
北区民まちづくり提案支援事業
この記事は、my grooveを運営する株式会社Groove DesignsがAIを活用し独自に調査・作成したものです。
京都市北区役所が2012年度から14年にわたり継続する区民提案型の活動支援制度。2026年度は他団体との新規連携を条件とする「つながり支援枠」を新設するなど、区の政策方針改定に合わせて補助カテゴリー構成を継続的に見直しながら運用している。
「北区民まちづくり提案支援事業」は、京都市北区役所が2012年度(平成24年度)から継続実施する区民提案型の活動支援制度である。北区内でまちづくり活動を行う団体・グループを公募し、審査会での選考を経て採択した事業に経費と広報の両面から支援を行う。2026年度(令和8年度)は21件の応募のうち19団体を、一般枠・子育て推進枠・つながり支援枠・まちづくりステップアップ部門の4つの枠で採択した。(参考:京都市北区役所:令和8年度北区民まちづくり提案支援事業の採択団体の決定について)
この制度の特徴は、単に毎年同じ枠組みで公募を繰り返すのではなく、区の上位方針の改定に合わせて補助カテゴリーの構成自体を継続的に見直してきた点にある。2026年度には、新たに策定された「北区まちづくり運営方針」の方向性を受けて、複数団体の連携・協働を条件とする「つながり支援枠」を新設した。14年間の運用の中で枠組みの名称や条件を段階的に組み替えてきた経緯を含めて、地域提案型の補助制度をどう長期的に運用し続けるかを考えるうえで参考になる事例である。(参考:京都市北区役所:令和8年度北区民まちづくり提案支援事業及び同事業審査会公募委員の募集)
北区は19の元学区からなり、大宮・柊野・上賀茂・元町などの一部地域で人口が増加する一方、中川・小野郷・雲ケ畑といった北部山間地域では人口減少率が10%を超えるなど、地域差の大きい構造を抱えている。高齢化の進行と年少人口の減少が同時に進む中、町内会をはじめとする地域団体では「加入者の減少、役員の高齢化」が指摘され、消防団や自主防災組織の担い手確保も課題となっていた。(参考:京都市北区役所:第1章-1 北区のまちの姿、京都市北区役所:第1章-2 まちづくりの方向性と課題)
こうした状況を踏まえ、北区役所は行政が直接サービスを提供するだけでなく、区民自身が地域課題の解決や魅力向上に取り組む活動を資金・広報の両面から後押しする仕組みとして、2012年度に本事業を創設した。対象となる事業は「北区内で実践するまちづくり活動」であって「高い公共性」を備えることが条件とされ、営利や政治、宗教活動を主目的とする事業、地域で慣例化している学区の祭事、申請日より前にすでに終わっている事業などは対象から除かれる。(参考:京都市北区役所:令和8年度北区民まちづくり提案支援事業の採択団体の決定について)
制度創設から14年が経過する中で課題も変化してきた。新型コロナウイルス感染症の影響で活動が停滞した既存採択団体への対応(2024年度の「Re:スタート部門」)、実績を積んだ団体がさらに活動を深化させる段階への支援(2025年度の「まちづくりステップアップ部門」)、そして単独団体の活動だけでは生まれにくい団体間の連携をどう促すか(2026年度の「つながり支援枠」)という具合に、区は毎年度の応募状況を踏まえて枠組みの見直しを重ねてきた。(参考:京都市北区役所:北区まちづくり運営方針)
4つの枠と補助条件
2026年度の制度は、対象団体の状態に応じて4つの枠・部門に分かれている。「一般枠」は初めて申請する団体が対象で、最長3年間の交付を受けられる。「子育て推進枠」は「子ども」または「子育てする人」に向けた活動が対象で、一般枠よりも手厚い補助条件が設定されている。新設の「つながり支援枠」は、これまでに採択された事業をさらに発展させたい団体を対象とし、企業・団体・大学など他団体と新たに連携・協働することを追加条件として、最長2年間の交付を受けられる。「まちづくりステップアップ部門」は、一つ前の年度に同部門の採択を受けた事業を、引き続き実施する場合に限って申請できる枠で、事業の参加人数や運営に関わる人を広げる工夫をした取組に対し、最長2年間の交付を受けられる。いずれの枠でも、学生が無償でボランティアとして活動に加わった場合は、その活動時間を金額換算して補助額に上乗せできる仕組みがある。枠ごとに異なる補助率・上限額が設定されている。(参考:京都市北区役所:令和8年度北区民まちづくり提案支援事業の採択団体の決定について)
公募から採択までのスケジュール
2026年度は4月8日から5月20日まで応募を受け付け、4月29日には大谷大学で説明会・交流会を開催した。6月28日に北区役所本庁舎で審査会を開き、7月頃に採択団体へ通知するというサイクルで運営されている。審査会は6名の委員によって構成され、理学療法士、社会起業家、市民公募委員、北区地域代表者会議会長、京都中小企業家同友会北支部の経営者、大学教授という異なる立場の6名が名を連ねる。このうち市民公募委員は、北区に住んでいるか区内へ通勤・通学する18歳以上を対象に毎年度公募される任期制の枠であり、任期は約1年10か月で、審査会終了後に報酬が支払われる。一般枠・子育て推進枠・つながり支援枠は、申請団体が審査会で行う発表の内容を踏まえて選考され、まちづくりステップアップ部門は書類審査で選考される。(参考:京都市北区役所:令和8年度北区民まちづくり提案支援事業及び同事業審査会公募委員の募集、京都市北区役所:令和8年度北区民まちづくり提案支援事業の採択団体の決定について)
採択後の実績報告と広報連携
採択団体は、経費配分などの軽微な変更を除き、事業内容の変更や中止の際に承認申請を行う必要がある。事業終了後は速やかに収支決算書、領収書等の経費証明、活動の実施状況を示す写真や成果物を提出し、報告会で成果を発表するとともに、広報活動への協力も求められる。関連書類は事業終了翌年度から5年間の保存が義務付けられており、虚偽申告や目的外使用が判明した場合は交付決定の取消しや返還命令の対象となる。単年度で経費を支給して終わりにするのではなく、成果の可視化と広報への協力をセットにした運用が続けられている。(参考:京都市北区役所:[つながる 北区 Next]北区民まちづくり提案支援事業補助金交付要綱)
枠組み名称の変遷
本事業は2023年度(令和5年度)時点で「[つながる 北区 Next]北区民まちづくり提案支援事業」という名称のもとに「Next部門」「Re:Next部門」という区分を持っていた。2024年度(令和6年度)にはこの2部門が「まちづくり応援部門」(一般枠・子育て推進枠)と「Re:スタート部門」(新型コロナウイルス感染症の影響で活動が停滞していた過去の採択事業を対象、最長2年)に改称された。2025年度(令和7年度)には「Re:スタート部門」がコロナ対応という限定的な性格を離れ、「まちづくりステップアップ部門」として、事業の参加人数や運営を担う人を広げる取組全般を継続的に受け付ける恒常的な枠に再編された。そして2026年度、新たに策定された北区まちづくり運営方針に基づき「つながり支援枠」が加わり、現在の4枠体制になっている。(参考:京都市北区役所:[つながる 北区 Next]北区民まちづくり提案支援事業補助金交付要綱、京都市北区役所:令和6年度北区民まちづくり提案支援事業の決定について)
補助制度を固定化させず、上位方針の改定に連動させて再設計する
多くの地域活動助成制度は一度設計した枠組みを数年単位で維持するが、本事業は2023年度以降だけでも「Next/Re:Next」→「まちづくり応援/Re:スタート」→「まちづくり応援/ステップアップ」→「一般・子育て推進・つながり支援・ステップアップ」と、ほぼ毎年のように枠組みの名称や条件を見直してきた。いずれの見直しも、コロナ禍による活動停滞への対応、実績団体の深化支援、団体間連携の促進という、その時々に区が捉えた課題に対応する形で行われており、補助金交付要綱という固定的な制度文書と、単年度ごとに更新される募集要項を使い分けることで、制度の骨格を保ちながら中身を機動的に調整する運用になっている。(参考:京都市北区役所:北区まちづくり運営方針)
団体の成長段階に応じた「卒業後の出口」を複線化
一般枠は最長3年で申請が打ち切られるが、その後の団体には「まちづくりステップアップ部門」(同じ活動の参加者・担い手を増やす)と「つながり支援枠」(他団体との新規連携によって活動を広げる)という異なる方向性の出口が用意されている。実際に、2024・2025年度に一般枠で採択されていた「御薗橋801商店街振興組合」と「むらさきスタイルプロジェクト推進協議会」の2団体は、2026年度に新設されたつながり支援枠の採択第1号となった。前者は音楽イベントを通じて舞鶴市の商店街との連携に発展させ、後者は空き家活用のワークショップを通じて、埋もれている地域資源の発掘と活用を進める事業に発展させている。一度きりの助成で終わらせず、団体の活動段階に応じて次の支援メニューへ橋渡しする設計になっている点が特徴で、こうした複線的な出口設計を持つ地域活動助成制度は多くない。(参考:京都市北区役所:令和8年度北区民まちづくり提案支援事業の採択団体の決定について、京都市北区役所:令和7年度北区民まちづくり提案支援事業の採択団体の決定について)
審査体制に市民公募委員を組み込む
審査会は医療従事者、社会起業家、地域代表者会議会長、経営者団体代表、大学教授という専門性の異なる委員で構成されるが、そこに1名だけ、北区に住んでいるか区内に通勤・通学している18歳以上なら誰でも応募できる「市民公募委員」の枠が設けられている。専門家中心の審査に区民自身の視点を制度として組み込んでいる点は、応募者側だけでなく審査する側にも区民参加の回路を用意している設計といえる。(参考:京都市北区役所:令和8年度北区民まちづくり提案支援事業及び同事業審査会公募委員の募集)
直近3年度の応募・採択の推移
過去3年度の実績を比較すると、2024年度(令和6年度)は19件の応募に対して17件が採択され、2025年度(令和7年度)は応募22件のうち20件を採択、2026年度(令和8年度)は応募21件のうち19件を採択している。つながり支援枠を新設した2026年度も、応募・採択件数は前年度からやや減少しており、新しい枠を追加したこと自体が直ちに応募数全体の増加につながったわけではない。(参考:京都市北区役所:令和6年度北区民まちづくり提案支援事業の決定について、京都市北区役所:令和7年度北区民まちづくり提案支援事業の採択団体の決定について、京都市北区役所:令和8年度北区民まちづくり提案支援事業の採択団体の決定について)
採択団体名の重複から見える「常連団体の循環」
3年度分の採択団体名を突き合わせると、「紫竹自治連合会」「紫竹まつり実行委員会」「ケセラセラサロン」「七鳳」「広がる地域の輪実行委員会」「御薗橋801商店街振興組合」「むらさきスタイルプロジェクト推進協議会」など、複数年度にわたって名前が挙がる団体が一定数存在する。これらの団体は一般枠での採択を重ねたのち、一部はつながり支援枠やまちづくりステップアップ部門に移行しており、新規団体の裾野拡大よりも、既存の活動的な団体群が枠を移動しながら制度を使い続けている構図がうかがえる。(参考:京都市北区役所:令和8年度北区民まちづくり提案支援事業の採択団体の決定について、京都市北区役所:令和7年度北区民まちづくり提案支援事業の採択団体の決定について)
多様な活動領域への広がり
2026年度の採択事業には、使われていない土地を循環型の都市菜園につくり変えて運営する「アーバンガーデンむらさきサイト」、認知症予防と居場所づくりを目的とする「ケセラセラサロン」、地域文化の継承を目指す紫竹自治連合会の取組、不登校児童向けの居場所を提供するChild Planetのフリースクールなど、都市農地活用・福祉的居場所づくり・伝統文化継承・教育支援と幅広い分野の活動が並ぶ。単一の政策分野に閉じない汎用的な公募制度として、多様な地域課題の受け皿になっていることが採択事業一覧から確認できる。(参考:京都市北区役所:令和8年度北区民まちづくり提案支援事業の採択団体の決定について)
なお、本事業が北区の町内会加入率や地域の担い手不足そのものをどの程度改善したかを定量的に検証した第三者評価は確認できなかった。ここで示せるのは応募・採択件数や採択団体の推移といった制度運用面の実績にとどまる。
区が独自に策定する上位方針(基本計画や運営方針)の改定サイクルに合わせて、補助制度の枠組みそのものを定期的に見直すという運用は、他の自治体にも応用しやすい考え方である。制度を一度作って固定するのではなく、「基本計画や運営方針を改定するたびに補助メニューも点検する」というルールをあらかじめ組み込んでおけば、社会状況の変化(本事業でいえばコロナ禍からの回復や団体間連携ニーズの高まり)に応じた見直しを、その都度の政治的判断に頼らず制度運用の一部として実施しやすくなる。
団体の活動段階に応じて出口を複線化する発想も、特定の地域資源に依存しない再現性の高い設計である。新規団体向けの入り口(一般枠)に加えて、実績を積んだ団体向けに「深化」と「連携」という異なる方向性の出口を用意することで、助成が終われば活動も終わるという単発型の補助から、団体のライフステージに応じて次の支援メニューへ橋渡しする仕組みへと発展させられる。ただし本事例が示すように、出口を増やすことは既存の活動団体が枠を移動する動きを生みやすい一方で、新規参入団体の増加には直結しない可能性がある。新規の裾野拡大も同時に狙うのであれば、出口の複線化とは別に、初めて応募する団体向けの周知や伴走支援を意識的に組み合わせる必要があるだろう。
審査会に専門家委員とは別枠で市民公募委員を1名加える設計も、大規模な参加型予算の仕組みを新設せずに、既存の審査プロセスへ区民の視点を低コストで組み込む方法として参考になる。さらに、京都市では北区に限らず各区がそれぞれ独自の名称・枠組みで同種の提案支援事業を運営しており(下京区の「SHIMOGYO+GOOD」など)、都市全体を一つの補助制度で覆うのではなく、区単位で地域特性に応じた制度を設計・改定していくという分権的な運用モデル自体も、複数の行政区や支所を抱える自治体にとって検討に値する発想である。(参考:京都市下京区役所:下京区まちづくりサポート事業「SHIMOGYO+GOOD」)
2026年08月時点の調査内容に基づいて作成
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