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ひたちBRT第III期延伸計画(常陸多賀駅〜日立駅)
ひたちBRT第III期延伸計画(常陸多賀駅〜日立駅)

ひたちBRT第III期延伸計画(常陸多賀駅〜日立駅)

ひたちBRT第III期延伸計画(常陸多賀駅〜日立駅)

茨城県
日立市
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日立電鉄線跡地を活用したひたちBRTを、終点の常陸多賀駅からJR日立駅方面へ延伸する第III期計画。廃線跡を全線活用できない区間を新設道路や駅舎・自由通路の整備と一体で結び、常陸多賀駅周辺地区整備計画と連動させながら段階的に進める、公共交通を軸とした都市再生の事例。

概要

ひたちBRT第III期延伸計画は、廃止された日立電鉄線の跡地を活用して整備されてきたバス高速輸送システム「ひたちBRT」を、現在の終点である常陸多賀駅からJR日立駅方面へと延ばす構想である。日立市は2021年頃から、市の中心軸となる「中央線ルート」を基本に延伸ルートの検討を進め、常陸多賀駅〜池の川さくらアリーナ間を「短中期整備区間」、池の川さくらアリーナ〜日立駅間を「長期整備区間」と位置付けて段階的に整備する方針を示している。(参考:ひたちBRT(Wikipedia)

特徴的なのは、この延伸が単独の交通インフラ事業ではなく、終点側の拠点である常陸多賀駅の周辺整備計画と一体で進められている点である。延伸に合わせてBRTの発着を駅の西側から東側へ切り替え、新たに整備する東口駅前広場や東西自由通路、駅舎のリニューアルと結び付けることで、公共交通の延伸を駅周辺の都市再生の起点に変えようとしている。BRTはレベル4自動運転バスの営業運行区間でもあり、延伸は将来の自動運転区間の拡大や市内南北軸の公共交通ネットワーク強化にもつながる位置付けにある。(参考:常陸多賀駅周辺地区の持続可能なまちづくりを推進します(日立市)

背景・課題

ひたちBRTの出発点は、2005年4月に廃止された日立電鉄線である。鉄道の廃止は地域の南北移動を支える基幹軸の喪失を意味したが、日立市はその跡地という連続した用地を「バス専用道」として再生する道を選んだ。専用道を走るBRTは一般道の渋滞の影響を受けにくく、定時性と速達性を確保できる。2013年3月におさかなセンター(久慈浜)〜大甕駅間で第1期が運行を開始し、2019年4月には大甕駅西口を経由して常陸多賀駅までを結ぶ第2期が本格運行へと移行した。現在の運行区間はおよそ8.6km、専用道区間は約6.1kmに及び、運行は茨城交通が担っている。(参考:ひたちBRTが本格運行!(日立市)ひたちBRT(Wikipedia)

その背景には、日立市が抱える人口減少と市街地の空洞化という構造的な課題がある。かつて20万人を超えた人口は約16万人規模へと縮小し、製造業の集積で栄えた中心市街地でも商業施設の撤退や空き家・空き店舗の増加が進んでいる。延伸の終点となる常陸多賀駅は、JR常磐線の特急も停車する市内で2番目に中心的な地区の拠点であり、市内最大の居住人口を抱える一方で、駅周辺の「都市のスポンジ化」が課題となっていた。市は多極ネットワーク型コンパクトシティの形成を掲げ、拠点間を結ぶ公共交通の充実と、拠点そのものの賑わい再生を同時に進める必要に迫られていた。(参考:常陸多賀駅周辺地区の持続可能なまちづくりを推進します(日立市)茨城県日立市の常陸多賀駅周辺で地区整備計画が進行中(健美家)

延伸構想にはもう一つの難しさがあった。第1期・第2期は連続した廃線跡という好条件の用地を専用道へ転用できたが、常陸多賀駅から日立駅へ向かう区間では、跡地を最後まで活用しきれない。延伸を実現するには、新たな道路インフラの整備や鉄道との立体交差、駅周辺の再整備といった、跡地転用とは桁違いに複雑な事業を組み合わせる必要が生じた。第III期は、この「廃線跡という初期資産の先」をどう設計するかという問いに向き合う計画でもある。(参考:ひたちBRTの第3期計画の変更について(全国交通ニュースブログ)

取り組みのプロセス

日立市はまず、廃線跡という連続用地を活かせる範囲でBRTを段階的に育ててきた。2013年の第1期に続き、2018年3月の先行運行を経て2019年4月に第2期を本格運行へ移行させ、大甕駅西口を経由することで主要区間をほぼ専用道でつなぐ形を整えた。この間、車両も「ひたちらしさ」をテーマにした大型ハイブリッドバスを順次導入するなど、地域に根ざした路線として認知を高めてきた。(参考:ひたちBRTが本格運行!(日立市)

並行して、専用道という条件を活かした自動運転の社会実装が積み重ねられた。2018年以降の段階的な実証を経て、2024年11月に中型バスで全国初・国内最長(約6.1km)となるレベル4自動運転車両の認可を受け、2025年2月3日に営業運行が始まった(実証の経緯は関連事例「ひたちBRT自動運転バス実証実験の積み重ね」、営業運行の詳細は「ひたちBRT レベル4自動運転バス営業運行」で詳述)。BRTの専用道がレベル4運行の基盤となったことで、延伸は単なる路線の延長ではなく「自動運転走行空間の拡張」という意味合いも帯びるようになった。(参考:ひたちBRTで自動運転バスの営業運行がスタートします(日立市)ひたちBRT(Wikipedia)

第III期の検討は2021年頃から本格化した。市は中央線ルートを基本に据え、常陸多賀駅〜池の川さくらアリーナ間を短中期整備区間、池の川さくらアリーナ〜日立駅間を長期整備区間とする段階整備の方針を固めた。ルートは廃線跡をそのまま延長するのではなく、新たに整備する常陸多賀駅の東口を起点とし、駅北側に新設する都市計画道路を介して常磐線を立体的に越え、線路の西側を日立駅方面へ向かう構想とされている。常陸多賀駅では運行ルートに活用する跨線橋の整備も計画に組み込まれた。(参考:ひたちBRT(Wikipedia)ひたちBRTの第3期計画の変更について(全国交通ニュースブログ)

延伸の終点側である常陸多賀駅では、これと連動する形で「常陸多賀駅周辺地区整備計画」が策定された。市は「くらしとにぎわい 次代に紡ぐまちづくり」という理念のもと、暮らし・賑わい・持続可能性という3つの目標を掲げ、計画づくりにあたっては31名で構成する策定委員会を5回開催したほか、商店会や地域コミュニティとの意見交換会も重ねている。計画では、BRTの延伸ルートに合わせて発着を駅の西側から東側へ切り替えることを前提に、東口の駅前広場とアクセス道路の整備、東西の市街地をつなぐ自由通路を駅舎と一体的に整える取り組み、西口の未利用・低利用地の活用が重点的な取り組みとして位置付けられた。(参考:常陸多賀駅周辺地区の持続可能なまちづくりを推進します(日立市)茨城県日立市の常陸多賀駅周辺で地区整備計画が進行中(健美家)

これらの計画は、日立市が日立製作所と共創して描いた2035年の「日立市の公共交通の将来像」グランドデザインとも接続している。グランドデザインは、BRTやタクシー、路線バスといった多様な移動手段を統合し、モビリティハブを核に、誰もが移動に困らないまちを目指す構想であり、市内を南北に結ぶBRTは、その移動ネットワークを支える基幹的な公共交通の一つと位置付けられる。第III期延伸は、個別事業でありながら、こうした上位ビジョンの中に明確な役割を持って組み込まれている。(参考:日立市と日立製作所が、2035年の「日立市の公共交通の将来像」としてグランドデザインを描きました(日立市)

この事例の特徴

第一の特徴は、廃線跡活用というBRTの「初期の強み」を使い切った先を、新設インフラと駅周辺再整備の組み合わせで設計しようとしている点である。連続した廃線跡を専用道へ転用する手法は速く安価に効果を出せるが、跡地は有限である。日立市の第III期は、跡地の延長線上で完結させるのではなく、新たな都市計画道路や常磐線との立体交差、駅東口の新設といった、より重い投資を伴う区間へと舵を切った。BRTを「跡地が続く限りの交通」から「都市構造を組み替えるための交通」へと性格を変えようとしている点で、跡地転用型のBRTとは事業構造が異なる。(参考:ひたちBRTの第3期計画の変更について(全国交通ニュースブログ)

第二に、その難しさに対して「短中期」と「長期」という段階整備の枠組みで現実的に応えている点である。常陸多賀駅から池の川さくらアリーナまでを先行的に整備し、最も投資が重く不確実性も高い日立駅までの区間を長期として切り分けることで、達成可能な範囲から着手しつつ、財源や合意形成の見通しに応じて全体像を更新できる構えをとっている。一度に全線を約束しない設計は、長期事業のリスクを管理する現実解といえる。(参考:ひたちBRT(Wikipedia)

第三に、交通の延伸そのものを駅周辺再生のドライバーに据えている点である。BRT発着の西側から東側への切り替えという一見地味な運行上の変更を起点に、東口広場・自由通路・駅舎リニューアル・西口の低利用地活用までを一つの計画として束ねている。交通計画とまちづくり計画を別々に進めるのではなく、発着位置の移動を「まちの正面をつくり替える契機」として活用する組み立てが、この事例の核心にある。(参考:常陸多賀駅周辺地区の持続可能なまちづくりを推進します(日立市)

調査時点の成果

本計画は構想・計画段階にあり、延伸そのものの完成には至っていない。そのうえで、調査時点で確認できる到達点は次のとおりである。まず、中央線ルートを基本とし、池の川さくらアリーナを境に短中期・長期の2区間へ分ける段階整備方針が定まり、廃線跡を全線活用しない新たな延伸ルートの骨格が示された。これにより、長く「将来構想」にとどまっていた日立駅方面への延伸が、具体的な区間設定と整備順序を伴う計画へと前進した。(参考:ひたちBRT(Wikipedia)

終点側では、常陸多賀駅周辺地区整備計画が策定され、BRT発着の東側切り替えを前提とした東口広場・アクセス道路・東西自由通路・駅舎一体整備という具体的な事業メニューが位置付けられた。策定にあたり31名の委員会を5回開催し、商店会や地域コミュニティとの意見交換を重ねたことは、延伸を支える地域側の合意形成が進んでいることを示す。事業の具体化としては、2026年度中に駅舎のリニューアルなど工事の着工が見込まれており、計画が紙の上から実装段階へ移りつつある。(参考:常陸多賀駅周辺地区の持続可能なまちづくりを推進します(日立市)茨城県日立市の常陸多賀駅周辺で地区整備計画が進行中(健美家)

延伸の土台となる既存BRTの実績も成果の文脈として重要である。専用道を活かして全国に先駆け中型バスでのレベル4自動運転の営業運行を実現したことは、延伸区間が将来の自動運転走行空間として価値を持つことを裏付ける。一方で、その自動運転バスの営業運行は2026年4月1日以降休止しており、再開時期は調査時点で示されていない(運行休止の経緯と車内無人化の見通しは関連事例「ひたちBRT 車内無人(運転士レス)レベル4運行への移行」を参照)。延伸による自動運転区間拡大の効果を見込むうえでは、この運行体制の今後が一つの変数となる。第III期のうち長期整備区間(池の川さくらアリーナ〜日立駅)についても具体的な完成時期は示されておらず、成果は段階整備の進捗に応じて見極める必要がある。(参考:ひたちBRTで自動運転バスの営業運行がスタートします(日立市)

他地域への示唆

第一に、廃線跡やBRTなどの「線」を延ばす事業では、用地が連続する区間と途切れる区間で難易度が一変するという点である。連続用地のうちは速く安価に成果を出せるが、その先は新設インフラや立体交差、駅前再整備といった重い投資を伴う。延伸を検討する地域は、初期区間の成功体験を前提に置かず、用地が尽きた先の事業構造を早い段階から別物として設計しておくことが、計画の停滞を避ける鍵になる。(参考:ひたちBRTの第3期計画の変更について(全国交通ニュースブログ)

第二に、長期・大規模になりがちな交通延伸を、達成可能な短中期区間と不確実性の高い長期区間に切り分ける段階整備の有効性である。全線を一度に約束せず、先行区間で効果と信頼を積み上げながら全体像を更新する進め方は、財源や合意形成の制約が大きい地方都市にとって再現性が高い。区間の境界を、池の川さくらアリーナのような目的地となる施設に置くことで、短中期区間だけでも移動上の意味を持たせている点も参考になる。(参考:ひたちBRT(Wikipedia)

第三に、交通の延伸を駅周辺まちづくりと一体の計画として束ねる発想である。発着位置の切り替えという運行上の変更を、東口広場・自由通路・駅舎更新・低利用地活用を動かす契機として位置付けた点は、交通整備とエリア再生を別々の所管・別々の計画で進めがちな自治体に対し、両者を一つの計画に統合する具体的な型を示している。さらに、こうした個別事業を2035年の公共交通将来像という上位ビジョンの中に明確な役割で位置付けたことは、単発の延伸を「まちの構造を組み替える一手」として説明する筋立てとしても応用できる。(参考:日立市と日立製作所が、2035年の「日立市の公共交通の将来像」としてグランドデザインを描きました(日立市)常陸多賀駅周辺地区の持続可能なまちづくりを推進します(日立市)

参照元

2026年6月時点の調査内容に基づいて作成

茨城県
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