
ふくやまスマートシティモデル事業コンソーシアム
この記事は、my grooveを運営する株式会社Groove DesignsがAIを活用し独自に調査・作成したものです。
広島県福山市が2018年発足の官民協議会を母体に、国交省スマートシティモデル事業として推進する取り組み。オンデマンドモビリティ・自動運転・駅前再生の3本柱を一体運営し、備後圏域への展開も見据える。
広島県福山市は2018年5月、シャープ、ソフトバンクなど産官学7団体とともに「先端技術によるまちづくり官民協議会」を設立し、IoT・AIを活用したスマートシティの実現に向けた検討を始めた。(参考:日本経済新聞)
この協議会を母体に2019年、「ふくやまスマートシティモデル事業コンソーシアム」が結成され、国土交通省の「スマートシティモデル事業(重点事業化促進プロジェクト)」に採択された。コンソーシアムは、通院・買い物などの移動を支えるオンデマンド型の仕組みづくり、自動運転車両の実用化に向けた先行的な取り組み、そして人の流れやカメラ映像の分析を生かした駅前空間の見直しという3方向から、公共交通の維持確保と中心市街地の活性化という地域課題に取り組んでいる。将来的には備後圏域8市町(人口約86万人)への展開も視野に入れる。(参考:対象区域のビジョン|国土交通省)
2026年時点でこの取り組みは6年以上継続しており、郊外部の乗合タクシーは12地区へ拡大、自動運転バスは2026年9月から福山駅前と新拠点「まちテラス」を結ぶ定期運行を開始するなど、実証実験から日常利用のフェーズへと段階的に移行しつつある。
福山市は備後圏域(広島県東部・岡山県西部の8市町、人口約86万人)の連携中枢都市であり、市自体の人口は約45万人(2026年7月末時点で449,895人)である。(参考:福山市世帯数及び人口|福山市)
同市が抱えていた課題は主に3つに整理できる。第一に、郊外・中山間地域における公共交通の維持確保である。路線バスの利用者減少が進み、高齢者を中心に通院や買い物の移動手段が失われつつあった。第二に、中心市街地の活性化である。福山駅前は備後圏域の玄関口でありながら、2014年度時点の駅周辺歩行者数は平日869人・休日717人にとどまり、賑わいの創出が課題だった。第三に、観光客の周遊性である。鞆の浦など魅力的な観光資源を抱えながら、駅前や他の観光地との回遊性を欠き、観光消費額も伸び悩んでいた。(参考:ふくやまスマートシティモデル事業実行計画|国土交通省、令和2年度日本版MaaS推進・支援事業|国土交通省)
こうした背景のもと、市は2018年3月に「福山駅前再生ビジョン」を策定し、「働く・住む・にぎわいが一体となった福山駅前」の実現を掲げた。同年5月には産官学7団体による官民協議会を設立して先端技術の活用可能性を模索し、翌2019年にはこの協議会を母体としたコンソーシアムが国のスマートシティモデル事業に採択されたことで、個別に検討されていた交通・観光・都市再生の取り組みが一つの体制とKPI体系のもとに統合されることとなった。
1. 官民協議会からコンソーシアムへ(2018〜2019年)
2018年5月、福山市はシャープ・ソフトバンクなど産官学7団体と「先端技術によるまちづくり官民協議会」を設立した。ソフトバンクとは同時に地域活性化に関する包括連携協定を締結し、センサーによる見守りや画像データ解析など、先端技術をまちづくりへ応用する検討を始めた。(参考:日本経済新聞)
翌2019年、この協議会を母体に「ふくやまスマートシティモデル事業コンソーシアム」を結成。福山市、モネ・テクノロジーズ、シャープ、ソフトバンク、シギヤ精機製作所、メディアテック一心、福山大学、福山市立大学、復建調査設計、広島県タクシー協会東部支部が参画し、国土交通省のスマートシティモデル事業(重点事業化促進プロジェクト)に採択された。(参考:ふくやまスマートシティモデル事業実行計画|国土交通省)
2. 郊外部オンデマンドモビリティの導入と拡大
コンソーシアムはまず、市北部の中山間地域である服部学区で、AIオンデマンドシステムを活用した乗合タクシーの実証実験を2019年3月に開始し、同年10月に本格実装した。広島県タクシー協会東部支部加盟の6社が運行を担い、市内31カ所の乗降場所とJR駅家駅周辺の病院・スーパーを結んだ。(参考:MONET Technologies事例紹介)
その後、緑陽・芦田・大門・郷分・常金丸・引野・本郷・赤坂(長者ヶ原)・中条・竹尋の各地区へ順次拡大し、2026年4月には田島東部地区での運行開始を予定している。累計12地区への展開となる計算で、利用者はスマホアプリ「MONET MOVE」または電話で前日までに予約する仕組みである。(参考:ふくやま乗合タクシーについて|福山市)
3. 自動運転技術の段階的な実証実験
自動運転分野では2017年度から複数回の実証実験を重ねてきた。2024年度の実証実験では、11月26日の試乗会走行後に機器の異常を検知した。市中心部特有の交通量の多さから頻繁にブレーキを踏む必要があり、過大な電流が流れてモーター部品が破損したことが原因だった。このため11月27日から12月1日、さらに12月3日から6日の運行が中止となり、運行企業はブレーキを踏む時機や走行速度を調整したうえで2025年1月下旬に実証実験を再開した。(参考:自動運転ラボ)
2025年度は12月1〜2日の関係者試乗を経て、12月3日から2026年3月4日まで一般試乗会を実施。福山駅前とエフピコアリーナふくやまを結ぶ往復路線で、60日間に1,404人が試乗し、アンケートでは91%が「満足」、94%が「今後の自動運転サービスの利用を希望する」と回答した。(参考:2025年度自動運転実証実験について|福山市)
そして2026年9月6日、旧市体育館跡地に整備された市民活動拠点「まちテラス」の開業に合わせ、福山駅前とまちテラスを結ぶ片道約15分・停留所なしの直行区間で、レベル2の自動運転バスの定期運行を開始した。車両はティアフォー製の小型EVバス「Minibus2.0」(定員15〜16名、最高時速40km)で、日常の運行は中国バスが担う。市は2027年度のレベル4実用化を目指し、運行実績の積み上げを進めている。(参考:自動運転バスの実装に向けた取組について|福山市、Yahoo!ニュース(山陽新聞デジタル))
4. 駅前再生:人流解析とウォーカブル化の社会実験
駅前再生については、2020年に国土交通省の「ウォーカブルなまちづくり」推進モデル都市に選定され、駅前広場を「居心地がよく歩きたくなる空間」へ転換する取り組みを本格化させた。2023年3月には「福山駅前広場整備基本方針」を策定している。
2024年度には駅南口広場を舞台とした実証実験「ROSE HARBOR FUKUYAMA」を実施した。9月25日から10月25日までの期間中(一般公開は9月28日〜10月20日)、タクシー乗り場やバス停を一時的に移設したうえで、広場に芝生や植栽を配置し飲食・物販の出店を行うなど、ウォーターフロント風のくつろぎ空間へと転換する社会実験を行った。(参考:ふくやまつーしん)
5. 観光MaaSと圏域内の周遊性向上
備後圏域の観光資源をつなぐ取り組みとして、2020年10月から12月にかけて「しおまち(潮待ち)観光MaaS実証実験」を実施した。(株)日本旅行を幹事とする「ふくやま観光MaaS実行委員会」が、JR西日本の観光アプリ「setowa」を基盤に、福山駅と鞆の浦を結ぶ電動レンタサイクル+路線バスプラン、定額タクシープランなどを提供し、検索・予約・決済のワンストップ化を検証した。(参考:令和2年度日本版MaaS推進・支援事業|国土交通省)
坂道や狭路の多い鞆の浦では2018年度から「グリーンスローモビリティ」の実証調査も行われ、2019年4月に緑ナンバーを取得した営業運転へ移行し、以降継続して運行されている。(参考:新・公民連携最前線|日経BP)
モビリティ3層構造の一体運営
郊外(オンデマンド乗合タクシー)、中心市街地(自動運転・ウォーカブル化)、観光圏域(MaaS・グリーンスローモビリティ)という異なるスケールの移動課題を、単一のコンソーシアムのもとで並行して推進している点が特徴的である。個別最適ではなく、「福山駅前再生ビジョン」や「ふくやまICT戦略」といった上位計画に紐付けることで、単発の実証実験に終わらせない設計になっている。
小規模から始めて段階的に広げる展開手法
乗合タクシーは1地区(服部)から始めて12地区まで、自動運転はレベル2の限定区間からレベル4を見据えた実績づくりへと、いずれも「小さく始めて実績を積み上げながら広げる」段階的な拡張アプローチを取っている。
官民の役割分担の明確化
車両は市が取得し既存のバス事業者(中国バス)が運行する自動運転バス、タクシー協会加盟事業者が担う乗合タクシー、JR西日本のMaaSアプリ基盤を活用した観光MaaSなど、既存の交通事業者・インフラ事業者の運行ノウハウを生かしながら、市が新技術導入をリードする役割分担になっている。
圏域展開を見据えた設計
福山市単独の実証にとどめず、当初から備後圏域8市町(人口約86万人)への横展開を見据えたビジョンを掲げている点は、単一自治体での実証実験にとどまりがちなスマートシティ事業の中で特徴的である。ただし本調査の時点で、圏域単位での具体的な実施事例までは確認できておらず、今後の検証課題として残る。
郊外部オンデマンドモビリティ
服部地区での2019年10月の運行開始から、緑陽・芦田・大門・郷分・常金丸・引野・本郷・赤坂(長者ヶ原)・中条・竹尋の各地区へ拡大し、2026年4月には田島東部地区が加わり計12地区での運行となる予定である。6年余りにわたって運行が継続され、地区数を着実に積み増してきたこと自体が、サービスの持続可能性を示す実績といえる。(参考:ふくやま乗合タクシーについて|福山市)
自動運転バス
2025年度の一般試乗実証実験(2025年12月3日〜2026年3月4日、60日間)では1,404人が試乗し、アンケートでは91%が「満足」、94%が「今後の利用を希望する」と回答するなど、市民の社会受容性の高さが確認された。これを踏まえ、2026年9月6日から福山駅前〜まちテラス間でレベル2の自動運転バスの定期運行が始まり、実証実験の段階から日常利用のフェーズへ移行した点は明確な進捗である。一方、2024年度の実証ではブレーキ多用による機器故障で試乗会が一時中断する事態も発生しており、レベル4の完全自動運転の実用化は2027年度目標として道半ばの状況にある。(参考:2025年度自動運転実証実験について|福山市、自動運転ラボ)
駅前再生
2020年のウォーカブル推進都市モデル都市選定、2023年の福山駅前広場整備基本方針策定を経て、2024年度には「ROSE HARBOR FUKUYAMA」による駅前広場の大規模な活用実証を実施した。事業計画時にKPIとして設定されていた駅周辺歩行者数(目標:2021年度に平日950人・休日800人)や公共空間活用件数(目標:2023年度に累計5件)の達成状況を示す公開データは確認できなかったが、複数年にわたる実証実験の積み重ねにより、駅前空間の活用手法自体は着実に蓄積されている。(参考:ふくやまスマートシティモデル事業実行計画|国土交通省、ふくやまつーしん)
観光・周遊
しおまち観光MaaS実証実験(2020年10〜12月)により、鞆の浦と福山駅周辺・ばら公園を結ぶ複数の移動プランが具体化し、レンタサイクル・路線バス・定額タクシー・グリーンスローモビリティを組み合わせた周遊モデルが構築された。鞆の浦のグリーンスローモビリティは2019年4月の営業運転開始以降、継続して運行されている。(参考:令和2年度日本版MaaS推進・支援事業|国土交通省)
交通・観光・都市再生を「別々の担当課の別事業」として進めるのではなく、単一のコンソーシアムのもとで統合的に推進する体制は、縦割りになりがちなスマートシティ関連施策を整理するうえで参考になる。上位計画(駅前再生ビジョンなど)とスマートシティ事業を明示的に紐づけることで、実証実験が単発で終わらず持続的な取り組みへ接続されている点は、他地域でも応用しやすい設計思想である。
「1地区の実証から段階的な地区拡大へ」「レベル2の限定区間からレベル4を見据えた実績づくりへ」という積み上げ型の展開手法は、限られた予算・人員の中で新技術を導入する自治体にとって再現性の高いモデルといえる。いきなり全域・全機能を目指すのではなく、小さな成功を積み重ねてから拡大する設計は、他の中核市・地方都市でも取り入れやすい。
自動運転バスの運行トラブル(2024年度のブレーキ多用による部品破損)が公開情報として確認できる点は、実証実験には技術的な不確実性が伴うことを示している。他地域が同種の実証を検討する際は、市街地特有の走行環境(交通量、坂道、信号間隔など)を踏まえたリスク想定と、トラブル発生時に運行を再開するまでのプロセスをあらかじめ組み込んでおくことが有効だろう。
一方で、圏域(備後圏域8市町)への横展開は当初ビジョンに明記されているものの、調査時点で圏域単位の具体的な実施事例までは確認できなかった。単独自治体での実証を圏域全体の展開につなげるには、実証で得た知見や運営体制をどのように周辺自治体と共有・移管していくかという、実証後の制度設計が今後の課題になり得る。
2026年09月時点の調査内容に基づいて作成
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