
芦田川きれい☆きれいプロジェクト
この記事は、my grooveを運営する株式会社Groove DesignsがAIを活用し独自に調査・作成したものです。
広島県福山市を流れる芦田川は中国地方の一級河川で38年連続水質ワースト1だった。2004年設立の芦田川環境マネジメントセンターを核に、市民参加の水質モニタリングと家庭排水対策を20年以上継続する官民協働の河川再生の取り組み。
広島県福山市を中心に流れる一級河川・芦田川(全長約86km)は、かつて中国地方の一級河川13水系の中で、38年もの長きにわたり水質の順位が最下位という記録を更新し続けていた。(参考:芦田川の水質について~水質ワースト1の更新が解消されました!!~)
こうした状況を受け、2004年10月、国土交通省・福山市・市民団体等が参画する「芦田川下流水質浄化協議会」の枠組みの中で、民間主体の組織「芦田川環境マネジメントセンター(AEMC)」が設立された。AEMCは「芦田川きれい☆きれいプロジェクト」として、地域住民が参加して水質を測る「川の健康診断」(年2回)、子ども向け環境学習「水辺の学び舎」(年1回)、家庭排水対策の実践を呼びかける「河川浄化チャレンジ月間」(毎年11月)の3つを柱に活動し、2024年で発足20周年を迎えた。(参考:AEMCが活動開始から20年芦田川流域の水環境改善が目標これまでの活動を振り返る)
下水道整備や河川浄化施設の整備といった行政によるハード対策と並走する形で、AEMCは住民自身が水質を測り・学び・行動を変えるソフト面の仕組みを長期間継続してきた点に特徴があり、河川の水質改善に取り組む他地域にとっても、行政・住民・専門家が役割分担しながら継続する協働体制のモデルケースとなっている。
芦田川流域は瀬戸内式気候に属し、年間の降水量は1,100mm前後にとどまり、全国平均と比べて3〜4割ほど少ない地域である。にもかかわらず、中流部・府中地点における河川流量の約9割が上水道・工業用水・農業用水として取水されており、水利用率がきわめて高い。渇水期には河川流量そのものが乏しくなり、汚濁物質が希釈されにくい状況が生まれていた。(参考:芦田川の水質について~水質ワースト1の更新が解消されました!!~)
加えて、芦田川流域の人口密度は中国地方の一級河川流域の中で太田川に次いで高いにもかかわらず、下水道整備率は平成22年度末時点で40.8%と、広島県平均(68.9%)や全国平均(75.1%)を大きく下回っていた。人口・産業の集積に下水道整備が追いつかず、生活雑排水がそのまま河川に流入する構造的な課題を抱えており、水質汚濁の要因の7割は生活雑排水に由来するとされている。(参考:芦田川の水質について~水質ワースト1の更新が解消されました!!~、なぜ汚れるのか?|芦田川環境マネージメントセンター)
こうした背景から、芦田川は1996年(平成8年)に流域全体の水環境改善計画「清流ルネッサンス21」が策定されて以降、高屋川河川浄化施設(1997年導水開始・2001年稼働)や瀬戸川河川浄化施設(1996年運用開始)の整備、下水道整備、合併処理浄化槽の設置促進など、行政主導のハード対策が積み重ねられてきた。しかし施設整備や規制だけでは、流域住民一人ひとりの生活排水に起因する汚濁負荷を十分には減らせず、住民の意識と行動に働きかける仕組みが課題として残っていた。(参考:芦田川の水質について~水質ワースト1の更新が解消されました!!~)
この課題に対応するため、学識者・関係自治体(広島県・岡山県・福山市・府中市・井原市)・国土交通省中国地方整備局・市民団体等で構成する「芦田川下流水質浄化協議会」が組織され、その実行機能として2004年に住民・企業・研究者が主体となる「芦田川環境マネジメントセンター」が設立された。ハード整備を担う行政と、日常的な広報・啓発・住民参加の場づくりを担うAEMCとを役割分担させる体制が、この事例の出発点となっている。(参考:芦田川の水質について~水質ワースト1の更新が解消されました!!~)
川の健康診断(年2回・2004年10月開始)
AEMC設立と同時に始まった中核事業で、毎年6月頃と10月頃の年2回、芦田川本川と支川の計17地点で、一般公募の住民とスタッフが同日にパックテスト(簡易水質測定キット)による化学的な水質測定を行うとともに、ごみの量・水の濁り・におい・手ざわりといった感覚的な項目もあわせて採点する。各地点の結果は得点化・地図化して公表される。2023年度調査(6月7日実施)で通算37回目を数え、この回は住民の公募を見合わせ、運営スタッフだけで2組に分かれ17地点を担当するなど、運営体制を状況に応じて見直しながら継続している。(参考:2023年度 芦田川 川の健康診断 春季調査の調査結果、芦田川 川の健康診断 参加者募集記事)
水辺の学び舎(年1回・2005年度開始)
子どもを主な対象とした環境学習プログラムで、実際に川に入って生き物を採集・観察し、記録を「さかなマップ」としてまとめる体験型の内容となっている。2005年度から2024年度までに通算16回実施され、延べ参加者は1,282人にのぼる。継続的な調査の結果、府中大渡橋周辺では22種類の魚類・36種類の水生生物、出口川では23種類の魚類・49種類の水生生物が確認されており、環境学習の場であると同時に流域の生物相を記録するモニタリングの役割も果たしている。(参考:AEMCが活動開始から20年芦田川流域の水環境改善が目標これまでの活動を振り返る)
河川浄化チャレンジ月間(毎年11月・2007年度開始)
家庭でできる5つの水質浄化行動「クリーン5」(①排水口にネットを設置し、調理で出た生ごみや食べ残しを下水に流さないようにする、②油汚れのひどい鍋・食器は拭き取ってから洗う、③食用油は紙に染み込ませるなどして固形ごみとして処分する、④食器を洗う際の洗剤量を控えめにする、⑤洗濯用洗剤を適量使用する)の実践を、11月の1カ月間、家庭に呼びかける取り組み。参加希望世帯はアンケート形式で登録し、対象エリア(高屋川流域・瀬戸川流域など)で活動期間の前後の水質を比較測定して効果を確認する。参加世帯数は2007年度(H19)の170世帯から、2021年度は1,273世帯(瀬戸川流域207世帯、高屋川流域820世帯、芦田川本川流域等246世帯)が参加した。集計方法や母数の定義は年度によって異なるため単純比較はできないが、通算16回にわたり継続されている。(参考:芦田川きれい☆きれいプロジェクト『河川浄化チャレンジ月間』の結果報告、河川浄化チャレンジ月間|芦田川環境マネジメントセンター、AEMCが活動開始から20年芦田川流域の水環境改善が目標これまでの活動を振り返る)
関係機関それぞれの補完的な活動
福山市・府中市・国土交通省福山河川国道事務所も、AEMCの3本柱を核としつつ、それぞれの立場で関連イベントを展開している。福山河川国道事務所は川にすむ生き物の種類から水質を判定する「全国水生生物調査」を山手橋で実施(2023年度は「Ⅱ ややきれいな水」と判定)し、福山市は海洋プラスチックごみ対策を兼ねた「福山の『街』Clean up大作戦」(スポーツ感覚のごみ拾い「スポGOMI」形式)を、府中市は「水辺教室」や「水辺クリーンウォーキング」を実施している。加えて2023年度からは「#あしだがわフォトコンテスト」など、SNSを活用した通年型の広報企画も始まっている。(参考:芦田川Information Vol.4(福山市・府中市の取組紹介))
行政ではなく民間主体が運営を担う体制
AEMCは行政の一部局ではなく、市民・企業・学識者が主体となって組織された民間団体であり、国土交通省や福山市は資金・場所(芦田川見る視る館など)の提供や広報面で協力する立場に回っている。企画・運営の主導権が住民側にあることで、首長交代や部署異動といった行政側の人事サイクルに左右されにくい継続性を生んでいる点が、20年以上にわたり活動を続けられている一因と考えられる。(参考:【協働取組事例】芦田川きれい☆きれいプロジェクト)
専門的な水質データを住民の共通言語に変換する仕組み
「川の健康診断」では、専門知識がなくても扱えるパックテストによる化学的測定と、におい・濁り・ごみの量といった住民の感覚的評価を組み合わせ、それらを得点化・地図化して公表している。BOD値のような専門家でなければ解釈しづらい指標だけに頼らず、住民自身が「自分の目・鼻・手で確認した結果」として水質を捉えられる形に変換している点が、継続的な参加を支える工夫になっている。(参考:2023年度 芦田川 川の健康診断 春季調査の調査結果)
対象と目的を分けた3事業の機能分担
「川の健康診断」(住民全般によるモニタリングと関心の醸成)、「水辺の学び舎」(子ども向けの環境教育と生物相の記録)、「河川浄化チャレンジ月間」(家庭単位の行動変容と効果測定)という、対象者と狙いが異なる3つの事業を並走させている。単発のイベントや清掃活動にとどめず、認知・理解・行動というプロセスをそれぞれ異なる切り口の事業で継続的に回している構成は、他の環境系市民活動と比較しても役割分担が明確である。(参考:AEMCが活動開始から20年芦田川流域の水環境改善が目標これまでの活動を振り返る)
同一手法・同一地点による長期の定点観測
2004年の発足から一貫して同じ17地点・同じ手法(パックテスト+感覚評価)で定点観測を継続し、河川浄化チャレンジ月間でも毎年、実施前後の水質を同じ方法で比較測定している。感覚的な「良くなった」という評価にとどまらず、20年近い期間にわたって同一条件のデータを蓄積してきたことは、行政の広域統計とは別の粒度で流域の変化を追える市民科学(シチズンサイエンス)的な基盤になっている。(参考:2023年度 芦田川 川の健康診断 春季調査の調査結果、芦田川きれい☆きれいプロジェクト『河川浄化チャレンジ月間』の結果報告)
水質ワースト1からの脱却
2012年7月、国土交通省中国地方整備局は、芦田川が38年間更新し続けてきた中国地方一級河川の水質ワースト1記録が解消されたと発表した。その後、2015〜2018年度の調査では概ね環境基準を達成する年が続いたと報告されている。2022年度(令和4年)時点の水質データでは、中国地方の山陽側河川の中でBOD値が最も高いのは岡山県の吉井川(年平均7.5mg/L)となっており、芦田川はかつてのような「中国地方で最も汚い河川」ではなくなっている。(参考:芦田川の水質について~水質ワースト1の更新が解消されました!!~、AEMCが活動開始から20年芦田川流域の水環境改善が目標これまでの活動を振り返る、芦田川はすでに「中国地方で最も汚い河川」ではなくなった!)
主要地点でのBOD値の改善
過去10年間(平成25年度〜令和4年度)のBOD年平均値の改善幅を中国地方の調査地点間で比較すると、芦田川流域の3地点が上位10位以内に入っている。山手橋地点は2.4mg/Lから1.9mg/Lへ(改善幅0.5mg/Lで中国地方1位)、中津原地点は1.6mg/Lから1.2mg/Lへ、川北地点は2.7mg/Lから2.3mg/Lへとそれぞれ改善した。(参考:芦田川Information Vol.4(令和4年度の水質の状況について))
これらの改善は、下水道整備の進展(芦田川流域の下水道整備率は平成19年度の34.8%から平成23年度には42.0%へ上昇)や、高屋川河川浄化施設が整備効果により2021年3月末で運転を完全停止できる水準まで水質が改善したことなど、行政によるハード対策の効果と重なっている部分が大きく、AEMCの活動単体による効果として数値を切り分けることは、参照した資料の範囲では確認できない。一方で、河川浄化チャレンジ月間の実施前後比較では、2021年度調査でBOD・SSともに約32%の改善が確認されており、家庭単位の行動変容が対象エリアの水質に一定の影響を与えていることは、AEMC独自のデータとして示されている。(参考:芦田川の水質について~水質ワースト1の更新が解消されました!!~、芦田川はすでに「中国地方で最も汚い河川」ではなくなった!、芦田川きれい☆きれいプロジェクト『河川浄化チャレンジ月間』の結果報告)
継続の実績そのものが成果
「川の健康診断」は通算37回以上、「水辺の学び舎」は通算16回・延べ参加者1,282人、「河川浄化チャレンジ月間」は通算16回と、いずれも10年を大きく超えて継続されており、2024年10月にはAEMC発足20周年を迎えた。単年度のイベントで終わらず、同一の枠組みを20年以上にわたって維持してきたこと自体が、この事例の重要な到達点といえる。(参考:AEMCが活動開始から20年芦田川流域の水環境改善が目標これまでの活動を振り返る)
残る課題
一方で、下水道整備率は令和3年度時点でも56.1%と全国平均(75.1%)を下回っており、環境基準を超える調査地点も依然として存在する。20周年を振り返る報道では、今後の課題として「次世代への活動継承」と「流域全体への活動拡大」が挙げられている。(参考:第Ⅱ期芦田川水環境改善アクションプラン(令和4年3月)|芦田川下流水質浄化協議会・福山市、AEMCが活動開始から20年芦田川流域の水環境改善が目標これまでの活動を振り返る、芦田川はすでに「中国地方で最も汚い河川」ではなくなった!)
ハード対策とソフト対策を役割分担で両輪化する
芦田川の水質改善は、下水道整備や河川浄化施設整備といった行政のハード対策と、AEMCが担う住民参加型のモニタリング・啓発・行動変容というソフト対策が、別々の主体によって並走してきたことが特徴である。生活排水対策のように住民一人ひとりの行動が汚濁負荷の大部分を占める課題では、施設整備だけでも意識啓発だけでも不十分であり、両者を役割分担しながら継続する体制設計が、他の河川・水環境改善の取り組みにも応用可能な視点となる。
継続性を担保する「民間主体・行政協力」という組織形態
企画・運営の主導権を民間主体の組織に置き、複数の自治体・国の出先機関が協力者として関わる体制は、首長交代や担当者異動によって活動が途切れるリスクを下げる。特に芦田川のように複数の市(福山市・府中市・井原市)や県(広島県・岡山県)にまたがる流域では、単独の自治体組織では継続的な広域調整が難しく、独立した中間支援組織が調整役を担う構造は、流域単位の環境課題を抱える他地域にとって参考になる。
専門機材に頼らない再現性の高い測定手法
パックテストと感覚評価を組み合わせた「川の健康診断」の手法は、高価な分析機材や専門資格を必要とせず、一般住民でも実施・理解できる設計になっている。同一地点・同一手法での長期モニタリングを、住民参加のイベントとして継続できる形に落とし込んでいる点は、財政規模や専門人材が限られる地域でも再現しやすいアプローチである。
対象者ごとにプログラムを分けることの効果
「大人向けのモニタリング」「子ども向けの環境教育」「家庭向けの行動変容」というように、対象者と目的を明確に分けて複数の事業を設計している点は、単一の清掃イベントや啓発キャンペーンに終始しがちな環境系の市民活動にとって示唆的である。それぞれの事業が異なる層の住民を巻き込むことで、活動の担い手や参加者の裾野を広げる効果が期待できる。
長期継続する市民活動にも世代交代の壁がある
20年以上活動を継続してきたAEMCでも、次世代への活動継承が課題として挙げられている点は、他地域が同様の中間支援組織を立ち上げる際に留意すべき点である。立ち上げ当初の熱量だけに依存せず、運営体制やノウハウの引き継ぎをどう制度化するかは、長期継続を目指す市民活動全般に共通する課題といえる。(参考:AEMCが活動開始から20年芦田川流域の水環境改善が目標これまでの活動を振り返る)
2026年09月時点の調査内容に基づいて作成
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