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せたがやグリーンインフラガイドラインの策定とグリーンインフラ大賞・国土交通大臣賞受賞
せたがやグリーンインフラガイドラインの策定とグリーンインフラ大賞・国土交通大臣賞受賞

せたがやグリーンインフラガイドラインの策定とグリーンインフラ大賞・国土交通大臣賞受賞

せたがやグリーンインフラガイドラインの策定とグリーンインフラ大賞・国土交通大臣賞受賞

東京都
世田谷区
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世田谷区が2024年3月に策定したグリーンインフラガイドラインと、区の外郭団体・世田谷トラストまちづくりがNPOと共同で進める雨庭の普及・実証。後者は雨水浸透の「見える化」が評価され、2024年12月に第5回グリーンインフラ大賞・国土交通大臣賞を受賞した。

せたがやグリーンインフラガイドラインの策定とグリーンインフラ大賞・国土交通大臣賞受賞

概要

世田谷区は、雨水を「はやく流す」従来の対策に加えて、緑や土壌が本来もつ機能を使って雨を「ためて・しみこませる」グリーンインフラを、制度と実践の両面から進めている。制度面では、2024年3月に『せたがやグリーンインフラガイドライン』(本編・実践編・資料編の3部構成)を策定した。区の土地の約7割が民有地であり、都市型水害の軽減には区民・事業者一人ひとりの実践が欠かせないという認識から、雨庭や浸透ます、雨水タンクなどを自宅や敷地で実践するための手引きとして整理されている。 (参考:世田谷区のグリーンインフラ - 世田谷区せたがやグリーンインフラガイドライン 本編 - 世田谷区

実践面では、区の外郭団体である一般財団法人世田谷トラストまちづくりが、特定非営利活動法人雨水まちづくりサポートと共同で、市民参加型の雨庭づくりと効果の実証に取り組んできた。この「武蔵野台地における『雨にわ』によるNbSの普及・実証事業」(世田谷区・武蔵野市の2地域が対象)が評価され、2024年12月に国土交通省の第5回グリーンインフラ大賞で最上位の国土交通大臣賞を受賞した。ガイドラインという「計画」ではなく、実際の施工とモニタリングを伴う「実証・普及」の取り組みが全国トップの評価を受けた点が、この事例の中核である。 (参考:第5回グリーンインフラ大賞 大臣賞 受賞事例 - 国土交通省グリーンインフラの普及・推進 - 世田谷トラストまちづくり

背景・課題

都市型水害と「流域対策」の必要性

気候変動により台風の大型化や局所的な集中豪雨、線状降水帯による水災害の懸念が高まっている。一方で都市化によりアスファルト舗装などの不浸透面が広がり、降った雨が地中に浸透せずに一気に下水道や河川へ流れ込む。世田谷区でも2005年9月4日に時間100mmを超える集中豪雨で床上浸水221棟・床下浸水245棟の被害が生じており、河川・下水道の増強だけでは対応しきれないことから、まち全体で雨を受け止める「流域対策」が求められてきた。 (参考:せたがやグリーンインフラガイドライン 資料編 - 世田谷区雨水浸透施設の設置に関する助成制度 - 世田谷区

対策の担い手が「民有地」に広がるという構造

世田谷区の土地は約7割が民有地であり、公共施設の整備だけでは流域全体の保水・浸透能力を高めることができない。区民や事業者が自らの敷地で雨水浸透や貯留に取り組むことが、都市型水害軽減の鍵になる。裏返せば、専門知識を持たない一般の区民でも取り組める形に手法を翻訳し、動機づけることが最大の課題だった。 (参考:せたがやグリーンインフラガイドライン 本編 - 世田谷区

みどりの減少と国分寺崖線の水循環

区のみどり率は近年でも微減傾向にあり、区制100周年の2032年にみどり率33%を目指す「世田谷みどり33」の目標(調査時点のみどり率は24.38%)に対して回復への転換が課題となっている。多摩川が武蔵野台地を約10万年かけて浸食して生まれた国分寺崖線は「みどりの生命線」と位置づけられ、台地に浸透した雨が崖線下部で湧水として湧き出す水循環を支えているが、市街化・舗装により浸透域が縮小してきた。加えて、区内の農地は1950年の約1,346haから2022年には約77haへと約70年で9割以上が失われ、ヒートアイランド現象とあわせて都市環境の悪化が進んでいた。 (参考:せたがやグリーンインフラガイドライン 資料編 - 世田谷区

積み重ねてきた雨水浸透の蓄積

世田谷区は、グリーンインフラという言葉が普及する以前の1988年から雨水浸透施設の設置助成を開始し、長年にわたり雨水浸透ます・浸透トレンチ・雨水タンクの設置を区民に促してきた。この長年の蓄積を土台に、個人の実践をどう面的に広げ、その効果をどう「見える化」して次の担い手につなげるかが、次のステージの課題となっていた。 (参考:雨水浸透施設の設置に関する助成制度 - 世田谷区

取り組みのプロセス

ガイドラインの策定(2024年3月)

ガイドラインは、2020年10月に設置された庁内横断組織「世田谷区グリーンインフラ庁内連携プラットフォーム」(事務局は土木部豪雨対策・下水道整備課)が編集・発行した。策定にあたっては、雨水まちづくりサポート理事長の神谷博氏と、東京農業大学の福岡孝則氏の2名の有識者が助言した。2023年11月の素案、2024年2月の案を経て、同年3月に策定されている。本編(考え方と取組み指針)、実践編(導入施設と活動団体)、資料編(国内外の事例と区の地域特性・行政計画)の3部構成で、既存のみどりの基本計画・豪雨対策基本方針・環境基本計画などを束ねる位置づけを持つ。 (参考:せたがやグリーンインフラガイドライン 本編 - 世田谷区せたがやグリーンインフラガイドライン 資料編 - 世田谷区

区民の行動を促す「知る→関心→取組む」の設計

ガイドラインは、区民・事業者に対して「知る→興味・関心を持つ→取組む(自宅等で実践し周りに広げる)」という3段階の行動指針を示している。実践編では、浸透ます・浸透トレンチ・透水性舗装・雨水タンク・雨庭・レインガーデン・屋上緑化・都市農地など22種類の導入施設を、場所ごとの適性とともに整理した。特徴的なのは「雨庭」と「レインガーデン」を用途で区分している点で、誰もが立ち入れる公共・民間施設に設けるものを「レインガーデン」、個人が自宅などに造成するものを「雨庭」と定義し、区民が自分ごととして取り組める入口を明確にしている。 (参考:せたがやグリーンインフラガイドライン 本編 - 世田谷区せたがやグリーンインフラガイドライン 実践編 - 世田谷区

効果を数値で示す「見える化」

抽象的な緑化の呼びかけにとどめず、ガイドラインは効果を定量的に示している。区全域を1haの街に置き換えたモデルでは、全敷地でグリーンインフラを導入すれば1時間あたり約40mmの雨を地下に浸透させるポテンシャルがあると試算した。個人向けにも、敷地100㎡の戸建住宅なら浸透ます2個・浸透トレンチ4m・雨庭1箇所で約3m³(浴槽16杯分)の雨を受け止められると、生活実感に翻訳して示している。数値によって「自分の家でどれだけ効くのか」を伝え、実践の動機づけにつなげる構成である。 (参考:せたがやグリーンインフラガイドライン 本編 - 世田谷区

雨庭の普及と担い手育成

制度づくりと並行して、世田谷トラストまちづくりは2020年度からグリーンインフラ事業に着手した。身近な道具で気軽に始められる「自分でもできる雨庭づくり」を掲げ、次大夫堀公園内の里山農園にモデル雨庭を構築。専用の相談窓口を設け、建築士やガーデナーを派遣する支援体制と、「自分でもできる雨庭の手引き」の発行を通じて裾野を広げた。2021年度からは全3回連続講座「世田谷グリーンインフラ学校」を毎年開催し、これまでに約100名が卒業。卒業生が継続的に関わりたいという声を受けて、区立奥沢二丁目公園の雨庭を月1回手入れする「奥沢コミュニティ雨庭」の活動も続いている。 (参考:グリーンインフラの普及・推進 - 世田谷トラストまちづくり小さな雨庭から始める環境共生 - TOKYO UPDATES(東京都)

実証とモニタリング(大臣賞の対象事業)

大臣賞を受賞した「武蔵野台地における『雨にわ』によるNbSの普及・実証事業」は、世田谷区と武蔵野市の2地域で、雨にわ(雨庭)の設計・施工・維持管理からモニタリング・効果評価までを一貫して行った点に特徴がある。世田谷区では、雨水まちづくりサポートと世田谷トラストまちづくりが共催で、子育て支援施設「おでかけひろばFUKU*fuku」(喜多見)を対象地に選び、トラスト管理地の竹林を間伐した竹を使った浸透機構や、乾燥に強く生きものを呼び込む宿根草の植栽といった工夫を凝らした。武蔵野市では市民が施工に参画し、雨水貯留浸透技術協会と協働で水位や土中水分量などを計測した。親子向け・市民向け・自治体職員向けのワークショップも重ね、未就学児から70代以上までのべ300名以上が活動に参加した。世田谷の雨にわでは、2023年に勝手口脇の約3㎡の雨にわで26㎥以上の雨水が地中に浸透したことが水位モニタリングで確認された。武蔵野市の雨にわでは、水位に加えて土中水分量やpF値も計測することで「地中も含めた雨水の見える化」を実現した。この事業が評価され、2024年12月23日に第5回グリーンインフラ大賞・国土交通大臣賞の受賞が発表された(表彰式は2025年1月29日、東京ビッグサイトのグリーンインフラ産業展2025で実施)。 (参考:第5回グリーンインフラ大賞 大臣賞 受賞事例 - 国土交通省第5回グリーンインフラ大賞について - 国土交通省

この事例の特徴

「計画」と「実践」の両輪が同時に評価された

世田谷の取り組みは、区がつくる制度(ガイドライン)と、外郭団体・NPOが担う実践(施工・普及・モニタリング)が並走している点に特徴がある。とりわけ、全国トップの大臣賞を受けたのが計画文書ではなく、実際に施工し効果を計測した「実証・普及事業」だったことは重要だ。ガイドラインが掲げる「ためて・しみこませる」流域対策が、現場で機能することを実証を通じて裏づけており、計画倒れに終わらない構造になっている。 (参考:第5回グリーンインフラ大賞 大臣賞 受賞事例 - 国土交通省せたがやグリーンインフラガイドライン 本編 - 世田谷区

「流域治水」を民有地・市民に開いた

治水は行政が担うものという通念に対し、この事例は約7割を占める民有地の区民・事業者を治水の担い手として位置づけた。ガイドラインの「知る→関心→取組む」という段階設計と、トラストまちづくりの相談窓口・専門家派遣・連続講座が組み合わさることで、市民が参画する流域治水の入口が用意されている。国が推進するグリーンインフラ政策やNbS(自然を活用した社会課題解決)の枠組みを、住宅都市の日常スケールに落とし込んだ点に新規性がある。 (参考:せたがやグリーンインフラガイドライン 本編 - 世田谷区グリーンインフラの普及・推進 - 世田谷トラストまちづくり

効果の定量化とモニタリングによる実証

ガイドラインの試算(1haで40mm/h、戸建で浴槽16杯分)と、実証事業での実測(約3㎡で年26㎥以上の浸透、地中を含む見える化)が対をなしている。感覚的な「緑化は良いこと」ではなく、どれだけの雨を受け止められるかを数値で示すアプローチは、1988年からの雨水浸透施設設置助成という長年の蓄積を持つ世田谷ならではの厚みを感じさせる。属人的な熱意ではなく計測データで語る点が、再現可能な取り組みへと押し上げている。 (参考:せたがやグリーンインフラガイドライン 本編 - 世田谷区第5回グリーンインフラ大賞 大臣賞 受賞事例 - 国土交通省

用語の整理による裾野拡大

「雨庭(個人が造成)」と「レインガーデン(公共・民間施設)」を用途で区分し、雨水まちづくりサポートが体系化してきた「雨いえ・雨にわ・雨まち」という言葉とあわせて、専門用語を生活者の言葉に翻訳している。誰の・どこの取り組みなのかを言葉で切り分けることで、区民が自分の立場に応じた行動を選びやすくなっている。 (参考:せたがやグリーンインフラガイドライン 実践編 - 世田谷区雨水まちづくりサポートについて - 特定非営利活動法人雨水まちづくりサポート

調査時点の成果

制度面では、2024年3月に本編・実践編・資料編からなる『せたがやグリーンインフラガイドライン』が策定され、区の各行政計画を束ねる指針として公開された。実践面では、2024年12月に第5回グリーンインフラ大賞・国土交通大臣賞を受賞。受賞対象事業では未就学児から70代以上までのべ300名以上が参加し、世田谷の約3㎡の雨にわで2023年に26㎥以上の雨水が地中に浸透したことをモニタリングで確認するなど、定量的な成果が得られている。 (参考:第5回グリーンインフラ大賞 大臣賞 受賞事例 - 国土交通省世田谷区のグリーンインフラ - 世田谷区

普及・担い手育成の面では、「世田谷グリーンインフラ学校」の卒業生が約100名に達し、卒業生自身による奥沢の雨庭の維持管理が月1回継続している。区は1988年から雨水浸透施設の設置助成を続けており、こうした長年の蓄積の上に市民参加型の実践が積み重ねられている。世田谷トラストまちづくりは東京都の「雨水しみこみプロジェクト」のアンバサダーにも認定され、企業との連携も広がっている。区立「シモキタ雨庭広場」のように、公共空間でのレインガーデン整備も進んでいる。 (参考:小さな雨庭から始める環境共生 - TOKYO UPDATES(東京都)雨庭が育む、みんなでつくる持続可能なまち - TOKYO MY CITY(東京都)シモキタ雨庭広場 - 世田谷区

他地域への示唆

制度(計画)と実践(中間支援組織)の分業モデル

:行政がガイドラインで方向性と手法を整理し、外郭団体やNPOが現場の施工・相談・担い手育成を担う分担は、住宅都市でグリーンインフラを面的に広げる際の再現しやすい型といえる。行政が計画を出すだけでは民有地の実践は進まず、逆に市民活動だけでは制度的な裏づけを欠く。両者を意識的に組み合わせた点が参考になる。

「治水を市民に開く」ための翻訳

:民有地の割合が高い都市では、治水・浸透の担い手を市民・事業者に広げる必要がある。「知る→関心→取組む」の段階設計、専門用語の生活言語への翻訳、効果を浴槽何杯分といった実感に置き換える工夫は、専門知識のない住民の参加を引き出す方法論として応用できる。

モニタリングによる実証で属人性を超える

:熱意ある個人に依存すると取り組みは続きにくい。約3㎡の雨にわで年26㎥以上といった実測データを積み上げ、「地中を含めた見える化」を行ったことは、効果への確信を関係者間で共有し、次の設置や予算化の根拠にできる。他地域でも、規模の小さな実証から計測データを取ることが、政策と現場をつなぐ説得材料になる。

長期の蓄積が土台になる点への留意

:世田谷の到達は、1988年からの雨水浸透助成という長年の積み重ねの上に成り立っている。他地域が同様の成果をすぐに再現できるとは限らず、助成制度の運用や浸透施設の実績づくりといった地道な下地づくりを並行して進める視点が欠かせない。

参照元


2026年7月時点の調査内容に基づいて作成

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