終えてから始発列車が動き出すまでの約9時間という制約の中で高架への切替工事を行った。軌道・信号通信・電力の3部門に分かれた約130人の作業員が、土のうの撤去、レールの切断・移動、架線調整、踏切の撤去などを並行して進め、朝6時からの試運転を経て始発から高架運行を開始した。 (参考:福岡県 西鉄天神大牟田線(春日原~下大利)連続立体交差事業NISHITETSU ONLINE MAGAZINE N×

高架切替後も工事は続き、2023年8月には鉄道との立体交差道路となる筑紫通りが完成した。福岡市区間の雑餉隈駅の駅舎改修は2024年9月に完了し、福岡県区間でも2025年3月末までに鉄道関連工事が完了した。 (参考:福岡市 現在の工事状況春日市 鉄道高架化

新駅「桜並木駅」の計画と開業

高架化にあわせて、雑餉隈駅と春日原駅の間に新駅を設置する計画が進められた。西日本鉄道は2022年7月に新駅設置を正式発表し、駅名は一般公募で決定された。駅の南側にある地域住民が手入れする桜並木にちなみ「桜並木駅」に決まり、2024年3月16日に開業した。西鉄にとって新駅開業は2010年3月の紫駅以来14年ぶりで、開業日には地元・福岡市立那珂南小学校の児童による作品を車内に展示した記念列車「みんなの桜並木号」が走り、両ホームに多くの来場者が集まった。 (参考:西日本鉄道 プレスリリースフクリパ

同じダイヤ改正のタイミングで、隣接駅である春日原駅も新たに特急の停車対象に加わり、平日昼間帯(10~17時)は特急・急行が約10分間隔で運行される拠点駅に位置づけられた。新駅設置による需要創出と、既存駅の機能強化を同時に進める形となっている。 (参考:マイナビニュース

沿線3市それぞれによる高架下空間の活用検討

高架化によって生まれる高架下空間の活用は、福岡市・春日市・大野城市がそれぞれ独自のプロセスで検討を進めている。福岡市区間では雑餉隈駅・桜並木駅の駐輪場整備が先行し、2024年3月に「サイカパーク雑餉隈駅、桜並木駅駐輪場」が開設された。 (参考:福岡市 事業の効果サイカパーキング お知らせ

春日市は、福岡県・西日本鉄道・大野城市による「高架下公共利用に関する協定書」の締結を踏まえ、関係者との協議を重ねながら「西鉄春日原駅周辺高架下空間の利用計画案」をまとめた。あわせて、春日原駅の改札内壁面に、鉄道で使用されていた廃材(レール等)を活用しつつ地元小学生の絵の一部をデザインに取り入れる「みん壁プロジェクト」を実施し、住民参加のデザイン要素を整備に組み込んでいる。 (参考:春日市 高架下有効利用の検討春日市 事業について春日市 みん壁プロジェクト

大野城市は2020年9月に独自の「高架下利用基本計画」を策定したうえで、2021年2月に民間事業者向けの「サウンディング型市場調査」を実施した。市域約2.8kmの高架下に広場・遊歩道・駐輪場・複合型交流施設・歩行者用シェルターなどを整備する構想を示し、PFI的手法とバンドリング(複数施設の一括発注)を組み合わせる事業スキームの実現可能性について、民間事業者との対話を通じて検討した。施設整備は2024年度に設計を完了し、2025年度から本格的な工事に入っている。整備にあたっては説明会やワークショップを重ね、住民の意見を聴きながら進めている。 (参考:新・公民連携最前線大野城市 西鉄天神大牟田線高架下に公共施設を整備します

駅前広場整備と一体開発の推進

春日市は連続立体交差事業とあわせて「西鉄春日原駅周辺整備事業」を実施し、アクセス道路や東西駅前広場、側道の整備を進めている。東口駅前広場にはコミュニティバス「まどか号」の乗降場、西口駅前広場にはコミュニティバス「やよい」の乗降場が集約される計画である。この駅前整備と連動する形で、西日本鉄道は春日原駅1階・2階部分に商業施設「レイリア春日原」を開発し、2026年2月27日の先行オープンを経て、同年6月11日にグランドオープンした。 (参考:春日市 春日原駅周辺整備事業春日市 完成イメージ西日本鉄道 プレスリリース

この事例の特徴

一体のインフラ事業でありながら分権的に進む高架下活用

雑餉隈駅付近から下大利駅までの高架化は、福岡市・福岡県という異なる事業主体が区間を分担しつつ一体的に施工した単一の連続立体交差事業である。しかし完成後に生まれる高架下空間の活用方針は、福岡市(駐輪場整備)、春日市(3者協定を踏まえた協議による利用計画案の策定)、大野城市(サウンディング型市場調査によるPFI的手法)と、沿線3市がそれぞれ異なる制度設計・関係者調整プロセスで検討している。広域インフラの整備主体と、その効果を地域に還元する活用主体を分離し、各自治体が自らの財政力や地域特性に応じた手法を選べる点は、複数自治体にまたがる連続立体交差事業に特徴的な構造である。 (参考:春日市 高架下有効利用の検討大野城市 西鉄天神大牟田線高架下に公共施設を整備します

サウンディング型市場調査による高架下活用の民間活力導入

大野城市が実施したサウンディング型市場調査は、行政が具体的な事業条件を固める前の段階で民間事業者と対話し、実現可能な事業スキームを探る手法である。広場・遊歩道・駐輪場・複合型交流施設などの整備・維持管理・運営を一括して民間に委ねるバンドリング手法と組み合わせることで、単体では採算化が難しい小規模施設群を、まとまった事業規模として民間活力に開放している。 (参考:新・公民連携最前線

インフラ整備に組み込まれた住民参加のデザイン要素

春日市の「みん壁プロジェクト」は、春日原駅改札内の壁面に、鉄道で使用されていた廃材(レール等)を活用しながら地元小学生の絵の一部をデザインとして取り入れた取り組みである。鉄道施設・高架橋周辺の整備の一部に住民、とりわけ子どもたちの創作物を反映させることで、完成後の施設への愛着形成を図っている。大規模な公共工事の完成イメージ策定過程に、こうした参加型のデザイン要素を組み込んでいる点は、他の連続立体交差事業と比較しても特徴的である。 (参考:春日市 事業について春日市 みん壁プロジェクト

新駅開業と沿線再開発を連動させた需要創出

本事業では、単に踏切を除却するだけでなく、新駅「桜並木駅」の設置、隣接する春日原駅の特急停車化、そして駅直結の商業施設「レイリア春日原」開発を時期的に連動させている。高架化という基盤整備を、鉄道利用者と沿線人口を増やす契機として積極的に活用しようとする姿勢が読み取れる。 (参考:マイナビニュース西日本鉄道 プレスリリース

調査時点の成果

踏切19箇所の解消

2022年8月28日の高架切替により、雑餉隈駅から下大利駅までの区間にあった踏切19箇所(福岡市区間7箇所、福岡県区間12箇所)がすべて除却された。福岡市区間では、それまで10年間で11件(うち死亡事故6件)発生していた踏切事故のリスク要因が構造的に取り除かれ、朝夕ピーク時に最大370メートルに達していた渋滞も解消された。 (参考:福岡市 事業の効果フクリパ

高架化から1か月時点の取材では、沿線住民から「すごい楽になりました」「ベビーカーで待たなくていい」といった声や、渋滞していた道路が「スムーズに流れています」との報告があった。駅周辺の賃貸物件への関心も高まり、不動産業者からは家賃相場の上昇や新築物件の増加を指摘する声も出ている。 (参考:RKB毎日放送

新駅開業と鉄道サービスの向上

2024年3月16日に開業した桜並木駅は、1日あたり約8,000人の乗降が見込まれている。同日のダイヤ改正で春日原駅が特急停車駅となり、平日昼間帯の特急運行も復活するなど、高架化後の鉄道サービス水準が向上した。 (参考:フクリパマイナビニュース

駅直結商業施設のグランドオープン

春日原駅直結の商業施設「レイリア春日原」は、2026年2月27日にスーパーマーケットなどが先行オープンし、同年6月11日にはスターバックスコーヒーや無印良品などを含む全10店舗体制でグランドオープンした。延床面積約6,824平方メートルの施設で、高架化による駅の東西連結と交通結節機能の強化を土台に、駅周辺の生活利便性向上につなげる開発として位置づけられている。 (参考:西日本鉄道 プレスリリース

関連工事の進捗

高架橋・駅舎に関する鉄道工事はおおむね完了しており、筑紫通りの立体交差道路化(2023年8月)、雑餉隈駅舎改修(2024年9月)なども完了済みである。一方で、両側に整備する側道の全線供用は福岡市区間で令和8年度中を目標としており、大野城市の高架下公共施設は2025年度から本格着工した段階にあるなど、高架化に付随する周辺整備は2026年8月時点でなお継続中である。 (参考:福岡市 現在の工事状況大野城市 西鉄天神大牟田線高架下に公共施設を整備します

他地域への示唆

広域インフラの整備主体と活用主体を分離する設計

複数の自治体にまたがる連続立体交差事業では、鉄道の高架化そのものは広域一体で進めつつ、完成後に生まれる高架下空間の活用は各自治体の裁量に委ねるという役割分担が可能である。本事例では、財政力や住民ニーズが異なる3市が、それぞれ駐輪場整備、地域協議会方式、サウンディング型市場調査という異なる手法を選び取っている。単一の事業スキームをすべての自治体に一律で適用するのではなく、広域事業と地域裁量を切り分ける設計は、他の広域インフラ整備事業でも参考になる考え方である。 (参考:福岡市 事業の効果春日市 高架下有効利用の検討大野城市 西鉄天神大牟田線高架下に公共施設を整備します

サウンディング型市場調査という再現可能な民間活力導入の手法

大野城市が実施したサウンディング型市場調査は、公募条件を固める前に民間事業者との対話を通じて実現可能性を検証する手法であり、特定の自治体の属人的な人脈やノウハウに依存せず、他の自治体でも制度として導入できる。高架下や跡地など、単体では採算化が難しい公共空間の活用を検討する自治体にとって、事業化の初期段階で参照できる手順である。 (参考:新・公民連携最前線

インフラ整備の完成イメージ策定に住民参加を組み込む

「みん壁プロジェクト」のように、土木構造物という無機質になりがちな公共インフラの一部に、住民、とりわけ子どもの創作物を取り入れる工夫は、完成後の施設への愛着や当事者意識を育む効果が期待できる。大規模な工事期間中は住民にとって不便や負担が生じやすいため、完成後の姿を住民自身が関与してつくる機会を設けることは、他の長期インフラ整備事業でも応用可能な考え方である。 (参考:春日市 みん壁プロジェクト

基盤整備の完成を沿線再開発のタイミングと合わせる

新駅設置、既存駅の特急停車化、駅直結商業施設の開発を時系列で連動させた本事例は、インフラ整備を「渋滞・分断の解消」という守りの効果にとどめず、鉄道利用者や居住人口の増加という攻めの効果に結びつけようとする姿勢を示している。高架化や道路整備など基盤整備を計画する自治体にとって、完成時期に合わせて沿線の土地利用転換や商業誘致をどう仕掛けるかは、事業効果を最大化するうえで検討に値する論点である。 (参考:マイナビニュース西日本鉄道 プレスリリース

参照元


2026年08月時点の調査内容に基づいて作成

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