
福岡市実証実験フルサポート事業
福岡市とFDCが2016年度から運営する、AI・IoT等の先端技術を活用した実証実験プロジェクトを全国から公募し、フィールド提供から広報まで一気通貫で支援する制度。2023年11月時点で採択は100件を超えている。
福岡市実証実験フルサポート事業は、福岡市と福岡地域戦略推進協議会(FDC)が2016年度から共同で運営する実証実験支援制度である。AI・IoTなど先端分野の技術で地域課題の解決や住民生活の向上に貢献する提案を全国から募り、優れた提案に対して「相談⇒準備⇒実証⇒広報」を一気通貫でサポートする。
特定のエリアやテーマに絞り込むのではなく、福岡市内全域を実証フィールドとして開放し、随時募集とテーマ設定型の募集を組み合わせて運営している点が特徴である。2023年11月1日時点で採択件数は100件を超え、決済、防災、子育て支援、生成AI、海洋通信など幅広い分野のプロジェクトが継続的に採択・実施されている。 (参考:福岡地域戦略推進協議会「福岡市実証実験フルサポート事業」、福岡100「実証実験フルサポート事業」)
福岡市は2012年、シアトルを参考モデルに掲げる「スタートアップ・シティ」構想として「スタートアップ都市ふくおか」を宣言した。2014年5月には国家戦略特区「グローバル創業・雇用創出特区」の指定を受け、2017年には旧大名小学校跡地を活用した官民運営の起業支援拠点「Fukuoka Growth Next」を立ち上げるなど、規制と拠点整備の両面で環境を整えてきた。こうした土壌の上に2016年度、先端分野の技術で社会課題に挑む提案を全国から募り実証を後押しする制度として本事業が始まった。 (参考:日本観光振興協会「先端技術を活用した地域の活性化 福岡市実証実験フルサポート事業」)
先端技術を持つ事業者やスタートアップにとって、実証フィールドの確保は自治体窓口を一つひとつ訪ねて理解を得る必要がある負担の大きい作業であり、行政も単独では対応できる事業者数や分野に限界があった。FDC事務局は、行政単独ではなく2018年時点で約160社に上るFDC会員企業へ同時にアプローチできる点を制度の存在意義として挙げており、事業者が個別に扉を叩かずとも信頼性とフィールドの広さを確保できる仕組みを志向している。 (参考:事業構想オンライン「有望ベンチャーが続々 福岡市『実証実験フルサポート』の磁力」)
一方で、実証実験からサービスの本格実装に至る過程では、行政がどこまで伴走できるかという課題も指摘されている。市は事業化に至った案件の一部を把握しているものの、採択した全案件のその後を網羅的に追跡することは難しい状況にあるとされる。 (参考:ニュースイッチ「企業の先進事業『フルサポート』する福岡市の悩み」)
1. 募集
応募方式は、随時受け付ける「随時募集」と、市が課題を設定して公募する「テーマ募集」の2本立てである。テーマ募集では過去に「アグリテック」「AI多言語音声翻訳システム」などが設定されており、同じ課題領域で複数の事業者が並行して実証に取り組む形も取られてきた。 (参考:ニュースイッチ「企業の先進事業『フルサポート』する福岡市の悩み」)
2. 審査・採択式
応募案件は市とFDCによる審査を経て採択が決まり、採択事業者を公表する「採択式」が開催される。2024年2月19日の採択式では海洋通信分野のフューチャークエスト「CoastaLinkプロジェクト」と、QTnet・アンドドットによる生成AI活用プロジェクトの2件が、2025年5月30日の採択式では子ども医療相談アプリ、屋内インフラ点検ドローン、博物館向けAI案内サイネージ、マイナンバーカードを使ったステーブルコイン決済、水害対策シミュレーターの5件が、それぞれ採択事業者として発表された。 (参考:福岡地域戦略推進協議会「2月19日採択式」、福岡地域戦略推進協議会「5月30日採択式」)
3. 実証支援
採択後は、市とFDCが実証実験施設の斡旋や地元事業者・関係者との調整、行政データの提供、国家戦略特区の規制緩和を活用した実証環境の整備といった支援を行う。2018年に実施された「キャッシュレス実証実験」では、公共施設向けと民間施設向けに分けて公募を行い、民間施設の調整を担当した市職員3名が屋台や商店街に毎週のように通って事業者の不安を解消し、着手からおよそ1カ月で公共施設側の関係者調整を終えている。 (参考:日本観光振興協会「先端技術を活用した地域の活性化 福岡市実証実験フルサポート事業」)
4. 結果報告・広報
実証実験終了後、事業者は結果報告書を市に提出し、市はこれを公式サイトで公開している。子育て世帯への食事・生活必需品支援を行う「こども未来支援サービス」の場合、2022年にGigiと出前館の共同提案として採択された後、2023年に設立されたNPO法人Kids Future Passportも加わり、2023年8月19日から12月末までの実証実験期間を経て、利用実績や利用者アンケートを盛り込んだ結果報告書が公開されている。 (参考:福岡市「こども未来支援サービス結果報告書」、Gigi株式会社プレスリリース)
分野・テーマを絞らない全市型の実証支援
福岡市内の特定エリアに限定して実証を集約する「Smart East PoC Program」のような地区限定型の取り組みとは異なり、本事業は市内全域をフィールドとし、決済、防災、子育て、海洋通信、生成AIなど分野を限定せずに随時応募を受け付けている。これにより、行政側があらかじめ想定していなかった技術と社会課題の組み合わせが持ち込まれる余地を残している。
中間支援組織を介した事業者ネットワークの活用
制度の運営主体には自治体単独ではなくFDCが加わっており、2018年時点で約160社に上るFDC会員企業のネットワークを窓口として活用できる点が特徴である。行政の担当課だけで個別に事業者を開拓するのではなく、地域の産学官民ネットワークを介して提案を集める体制になっている。 (参考:事業構想オンライン「有望ベンチャーが続々 福岡市『実証実験フルサポート』の磁力」)
資金提供ではなく現場調整とスピードを軸にした支援
助成金の交付を中心に据えるのではなく、実証フィールドの斡旋、地元調整、行政データ提供、国家戦略特区を活用した規制緩和の検討、広報支援を組み合わせている点が特徴である。都道府県並みの権限を有しつつ、住民に近い基礎自治体の現場感覚も併せ持つという政令指定都市ならではの特性を福岡市は活用し、関係者調整を迅速に進めることで事業者からの信頼獲得につなげている。 (参考:日本観光振興協会「先端技術を活用した地域の活性化 福岡市実証実験フルサポート事業」)
約10年にわたる継続運用とテーマの変遷
2016年度の開始から現在まで運用が続いており、2018年のキャッシュレス決済、2023年前後の子育て支援・生成AI活用、2024年以降の海洋通信・多言語AI案内など、時々の社会的関心に応じて採択プロジェクトの重心が移り変わってきた。長期間の運用によって蓄積された事業者対応のノウハウとネットワークが、後続の採択案件を呼び込む土壌になっていると考えられる。
採択実績
2023年11月1日時点で、制度開始以来の累計採択件数は100件を超えている。 (参考:福岡地域戦略推進協議会「福岡市実証実験フルサポート事業」)
事業化・進出実績
日本観光振興協会の取材時点(2019年度前後)では、実証を経てサービスとして事業化に至った案件は九州電力の子ども見守りサービス「Qottaby」を含め28件にのぼり、4社が新たに福岡市内に拠点を設けたことが確認されている。 (参考:日本観光振興協会「先端技術を活用した地域の活性化 福岡市実証実験フルサポート事業」)
キャッシュレス実証実験(2018年〜2019年)
公共施設1事業者(LINE・LINE Pay・LINE Fukuoka)と民間施設8事業者が採択され、市内約900カ所で実証が行われた。LINEの報告によれば、屋台などでQRコード決済を導入したことで、現金授受のたびに必要だった手洗いの手間がなくなり、1組あたりの接客時間がおよそ1分短くなったという。この実証を経て2019年4月以降、市内公共施設の27窓口・41施設でQRコード決済が正式導入された。 (参考:日本観光振興協会「先端技術を活用した地域の活性化 福岡市実証実験フルサポート事業」)
こども未来支援サービス(2023年8月〜12月)
子育て世帯に食事や日用品を提供するサービスとして実施され、実証期間中の登録児童数は190名、総利用額は107万5,786円、実利用者数は29名だった。利用額・利用者数は開始当初の周知不足から徐々に増加し、8月の1万2,948円から12月には56万8,848円まで拡大した。デリバリーを利用した経験がある登録者は約半数にとどまり、利用方法の周知が課題として挙げられている。 (参考:福岡市「こども未来支援サービス結果報告書」)
博物館AIキャラクター案内実証実験(2025年7月〜9月)
Devesion株式会社が福岡市博物館で実施し、大型のデジタルサイネージ画面上のキャラクターが来館者の接近を感知して話しかけ、32の言語で展示解説や案内を行う仕組みを検証した。 (参考:福岡地域戦略推進協議会「福岡市博物館AI施設案内実証実験」)
海洋通信・生成AI分野の実証(2024年度〜)
フューチャークエストの「CoastaLinkプロジェクト」は、次世代の海上通信規格VDESの試作システムを博多ポートタワー等に設置し、博多湾内での船舶間・陸海間のデータ送受信の実証を行っている。QTnet・アンドドットは、法人向け生成AIプラットフォーム「QT-GenAI」を用いて2023年10月から2024年3月まで、市職員による報告書・議事録作成業務の効率化を検証した。 (参考:Coastal Link Corp.「福岡市実証実験フルサポート事業に採択されました」、福岡市「生成AIを活用した職員の生産性向上」)
分野やテーマをあらかじめ絞り込まず、随時募集を軸に間口を広く保つ運営は、担当部署が想定していなかった技術と地域課題の組み合わせを継続的に呼び込む効果があると考えられる。特定分野に特化したPoC支援制度を持つ自治体にとっても、随時募集の窓口を並行して設けることは応用可能な工夫である。 (参考:ニュースイッチ「企業の先進事業『フルサポート』する福岡市の悩み」)
FDCのような広域の産学官民ネットワーク組織を運営に加えることで、単独の自治体では開拓しきれない事業者層にリーチできる点も参考になる。同様の中間支援組織(商工会議所、広域連携協議会、地域金融機関の連携組織など)を実証支援の窓口として位置づけることは、他地域でも再現しやすい仕組みである。
支援の中心を助成金ではなく、実証フィールドの斡旋、地元調整、行政データ提供、規制緩和の検討、広報といった「現場対応」に置いているため、大きな予算を持たない自治体でも導入しやすいモデルといえる。特にキャッシュレス実証実験で見られたような、職員が現場に足を運んで関係者の不安を解消する地道な調整プロセスは、属人的な要素に依存せず制度として再現できる工夫である。
一方で、実証実験後の事業化フォローや採択案件全体の効果追跡には限界があることも明らかになっている。採択件数や個別プロジェクトの成果は公開されているが、制度全体としてどれだけの社会的インパクトを生んだかを体系的に検証する仕組みづくりは、長期運用を続ける自治体が共通して直面する論点であり、結果報告書の公開に加えて事業化後の追跡調査をどう制度に組み込むかが今後の課題となる。
2026年08月時点の調査内容に基づいて作成
この記事は公開情報に基づき、AIを用いた詳細調査により作成されました。記事内容への修正依頼、お問合せ等は以下までお寄せください。
問い合わせ:support@groove-designs.com
よくあるご質問(FAQ)もあわせてご確認ください。
#
総合計画
#
まちづくり指針
#
エリアビジョン
#
景観計画
#
緑の基本計画
#
公共空間活用
#
ウォーカブル
#
公園活用
#
防災・減災
#
空き家活用
#
エリアプラットフォーム
#
公民連携プラットフォーム
#
公民連携
#
地域コミュニティ
#
地域交流拠点
#
多文化共生
#
子育て支援
#
文化芸術
#
自動運転バス
#
モビリティマネジメント
#
モビリティハブ
#
関係人口
#
移住促進
#
探究学習
#
グリーンインフラ
#
生物多様性
#
参加型予算
#
都市整備
#
まちなか
#
駅前広場
#
協働のまちづくり
#
リノベーションまちづくり
#
フューチャーセンター
#
スマートシティ
#
AI
#
リビングラボ
#
空きスペース活用
#
居場所づくり
#
子ども食堂
#
沿線まちづくり
#
健康
#
社会教育
#
持続可能な都市
#
計画策定
#
まちづくり
#
コミュニティ形成
#
ワークショップ
#
社会実験
#
市民参加
#
子ども・若者
#
子育て世代
#
シニア