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谷中地区まちづくり協議会による防災まちづくり
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谷中地区まちづくり協議会による防災まちづくり

谷中地区まちづくり協議会による防災まちづくり

この記事は、my grooveを運営する株式会社Groove DesignsがAIを活用し独自に調査・作成したものです。

東京都
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東京都台東区谷中地区で2000年に発足した住民組織「谷中地区まちづくり協議会」が、寺町の歴史的景観を保ちながら木造住宅密集地域の不燃化を進めてきた四半世紀にわたる防災まちづくり。規制緩和と景観保全の緊張関係も含めて検証する。

概要

谷中地区は、江戸期以来の道筋や町割、多くの寺社、明治・大正・昭和期の町屋が残る東京都心の下町であり、関東大震災や戦災による焼失をほとんど免れたことで、狭あいな路地と木造住宅が密集する市街地の姿を今日まで保ってきた。その歴史的な街並みは魅力である一方、なかでも谷中二・三・五丁目地区(約28.7ha)は老朽木造建築物が密集し、防災上の弱点を抱える「木造住宅密集地域」として台東区のまちづくり上の重点課題となってきた。 (参考:谷中地区まちづくり方針)

2000年度、地域の町会・商店会・寺院会・コミュニティ委員会などを母体として「谷中地区まちづくり協議会」が発足し、防災対策部会・交通部会・環境部会という部会制のもとで台東区・東京都と協働してきた。2014年4月の不燃化特区指定を軸に、老朽建築物の除却・建替え支援、狭あい道路の拡幅、防災広場や防災コミュニティセンターの整備などが積み重ねられ、2025年で発足から四半世紀を迎えている。同時に、防災性向上のための規制緩和が歴史的景観の保全と摩擦を生んだ2019〜2020年の地区計画をめぐる経緯は、「安全性」と「らしさ」の両立という、木密地域の防災まちづくりに共通する課題を浮き彫りにしている。 (参考:台東区 不燃化特区制度(谷中二・三・五丁目地区)、台東区 谷中地区地区計画)

背景・課題

谷中地区(谷中一〜七丁目、上野桜木一・二丁目、池之端三・四丁目、区域面積約100ha)は、寺社を含む教育文化施設や公園・墓地などが土地利用全体のおよそ43%を占め、住宅地と寺町・霊園が共存する特徴的な地区である。区域面積の約13%を道路が占めるにとどまり、地区内の建物総数約3,669棟のうち木造・防火造建築物が約66%、棟数ベースで見ると築30年超の建物が全体の約6割にのぼる(平成23年度調査)。 (参考:谷中地区まちづくり方針)

このうち谷中二・三・五丁目地区は、震災・戦災を免れたことで昔ながらの木造住宅密集市街地がそのまま残った一方、主要生活道路の整備が追いつかず、消防車両が到達しにくい区域(幅員6m以上の道路から140mを超えて離れた範囲)を抱えている。4m未満の狭い道が目立ち、交差点の隅切りも不十分なため、車の通行や避難の際に支障をきたす箇所が多い。100㎡に満たない小規模敷地が半数以上(56.8%)を占め、区域内には多くの寺院が土地を所有し、その借地の上に住宅・店舗が建つ例が多いため、借地関係が絡み合い、所有者・借地人の権利調整が難しい地域でもある。公園・広場も不足しており、区民1人当たりの公園面積は1.55㎡と、台東区平均の3.81㎡を大きく下回る(令和2年10月時点)。 (参考:谷中二・三・五丁目地区 不燃化推進特定整備地区整備プログラム)

こうした課題に住民自身が向き合う契機となったのが、1998年に持ち上がった三崎坂沿いの大規模マンション建設計画(高さ約27.8m、9階建て、49戸)である。「谷中が谷中でなくなってしまう」という危機感から町会や下谷仏教会などが建設反対の声を上げ、専門家グループが「計画中止ではなく見直しを」という立場で事業者との交渉を支援した結果、計画は見直しに至った。この経験を機に住民の結束が高まり、2000年度に町会・商店会・下谷仏教会・コミュニティ委員会などを母体とする「谷中地区まちづくり協議会」が結成された。 (参考:東京都台東区谷中・地区計画の経緯についてのまとめ、日本不動産研究所「寺町・谷中 都会の隠れ里、雑誌でまちづくり」)

取り組みのプロセス

1. 協議会の発足と部会制の導入(2000年度〜)

谷中地区まちづくり協議会は防災対策部会・交通部会・環境部会という部会制を採用し、テーマごとに住民が専門的に議論を重ねる体制を整えた。区は専門相談員を派遣し、活動団体への補助金交付を通じて協議会の取り組みを後押ししてきた。 (参考:UR都市機構 街みちネット「谷中地区における台東区の防災まちづくりについて」)

2. 密集住宅市街地整備促進事業の開始(2002年度〜)

台東区は平成14年度(2002年度)から谷中二・三・五丁目地区を対象に密集住宅市街地整備促進事業(密集事業)を導入し、主要生活道路・防災区画道路の拡幅整備、公園整備を進めた。平成17〜21年度にはまちづくり交付金事業(=都市再生整備計画を策定する制度)も導入され、地域住民と区との協働によるまちづくりの土台が整えられた。この過程で平成18年度には防災広場「初音の森」(6,850㎡)が整備され、令和4年度には「谷中ほたるさわポケットパーク」(216.07㎡)が整備された。 (参考:谷中地区まちづくり方針、谷中二・三・五丁目地区整備プログラム)

3. 不燃化特区指定と防災コミュニティセンターの整備(2014〜2015年)

2014年4月、谷中二・三・五丁目地区は東京都から不燃化特区の指定を受け、老朽建築物の除却・建替えへの助成、老朽木造住宅所有者への全戸訪問、建築士・弁護士・税理士等の専門家派遣、固定資産税・都市計画税の減免といった支援制度が整えられた。まちづくり協議会の防災対策部会が防災機能の充実を強く訴えた結果、2015年2月には備蓄倉庫や防災広場を備えた複合施設「谷中防災コミュニティセンター」が竣工し、同年4月に開館した。同センターは西部区民事務所谷中分室、区民館、児童館、図書館分室を併設し、平時は地域の賑わい拠点として、災害時には地域避難所として機能する。 (参考:台東区 不燃化特区制度(谷中二・三・五丁目地区)、谷中防災コミュニティセンター)

4. まちづくり方針の策定(2016〜2017年)

台東区は2016年7月から2017年3月にかけて、まちづくり協議会の防災対策部会・交通部会・環境部会それぞれと素案をもとにした意見交換を重ね、その結果を「まちづくり方針検討会」に持ち寄って議論するというサイクルを4回にわたり繰り返した。この積み上げ型のプロセスを経て、2017年3月に「谷中地区まちづくり方針」が策定・承認された。 (参考:谷中地区まちづくり方針)

5. 地区計画をめぐる規制緩和と景観保全の緊張(2019〜2020年)

まちづくり方針の実現手段として、台東区は2019年2月に「谷中地区地区計画」の原案を公表した。原案は防災性向上のための建替え促進策として、日暮里駅から千駄木駅方面へ延びる道路沿いなどで高さ制限の緩和(住宅地区12m、商業・住宅地区20mなど)を含んでおり、これまで3階建て程度までしか建てられなかった区域で中高層建築が可能になる内容であった。同年9月には地区計画の凍結を求めるオンライン署名活動が始まり、下谷仏教会など地元団体からも「寺町としての価値ある街並みを守れなくなる」との陳情が区に提出された。同年10月の説明会では告知や説明内容への批判が相次ぎ、区は同年12月に案を修正のうえ説明会を開き直した。学術研究によれば、この過程で制度の対象範囲を狭め、建物の形態に関する規制を厳格化する調整が加えられ、2020年10月27日に谷中地区地区計画として決定・告示された。 (参考:台東区 谷中地区地区計画、東京都台東区谷中・地区計画の経緯についてのまとめ、青木公隆・出口敦「谷中地域における街並み誘導型地区計画策定プロセスにみる『谷中らしさ』の継承の課題と対応」都市計画論文集57巻3号(J-STAGE)2022年)

6. 継続する取り組みと計画の見直し(2021年以降)

地区計画決定後も、老朽建築物の除却・建替え助成の拡充や士業派遣、狭あい道路の拡幅整備は継続事業として進められている。2022年3月には対象エリア91.1haを対象とした景観形成ガイドラインが策定され、防災性と景観の両立を図るルールが加わった。あわせて、寄贈を受けた「遺贈地」(431.07㎡)を防災広場として整備する取り組みも進んでおり、2025年度に文化財調査、2026年度に整備工事が予定されている。整備プログラムの数値目標も社会情勢に応じて見直され、当初は令和7年度末を期限としていた不燃領域率の目標達成年次は、令和12年度(2030年度)まで延長された。 (参考:谷中二・三・五丁目地区整備プログラム)

この事例の特徴

1. 「対立」から「協働」への転換を起点に持つ組織

谷中地区まちづくり協議会は、大規模マンション建設計画への反対運動という住民の危機感を出発点に結成された。行政が主導して設置した審議会型の協議会ではなく、住民自身が「谷中が谷中でなくなる」という当事者意識のもとで自発的に組織し、その後20年以上にわたって行政との協働のパートナーへと役割を転換させてきた点は、他の合意形成が先行する木密地域の協議会と異なる成り立ちである。 (参考:東京都台東区谷中・地区計画の経緯についてのまとめ)

2. 部会制によるテーマ別の専門的な住民参画

防災・交通・環境という異なる専門性を要するテーマごとに部会を常設し、それぞれが素案段階から継続的に区と意見交換を行う体制は、単一の協議会がすべての論点を総花的に扱うよりも、テーマに応じた専門的な議論と合意形成を可能にしている。まちづくり方針の策定過程では、部会での議論とまちづくり方針検討会での議論を往復させる反復的なプロセスがとられた。 (参考:谷中地区まちづくり方針)

3. 寺町特有の権利関係に向き合う個別支援

谷中地区は寺院が広く土地を所有し、その借地の上に住宅・店舗が建つ例が多いため、通常の木密地域以上に権利関係が複雑である。不燃化特区における全戸訪問や士業派遣は、こうした個別の事情を抱える所有者・借地人に対応するための仕組みとして機能しており、画一的な建替え促進策だけでは対応しきれない地域特性への配慮がうかがえる。 (参考:谷中二・三・五丁目地区整備プログラム)

4. 「防災性向上」と「歴史的景観保全」の両立をめぐる緊張関係

まちづくり方針は当初から「防災性の向上」と「特徴的な景観や地域資源の保全」という2つの目標の両立を掲げてきたが、実際の地区計画策定では、防災性向上のための建替え促進策(高さ制限や容積率の緩和)が、寺町の街並みを守りたい住民の意向と衝突する局面が生じた。この経緯は学術的にも分析の対象となっており、防災まちづくりが常に地域の合意のもとで一枚岩に進むわけではないことを示す事例として意味を持つ。 (参考:青木公隆・出口敦「谷中地域における街並み誘導型地区計画策定プロセスにみる『谷中らしさ』の継承の課題と対応」都市計画論文集57巻3号(J-STAGE)2022年)

調査時点の成果

1. 不燃領域率の段階的な改善

谷中二・三・五丁目地区の不燃領域率は、平成28年(2016年)の46.8%から令和3年(2021年)には49.8%、令和6年(2024年)参考値で51.2%へと段階的に上昇してきた。基礎的な安全性を確保する水準(70%)にはなお届いておらず、区は最終目標の達成年次を令和12年度(2030年度)まで延長した長期プログラムのもとで取り組みを続けている。 (参考:谷中二・三・五丁目地区整備プログラム)

2. 主要生活道路の拡幅進捗

災害時の消防活動困難区域を解消するための主要生活道路の拡幅整備は、幅員6mのA路線で進捗率約84%、幅員8mのG路線で約58%に達している(令和8年3月時点)。幅員4mの防災区画道路5路線についても整備が継続しており、特に交差点箇所は優先的に進められている。 (参考:谷中二・三・五丁目地区整備プログラム)

3. 防災空間・避難拠点の整備完了

防災広場「初音の森」(6,850㎡、平成18年度整備)、「谷中ほたるさわポケットパーク」(216.07㎡、令和4年度整備)に加え、避難所機能を備えた複合施設「谷中防災コミュニティセンター」が2015年2月に竣工し、同年4月の開館以来、平時の地域活動拠点と災害時の避難所という二つの機能を一体的に担っている。 (参考:谷中防災コミュニティセンター、谷中二・三・五丁目地区整備プログラム)

4. 3段階の計画文書と対外的な評価

協議会は「谷中地区まちづくり方針」(2017年3月)、「谷中地区地区計画」(2020年10月決定)、「景観形成ガイドライン」(2022年3月策定)という段階を踏んだ計画文書の策定に一貫して関与してきた。また、防災対策部会は東京都の「東京防災隣組」の第1回認定団体に選ばれるなど、下町のコミュニティを生かした防災活動が対外的にも評価されている。 (参考:谷中二・三・五丁目地区整備プログラム)

他地域への示唆

1. 危機感を起点とする住民組織を、恒常的な協働体制へ育てる

谷中地区まちづくり協議会は、開発計画への反対運動という一時的な危機感から出発しながら、部会の常設と区による相談員派遣・団体補助という継続的な支援の仕組みを組み合わせることで、20年以上にわたる恒常的な協働体制へと発展させた。反対運動由来の住民組織は往々にして一過性で終わりやすいが、テーマ別部会の制度化と行政の継続的な伴走支援は、当事者意識を長期的な参画へつなげるうえで参考になる。

2. 権利関係が複雑な歴史的市街地では、個別支援策が不可欠

寺社や借地が多い歴史的市街地では、画一的な建替え助成だけでは不燃化が進みにくい。全戸訪問による実態把握と、士業派遣による個別の権利調整支援を組み合わせる谷中の手法は、同様に所有・利用形態が複雑な旧市街地や商店街で不燃化・耐震化を進める際の実務的な参考になる。

3. 防災性向上と景観保全の両立は自動的には実現しない

「防災性向上」と「歴史的景観の保全」は、まちづくり方針の段階では両立可能な目標として語られやすいが、実際の規制内容(高さ制限や容積率の緩和幅)を具体化する段階になって初めて、両者のトレードオフが表面化することが谷中の経緯から見て取れる。学術研究も、地域らしさの要素を早い段階で関係者間が共有し、規制緩和の適用範囲を慎重に検証する必要性を指摘している。防災を名目とした規制緩和を検討する他地域においても、景観・歴史保全を重視する住民との合意形成を後回しにしないことが重要である。

4. 長期プログラムは固定的な目標年次にこだわらず、実績に応じて見直す

谷中の不燃化推進プログラムは、当初の目標年次(令和7年度末)に達しなかった際、目標を取り下げるのではなく、達成年次を令和12年度まで延長したうえで取り組みを継続する形で見直された。防災まちづくりは10年、20年単位の時間を要する取り組みであり、単年度の進捗にとらわれず、実績を踏まえて計画自体を柔軟に更新し続ける運用姿勢は、他地域の長期防災事業においても参考になる。

参照元

2026年9月時点の調査内容に基づいて作成

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