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江東区長期計画(後期)令和7〜11年度(10年計画の中間見直しで防災を重要課題に格上げした総合計画)
江東区長期計画(後期)令和7〜11年度(10年計画の中間見直しで防災を重要課題に格上げした総合計画)

江東区長期計画(後期)令和7〜11年度(10年計画の中間見直しで防災を重要課題に格上げした総合計画)

江東区長期計画(後期)令和7〜11年度(10年計画の中間見直しで防災を重要課題に格上げした総合計画)

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東京都江東区が10年間の第2期長期計画を5年で見直し、令和7〜11年度の後期計画を策定。前期は「地下鉄8号線延伸」のみだった重要課題に「災害に強いまちづくり」を加え、7つの重点プロジェクトと代表指標による進行管理、地方版総合戦略の内包までを一体で示した総合計画の事例を紹介する。

江東区長期計画(後期)令和7〜11年度(10年計画の中間見直しで防災を重要課題に格上げした総合計画)

概要

江東区長期計画(後期)は、東京都江東区が令和7年度(2025年度)から令和11年度(2029年度)までの5年間のまちづくりと区政運営の指針として策定した総合計画である。平成21年に定めた基本構想の将来像「みんなでつくる伝統、未来 水彩都市・江東」の実現を目指す「第2期長期計画(令和2〜11年度の10か年)」の後半部分にあたり、前半5年(前期・令和2〜6年度)の到達点と社会情勢の変化を踏まえて見直したものである。2025年4月に運用が始まった。 (参考:江東区長期計画(後期)(令和7年度〜令和11年度) - 江東区江東区長期計画(後期)概要版

後期計画の最大の特徴は、計画全体を方向づける「重要課題」を2つに整理した点にある。前期で唯一の重要課題だった「地下鉄8号線延伸を契機とした魅力あるまちづくり」に加え、後期では「区民が安全・安心に暮らせる災害に強いまちづくり」を新たな重要課題として位置づけた。その下に、環境・こども・地域コミュニティ・福祉(高齢者/障害者)・まちづくり・臨海部・魅力発信に対応する7つの「重点プロジェクト」を設定し、さらに「まち・ひと・しごと創生法」に基づく地方版総合戦略(デジタル田園都市国家構想の地方版戦略)を計画の中に内包している。 (参考:江東区長期計画(後期)第4章 重要課題・重点プロジェクト江東区長期計画(後期)(令和7年度〜令和11年度) - 江東区

背景・課題

江東区は、神社仏閣や下町の祭り、木材・工業の歴史を持つ地域でありながら、豊洲市場の移転や臨海部の開発、東京2020大会のレガシーなどを通じて急速に姿を変えてきた。基本構想を定めた平成21年から後期計画の策定までの約15年間で人口規模も拡大し、区の人口は令和6年(2024年)に約53.9万人に達した。後期計画では、令和11年(2029年)に概ね55.3万人まで増加すると推計しており、増え続ける人口と多様化する区民ニーズに行政サービスを追いつかせることが、計画策定の基本的な前提となっている。 (参考:江東区長期計画(後期)概要版

この5年間で、区を取り巻く前提条件は前期計画の策定時から大きく動いた。一つは交通インフラである。区の南北を結ぶ地下鉄8号線(有楽町線)の延伸(豊洲〜住吉間)は、東京メトロによる令和4年3月の鉄道事業許可、令和6年6月の都市計画決定、同年11月の工事着手と段階を踏み、2030年代半ばの開業に向けて具体的に動き出した。計画段階の「構想」だった延伸が、実際の事業として進み始めたことで、沿線各駅周辺のまちづくりを今から準備する必要が生じた。 (参考:江東区長期計画(後期)第4章 重要課題・重点プロジェクト

もう一つが、災害リスクの高まりである。近年は豪雨や台風による水害が大型化・多発化しており、首都直下地震も令和3年時点で今後30年以内に7割の確率で起きると見込まれるなど、巨大地震への懸念が強まっていた。江東区は海抜の低い土地(いわゆるゼロメートル地帯)を多く抱える臨海・低地のまちであり、水害・地震の双方に備える必要性が一段と切実になっていた。こうした環境変化を、5年に一度の見直しのタイミングで計画の優先順位にどう反映するかが、後期計画策定の論点だった。 (参考:江東区長期計画(後期)第2章 江東区を取り巻く状況江東区長期計画(後期)第4章 重要課題・重点プロジェクト

取り組みのプロセス

10年計画を「前期・後期」に分け、中間で見直す仕組み

江東区の長期計画は、基本構想(おおむね20年)を頂点に、その実現に向けた具体的な指針として置かれている。第2期長期計画は令和2〜11年度の10か年を計画期間としつつ、これを前期(令和2〜6年度)と後期(令和7〜11年度)の2つの5年間に分割している。前期の5年間で施策の進捗と社会状況を点検し、後期計画として組み替える——この「中間見直し」の構造が、長期の方向性を保ちながら短期の変化に対応する土台になっている。 (参考:江東区長期計画(後期)概要版江東区長期計画(令和2年度〜令和11年度) - 江東区

2つの「重要課題」の設定

後期計画は、区のまちづくりに特に大きな影響を及ぼす政策的課題を「重要課題」として2つ掲げた。一つは前期から引き継ぐ「地下鉄8号線延伸を契機とした魅力あるまちづくり」で、(仮称)枝川駅・(仮称)千石駅という2つの中間新駅により鉄道空白地帯を解消するとともに、開業を控え、沿線に暮らす住民や立地する企業と連携しながら、新駅を中心とした地域の整備を進め、区の南北の一体感とにぎわいを生み出すことを狙う。もう一つが新設された「区民が安全・安心に暮らせる災害に強いまちづくり」で、建築物の耐震化・不燃化、救護体制の確立といった総合的な対策に加え、区民一人ひとりが防災を自分自身の問題として受け止められるよう意識を高め、災害協力隊(自主防災組織)を後押しするなど、家庭や地域単位の備えを促すことを掲げる。 (参考:江東区長期計画(後期)第4章 重要課題・重点プロジェクト

7つの重点プロジェクト

重要課題に加え、分野ごとに重点的に取り組む課題や、単独の施策では解決できない横断的な課題に対応するため、7つの重点プロジェクトを設定した。(1) 水彩・環境都市づくり(「CITY IN THE GREEN」と「ゼロカーボンシティ江東区」の実現)、(2) こどもたちが希望を持てるまちづくり(待機児童ゼロの継続、インクルーシブ教育、こどもの居場所づくり)、(3) 地域の活力を生み出すまちづくり(地域産業、町会・自治会・NPOとの協働、ダイバーシティ)、(4) 誰もが安心して住み続けられる社会づくり(高齢者・障害者福祉、保健・医療)、(5) 持続的に発展するまちづくり(都市計画マスタープラン2022に基づくエリアマネジメント、マンション施策、地域公共交通計画の検討)、(6) 臨海部のまちづくり(東京ベイeSGや豊洲千客万来・東京国際クルーズターミナルとの連携、中央防波堤の活用)、(7) 区の魅力を発掘・発信し続けるまちづくり(シティプロモーション、江東区版ふるさと納税、ロケ誘致)の7つである。 (参考:江東区長期計画(後期)第4章 重要課題・重点プロジェクト江東区長期計画(後期)概要版

計画推進の視点と進行管理

計画の推進にあたっては、「協働の視点に立った課題解決」「SDGsを踏まえた取り組み」「DXの推進(Smart KOTOの実現)」の3つの視点を共通の軸に据えた。協働については、区民・市民団体(町会・自治会、ボランティア、NPO等)・大学・事業者と区が、対等性・相互理解・評価という基本姿勢のもとで地域課題に取り組むことを明記している。進行管理は、施策ごとに「目指す姿」と成果を測る代表指標(モノサシ)を設定し、行政評価システムを用いて各年度の評価・予算反映を行う。さらに、区民・外部有識者等との対話による外部評価を実施し、その結果をできる限り翌年度の予算編成に活かすことで、計画と予算を連動させたPDCAサイクルを回す設計とした。計画は財政計画(後期5か年の一般会計の歳入歳出見込みは総額約1兆3,852億円)に裏づけられ、施設整備・改修計画や新庁舎建設の検討もあわせて位置づけられている。 (参考:江東区長期計画(後期)概要版

区民意見の反映

策定にあたっては、重要課題・重点プロジェクトの案について、令和6年6月21日から7月11日にかけてパブリックコメント(区民意見募集)を実施した。郵送・Faxに加えオンラインフォームでも意見を受け付け、寄せられた意見と区の考え方を区報・ホームページで公開する方針を示している。完成した計画は本編(A4・約260ページ)と概要版・リーフレットに整理され、区役所窓口や区立図書館で閲覧・配布されている。 (参考:江東区長期計画(後期)重要課題・重点プロジェクト(案)に関する意見募集(パブリックコメント) - 江東区江東区長期計画(後期)(令和7年度〜令和11年度) - 江東区

この事例の特徴

「点(沿線)」と「面(区全域)」という性格の異なる2つの重要課題

後期計画の2つの重要課題は、課題の性格が対照的である。地下鉄8号線延伸は、新駅という特定の「点」を起点に沿線へ波及させていく機会駆動型のまちづくりであるのに対し、災害に強いまちづくりは、区全域を対象にした「面」のリスク対応である。一方は開発の好機をどう生かすか、もう一方は避けられないリスクにどう備えるか、という異なる時間軸・動機の課題を、同じ「重要課題」の階層に並べて束ねた点が、この計画の骨格を分かりやすくしている。 (参考:江東区長期計画(後期)第4章 重要課題・重点プロジェクト

中間見直しで「優先順位そのもの」を組み替えた

5年ごとの計画更新は、数値目標の手直しや事業の入れ替えにとどまることが多い。これに対し江東区は、後期計画で防災を分野別の一施策から計画全体の「重要課題」へと格上げし、計画のトップ階層の構成を変えた。首都直下地震の発生確率や豪雨災害の頻発という外部環境の変化を、計画体系の優先順位そのものに反映させた点は、長期計画を「固定した約束」ではなく「更新される羅針盤」として運用していることを示している。 (参考:江東区長期計画(後期)第4章 重要課題・重点プロジェクト江東区長期計画(後期)概要版

総合計画に地方版総合戦略を内包する

後期計画は、自治体の総合計画でありながら、「まち・ひと・しごと創生法」に基づく地方版総合戦略(デジタル田園都市国家構想の地方版戦略)を内包している。総合計画と地方創生戦略を別々の文書として並走させるのではなく、一つの計画に統合することで、計画の数を増やさずに国の制度的枠組みと区の施策を接続している。 (参考:江東区長期計画(後期)(令和7年度〜令和11年度) - 江東区

区民意識を「代表指標」に据えた進行管理

各施策の代表指標の多くが、区民への意識調査に基づく割合で設定されている。たとえば「災害に強いまちづくりが進んでいると思う区民の割合」や「この1年間に地域活動に参加した区民の割合」など、行政側の整備量ではなく区民の実感や行動を成果の物差しに据えている。これにより、施策が「どれだけ実施されたか」だけでなく「区民にどう受け止められたか」を継続的に確認できる仕組みになっている。 (参考:江東区長期計画(後期)概要版

調査時点の成果

本事例は、令和7〜11年度を期間とする計画であり、調査時点(2026年6月)はその実行初期にあたる。したがって、施策の最終的な成果(令和11年度の到達)はまだ確認できず、現時点で確認できるのは、策定によって定まった計画の枠組みと、出発点として公表された指標である。

計画体系の面では、前期で1つだった重要課題を2つに整理し、防災を重要課題へ格上げしたうえで、7つの重点プロジェクト、5つの大綱の下に27の施策(および「計画の実現に向けて」の3施策)を配置する構造が確定した。各施策には現状値と令和11年度の目標値がセットで示されており、出発点の区民意識が率直に公表されている点が注目される。たとえば「災害に強いまちづくりが進んでいると思う区民の割合」は31.1%(令和6年度)から40%(令和11年度)へ、「災害時に必要な備えができている区民の割合」は40.6%から75%へ、「この1年間に地域活動に参加した区民の割合」は15.8%から50%へ、「障害者が社会参加しやすいまちだと思う区民の割合」は22.5%から35%へと、現状の低さを隠さずに高い目標を掲げている。環境分野では区内のCO2排出量を3,360千t-CO2(平成25年度)から1,680千t-CO2(令和12年度)へと半減させる目標を置く。 (参考:江東区長期計画(後期)概要版

策定プロセスの面では、案の段階でパブリックコメントを実施し、完成版を本編・概要版・リーフレットとして区民に公開するところまでが完了している。一方で、計画の効果——すなわち各代表指標が目標に向かって動いたかどうかは、今後の行政評価・外部評価を通じて検証される段階にある。 (参考:江東区長期計画(後期)(令和7年度〜令和11年度) - 江東区江東区長期計画(後期)重要課題・重点プロジェクト(案)に関する意見募集(パブリックコメント) - 江東区

他地域への示唆

長期計画を「前期・後期」に分割し、中間で重要課題を組み替える設計

10年の計画を5年ずつの前期・後期に分け、中間でトップ階層の優先順位まで見直す江東区の構造は、他自治体でも応用しやすい。長期の方向性(基本構想・将来像)は維持したまま、災害リスクやインフラ事業の進捗といった環境変化を計画の優先順位に反映できるため、「長期計画が現実から乖離して形骸化する」という総合計画にありがちな弱点を補える。特定の人材や政治状況に依存しない、制度的な計画運用手法であり、再現性が高い。

性格の異なる課題を同じ階層に並べて束ねる

機会駆動型(沿線まちづくり)とリスク対応型(防災)という、動機も時間軸も異なる課題を、あえて同じ「重要課題」として並置した構成は、計画の優先順位を住民にも職員にも伝わりやすくする工夫として参考になる。重点プロジェクトを分野別に細かく並べる前に、「区として今、特に何に集中するのか」を少数(この事例では2つ)に絞って示すことで、総花的になりがちな総合計画にメリハリを与えている。

計画文書を統合し、本数を増やさない

総合計画に地方版総合戦略を内包させる手法は、計画の乱立と所管の縦割りに悩む自治体にとって示唆的である。国の制度(地方創生・デジタル田園都市国家構想)が求める戦略を、既存の総合計画の中に位置づけ直すことで、別文書を新設せずに制度要件を満たし、施策の重複や整合性チェックの負担を減らせる。

成果指標を「行政の整備量」から「住民の実感・行動」へ

代表指標の多くを区民意識調査に基づく割合で設定し、現状値の低さを率直に公表したうえで目標を掲げる姿勢は、進行管理の透明性を高める。一方で、区民意識は施策以外の要因(報道や社会全体の雰囲気)にも左右されやすく、指標の達成・未達がそのまま施策の良否を意味するとは限らない点には留意が必要である。意識指標を採る場合は、行政側のアウトプット指標と組み合わせ、外部評価で多面的に解釈する仕組み(江東区の場合は区民・有識者との対話による外部評価)をあわせて設計することが、指標の独り歩きを防ぐ鍵になる。

参照元


2026年6月時点の調査内容に基づいて作成

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