
浅草地区における持続可能な観光地づくり(観光庁パイロット事業・EDO IT!)
この記事は、my grooveを運営する株式会社Groove DesignsがAIを活用し独自に調査・作成したものです。
観光庁のパイロット事業として台東区が浅草地区で実施した「EDO IT!」プロジェクト。住民・事業者との協議とごみ組成調査に基づき、マナー啓発やゲーム型清掃イベント、行列緩和の社会実験を展開し、令和7年度は上野地域へも拡大した。
台東区は2024年12月、浅草地区を対象に観光庁「オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業」のパイロット地域として、都内で唯一の指定を受け、「EDO IT!」をスローガンとする取り組みを開始した。 (参考:台東区ホームページ、観光庁 持続可能な観光推進モデル事業 事例資料)
事業は、地元の町会・商店会・観光連盟・PTAなどで構成する「浅草地区持続可能な観光地づくり協議会」での協議と住民・事業者アンケートを出発点とし、ごみのポイ捨て対策、トイレ・喫煙所の周知、観光マナー啓発、店頭行列の緩和という4つの課題領域に対して、ごみ組成調査、巡回啓発、ゲーム型ごみ拾いイベント「清走中」、デジタル便利マップの配布、番号案内による行列緩和の社会実験などを2024年12月から2025年3月にかけて実施した。 (参考:台東区 文化・観光特別委員会資料)
令和6年度の取り組みで得られたデータや課題は翌年度に引き継がれ、令和7年度(2025年度)には対象エリアが浅草に加えて上野地域にも拡大されている。 (参考:台東区ホームページ(令和7年度))
台東区における外国人観光客数は、2022年の約47万人から2023年には約442万人へと急増し、地域住民の生活実感としてもオーバーツーリズムに近い状況が指摘されるようになっていた。区の観光課長も「最近はオーバーツーリズムに近い状況になってきている」との認識を示している。 (参考:東京新聞デジタル)
浅草は浅草寺・仲見世商店街を中心とした狭いエリアに住宅地と観光地の生活圏が重複しており、ごみのポイ捨てやたばこの吸い殻の散乱、行列による歩行空間の圧迫といった問題が、観光客のみならず住民や事業者の生活の質にも直接影響する構造的な課題となっていた。 (参考:観光庁 持続可能な観光推進モデル事業 事例資料)
区は2024年4月、協議会構成団体を通じて住民・事業者61名にアンケートを実施した。住民側では「ゴミのポイ捨てが増えた」(81.0%)、「観光客向けの店が増え、昔ながらの店が減った」(77.6%)、「日常生活で使用する街路が混雑している」(72.9%)が上位を占め、事業者側では「ゴミ箱を設置していない店や、客にゴミの捨て方を案内していないテイクアウト店がある」(86.3%)、「観光客が利用できるトイレが少ない」(82.0%)、「公衆喫煙所の周知を強化してほしい」(81.0%)が上位となった。この結果は、漠然とした「マナーの悪化」ではなく、ごみ・トイレ・喫煙所・行列という具体的な論点に対策を絞り込む根拠として用いられた。 (参考:台東区 文化・観光特別委員会資料)
1. 協議会の設置とアンケートによる課題の精査
台東区は2024年、雷門地区町会連合会・浅草商店連合会・浅草観光連盟・浅草小学校PTAを構成団体とする「浅草地区持続可能な観光地づくり協議会」を準備会を含め4回開催した。行政が一方的に対策を決めるのではなく、住民・事業者アンケートの結果を協議の場に持ち込み、課題の優先順位を関係者間で共有したうえで、その年度に実施する取組内容を取りまとめる進め方が取られた。 (参考:台東区 文化・観光特別委員会資料)
2. ごみ組成調査による実態の可視化
対策の前提として、2024年10月から2025年2月にかけて、浅草地区内約24kmの道路を対象にごみの目視調査(11月1日・5日)と組成調査(11月30日)を実施した。調査は15地点で行われ、駐車場周辺(149個)やコンビニエンスストア前(101個)でポイ捨てが多いこと、駐車場ではたばこ、コンビニ前ではプラスチック製容器、道路脇では食品の包装紙が目立つことなど、場所ごとに異なるポイ捨て行動の傾向が明らかになった。 (参考:観光庁 持続可能な観光推進モデル事業 事例資料)
3. マナー啓発活動(巡回・リーフレット・ごみ袋配布)
2024年12月1日から、持ち帰り用ごみ袋と日本語・英語・中国語(繁体字・簡体字)・韓国語の5言語に対応したマナー啓発リーフレットを、観光案内所や観光バス降車場、宿泊施設で配布した。あわせて、啓発スタッフは江戸をテーマにしたコスチュームを着用し、移動式ごみ箱を持参して浅草地区内を1日2回(昼・夕方)巡回する体制を取り、2025年1月下旬までに計124回を数えた。コスチュームは観光客や子どもとの記念撮影のきっかけにもなり、単なる注意喚起にとどまらないコミュニケーションの機会として設計されている。 (参考:台東区ホームページ、観光庁 持続可能な観光推進モデル事業 事例資料)
4. ゲーム型ごみ拾いイベント「清走中」の開催
株式会社リクルートと株式会社Gabの企画・運営により、浅草寺・仲見世商店街周辺を舞台に、拾ったごみの種類や量、スマートフォンで配信されるミッションの達成度をポイント化して競うゴミ拾いイベント「清走中」を開催した。2024年12月14日には18歳未満の子どもと保護者を対象としたVol.1(定員100名)、2025年1月18日には18歳以上を対象としたVol.2(定員100名)をそれぞれ抽選制・無料で実施した。 (参考:株式会社Gab PR TIMES)
5. 受入環境の整備(デジタルマップ・手ぶら観光)
トイレ・公衆喫煙所・給水所の位置を一元化したデジタル便利マップを作成し、二次元コードで案内するスタンドを地区内の店舗等に配布した。あわせて、スーツケースなどの手荷物預かりや配送サービスを手がける民間事業者と連携し、宿泊施設・商業施設への手ぶら観光の普及を図った。 (参考:観光庁 持続可能な観光推進モデル事業 事例資料)
6. 店頭行列緩和の社会実験
近隣店舗への迷惑や歩行の妨げとなっていた人気店舗の行列を対象に、来店客がスマートフォンで順番を確認できる番号案内システムを2024年12月から2025年3月にかけて5店舗程度で試験導入した。区は実験で得た知見を地域の飲食店にフィードバックし、他店舗への展開を検討する考えを示している。 (参考:台東区 文化・観光特別委員会資料、日本経済新聞)
1. 課題の「見える化」を対策の起点にした点
多くの観光マナー啓発施策が啓発活動の実施を先行させるのに対し、本事例では住民・事業者アンケートとごみの目視・組成調査という2種類の実態調査を先行させ、どこで・何が・どのような理由で発生しているかを定量的に把握してから対策を設計した。特にごみ組成調査は排出場所や関連事業者を特定することで、「ポイ捨て対策」を漠然とした啓発ではなく、コンビニ事業者との連携や駐車場管理者への働きかけといった具体的な打ち手に接続する設計になっている。 (参考:観光庁 持続可能な観光推進モデル事業 事例資料)
2. 内製にこだわらず、既存の民間サービスを活用した点
ごみ拾いイベントは区独自の企画ではなく、株式会社Gabが提供するゲーム型清掃イベント「清走中」という既存の民間サービスを活用して実施された。同サービスは浅草での開催後、2025年10月には上野地域でも展開されており、自治体が一からイベントを企画・運営するのではなく、実績のある外部サービスを組み込むことで、短期間かつ複数エリアへの展開を可能にしている。 (参考:株式会社Gab「清走中 上野編」)
3. 単年度で完結させず、翌年度の対象拡大につなげた点
令和6年度の事業は「浅草地区をモデルケースとして対策を検討・実施し、その成果等を踏まえ他地区への展開を図る」という位置づけで設計されており、実際に令和7年度には対象エリアを上野地域まで広げている。単発の実証実験で終わらせず、得られた知見と協議会という合意形成の枠組みを翌年度以降に引き継ぐ前提で事業が組み立てられている点は、国のモデル事業として都内で唯一採択されたことの狙いとも整合している。 (参考:台東区ホームページ(令和7年度))
1. ごみ拾いイベント「清走中」の参加者評価
Vol.1・Vol.2合わせて162名が参加し、イベント後のアンケートでは約9割が「満足」と回答、8割以上が「環境への関心が高まった」と回答した。再参加意向もほぼ100%が「また参加したい」と答えており、イベントを通じて回収されたごみの総量はペットボトル247本、ビン・カン349本、たばこ4.8kg、その他30.28kgに上った。イベント参加者へのアンケートでは、参加前は環境への関心の低さ(4割)や配慮行動の少なさ(9割)が目立っていたが、単発イベントであっても意識面での変化を一定程度生み出せたことがうかがえる。 (参考:観光庁 持続可能な観光推進モデル事業 事例資料)
2. 巡回啓発活動による回収実績
2024年12月から2025年1月下旬までの巡回啓発活動は計124回実施され、期間中にたばこ19,123本、紙製品9,443枚、缶3,926本、ペットボトル2,743本、びん106本を回収した。1日平均ではたばこ308本、紙製品152枚、缶63本、ペットボトル44本、びん1.7本という規模であり、啓発と並行してごみそのものを日常的に取り除く効果も生じていた。 (参考:観光庁 持続可能な観光推進モデル事業 事例資料)
3. ごみ組成調査による課題の可視化
15調査地点のうち、駐車場周辺で149個、コンビニエンスストア前で101個のポイ捨てごみが確認され、他の地点(40〜75個程度)と比べて突出して多いことが判明した。区はこの結果をもとに、コンビニ事業者との連携や駐車場管理者への啓発ポスター掲示・清掃頻度の見直しなど、事業者を巻き込んだ次の対策の検討に着手している。一方で、令和6年度の振り返りでは「民間事業者等にどのようにアプローチし、どのような方法でポイ捨て対策に協力いただくか」が令和7年度以降の課題として明記されており、調査による可視化と実際の事業者連携との間には距離が残っている。 (参考:観光庁 持続可能な観光推進モデル事業 事例資料)
4. 店頭行列緩和実験と事業の継続
店頭行列の番号案内システムについては、日本経済新聞が「来店スマホで順番待ち」として報じているものの、公表されている資料の範囲では対象店舗数や利用実績など実験結果の詳細な数値は明らかになっていない。一方で、令和7年度には事業自体が浅草地区に加えて上野地域にも拡大されており、少なくとも令和6年度の取り組み全体が翌年度の予算・体制確保につながる評価を得たことがうかがえる。 (参考:日本経済新聞、台東区ホームページ(令和7年度))
1. 啓発より先に「実態調査」を置く順序の再現性
住民・事業者アンケートとごみの目視・組成調査を対策決定の前段階に置き、感覚的な「マナーが悪い」という課題認識を、場所・時間帯・品目ごとの定量データに変換してから対策を設計するという進め方は、観光地固有の事情に依存せず、他の観光地でも再現可能な手法である。特にごみ組成調査で排出場所や関連事業者まで特定するアプローチは、啓発活動だけでは届きにくい発生源対策へとつなげる設計として参考になる。
2. 住民・事業者・行政の三者協議会という合意形成の枠組み
町会連合会・商店会・観光連盟・PTAという、属性の異なる地域団体を構成員とする協議会を設け、行政が一方的に施策を提示するのではなくアンケート結果を材料に対策の優先順位を共有した進め方は、特定のキーパーソンの存在に依存せず、他の観光地でも制度として持ち込みやすい枠組みといえる。
3. 外部の民間サービスを組み込むことによる展開の速さ
ごみ拾いイベントを内製せず、実績のある民間のゲーム型清掃サービスを活用したことで、浅草での実施から1年足らずで上野地域への展開が実現している。自治体単独でゼロから企画・運営体制を構築するのではなく、既存の民間サービスを組み合わせる発想は、限られた体制で複数エリアに施策を広げたい他自治体にとっても参考になる。
4. 事業者を巻き込む段階の難しさという共通課題
一方で、ごみ組成調査によって駐車場やコンビニエンスストアなど具体的な発生源が可視化された後も、それらの民間事業者をどう対策に巻き込むかは令和6年度時点で「今後の課題」として残されている。データによる可視化と、利害関係者を実際に動かす合意形成は別の難易度を持つ課題であり、同様の取り組みを検討する他地域にとっても、可視化の先にある事業者連携の設計をあわせて考える必要があることを示す事例といえる。 (参考:観光庁 持続可能な観光推進モデル事業 事例資料)
2026年9月時点の調査内容に基づいて作成
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