
福山みらい創造ビジョン2021-2025(現行総合計画・総合戦略)
この記事は、my grooveを運営する株式会社Groove DesignsがAIを活用し独自に調査・作成したものです。
福山市が総合計画と総合戦略を一本化し、2021〜2025年度の都市経営指針とした「福山みらい創造ビジョン」。KPI達成率を数式で機械的に採点する効果検証の仕組みと、9つのペルソナに基づく人口減少対策の設計を、5年間の実績データとともに紹介する。
「福山みらい創造ビジョン」は、福山市が2021年度から2025年度までの5年間を計画期間として策定した都市経営の指針である。それまで別々に運用されていた「福山市総合計画」(2017年度~、期限の定めなし)と「福山市総合戦略」(2015~2020年度)を一本化し、指標体系も含めて単一の計画としてまとめた点に特色がある。新型コロナウイルス感染症の影響が長期化するさなかの2021年3月に策定され、「新たな分散型社会の下で、市民一人一人の安心な暮らしと希望が実現する都市」をめざす姿に掲げ、「新5つの挑戦」と呼ぶ施策体系のもとで駅前再生、子育て支援、産業振興、教育、歴史文化・スポーツにわたる施策を横断的に推進してきた。 (参考:福山みらい創造ビジョン、福山みらい創造ビジョン本編)
2025年度をもって計画期間が満了することを受け、福山市は2025年8月の「福山みらいづくり懇話会」において、5年間の全KPIの達成率を数式で算出し格付けする「効果検証報告書」を公表した。目標未達の指標も含めて実績を包み隠さず示したうえで課題を分析している点は、単なる成果誇示にとどまらない総括として評価できる。同ビジョンは2026年度からの後継計画「福山みらい創造ビジョン2026-2030」に引き継がれている。 (参考:2025年度(令和7年度)第1回福山みらいづくり懇話会、福山みらい創造ビジョン効果検証報告書、福山みらい創造ビジョン(素案)に係るパブリックコメントの実施結果について)
福山市では2017年度から「第五次福山市総合計画第1期基本計画」を、2015年度から「福山市総合戦略」を、それぞれ別個に推進してきた。目的やターゲットが重なる二つの計画を並走させる体制は、指標管理や進行管理の面で非効率を生みやすく、2021年度からの新たな基本計画期間に合わせて両者を一本化する必要が生じていた。 (参考:福山みらい創造ビジョン本編)
策定作業が進んだ2020年から2021年にかけては新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、人口や都市機能が特定の大都市圏に偏っていることの危うさが社会全体で改めて意識される時期でもあった。テレワークの広がりや地方移住への関心の高まりなど、人々の働き方・暮らし方の価値観が変化するなかで、コロナ後を見据えた新しい都市づくりの方向性を示すことが求められた。 (参考:福山みらい創造ビジョン本編)
福山市の人口は2020年の国勢調査で460,930人となり、1940年以来の減少を記録した。国立社会保障・人口問題研究所の推計では2040年に約44万人まで減少すると見込まれており、自然動態は2012年以降死亡数が出生数を上回る自然減が続き、社会動態も2013年以降、女性や20歳代を中心に転出超過が続いていた。ビジョン策定時点で目標人口を「2025年46.6万人」と設定したこと自体、人口減少をできる限り緩やかにとどめようとする強い危機感の表れだった。 (参考:福山みらい創造ビジョン本編)
策定に向けて実施した市民意識調査では、20歳代以下・30歳代の若い世代ほど「中心市街地がにぎわい、多くの人が集うまち」「子育て環境が充実し、希望の子育てが実現できるまち」を望む傾向が強く現れた一方、60歳代以上では「災害に強く、安心・安全に暮らせるまち」や「高齢者や障がい者などすべての人が健やかに暮らせるまち」への要望が上位を占めた。世代ごとに異なる優先課題を一つの計画のなかでどう両立させるかが、施策体系を組む上での論点となった。 (参考:福山みらい創造ビジョン本編)
策定作業は2020年9月の市民意識調査を起点に進められた。同年12月に素案を公表し、有識者・各種団体代表で構成する「福山みらいづくり懇話会」や福山市総合計画審議会での議論を経て、2021年3月に案を公表、同年3月31日にビジョンを確定させた。市政モニターアンケートなども組み合わせ、策定段階から複数チャネルで市民意見を集めている。 (参考:福山みらい創造ビジョン策定に当たっての資料)
ビジョンは「挑戦1 福山駅周辺の再生加速とグローバル都市の創造」「挑戦2 希望の子育てと寛容で健やかな社会の実現」「挑戦3 人や企業が安心・安全に活躍できる都市環境の構築」「挑戦4 新たな価値を創出する人材育成と個性光る地域振興」「挑戦5 歴史・文化とスポーツによる新たな体験価値の創出」という5つの柱で構成され、それぞれの柱の下にさらに細かな施策分野(駅前の玄関口機能強化、観光振興、MICE、福山ネウボラ、医療提供体制、循環型地域経済、防災・減災、教育、地域コミュニティ、歴史文化、スポーツなど)がぶら下がる構造になっている。予算編成上は「新型コロナウイルス感染症対策の強化」「都市魅力の創造」「人口減少対策の強化」の3本柱と、それらを支える「社会のデジタル化の推進」という基盤で毎年度の重点政策に落とし込まれた。 (参考:福山みらい創造ビジョン本編)
ビジョンの実施状況は毎年度、福山みらいづくり懇話会に報告される。各施策分野ごとにKPIの実績値を前年度と比較し、委員からの意見を収集する運用が続けられており、その意見はそのまま公開資料に記録として残される。たとえば2022年度の報告では、駅前再生について「福山駅北口スクエアは市民の憩いの場として効果的」といった評価とともに、「周辺には尾道や倉敷といった観光地に挟まれるなか、新たな企業創出等によるまちおこしが必要」といった注文も併記されており、行政の自己評価にとどまらない外部からのチェックが継続的に働く構造になっている。 (参考:福山みらい創造ビジョン効果検証報告書)
人口減少対策については、ビジョン本体とは別に「人口減少対策アクションプラン」として毎年度改定する運用がとられた。社会減に影響する「進学・就職・移住」という3つのターニングポイントと、「シングル・専業主婦(夫)・共働き」という4つのライフスタイル(後述のとおり2024年度以降は「未婚」に置き換え)を組み合わせ、「高3進学女子」「子育て共働き女性」など9つの具体的な政策ターゲット(ペルソナ)を設定した。社会情勢が変わればペルソナの構成そのものを毎年度更新していく運用としており、実際に2024年度には「専業主婦(夫)」というライフスタイル区分を「未婚」に変更するなど、固定的な計画ではなく状況に応じて設計を更新し続けている。 (参考:人口減少対策アクションプラン2023(案)、福山みらい創造ビジョン効果検証報告書)
計画期間の最終盤にあたる2025年8月、福山市は5年間の総括として「効果検証報告書」を懇話会に提示した。ここでは各KPIについて「達成率=(直近実績-基準値)/(目標値-基準値)」という共通の計算式を用い、達成率70%以上を「◎」、50%以上70%未満を「○」、30%以上50%未満を「△」、30%未満を「×」と機械的に格付けした。さらに各施策分野を構成する複数のKPI評価を平均点化し、A(平均4.0点以上)からD(平均2.0点未満)までの4段階で分野ごとの総合評価を算出している。これと並行して、市内在住18歳以上4,000人を対象に市民アンケートを実施し(2024年11月25日~12月15日、有効回答1,175人)、「5年前との比較」「満足度」「重要度」を分野別に集計することで、定量的なKPI評価に市民の体感を重ね合わせる二段構えの検証を行った。 (参考:福山みらい創造ビジョン効果検証報告書)
単に二つの計画文書を一冊にまとめたのではなく、KPIや推進体制も一体化した点が特徴である。行政計画の「総花的な羅列」に陥りがちな課題に対し、上位計画である第五次総合計画の基本構想の下に単一の実行計画を位置づけ、毎年度の重点政策予算と直結させることで、計画と予算編成のサイクルを一致させている。 (参考:福山みらい創造ビジョン本編)
「達成率=(直近実績-基準値)/(目標値-基準値)」という計算式を全KPIに一律適用し、担当部署や評価者の裁量が入り込みにくい形で格付けする手法は、多くの自治体計画で見られる「担当課の自己評価によるA評価の乱発」を避けるための工夫といえる。評価基準と計算式そのものを報告書内で公開している点も、検証可能性を担保するうえで重要である。 (参考:福山みらい創造ビジョン効果検証報告書)
効果検証報告書では、目標人口(46.6万人)が最終的に未達となる見込みであること、合計特殊出生率が基準値からむしろ低下していること、学力の伸びた児童生徒の割合が悪化傾向にあることなど、行政として都合の悪い実績も明記されている。成果の強調に偏りがちな行政の総括資料のなかで、未達成のKPIとその要因分析を同じ土俵で示す姿勢は、次期計画の設計に説得力を持たせる基盤になっている。 (参考:福山みらい創造ビジョン効果検証報告書)
ビジョンの傘の下には、中央公園のPark-PFI事業、エフピコRiM(1階部分の再生)による「iti SETOUCHI」開業、福山ネウボラによる子育て支援、世界バラ会議福山大会2025の開催など、単独でも取り上げられるような個別事業が数多く含まれている。ビジョンはこれら個別施策を上位の目標体系とKPIに紐づけ、年度ごとの進捗を一元的にモニタリングする「ハブ」として機能しており、個別事業の成否を都市全体の戦略のなかに位置づけて評価できる点に価値がある。 (参考:福山みらい創造ビジョン効果検証報告書)
効果検証報告書によれば、特に注視してきた指標のうち「福山駅周辺のウォーカブルエリア内の歩行空間の割合」(基準値約50%→2024年度約57%、目標約60%)、「人口10万人当たりの医師数(産科・産婦人科医師/小児科医師)」、「市民一人当たりの分配所得」(2,948千円→3,087千円、目標3,039千円)は目標達成が見込まれる「◎」評価となった一方、「合計特殊出生率と市民希望出生率(1.90)との差」は基準値(0.30)よりむしろ拡大(0.44)し「×」評価、「総合防災訓練の参加人数」もコロナ前水準を回復できず「×」評価となった。目標人口についても、2025年46.6万人という目標に対し最新推計は44.4万人にとどまる見込みで、個別施策レベルでのKPI達成と、人口という構造的なマクロ指標の反転とは必ずしも一致しないことが示されている。 (参考:福山みらい創造ビジョン効果検証報告書)
福山駅周辺では、三之丸町地区の旧キャスパ跡地が2024年9月に商業施設「NEWCASPA」としてグランドオープンしたほか、2022年7月には芝生広場を備えた「福山駅北口スクエア」が、同年9月には「iti SETOUCHI」が開業した。三之丸町の流動客数は2022年度から2024年度にかけて平日21,446人→24,036人、休日20,522人→26,255人に増加し、ウォーカブルエリアの地価公示価格は2016年から2025年の間に平均約28%上昇している。観光面では観光消費額が326億円(2022年度)から430億円(2024年度、目標342億円)に伸び、外国人観光客数も目標(87千人)を上回る89千人(2024年)を記録した。2025年5月、福山市は世界バラ会議福山大会を開催し、28の国と地域から723人が参加した。同時開催のRose Expoには約21,000人が来場している。一方で総観光客数やMICE開催件数、伏見町・三之丸町・東桜町・元町の従業者数、伏見町の流動客数は目標に届いておらず、コロナ禍からの回復途上にあることも読み取れる。 (参考:福山みらい創造ビジョン効果検証報告書)
男性の育児休業取得率は基準値9.2%(2019年度)から2024年度に39.5%へと大幅に上昇し、目標値30%を超えて達成した。所得に関わらず子ども医療費を助成する仕組みへの転換や、第2子以降の保育料負担をなくす施策も重なり、2023~2024年度は保育所等の待機児童ゼロを2年連続で達成している。医療面では人口10万人当たりの産科・産婦人科医師数(8.9人→9.4人、目標9.5人)、小児科医師数(10.8人→12.1人、目標11.4人達成)ともに改善した。一方で合計特殊出生率は2013年の1.73から2023年には1.46まで低下しており、「この地域で子育てをしたいと思う親」の割合も基準値92.3%から2024年度93.3%とほぼ横ばいで目標の96.0%には届いていない。市民アンケートでは「子育ての経済的負担が重い」「こどもの遊び場が充実していない」が出産・子育てをしにくいと感じる理由の上位に挙がり続けている。 (参考:福山みらい創造ビジョン効果検証報告書、福山市子育て応援ウィーク|福山ネウボラ)
市民一人当たりの分配所得は目標を達成し、中小企業のデジタル化を支援する「びんごデジタルラボ」への参加企業数は61社(2021年度)から264社(2024年度、目標150社)に増加した。創業件数も基準値192件(2019年度)に対し2024年度235件と目標225件を上回っている。ただし、市の従業員1人当たり純付加価値額は全国・広島県平均と比べて依然低い水準にあり、生産性向上の余地が残ることも報告書は指摘している。福山北産業団地第2期事業では全17区画で立地協定が締結され、防災面では抜本的な浸水対策が計画的に進められた一方、総合防災訓練の参加人数はコロナ前基準(34,022人)を回復できていない。 (参考:福山みらい創造ビジョン効果検証報告書)
福山城築城400年記念事業(400年博・夜間ライトアップ等)が実施され、竹ケ端運動公園庭球場と緑町公園屋内水泳場の整備も2024年度に完了した。一方で教育分野は4段階の評価区分のなかで、歴史・文化分野と並び最も低い「C」評価となっており、「学力の伸びた児童生徒の割合」は基準値65.6%から2024年度57.9%へとむしろ低下し、目標の75.6%から遠ざかった。交流館グループ・サークル数も基準値1,805団体から2024年度1,556団体へと減少しており、報告書自身が「学力向上は喫緊の課題」と明記している。市スポーツ施設延べ利用者数もコロナ前水準を回復できていない。 (参考:福山みらい創造ビジョン効果検証報告書)
「(直近実績-基準値)/(目標値-基準値)」という単純な計算式でKPI達成率を算出し、閾値に基づいて機械的に格付けする手法は、担当者や評価委員の裁量に左右されにくく、特定の自治体の組織文化や首長のリーダーシップに依存しない再現性の高い仕組みである。総合計画のKPI管理に苦慮している自治体にとって、評価ロジックそのものをそのまま応用できる実務的な示唆といえる。 (参考:福山みらい創造ビジョン効果検証報告書)
達成率の数式化だけでなく、未達成のKPIを隠さず公表し、外部有識者で構成する懇話会の意見をそのまま記録として残す運用、さらに市民アンケートによる「重要度×満足度」のクロス集計を毎年度・最終年度の双方で行う運用は、行政計画にありがちな「策定して終わり」「自己評価で丸く収める」形骸化を防ぐ実効的なチェック機能として機能している。単発のKPI管理ツール導入だけでなく、外部の目を継続的に入れる体制とセットで設計することが重要だと示唆される。 (参考:福山みらい創造ビジョン効果検証報告書)
人口減少対策における「ターニングポイント×ライフスタイル」で9つのペルソナを設定する手法自体は他の人口減少地域でも応用しやすい設計だが、福山市の場合はペルソナの構成を毎年度見直し、2024年度には「専業主婦(夫)」を「未婚」に置き換えるなど、社会情勢の変化に応じて政策ターゲットそのものを更新し続けている点が特に参考になる。一度設定したペルソナに固執せず、統計データやアンケート結果の変化を踏まえて定期的に前提を疑う運用は、限られた予算をどの世代・状況に重点配分するかを継続的に最適化するうえで有効である。 (参考:人口減少対策アクションプラン2023(案)、福山みらい創造ビジョン効果検証報告書)
福山市は男性育休取得率や創業件数、医師数など多くの個別KPIで目標を達成・上回った一方、目標人口や合計特殊出生率、若年層の転出超過といったマクロな人口動態は改善に至らなかった。これは個別施策が有効に機能していても、人口減少という構造的なトレンドを単独の総合計画で反転させることの難しさを示している。他地域が総合計画を設計する際も、個別KPIの達成だけをもって「人口減少対策が奏功した」と捉えず、マクロ指標とミクロ指標を分けて評価する視点を持つことが、過度な楽観にも悲観にも陥らないための示唆となる。 (参考:福山みらい創造ビジョン効果検証報告書)
2026年9月時点の調査内容に基づいて作成
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